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富山県Iさんの超絶定位システム

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6月になりますが、自作関係の話題でだいぶ以前から交流のあった方でお誘いがありましたので、別の用事の道中ちょっと遠回りして富山まで行ってきました。一応御本人によるシステム解説です。ここのUCDパワーアンプは私が作成したもので古いものをお譲りしたものです。

  • ラズベリーパイ+アイベリーDAC(タカジン製 改造)
  • コンパクトUCDアンプ(このアンプは小さいが大変音が優しく音離れや音場感が良い)
  • SPはスコーカーSasha Series-2 ユニット+ツィターFOSTEX TA-500A
  • ウファーはサーロジックのサブウファーSPD-SW2000Dと同じ型のユニットを前後に繋いだ水平対向としタイムドメインと同じように箱からユニット浮かせて取り付けてあります。(デジチャンによる60hz -48dB oct)をデジタルハイパワーアンプ駆動
  • 部屋の後ろの黒い柱のようなものは、以前使用していました、長岡鉄男考案の自作DRW(サブウファー)ですが、音が丸いので現在使用してません

とのことです。特徴的なのはEclipseのタイムドメインスピーカーに似た設計の自作スピーカです。Iさんによると実家にタイムドメインのGS-1を所持しているものの、音像の大きさに納得ができず、納得ができるものを設計して作ったのが現在のシステムとのことです。しかしGS-1も製作者自身によって魔境と言われるような世界が構築できるらしく、定位と空間描写のポテンシャルはかなり高いはずです。

参考までにここにGS-1のレビューがかなり詳細にありました。
http://www.audio-masterfiles.com/masterfiles/file021/file21-3.html

製作者による魔境の話はここです。
http://tackbon.ldblog.jp/archives/51382740.html?.link_prev=1

ですがIさんによるとGS-1はボーカルの口がとても大きく、フルオーケストラなどの再生でのスケール感は良いものの本来小さくあるべきものまで大きく描写してしまうのが欠点と言われていました。GS-1は聞いたことがないのですが自宅環境のDuntechも定位自体はなかなか良く出ていますがバッフル面の大きさに相応した定位の曖昧さは感じています。

そういえばNautilusシリーズなどは独特の形状がもたらす非常にシャープな音像感がありますね。なので箱の形状による限界があるのだと感じました。バッフル面のサイズ=音像サイズというのは経験的に色々なSPの音を思い出してみるとかなり正しいかもしれません。

とにかくIさんはこの定位感を長らく追求されておりその道で数十年とのことでした。最後は理想を満たすものが世の中にないため自作で今に至るわけです。

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音質の特徴:驚愕の定位

音を聞かせてもらいましたが、かつて聞いたことがない定位感としか言いようがありません。音場の再現能力は360度あって部屋のはるか向こうから背後まで広がる空間があります。そして音の一つ一つが非常に正確に定位しています。ここまで緻密かつ広大な定位を両立したシステムは一度も聞いたことがありません。凄いです。

先日ヘッドフォンのレビューで最新型のSPを超える部分を作り出しつつあるという話を書きましたが、こういう定位はまだまだヘッドフォンでは不可能ですね。ヘッドフォンは前後感や立体感は全然表現できません。真の3D的な描写はこういう定位の優れたスピーカでなければ楽しむことが出来ないということを強く感じたシステムでした。

ちなみに当日掛けていただいたなかでとても良かった録音は下記画像のアルバムです。色々な音が異なる空間定位で入っていますし音楽的にも深みがあります。これ以外にもチェスキーレコードの作品をいくつか聞かせていただきました。同社のオーディオテストCDの定位のテストも掛けていただきましたが、左、右、中央、そしてその間の定位もピンポイントで完璧でした。うちではこんな定位は絶対に出ないですね!自宅はここと比較すると60%くらいの再現度だと思います。それらしいところには定位しますけどピンポイントとは言えない曖昧な感じです。

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ネットでコメントを見るとこのレーベルは面白いこだわりを持っているようです。それは次のようなものです。だから非常に豊かな定位感があるのですね。

