各種オペアンプの測定

 注意書きがない限り、オペアンプの測定は次の回路によりノイズと歪を1001倍(60dB)にしたものを測定しています。画像のTHD、THD+Nは1001倍された数値ですから、実際のスペックは1/1001の数字となります。例えば1%の測定値だった場合、実際には約0.001%の歪率ということです。1%というとすごく悪く感じてしまいますが歪を1001倍に悪化させたものを測定しているためです。

 詳しくはFidelix様のコラム「超低歪OPアンプの間接的な歪率の測定方法 」をご覧下さい。この測定方法についての仕組みなどわかりやすく解説されていると思います。 THDとTHD+Nの計算はWavespectraWavegeneを使用しています。

 回路図上の+-の間にある470uFのコンデンサはディスクリートオペアンプの測定の際に発生するオフセットがNFBにより増幅されて測定不能状態になるのを防ぐために入れてあります。ある程度大きい容量でないと低域の測定値に影響があるので470uFにしてあります。本当はもっと大きくても良いかもしれません。測定時の回路動作条件は、負荷1kΩ、レギュレートされた電源電圧+-12Vとなっています。

 各オペアンプの内部回路の分類や仕組みの詳細はSAYA(PURE SPEED)様のコラムとあわせてみていただくと大変参考になるかと思います。なお、以下の全てはあくまで個人による簡易測定データなので測定の信頼性や内容の保証などはできかねます。目安程度にお願いします。

 ※測定以外の主観的な感想などはPhileWebコミュニティの記事に記載します。

測定環境(ASIO 96kHz 24bit) AD HDSP9632(AK5385)
DA HDSP9632(AD1852)

noise

ノイズフロア

measurement circuit

測定回路

結果まとめ

  1k 1k+N 10k 10k+N 偏差平均
lme49990 0.0000012 0.0000136 0.0000091 0.0000213 54.08
lme49710 0.0000199 0.0000488 0.0000430 0.0000880 53.39
lme49870 0.0000170 0.0000454 0.0000278 0.0000668 53.55
opa627 0.0000067 0.0000440 0.0000486 0.0001011 53.50
opa228 0.0000067 0.0000356 0.0000608 0.0001146 53.47
opa604 0.0000623 0.0001640 0.0000824 0.0001926 51.90
ne5534 0.0000163 0.0000623 0.0001122 0.0002085 52.79
lt1028 0.0000024 0.0000161 0.0000206 0.0000441 53.95
lt1037 0.0000124 0.0000465 0.0001518 0.0002909 52.57
lt1115 0.0000023 0.0000161 0.0000181 0.0000394 53.97
lt1468 0.0000096 0.0000720 0.0000234 0.0000841 53.45
ad797 0.0000058 0.0000560 0.0000231 0.0000711 53.62
discreteA 0.0011901 0.0021307 0.0012503 0.0023146 19.41
discreteB 0.0002050 0.0004098 0.0027524 0.0049647 27.03
discrete自作 0.0000025 0.0000350 0.0000049 0.0000368 53.92
lm6171 0.0000163 0.0001515 0.0000421 0.0001720 52.65
lt1363 0.0001174 0.0002329 0.0001284 0.0002650 50.58
ad825 0.0001357 0.0003112 0.0000922 0.0002827 50.05
ad829 0.0000035 0.0000288 0.0000091 0.0000334 53.94
ada4898-1 0.0000402 0.0000691 0.0000482 0.0000893 53.05
lt1122 0.0001309 0.0002375 0.0000357 0.0001308 51.11
tle2141 0.0001748 0.0003056 0.0003256 0.0005940 48.01

 上に測定結果をまとめた表を示します。偏差平均は1kHzのTHD、1kHzのTHD+N、10kHzのTHD、10kHzのTHD+Nの偏差値を求めてから平均化したものです。赤字は上位5種ですから、測定と同等の条件下で高い性能を求めるならば、赤字の品種の中またはそれに近いものから所望の動作仕様に適うものを選択すれば良いことになるでしょう。(例えば入力抵抗が10kΩならばLT1468がLT1028と逆転する可能性がある)

 AD797は1001倍の動作条件で安定しなかったため101倍での測定となっているため、測定系のノイズをその分受けやすく完全な比較はできていませんが、安定性に難があるという点では使用にあたっての評価は一段下がっても仕方ないかもしれません。

