前回の続きです。今回はこちらの自宅での試聴になります。なんとこの日はオルフィさんだけじゃなくてKTERさんもおいでになりました。お二人ともかなりハイレベルなシステムを構築されておりますので、うちみたいな見た感じ全くハイエンド臭のないオーディオを聞いてもらうのは結構恐縮するところでした。
なお当方のシステムの音質については自分で書いても全く客観性がないのでここでは書きません。こちらのシステムについての印象はオルフィさんのインプレにおまかせする形としたいと思います。記事が上がったらこちらのページで相互リンクにします。
ということでここでは当日に行ったちょっと変わった音質的実験についてまとめます。
キーエンス製除電器とORB除電器SN-03の比較
実はこの日の朝の音質はあまり良くありませんでした。日によって音が変わることはよくあるのですがこの日は特に良くありませんでした。なんというかちょっと篭ったような音だったのです。そこで除電器の登場です。帯電して音が悪くなっている状態を除電して本来の音質に戻すというものですね。しかしオルフィさんによればこの除電器は物によってかなり性能に差があるそうです。
事前の情報ではこのSN-03には”ORBの呪い”という状態があって、システムのレベルや相性によって呪われてしまう可能性があるというお話でした。しかもこの呪いは一度罹ってしまうと二度ともとに戻らないという恐ろしいもののようです。
そしてその呪いを解除するためには除電グッズのような簡単なものでは駄目で、キーエンス製など産業で実績のある良い除電器が必要ということです。なのでこの日に登場しているキーエンスの除電器SJ-F030は呪いを解呪するためのアクセサリーなのだそうです。
ということで実際に試してみました。まずはORBのSN-03からです。念入りにCDPやDACだけでなくパワーアンプとケーブル周りも除電します。SN-03による除電後の音を聞いた印象としては分離自体は最初の何もしない状態より若干良くなった印象だったのですが、それとともに色彩が暗く重心が下がって低音寄りのバランスになったと思いました。また高域はややモヤがかかったような音になりました。高音が伸びなくなって重心が下がるので、印象としては重苦しく悩ましい音です。これはむしろマーラーなんかには合いそうな音です。
オルフィさんに音を聞いた印象をほぼ上記のまま伝えると、これがまさに呪い状態だそうです。このときはCDPもDACも蓋が開いていたので除電効果が基板に直接かかりましたから相当強くかかった可能性が高いです。良いか悪いかで言えば悪くは無くはないけれども、意図せず音楽性が強く変わってしまう感じがしますね。
では次にキーエンスの除電器で「解呪」してみます。
こちらはORBとは全然音が違っていて色彩も一気に明るくなりました!重たい雲が晴れて光が差し込んだかのようです。高音が伸び切り低音も重さが無くなり歯切れがよくなっています。もちろん色彩が明るいと言ってもノイズで付帯音が付いた高音とは違います。逆に高音の付帯成分のようなものがなくなって伸び切った結果、明るく澄み切った感じがしました。この音を聞いてしまうと呪い状態のときは明らかに高音に変な付帯音がしていたと思います。たとえば先程は金属楽器の音に不自然な響きが乗っていましたがきれいに無くなりました。
面白いのはキーエンスの除電器を通した音はオルフィさんの自宅の音に似ていることです。こういう選定ひとつとってもその人の音の方向性は出て来るものだと思いました。キーエンスの除電器によって、うちの音が普段の音より明るく、力強く、強い光が差し込んで爽やかなサウンドに変化しました。音質的なクオリティはこちらのほうがずっと優れていると思います。
まぁこれは当然の話しでして、キーエンスの製品は産業用の組み込み用途での信頼性と性能を両立しているメーカーです。なので実性能で駄目ということはまずありえません。なにしろキーエンスは短納期で不具合が少ない産業機械を開発する際に便利な付加価値付きの組み込み用機器をつくっている会社です。キーエンスの性能と信頼性は普段行っている会社でも組み込み用のバーコードリーダーなどで良くお世話になっているので知っています。
ということで除電器の性能としてはキーエンス製のものが圧倒的に優れているということになりそうです。ORBのものは除電自体は出来ているのでしょうが完全に取り切れず変な成分か偏りが残ってしまっているように思います。