Chesky Recordsは、追う音質を売りにするオーディオファイル・レーベルとして有名だ。音の良いスタジオでの生演奏を、ワンポイント・マイクを使ってダイレクト・トゥ・2トラック方式で録音し、オーバーダブ、コンプレッション、イコライゼーションは一切使用しないというポリシーを貫いている。

同じようなポリシーでやっているのはリファレンスレコーディングスのキースジョンソン氏でしょう。氏のことはQLSO=愛用しているオーケストラ音源で知りましたが、リリース元であるSoundsOnlineの掲示板で当時本人による面白いやり取りを見たことがあります。

マルチマイクやDAWで作られた定位と実際のホールでの録音による定位は全く違うというお話です。ホールでの録音は壁の反射による音の到達タイミング差の情報が記録されており、あとからそれを再現することは出来ないというお話です。だからQLSOのレコーディングは音楽制作用の音源なので単音ごとに収録されますが固定マイクセッティングであり、さらにオーケストラを実際の配置において各パートごとに録音しています。だからDAWで定位を一切編集する必要がなく、むしろホール録音の音響をそのまま使ったほうが豊かな定位が得られるというお話です。

実際のこのQLSOを使った自分の制作楽曲も掛けさせてもらいました。この環境で聞くとQLSOの定位感はしっかりした立体感があることがよくわかります。DAWで編集しただけの音はやはり平面的です。当時は上のような録音技術の話を読んでもよくわかりませんでしたが、今思い出すとキースジョンソン氏はとても大事なことを言っていたのだと思わされます。あのときあのタイミングで掲示板を読んでいて良かったです。今では過去ログとしても残っていないと思います。このQLSOをわざわざクローズマイクを使ってリバーブ掛けてる人を見たことがありますけど完全に使い方を間違っているということですね。

参考までにQLSOのデモをおいておきます。今となっては古い音源なので楽器表現は固く不自然なところもありますが空間感はとても良いと思います。自分の音源は大したレベルじゃないので貼りません。

公式:http://www.soundsonline.com/symphonic-orchestra

非公式:https://storyinvention.com/qlso-music-matome/

オーディオの話しに戻りますが、この環境は定位の表現力は極めて高いのですが、そのかわり音源への依存性がとても強いです。普通の定位の曲では平面的な空間しか出来ません。高度なマイキングや空間処理を施した音源かそうでない音源の違いは浮き彫りになります。特にここで聞かせていただいたバイノーラル録音による森の音響は本当に立体音響で完全なサラウンド状態で感動的なレベルでしたが、ほとんどの曲は(たとえ優秀録音盤であっても)ただ平面の上に音が並んでいるだけということがありました。

定位の代償として失ったもの

このシステムは素晴らしい定位ですが、そのための制約として見られるのはやはり低音です。現代に残されたタイムドメインはフルレンジ設計が基本になっていますがフルレンジでは高音が厳しいです。定位感には高音の情報は重要と思います。

その点ここのシステムはFostexのツイーターがかなり高性能で高音には不満が全然ありませんが、この中高音の完成度に低音を合わせることはかなり難しいと思いました。もちろんすべてを満たすことが出来れば言うことはありませんがなかなかそうはいきません。

現状ではサブウーファーの仕上がりがまだ不満足というのはIさんも感じているようで未完成であるとは言われていました。中高域の完成度は極めて高いのできっと低音もそれに釣り合うところまで仕上げてくると思います。

最後に

この度は新しい経験をさせていただきまして、ありがとうございました。

おまけ

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途中で立ち寄った旅館のエントランスにこんなオーディオがおいてありました。下に見えるとても貧弱なコンポで鳴らされていたのでちょっと残念さのある音でしたが、普通の天井埋め込みSPよりは当然ながらだいぶ良かったです。アンプを良くしたらだいぶ違うだろうなと思いながら音を聞いていました。選曲はボッサでした。

ご飯を食べるところの天井にもありました。こちらの選曲はなぜかアメリカ音楽。自信に満ちてスケールが大きくお金の匂いがちょっとするあの感じです。

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