ど素人でも出来る簡単マスタリング方法

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この方法はあくまで激しく失敗しない方法なだけで楽曲を良くしたり表現をプラスしたりという方向の要素は皆無です。プロのマスタリングとなりますとこういう付加価値の部分も含めた価値創造のしごとですのでぜんぜん違うはずですよ。

ここで紹介しているのは初心者がわけも分からずにいじくり回して破綻するような失敗を避けられる方法です。ミックスが良ければこの方法でも十分聞けるものに仕上がりますので、この方法でダメならミックスを見なおしてマスタリングでいじくり回す時間を減らすのも方法だと思います。技術的に上を目指す方が参考になるような内容ではありませんのでその点ご注意を!

(一部表現は個人的印象なので激しく個人差がある可能性があります)

その実例

じゃあほんとうにこの方法だけでマスタリングを行ったらどうなるのかというサンプルなのですが、実は夏のCDの東方お伽話のマスタリングがまさにこの手法で作業されたCDです。こちらがクロスフェードなので実際の仕上がりの音を聞けます。

ちょっと圧縮し過ぎの曲があるとか気になる点はありますけども、これがマスタリング初体験の歌い手が1週間でやり方を覚えてマスタリング作業したって考えたら意外と聞けると思いませんか。

しかし今回なぜ歌い手がマスタリングなんてなったのかという経緯なのですが、もちろんいつもはyohineがマスタリング作業を超短納期(うちの制作体制の問題で半日くらい)でやってます。今回はyohineが普通の勤め人になってしまった関係で、CDの納期直前にまるまるアメリカ出張がはいってしまいました。仕事の内容が輸出した機械のEMC試験の対策という音楽と全く関係ない仕事なので、現地では当然音楽機材とかまともな聞き環境もなくて、ネット環境も確保できるか不明でした。なのでCDを確実に仕上げるには日本で作業して貰う必要がありました。

ひどいことにこの予定が決まったのが7月の末ごろだったのですが、上記の通りうちのマスタリング納期は凄く短くて納品の前日とかから最悪で半日くらいしかありません。時期的にも納期的にも他の人にマスタリングを頼める状況でもなく、メンバーであるココさんにマスタリングを頼むことになったのです。当然ながらご本人からは大きな反対というか出来るわけ無いという回答だったのですが、誰でもマスタリング出来るすごく簡単で無難に仕上がる方法があると伝え、あとは作業用PCのセットアップとやり方を覚えて無理やりやってもらいました。

作業手順

プラグインはWavesのL3-16を使います。使うのはこれだけですが設定のポイントは少しだけ覚える必要があります。

settingsample

1.基本設定

CD用のマスタリングなので、ディザを16bitに設定します。これは画面の左下の部分です。

2.リリースキャラクターはdefaultにする

リリースのデフォルトは手動で調整するときにはあまり使わないのですが自動マスタリングの時は一番良く使います。なぜなら低域を含めた帯域バランス補正が強くきいて何も考えないで調整した場合には仕上がりのバランスがいいからです。この辺は個人的な感覚からの印象ですが一番何も考えなくていい素人向けっぽい感じがしています。

3.スレッショルドを下げて調整する

いじるのは左上のフェーダー部です。これを下げていくと画面のように右側のスペクトルでどの周波数にどれくらい圧縮がかかっているか表示されるのですが、ここが重要ポイント。圧縮のピークが9dB前後、平均圧縮レベルが6dB前後で推移するように設定します。これ以上圧縮すると大体の曲で破綻しやすくなりますし、これより圧縮が足りないと周波数特性の自動補正能力が足りない+一般的なCDよりレベル不足になりやすいです。

4.終わり

これで終わりです。他の項目は一切いじりません。もちろん楽曲やCDによってもう少し最適化しないといけない部分がありますがそれは次に個別で書きますが、基本はこれだけです。L3-16はEQ自動補正機能付きリミッターとも言えるので、耳に自信がないならL3-16にお任せしたほうがマシな結果が待っているかもしれません。実際に同人CDではL3-16の自動マスタリングのほうが良いんじゃないかっていう酷いマスタリングのCDもたまにあります。

ひどく失敗する一例ですが、自前で調整するマスタリングで楽曲が破綻する問題は自分の曲に対する客観性のなさです。まともなシステムがなくてどういう音が良いのかわからない場合はさすがにどうしようもないですが、そうではなくて普段良し悪しの判断はつくのに制作したての自分の曲に対しては細部のこだわりが強すぎる傾向があり全体より細部のバランスばっかり意識が行ってしまい、全体としてはバランスが悪い調整になることがあります。大抵こういう場合他人にマスタリングを任せても細部の仕上がりが気に入らない事が多いと思います。でももしかしたら自分自身の判断基準のほうが偏っている可能性もあるかもしれません。その点L3-16は平等なので他人が聞いて偏った仕上がりになる可能性は低いでしょう。もちろんあまりにミックスが個性的な場合はわかりませんが。

想定される問題

作業中に質問された内容とか、想定される問題点など書きます。

・音割れの対策

お伽話でのかぼちゃさんの曲でピークの部分で音割れが目立つという相談がありました。曲によってはdefault設定では音割れしてしまうものがあります。こういうときはDrums punchまたはVocal Priority2を選びます。こちらはdefaultより音割れしにくいのでこれだけで改善する場合は多いでしょう。どちらが良いかは場合によるので実際に設定して聞いて選びます。よく分からなければどっちでもいいです。強いて言うならDrums punchは低音寄り、Vocal Priority2は中域よりなので楽曲の方向性でどっちがいいか決めればOKです。

・レベル差のある楽曲の場合

これは自動マスタリングでなんとかするのは難しいですね。低い部分に合わせてしまうと大きい部分が常に過剰な圧縮がかかってしまいますのでフラフラした音になります。このような仕上がりにするくらいならすこしくらいレベルが低くてもいいと思います。またはこういう場合はミックスに戻ってレベルがあまりに低い部分を再調整した方がいいです。

いまのところはこれくらいですが、他に思い出したら追記するかもしれません。

自動マスタリングと手動マスタリングの比較

最後に実際の音源で結果を比較してみましょう。上で紹介したInncent KeyのCD東方お伽話より、ぺのれりさんの曲で月のゆりかごです。実はこの曲凄い個人的に好みで本当は是非自分でマスタリングしたかったのですが、あとから実際にやってみたのでL3-16の自動と手をかけた自前のマスタリングを並べてアップしてみましょう。

↑L3-16による自動マスタリング

↑fabfilterのEQとリミッターを使った手動マスタリング

どうでしょうか?CD収録時のものは少しだけレベルが低かったので自動の方はCDとちょっと音が違いますが、L3-16のdefault自動でもレベル設定によってはこんな感じになります。参考までにfabfilterのほうのEQ設定はこんなに複雑です。

fabfiltersetting

まぁ私はそんなに腕の良いほうじゃないと思いますので、もっといい仕上がりに持っていけるよって人は素材をおいておきますのでぜひ実際にマスタリングをやってみて自動の結果と比較してみてください。

http://innocent-key.com/data/yohine/ms/ms24.zip

↑24bit素材

LANDRの結果を追加(12/29)

参考のためにオンラインの自動マスタリングで同じ曲を送ってみました。上に24bitのデータもあるので各自落として試すことは出来ますがユーザー登録が必要みたいなのでこちらに上げます。

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