Mola Mola Makua(DAC付きプリ)を導入しました

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2020/05/13 補足:記事公開時点でDAVEの嫁ぎ先は決まっていました

長らくHPが死んでおりましてすみません。もともとサーバー管理者は私ではなかったのですが、最近多忙でメンテナンスの負担が大きそうだったので、私が借りているサーバーに移転作業を行っていました。この分野は素人なのでWordpressの引っ越しは未知の問題も多くて移転までかなり苦労をしてしまいました。おそらくなれている方ならこんなに時間がかからなかったかと思います。とはいえ色々と勉強になりました。

ということで、やっと復帰したので、ずっと書きたかったレビューを書きます。DAVEに代わる新しいリファレンスDACになります。

音の傾向は?

注意点としてmakuaはプリアンプで、DACは常時プリアンプに接続されている状態ということです。また、だいぶ前になってしまいましたが、前回にこのような記事を書いていますので可能な限り特徴を比較してみたいと思います。

MSB discrete DAC, dCS Bartok, Chord DAVEの音について

基本無色透明、強い個性や意図的な音楽性などは感じません。Mola Mola製品は測定主義で開発者のBruno自身が音作りは否定しています。基本性能がオーディオ機器の役目であると言う発言を見たことがあります。なので個性は薄めです。

しかし高精度な比較をすると個性と感じられる部分があります。高精度な比較とはどういうことかというと、オーディオは上下関係があると絶対的な格差となって上位機種の個性はわかりにくいことがあります。性能差がありすぎて癖がわからないのですね。しかし近いレベルになってくると、こっちはこの部分がよくて、こっちはこの部分はよくない、等特徴が見えてくるものです。なので近いレベルの機器と比較すると個性はわかりやすいです。

今回導入したMola Mola makuaはプリアンプと別売りDACオプションの一体型モデルになりますが、実はパワーアンプも試聴機会がありまして自作のNC500(+自前のインプットバッファ)と比較することが出来ました。またDACもハイレベルな音を出す数機種と何度も比較試聴をしたのである程度Mola Molaの音というものが見えてきました。これはパワーアンプでもDACでもプリアンプでも感じます。もしかしたらBruno設計の電源回路の音かもしれません。

それは、高いSNや広いレンジ、正確なタイミング描写を基本とした上で、特徴的に中域の音圧が強いです。中域はやや塊のような押し出し感があって分離や奥行きを再重視しているわけではないようです。やや詰まった圧力を感じる音です。そして高域は少しだけエッジが立っています。基本は澄んでいて引き締まった高域なのですが、すこしキレを強調したようなところがあります。このあたりは機器の相性とか音の趣向によってはちょっときついと感じられるシーンもあるかもしれません。そして駆動力が見た目以上に高いです。Mola Molaは外見デザインや小型軽量という開発ポリシー的にどうしてもハイエンド的目線だと線が細いイメージを持たれそうですが、繊細な音というよりはピアノ線のような細くても非常に強固な印象があります。

ちなみにDAC、プリアンプより、パワーアンプのほうが上記個性を強く感じました。個性を感じさせないという意味ではパワーアンプよりプリアンプやDACのほうが完成度は高いのかもしれません。パワーアンプは音だけで言えば個人的には好みではないかなというところです。高域はちょっときつめですし、奥行き重視派だと物足りないです。逆に中域の音圧とかやや刺激的な高域が好きな方はMola Molaがおすすめです。しかし音だけで言えばNC400キットのBTLでも問題はない音出そうです。駆動力はさすがにKalugaのほうがいいかもしれませんが、BTL出来るならその部分でもいいところまで持っていけるはずです。というかNC400の完成度が異常に高いです。

以下、音を要素ごとに書くとこのようになります。DACは代表的な数機種と比較ができましたので、厳密比較ではありませんが、だいたいどれくらいのレベルなのか、まとめておきたいと思います。大まかにまとめると全体的にかなりハイレベルです。スキが本当に少ないです。他の製品で一つ二つこれより優れている製品はあると思うのですが、総合力ではかなり実力が高いです。課題があるとしたら音が素っ気なさすぎることでしょうか。DACやプリアンプにそういう方向性を期待している方にはおすすめできます。しかし音源の欠点や問題をなんとかしてくれる要素は皆無なのでそこは期待してはいけません

駆動力とパワー

これは強いです。機会があったら新しめのdCSとも比較してみたいです。以前の比較表で駆動力トップの古いdeliusやPCM-501ESには負けてないと思います。ディスクリートDACなのでといったらあれなんですが、IC-DACでは出しにくい、とても音の芯の強さや揺るぎなさがあります。