ORBとキーエンスの除電器の違いを画像で例えるならこんな感じです。
ORBの除電器の音↑
キーエンスの除電器の音↑
空気清浄機による音質への影響
次に空気清浄機で音質がどう変わるかの実験です。空気清浄機で音が変わるという事自体がどうなのかって話はあると思いますが、気体の成分や温度、湿度で音速が変わりますので、そういう影響で音が変わってもおかしくはないです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%B3%E9%80%9F
たとえば窒素100%、酸素100%、水素100%の部屋を用意して音を聴き比べたらかなり音質差はあると思います。相当命がけになると思いますが…。
CADO AIR PURIFIER MP-C20U
音がスッキリします。ちょうど女性ボーカルの低音を支えている帯域が軽くなる印象があります。まるでEQでそのあたりの帯域を0.5dBくらい狭くカットした印象と近いです。不思議ですね。
そして更に不思議なことは電源を入れると即効果があることです。つけた瞬間に音が変わっています。この結果から想像すると空気が変わっているのではなく空気清浄機が動作することによって空中に電気的な何かが放出されているのだと思います。この時の空気清浄機はAC動作ではなくバッテリー駆動でのテストなのでAC電源にノイズが回り込んだ等ではありません。
実際に試してみましたが、空気清浄機を離して設置すると音の変化が小さくなるので距離による影響はあります。やはり電気的な要因でしょう。空気清浄機の電源の種類や基板に手を入れて音が変わるのもそれで説明がつきそうです。なのでおそらくEMCテスト的なアプローチで空気清浄機から発生するノイズ成分はある程度観測できるのではないかと思いました。
このとき離した空気清浄機の設置位置は8mくらいだったと思います。このくらいの距離でも音は十分変わりましたが実際にEMCの測定テストでも10mの距離で行うものがあります。周波数によっては10m位離してもハッキリとノイズが測定できるので10mなら電気機器からノイズが飛んできてもおかしくありません。10mで測定器でノイズの観測ができるということはオーディオでも違いがでてもおかしくはない距離です。
ただ空気清浄機を入れたときのほうが音がスッキリした印象があるので一概にノイズの影響であるとは断言できないところがあります。まさかノイズのように作用している成分をちょうど打ち消すような成分を放出しているのでしょうか?(プラスイオンとマイナスイオン的な?これは除電器で除去済みですが)
このあたりは一度測定でチェックしてみたいところです。
もう一つのもの(型番不明)
写真を撮り忘れたので小さいです。こちらはCADOのものとは違った帯域に効果があると思いました。メモをして無くて細かい違いはちょっと忘れてしまったのですが、やはりスッキリするような印象です。基本的な傾向はCADOと似ています。違いは若干ありますが方向性は同じ印象でした。こちらもつけた瞬間に効果が出るのは共通しています。
今のところ空気清浄機による音の差は電気的な漏洩ノイズによる影響ではないかと仮設を立てているところです。今度機会があればGHzまで観測できる測定器で測定をしてみたいと思っています。
リモコンによる音の差
設置場所を変えてリモコンを動作させるとオーディオ機器からでる音が変わるというとんでもない話です。例えばしっかりした台の上からリモコンを操作してCDPを再生させると音がしっかりして、柔らかい台の上から操作すると音も柔らかくなるという、思い込みとしか思えないような影響です。
これが何度試しても違うような気がします。とはいえ思い込みを排除できるような大げさな違いだとは思わなかったので、この領域に踏み込むのは危険だと判断しました。信じるか信じないかは読んでいる方におまかせします。相当ハイレベルな環境じゃないと全く違いがわからないと思います。オルフィさんのところでは違いは結構分かる感じでした。うちでも多少はわかりました。