 

LME49990


THD+N:0.00001% GB:110MHz Gain:135dB Vn:0.9nV

無音時 

1kHz

10kHz
1kHzのTHD+Nは約0.000014%ですから、データシートに近い測定値が得られていることになります。

LME49710


THD+N:0.00003% GB:55MHz Gain:140dB Vn:2.5nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

LME49870


THD+N:0.00003% GB:55MHz Gain:140dB Vn:2.7nV

無音時 

1kHz

10kHz
LME49710とLME49870はよく似たスペックのオペアンプです。測定データにどちらも低周波域で特有のノイズ?が見えます。これは他のオペアンプでは見られない独特のパターンなので、これは回路方式によるものなのでしょうか。詳しくはよくわかりません。

OPA627A


THD+N:0.00003% GB:16MHz Gain:116dB Vn:5.6nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

OPA228


THD+N:0.00005% GB:16MHz Gain:160dB Vn:3nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

OPA604


THD+N:0.0003% GB:20MHz Gain:100dB Vn:11nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

NE5534


THD+N:0.002% GB:10MHz Gain:100dB? Vn:4nV

無音時 

1kHz

10kHz
測定方法が違うためと思いますが、データシートよりかなり良い値が得られています。

LT1028


THD+N:- GB:75MHz Gain:150dB? Vn:0.9nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

LT1037


THD+N:- GB:60MHz Gain:146dB? Vn:3.8nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

LT1115


THD+N:0.0006% GB:40MHz Gain:150dB? Vn:1.1nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

LT1468


THD+N:0.00007% GB:90MHz Gain:- Vn:5nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

AD797


THD+N:0.0003%? GB:110MHz Gain:- Vn:0.9nV
無音時画像なし 
1kHz

10kHz

発振のため、ゲイン101倍で測定しています。

試しにLME49990と101倍同士で比較してみましたが、僅差でLME49990が優れるようです。LME49990も発振しやすいICですが、AD797はさらに発振しやすいです。あまりに発振してしまうため、購入したもののほとんど使用する機会はありませんでした。使いこなすのがかなり難しいICと思います。

Discrete A

バイポーラ上下対称回路12石


無音時 

1kHz

10kHz

1001倍だと出力振幅が減少してしまうため、ゲイン101倍で測定しています。

もともと高特性を主眼においた設計ではないらしく、測定値はそれほど優れてはいないです。上下対称回路で増幅段が少ないので石の数の割にゲインは低め(75dB以下)だと思われます。

Discrete B

JFET7石


無音時 

1kHz

10kHz

1001倍だと出力振幅が減少してしまうため、ゲイン101倍で測定しています。

公称の測定値よりも大幅に悪化していますが、測定電圧が大幅に違っています。石数も少ないですし、おそらく定電流回路を使用していないために測定条件の影響を受けやすいことが原因と思われます。特筆すべきはFET入力でありながらかなりローノイズに仕上がっていることと思います。

Discrete 自作

バイポーラ10石 GB:30MHz Gain:130dB-160dB (シミュレーションの値)


無音時 

1kHz

10kHz

自作とはいっても先人の方々による実績のある回路であり、性能が出る最低限の構成です。事前にシミュレーションで高特性を出すために検証しましたが、大したスキルもないのに実際の試作でいきなり高い測定値が出た(一応シミュレーション通り)ので、自分自身でも驚いています。

LM6171


THD+N:0.005%? GB:100MHz Gain:- Vn:12nV

無音時 

1kHz

10kHz
ノイズは大きめですが意外と良いです。

LT1363


THD+N:0.0006% GB:70MHz Gain:80dB Vn:9nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

AD825


THD+N:- GB:41MHz Gain:76dB Vn:12nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

AD829


THD+N:-104dB GB:120MHz Gain:100dB Vn:1.7nV

無音時 

1kHz

10kHz
ビデオ用とのことですがオーディオの性能は良いです。

ADA4898-1


THD+N:-120dB以下 GB:65MHz Gain:103dB Vn:0.9nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

LT1122


THD+N:0.001% GB:14MHz Gain:112dB? Vn:25nV

無音時 

1kHz

10kHz
 

TLE2141


THD+N:- GB:5.9MHz Gain:112dB? Vn:10.5nV

無音時 

1kHz

10kHz