価格帯とサイズがちょっと似ていますがDAVEとはここが一番違います。DAVEはディスクリートの割に駆動力はさほどではないため、瞬発力とか音の安定感を求めるなら、Mola Molaはいい感じです。

奥行きと描写力

これも強いです。DAVEと比較して負けてないというか優位です。なぜかというとMola Mola DACは駆動力が強いので前に出てくる音が弱くならないのが大きい理由と思いました。DAVEは少し音が遠く感じます。そしてMola Mola DACは前に出てくると同時に背景音が不明瞭になることもないため、結果として前後感が非常にはっきりしています。SNがいいとかノイズフロア変調がないとか多分そのあたりの性能です。

この要素はMSBも良さそうなので比較する機会があったら比較してみたいところです。MSBも強そうな部分です。

高域の情報量

これはDAVEとPCM-501ESが優秀です。この部分はDAVEが最もいいですがM-Scalerがあればさらに良くなると思います。M-ScalerはChordのDACと組み合わせる前提ですが実はChord以外のDACに接続することが出来るならM-scaler+Mola Molaというのは究極に近い組み合わせかもしれません。

この部分を重視する方にはMola Mola DACは推奨しません。所謂NOSDACとかマルチビットが好きでΔΣはどうも苦手という方のことです。Mola Mola DACはスローロールオフフィルタなので分離がよくさっぱりした音なのですが高域にかぎって言えばややデジタル階調に聞こえます。要するに普通の音です。

高域の付帯音

帯域外ノイズはありますが盛大ではありません。耳で聞いた限りでは付帯音はそれなりに抑えられているように思います。またスローロールオフフィルタなのでシャープロールオフかつ帯域外ノイズがきっちり抑えられているDAC(PCM-501ESなど)と比べると伸びがある高音です。高域は密度より伸びを重視する方もいますのでその点は趣向によってはプラス評価になるかもしれません。

左右の定位広さ

広すぎず、狭すぎず、中央も左右も明瞭です。強調はなく正確な広がりだと思います。不自然に広げることは技術的に可能ですがそのような印象はありません。

録音による実際の音の比較

語るだけでは、ということで実際に録音した音を比較をできるようにしたので、音源をアップします。実際の録音は24/88で取っていますがすべてアップすると2GBにもなってしまうので、この記事ではmp3になります。わかりにくいと思いますが参考にはなると思います。ゲストでAmariとLavry AD122-96MX(ADC)が登場します。これは面白い比較だと思います!

PCM-501ES Makua AD122-96MX

PCM-501ES Makua Amari

Makua AD122-96MX

Makua Amari

Amari AD122-96MX

Amari Amari

DAVE AD122-96MX

DAVE Amari

DAVE Makua AD122-96MX

DAVE Makua Amari

楽曲は前半2曲が私が打ち込みで作った古い音源でちょっとしょぼいですが、twitterでアップするときに著作権でアカウント凍結されても困るのでこのようにしました。本当は誰でも知ってる優秀録音とか使いたいですが今後はなかなか難しそうです(今までもそういう事例は少ないですが)。

後半はフリーで公開されているTAK氏の音源です。元音源のDLはこちらからできます。

1drv.ms/1aSMPuX

録音条件はADC側はどちらも最大+24dBuですが、概ね+18dBuにそろえたあとDAWで0dBFS付近になるよう再補正しています。録音時のゲインは手動でプリアンプとFFTを見ながら揃えたので多少の誤差があります。PCM-501ESは単独ではゲインが低くボリューム機能もないのでMola Mola makua経由のみです。DAVEはmakua経由とそうでないものを両方用意しました。

twitterでは期間限定でgigafile便で4/26まで24/88のwavをDL出来るようにしておきましたが、感想を見た感じだとmakuaの評判が良かったようです。

DACアーキテクチャについて

すでに色々書きました。必読かもしれないのは後半、DACアーキテクチャについて濃い会話もありますので興味がある方はリンク先も合わせてどうぞ。

上記一点補足がありまして、100/32 = 5bitですが、実質的マルチビットΔΣ変調で5bitに32bit埋め込みをしているという想定です。面白いアイデアなのはTIのアドバンスドセグメントのように電流源を並べてマルチビットにするのではなく、PWM+1bitでの5bitマルチビット表現になっている点です。エレメントを個別にオンオフする構造だとセグメントの誤差要因がそのまま出力特性に現れますが、1bitなら単独素子で5bitを表現するので素子単体のレベル誤差要因はありません。その分クロックには厳しくなるでしょう。そして素子のSNも限度があるのですがmakua DACでは実際の素子を32パラにすることで素子要因の誤差、クロック誤差を平均化で抑圧しています。このあたりが高特性の秘密のようです。