ただ一点これを裏付ける話がありまして、自作機材を貸したときにリモコンから操作したときと本体を操作したときに音が違うと言われたことがあります。理論的にはほぼありえないのですが、その方は音楽のレコーディングにも携わっていてかなり耳が良い方だったので、簡単に思い込みであるとは断言できないところがあります。当時はリモコンの違いなんてあるはずがないと思っていたので「違いが出るような設計にはなっていないです」ととりあえずは伝えたのですが、それを伝えてもその方は違いがあると感じていたそうです。
デジタルケーブルと電源ケーブル
オルフィさんの自作ケーブルです。これはかなり音が良かったですね。自宅環境は偽Valhallaで統一していますが、さすがに偽物よりはこちらのケーブルが良かったです。具体的に言うとややノイズっぽい成分がクリアになる印象です。
偽Valhallaは非常にパワフルで透明感も高いのですが、その透明感の中に若干像が揺らぐような部分がわずかにあります。透明度は高いものの場所によって若干歪なところがあるレンズを覗いているようなイメージです。そういう問題点もこのケーブルと比較するまでは全く気づいていませんでした。
十分にレンジも広く癖がなくノイズ成分も少ないという、かなり完成度の高いケーブルだと思います。力強さだけなら偽Valhallaのほうが良かったかもしれませんが、それ以外の部分はこの電源ケーブルのほうが良いですね。
こちらのケーブルは露骨に美音系でした。描写力などの基礎クオリティは十分に高いと思いますがそれ以上に個性が目立つケーブルです。レンジが広いというより広いレンジ感があると言ったほうが正しそうです。上記の白いケーブルからこれに交換すると低音もより目立つようになりますし、高音も輝くような美音系の質感がありますので国内では結構好きな人は多い感じかもしれません。
個人的にはこの2本の比較ならば白いケーブルのほうが良いなと思いましたが、偽Valhallaと比較するなら高音の癖の出方がより派手な質感に変わり低音が豊かになる印象で、篭ったりエネルギーが損なわれる印象は全然ありません。なので性能自体は高く基本はストレートで高性能な音だと思いますね。
どちらのレビューも使用条件としてDACへの給電ケーブルのみ交換しています。ただしその手前にASUKAのFIL-MASTERを経由した後段に使った場合のレビューになります。別条件の比較としてFIL-MASTERの前段側のケーブルを交換したときには上記ほどの大差は感じなかったので、ノイズフィルターを通過した後の外来ノイズ耐性の違いが大きな音質上の違いを生み出していた可能性も考えられます。この点のみ補足事項として考慮に入れて判断してください。
次に、デジタルケーブルですが、こちらはちょっと写真がないのですが外観はこれに近いものです。
http://www.mouser.com/ds/2/431/GORE_Phaseflex_10_18_13_app-461044.pdf
両端SMAで超高速タイプ(数十GHz帯域とのこと)なのでスペックもこれに近い印象でした。それまでこちらで使用していたデジタルケーブルがApogeeのWideEyeっていう大分古いタイプなのでこれを変更したところ凄まじい変化でした!もう別物のようにすべてが良くなったので今までが相当よろしくない状態だったということだと思います。デジタルケーブルでここまで激変するのは驚きです。
この日のテストでは除電器の違いも凄まじい変化でしたが、デジタルケーブルも同じくらいのインパクトが有りました。たった50cmくらいの線なんですけど、その程度の距離であっても線材の伝送特性がそれだけ重要という話なのだと思います。ということでこの日の後、すぐに似たようなスペックである40GHz級のSMAケーブルを発注しました。
他のオーディオ用デジタルケーブルと比較すると中低音は細身で弱い感じなのですが、高域のピントはこれが一番良いです。オーディオ用のものは大抵高域が滲むが濁って聞こえます。中低音の力強さと高域の正確さを両立するケーブルがあれば良いのですが…。
キーエンスの除電器も中古の出物があったのですぐに発注しました。これでワンランク上のオーディオライフを満喫できそうです。
SMAケーブルについて、リンクが張られているのは50Ωのものになるようですが、SPDIFの企画では75Ωですよね。
どこで使われているのかわかりませんが、SPDIFで使われているのであれば、「音が出るんだ・・・」というのが正直な感想です。
音の違いはインピーダンスが異なる影響のほうが大きいのではないでしょうか?
