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MYTEK Manhattan 2 レビュー

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大変ありがたくお借りしましたので感想をまとめます。内容は購入検討されている方が比較参考になるように意識して書きました。強い部分、弱い部分、音楽的な特徴、性能的な特徴、そして設計面での特徴にも触れます。

音楽的、性能的特徴

男性的で力強い音、左右定位と上下帯域のワイドレンジさ、前に出てくる音、そしてスピードとパワーを重視する描写が特徴です。スピードとパワーに振った分丁寧さにかける部分もありますが、その分勢いを感じさせる出音となっています。繊細な描写を要求するクラシック系は荒くて相性が悪いですけど、低音重視の曲やリズムの強い曲では優位性を感じました。

低域に個性のある帯域があります。ベースのちょっと上くらいの帯域です。このあたりに倍音の厚みのある帯域があって、そこから下は細くなっていきます。絶対的な伸びるローというより少し上が張り出してその下からはパッと聞いた印象ほどは出ていません。

これが個性的な低音感を生み出しています。多分ですけどレギュレータ出力以降に大きめの電解コンデンサを並べているのでその特性の帯域にちょうど上記のような個性が出ているものと思います。美味しい帯域ではありますから意図的だと思います。

駆動力についてはICを使ったDACの中では実力が高いです。大半の現代的なICを使ったDACよりは駆動力があると思います。同じような現代的なICを使っている自分のAK4497とはかなりの駆動力差があった(Manhattan2がより良い)ので驚きました。

でもdCSみたいなディスクリートDAC、古い積分形DACのような余裕を感じさせる程の駆動力はありません。これらが余裕で低音から高音までビシバシ正確に描写する感じだとしたらManhattan2は必死で描写している印象があります。やはりES9038であっても小さいIC一つなので限界があるのだと思いました。

楽器演奏で例えるならスピードの早いたくさんの音符をしっかり演奏できずにややルーズな演奏になってしまっている印象と似ています。早く正確に弾くという意味ではdCSや積分形DACが最も高性能で、Manhattan2はパワーとスピードでやや力押しが目立つ表現です。

例えばですが、爪弾きのような非常に細かい表現の機微を正確に描写することは苦手です。演奏の抑揚や現場の空気感は埋もれがちで明瞭に聞き取りがしにくいです。そのため抑揚がない一辺倒な演奏に聞こえたり、録音現場の雰囲気やまとわりつく余韻などが埋もれがちです。この点でもManhattan2は細かいことは良いんだよ的な勢いと力強さでパワフルに押す音という印象を受けます。

駆動力、特定帯域の厚み、この2つはどちらも低音にとって重要パラメータです。Manhattan2は独特の厚み(ベースの上、ギターの胴なりのあたり)があり、勢いを感じさせる個性があるのでこれらが気に入ったら強いです。

最後に高域ですが、色付けは現代的な標準で薄めであり付帯音も少なめ、Manhattan1と比べるとだいぶ個性は薄くなりました。Manhattan1のほうが筐体デザインと音とのマッチングはしっくりきます。でも2のほうがクオリティは明らかに上です。

高域のトータルバランス=仕上がりは若干色がある程よいバランスだと思います。dCSほど個性的ではありませんが粒子感もあるので空気感にも程よく貢献しています。この粒子感によって余韻が前に出てきますし、色彩感もあります。そのかわり本当に細かい部分は均質になります。またDAVEほど高域の付帯音が強くないので最初の印象ではむしろおとなしい高音とすら感じました。

高域のピントの正確さとか緻密でなめらかな描写を追い求めるならDAVEなど他の製品が良いでしょう。高域の正確な描写力はDAVEや積分形DACにはかないません。滲んだ音で一般的な現代DACと同じです。(高域の付帯音と解像度は別の要素です)

そのほか、Manhattan2は上記の通り音の前後感が若干希薄になりますので、この点はDAVEのほうが前後感と現場の雰囲気が感じられます。

DAVE比では高域付帯音の少なさ、定位の広さ、音の安定感、に注目するならManhattan2が上になります。DAVEが優位なのは高域情報量と奥行きですが、奥行き描写もDAVEより少し劣るレベルでそこを重視しない方なら問題ないレベルで描写出来ているのでなかなかハイレベルかと思います。

どちらにせよ試聴して比較したら、聞きたい音が定まっている方なら迷うことはない位に個性が異なります。

設計上の特徴

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設計上の音質の肝は次のとおりかと思います。

・トランスと電解コンデンサと整流ダイオードの物量が凄い
・電流の余裕を重視した設計でパワフルな出音が期待できる
・ESSの専用電源ICを使っている=DACの電源がローノイズ
・クロックが低位相雑音品(ただしBrooklynも同等)
・IVオペアンプが8パラレルになっている=アンプ起因のノイズが抑圧

デジタル段はFPGAで処理してそうなので不明です。

アナログの電源ICはLM2990とLM2940でかなり平凡なスペックです。なのでアナログ回路は実はローノイズ重視ではありません。オペアンプが8パラなのでアンプ回路側に起因するノイズの影響を防げていると思うのですが、実は電源起因のノイズは共通なのでパラレル化では打ち消されません。

アナログ電源はハイスピードなレギュレートではなく電流の余裕を重視した設計のため絶対的なフラット感やスピードよりも電流持続力と余裕に舵を振った設計になっています。

アンプ直近に大きな電解コンデンサがついているので負荷への電流供給を狙った設計だと思います。そのかわり電解コンデンサは周波数特性、特に低域方面への特性の伸びが限定されますので周波数応答にはどうしても個性が出ます。これは独特の低域が強調された音作りと繋がっているものと考えます。

大型トランス、大型整流ダイオード、DACとしては巨大な整流用電解コンデンサ(22000uF等)、太い配線、MELF抵抗、フィルムコン、負荷直近の大型電解コンデンサ、ES9038Pro+ESSの専用電源IC、IVオペアンプ8パラ+平凡なアナログ電源レギュレータ、これらが設計上の特徴となりそうです。自作の場合でも上記設計に似せたコンセプトで設計すれば基本的な出音の雰囲気は似てくる可能性が高いと思います。

もしここから最も手軽に音質的なアップグレードをするならLM2990とLM2940をローノイズなレギュレータに変更することが一番でしょう。しかしそうするとManhattan2の独特の音楽性でもある勢いがなくなって、おとなしい地味な出音になって物足りないということがあるかもしれません。

Manhattan2はデジタルフィルターを色々変更できますのでそういった音質要因もありますが、実装されている各種フィルターはどれもChordほど音質に支配的なフィルターではない普通のフィルターなので微調整レベルで音に支配的ではありません。

測定値(個人測定なので参考程度にお願いします)

1000hz_thd_trim24

アナログボリュームフル設定、1kHz THD、+24dBV trim

1000hz_thd_trim24_dgvol

デジタルボリュームフル設定、1kHz THD、+24dBV trim 同じ出力ですがアナログボリューム経由よりTHDは良好です。

j-test_trim24

J-test、+24dBV trim

crosstalk

クロストーク -120dB前後

rcaout_5mhz

5Mhz帯域のノイズフロア分布。帯域外ノイズは少なくよく抑圧出来ています。これが付帯音の少なさに関係します。なお60kHzの膨らみは外来ノイズの影響でDACによるものではありません。

rcaout_100khz

100kHz帯域+20kHzLPF時の微小領域の残留ノイズ。この結果は現代DACとしてはやや高めです。