測定特性 改めてDAVEと比較

まずはMola Mola makuaの計測結果です。Mola Molaは単体DACのTambaquiですがAudio Science Reviewにも計測値は公開があります。が、あちらにはDAVEはありません。そしてうちはAPの測定器ではありません。帯域外ノイズの測定もあちらにはないですね。なのであえてこちらの環境、評価軸でDAVEと比較してみたいと思います。

なお本当はAudioTesterのほうがTHDが正確なのですが、DAVEは以前の計測値と比較用にWaveSpectraを使用しました。THDの数値は目安で高調波の高さで判断していただくようにお願いします。

1kHz/44.1kHz sine +24dBuスケール

16kHz/44.1kHz sine +24dBuスケール

20kHz/44.1kHz sine +24dBuスケール

j-test 24bit +24dBuスケール

5Mhz 帯域外ノイズの分布(60-70kHzの成分は環境ノイズ)

60dBローノイズプリアンプ+20kフィルタあり、makuaボリューム最小時の0dBFSサイン時の出力

60dBローノイズプリアンプ+20kフィルタあり、makuaボリューム最小時のノイズフロア

次にDAVEを似た条件で計測しなおしましたので掲載します。以前の計測データのうち、Lynx HiloでADした内容はゲインが低かったのでDACの真の実力だったかというとそうでもありませんでした。今回は+24dBuフルスケールでみた信号を掲載します。これによってノイズフロアは以前より下がりました。そして謎の成分も見えるようになりました。

+6dBuと比較すると+24dBuのほうがDAVEはノイズレベルが低いです。プリアンプを使ったほうがいいというのはこれが理由だと思います。デジタルボリュームで絞るとSNが低下しますが、フルスケールで使用すればSNはより高いです。もちろんそのためにはDAVEよりノイズの少ないプリアンプを使用する必要があります。

1kHz/44.1kHz sine +24dBuスケール

20kHz/44.1kHz sine +24dBuスケール

1kHz/44.1kHz sine +6dBuスケール

j-test 24bit +24dBuスケール

参考 10.05kHz/44.1kHz sine +24dBuスケール 10.05kは謎の成分が最も大きい周波数で、信号周波数と相関性があります。

DAVEの以前の測定値はこちらの記事を参考にしてください。帯域外ノイズなどはこちらに情報があります。

Chord DAVE来ました!(とても高額なDAC)

ちなみにですがDAVEとTambaquiの測定比較が海外にあります。結果を紹介しておきます。+24dBフルスケールはこちらの計測値でもDAVEのほうが高調波が低いですがノイズ成分については一考の余地ありです。THDのみの評価だと一部の性質しかわからないという一例だと思います。もちろん当サイトの結果も一つの参考程度としてください。

https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/mola-mola-tambaqui-measurements.10693/page-4#post-306420

また計測についてですが、個人的に音質との相関性はないとは言い切りませんが、音質のほんの一部を示している断片だと認識しています。うちの測定FFTをみるとDAVEとMakuaでMakuaのほうが性能が高そうに見えますが、THDのみの計測ではDAVEが上です。そして計測での見え方の印象と実際の音の差は全然違います。基本性能はどちらも高いのですが、その音質上の最大の違いは駆動力と高域解像度にあります。駆動力はMakua、高域解像度はDAVEが優秀です。しかし駆動力も高域解像度も上記の測定で相関性のある要素は何も見つけることが出来ません。なので測定では見えない要素があり、それは計測だけではまだ判断が出来ない、ということは良く理解しておかなければなりません。

導入の経緯

ここからは遅い前置きです。前置きをあとにするのは、自分自身も長々とした前置きが好きではなくて先に音について読みたいからです。オーディオイベントなどもそうですね。長々と喋りおわるのをまって、やっと音を出すということがよくありますが、正直百聞は一見にしかず、音を聞かなければわかりません。流暢なトークも音が駄目なら説得力を失うというものです。まずは音を聞いて、良いと感じて、それからです。

ということで前置きが遅くなりましたが買い替えの経緯です。簡単に言えば高性能なプリアンプ、そして高性能のDACをリファレンスとして手元においておきたかったということです。プリアンプはボリュームのないDACを比較するときに今までよりもより正しい評価が可能になります。今までは自作のプリアンプだったのですがこれから評価するべきDACの性能からして見劣りする性能なので音の良い高性能なプリアンプが必要でした。DACもDAVEを手放すため測定性能で劣らない製品が必要です。測定値だけなら中華DACでも良いのですが音としても良い必要があります。なかなかそのような製品はありません。