リンクから75Ωの品を探したら4Ghz帯までしかないようなので厳密な比較はできないと思われますが・・・
towanoさん
そうですね。インピーダンスマッチングの問題についてはその通りです。本来なら完全にマッチングが取れていない場合は波形乱れが生じるということになっていますが、音が出る出ないのレベルであれば全く問題ないというのが現実です。そのあたりの影響が出てくるのは数百MHz以上です。SPDIFは数十MHzなので普通の粗悪な音声用ケーブルを使っても音自体は出ます。もちろん波形は変わるでしょう。
ではマッチングが取れていない、正しい状態ではない、波形が乱れている、それなら音が悪い。とはならないのが面白いところです。インピーダンスだけが音の差の理由ならハイエンドケーブルっていうジャンル自体すでに存在しないと思います。それならすでに理論的に解析、解決されており、理想のケーブルというものが存在するはずです。しかし実際にはそうなってはおらず高周波伝送理論では片付けられない要素が関係して音に影響を与えていると思っています。75Ωの正しいケーブル同士でも音が違います。
もちろんオーディオだと色付けとか官能的な要因はありますし、それを言い出すと好みが支配的になって答えは出ないのが当然になりますから、ここではそういった色付け方向の話は除外しています。自分の評価軸は完全に音質的クオリティを基準にしています。
その上で高周波ケーブルの音質は優れていました。さらに超高周波対応のケーブルの音質が非常に優れているのが事実で、そこに既存の伝送理論を当てはめてもわからないことが増えてしまいます。
実は自分は測定、理論至上主義ではなくて聴感至上主義です。でも聴感と測定+理論にはいつも裏付けがありました。聴感が先にあってあとから根拠をつけていくと、実は今まで気づいていなかった法則に気づくことがあります。今回も同様だと思います。
既存の高周波伝送理論はオーディオの音質面は考慮されていません。なのでおそらく既存の理論で見えていない部分があって、そこが音質に影響を与えている要素だと思っています。それが何なのかは詳しくはわかっていませんが、インピーダンスマッチングより重要な要因があるのは間違いないでしょう。
SPDIFの帯域であれば問題ないですか。やっぱりデジタルオーディオって良くも悪くもガバガバですね。
デジタル波形と音質は、信号になんらかの異変があっても再生には大きな影響がないというのはなんとなく想像がついていました。
理由としては受信側と送信側で双方向通信して信号の正確性を保障していないので常にデータが変わる可能性がありつつ、しかし音飛びや突然の異音などがないことです。
そうなると、バルクペット対応DACでUSBケーブルの電源線を切った100円ショップのケーブルとハイエンドケーブルを比較したらどうなるんでしょう?
これで音が違う結果になればデジタルオーディオの根幹から見直すべきでしょうね・・・
高周波用ケーブルが高音質な理由は考えてみましたが
・高周波はノイズで乱れやすいので、高周波用ケーブルはノイズ対策がオーディオ用ケーブルより厳重にしてある。
・高周波を長距離伝送するため、ロスの少ない構造になっている。
といったところでしょうか?ロスについてはデジタル的には理論上問題ないはずですが、光をブースターで増強して音が良くなるなら同軸もロスが少ないほうが高音質であるのが道理ですね。
ここにもDACチップのように電流量が関係してくるとかあるんでしょうかね?ロスが少ないほうが電流量が多いでしょうし。
光を増幅したほうが電気信号に変換したときの電流量が多いならば可能性としてはある気がしてきました。
デジタル的には不可思議ですけど、結局のところデジタルの理論を完全に実現できる素子も回路も仕組みも存在しないので今日のデジタルオーディオがあるのでしょうね・・・
余談ですが潤工社に110Ghz対応50Ωの同軸ケーブルありましたが20cmで360,000円(税別)でした。ここまでのハイエンドはオーディオでもなかなかありませんね(笑)
towanoさん
デジタルもアナログ領域の影響を強く受けるということですね。データとしては完璧でもその受信にはアナログ的な要素が関わってくるので当然ではありますが、以前はこういう概念もオカルト扱いだった気がします。今ではデジタルでも音が変わるということは常識ですが。
> そうなると、バルクペット対応DACでUSBケーブルの電源線を切った100円ショップのケーブルとハイエンドケーブルを比較したらどうなるんでしょう?
> これで音が違う結果になればデジタルオーディオの根幹から見直すべきでしょうね・・・
それでも変わると思います。電源線が元々なくGND絶縁+ジッター除去まで行っているSPDIF信号であっても同軸ケーブルによって音質差が大きくでます。光ブースターのほうがよほどケーブルや上流品位の影響を受けません。導体を使った信号伝送は様々な要因による影響を受けていると考えています。導体に関係があるって考えると音の影響の原因も見えてきそうです。
高周波用ケーブルの特徴は音質に貢献してると思います。高周波に耐えられる設計が結果としてオーディオでも高音質になっている可能性ですね。十分にありえます。デジタルも結局はアナログであり、今のところUSBと同軸は様々な外部要因でかなり音が変わってしまうのが現実です。自分自身も導体が絡む信号伝送を理想にするにはどうしたら良いのかまだ分かっていません。光ブースターと同じ方法は使えませんので…。