そしてMakuaのDACは基板を見ても設計がわからない珍しい未知のアーキテクチャのDACです。そのうえで最高峰の測定値を持っている、そして測定値だけではなく音質面でもスキが少ない、これは十分次世代リファレンスの特徴を兼ね備えています。なのでMakuaはどちらかというと技術的リファレンスの側面が強いかもしれません。技術的にはあきらかに私よりも上位にあります。何しろ基板を見ても理解ができないからです。

過去ログにもありますが私の以前のリファレンスDACはChord DAVEでした。これも購入当時はかなり高性能な描写力に感心したものです。しかし現在ではいくつか欠点もわかってきております。たとえば高域付帯音、駆動力と余裕のなさ、定位の狭さ、です。特に駆動力の評価は私自身の判断能力の弱点でもあり、当時はこの欠点に気づいていませんでした。ただDAVEも相変わらず高域解像度性能はとんでもないですし、この性能の部分だけはMola Molaでは代用がききません。しかしその部分はPCM-501ESがあるので問題ないという判断です。DAVEも基本性能は今でも高いとは思うのですが、私が目指す要素ではなくなりました。今はPCM-501ESやAK4499があるからです。

一人のDAC音質追求を目的とする開発者としては、やはり自分よりも何らかの部分で優位にある作品を所持し、常にその音を比較できる環境に身を置くことはとても大事だと思っています。

ちなみに今更のお話なのですが、そもそも私自身はオーディオは自己満足の手段ではありません。一般的には自分自身の理想を追求することが多いと思いますが、個人的には自分を満足させるためにはハイエンドオーディオは不要という立場です。自己満足ならもっとずっと低いレベル(例えばAntelopeの安いIFくらい)で十分です。ハイエンドは不要です。なぜならある程度の出音からあとは脳内補完して聞けばいいからです。そのための最低限の性能があれば十分です。そういう自分勝手な聞き方でいいなら実際の出音が素晴らしい必要はありません。

ですが自分を満足させることではなく、他人に価値を提供したいと考えるなら、さらに最高を提供することを目指すのであれば、自身の感覚を最高の環境に置くことは最低限の条件とも思います。安い機材の音しか知らず世界を知らずして最高なんて作ることはできるわけがありません。だから私はそういう機材を手元に置きたいと考えています。

貸し出しのような短時間の評価ではなかなか難しいことがあります。特に自分自身の聴覚で経験したことがない新しい音は正しく認識できるようになるまでしばらくの時間がかかります。その時間は耳がアップデートされている時間です。そのためそういう機材はしばらく手元において聞き続けなければなりません。Makuaの音質は今の私からするとそこまでの圧倒的高みのDACではありませんが、当時DAVEを導入したときはここに書いたとおりでした。

なので、もしそのような音質的高みのDACが今後登場したらそれはあたらしいリファレンスとして追加しなければならないかもしれません(Select DACのような価格ではどうしようもないですが)。

実際のところ、例のAK4499と比べてどうですか?

大事なことはここに少しだけ書きました。せっかくの長文記事なのでもう少し詳しく書きます。

全く基本構造も設計思想もアーキテクチャも違うDACですが、不思議と音の傾向が良く似ています。大きく違うのは高域解像度の部分です。AK4499DACではAK4499内蔵ではなくデジタルフィルターを一般的な特性ではない独自のものに変更しているのでどちらかというとPCM-501ESやDAVEに近い高域です。それ以外の部分はよく似ています。特にプリアンプとしてmakuaにAK4499DACを接続するとデジタルフィルター以外はほとんど違いはないかもしれません。

ではmakuaは不要なのではないかと思われるかもしれませんが、そこは上記のような測定値リファレンスやプリアンプとしての価値がメインです。音質的リファレンスとしてはAK4499DACがある現在としては正直不要かもしれません。ですが偶然似通っているなんてほぼありえません。一般的に考えてみて、違う会社の違う設計者の完成品で同じような音がするオーディオ機器なんてまず見つけることすら困難だと思います。逆にそこに興味を惹かれたのは事実です。全く同じとはいいませんが生まれの違う双子のような気分です。

まだmakuaは開封して解析などはやっていませんが、基板を見ても理解できない稀有な設計ですから、引っ越しをして落ち着いたらぜひ開けてみたいと思っています。次にこの記事を更新することがあるとしたら、内部を開けてもっと詳しい設計が判明したり、面白い波形や測定ができた時になると思います。ひとまず今回は長くなりましたが以上です。

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