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ユニバーサル基板でPGA2320の実験

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さてヘッドフォンアンプの実験でコンダクティブプラスチック製のボリュームがまぁまぁ聞ける音だったのがわかったので、次は電子ボリュームにチャレンジです。ネットで色々調べていると、電子ボリュームにすると解像度が凄いとかいう意見もチラホラあったので実際にやってみようということでやってみました。

ただし最初に結論だけ書いてしまいますが、このPGA2320チャレンジは失敗でした。ユニバーサル基板でPGA2320をどこまで頑張っても結局コンダクティブプラスチック製のボリュームにかなわなかったので、この記事は余り頑張って書いていません。ですので軽い参考程度にお願いします。

選んだのはPGA2320、この当時はMUSES72320もWM8816もない頃だったので、+-12Vを受け付けてハイエンド狙える電子ボリュームはこれくらいしかなかったような気がします。なお電子ボリュームはMUSES72320も実験済みです。音質的な結論はこちらに記載がありますので合わせてご覧ください。

部品実装編

だいぶ前なので細かいことは忘れてしまいましたが、変換基板を買って必要な部品をつけていきました。写真にも写っていますけどちょうどいいサイズのものはAitem-Labにあったので買いました。変換基板って会社によって値段が凄い違うのですね。ここは比較的良心的な価格だった気がします。

pga2320

ちなみにAVRはこの時初挑戦です。昔仕事でH8を使ったことがあったのでC言語ならなんとかなるだろうと思い、AVRispと合わせて勢いでIC類を購入。

atmega8535

この頃はまだ面実装にそんなに慣れてなかったのでビクビクしながら実装した覚えがあります。まぁPGA2320くらいの密度なら余裕なのですが、Atmega8535のほうはちょっと狭くてブリッジをなくすのに手こずりました。

pga2320-2

電子ボリュームなので現在のボリュームの値が見れないと困るのと、プログラムのデバッグ時にディスプレイも何もないと、どこが原因なのか何もわからない状態でハマりやすいので7セグを実装しておきます。上のヒートシンクはデジタル用5V生成の7805です。7セグの回路はネットの作例を参考にしたごくフツーのタイプです。この時は回路図も何も作っていないので詳細な記録がありませんけれども。写真だと表面は綺麗なんですが裏面は立体配線上等で実装してますのでごちゃごちゃです。

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7セグが動作したところです。初AVRでようやく動いたところなので記念に写真をとったのだと思います。

とりあえず音出し。果たして音質は?

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前回のヘッドフォンアンプに接続して音出し実験中です。入力にリレーの切り替えも動作の実験のために追加しました。灰色の大きい箱はポリプロピレンコンデンサで入力カップリングですが、ジャンパーでバイパスできるようにしてあります。この時はジャンパーが付いているのでPGA2320の手前にはリレーだけしかない状態です。

この時の接続は入力→PGA2320→アンプ基板→出力という最大限にシンプルな結線になっています。+-15Vのレギュレータはこの頃はお気楽式を使っています。電子ボリュームとコンダクティブプラスチック製のものと比較します。では音を実際に聞いてみると・・・

音が悪い!!

うーん、これは期待はずれもいいところです。これならコンダクティブプラスチックよりも評価の低かったマルツのG1610(160円くらい)のほうがまだマシかもしれません。とにかく音は荒いし、埋もれるし、正直聞けたものではありません。普通にボリュームを上げるとはっきりしたノイズまで聞こえてくる始末です。評判の電子ボリュームは解像度が凄いというのは何だったのか、と一瞬思うところですが、そう決めつけるのはまだ早いです。

まず基本的なところの設計が悪い可能性も十分考えられるのでファーストインプレッションは例え最悪だったとしてもまだ電子ボリュームがダメだと決めつけるのは早すぎます。デジアナ混在回路で難しいGNDの取り回しや、電源まわりを改善したら、電子ボリュームだって音質が変わる可能性はまだまだあります。

pga2320-4

+-15Vは強力なオペアンプレギュレータから供給しているので電源の品質は十分のはずです。あと問題になりそうなのは5V digitalとDGND、AGNDの扱いでしょうか。この時点では5V Digitalはマイコンの7805からもらっていて共通になっています。GNDはアンプ基板とPGA基板のデジタル、アナログのルーティングを考えるとなかなかややこしくなります。普通につなぐとどうしてもGNDループになってしまうので工夫しなければなりません。上の写真では見事にGNDはループになっています。これではまともな音は出ないでしょう。

PGA2320のデジタル電源を強化

まずは5Vデジタル電源に手を入れます。新しくPGA2320専用の5VオペアンプレギュレータJung95式電源を追加します。電源回路の詳細はこちらの記事を参照してください。

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中央にJung95電源回路を追加しました。この追加によって音質はめちゃくちゃ良くなりました。デジタル側の電源は音質に影響しないかと思ったのですが、実際にはデジタル側であっても電源の音質への影響は相当あるみたいです。

これによって初期のカーボン製可変抵抗以下かも?という音質から比べると大分なめらかでクリアな音になります。といってもコンダクティブプラスチックの可変抵抗にはまだまだ及びません。ここまでにかかっている手間とコストを考えると結果が悪すぎますが、これが事実ですね。はい、受け入れます。努力や自己満足より目の前の事実を取るべきです。

GNDのルーティング

レギュレータ基板、アンプ基板、PGA2320基板が別々になっていると配線が多くなって接続が複雑になりGNDループを回避しにくい為、ここでアンプ基板を電子ボリューム基板上に実装してGNDの配線ルーティングをシンプルにします。この時点でようやくGNDループは完全に排除できました。

写真ではレギュレータがJung2000式になりました。+-15VはJung2000式レギュレータの降下電圧が高い(5Vは必要)の関係で維持できず約+-12V出力に変更になりました。電圧は下がりましたがレギュレータ自体の性能が向上しているので音質は上がっています。またアンプ実装により基板レイアウトの変更でレギュレータ出力をPGA2320基板の直近にできたので、これによってレギュレータの低出力インピーダンス性能が生きてきます。具体的には低音の出る量が増えて聞こえます。

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さて最後の問題として残るのがデジタルGNDとアナログGNDをどこで接続するかです。上の写真では見えてはいませんがアナログGNDとデジタルGNDはレギュレータ基板上で接続されています。PGA2320の直下はGNDが完全に切り離されている状態です。果たしてこれでよいのでしょうか。

しかしこの当時参考にしていた下記のサイトではPGA2320の直下で接続しています。さて、どちらが正しいのでしょうか?さらにデータシートでも同じようICの付近で接続したほうが良いと指示があります。

http://www.eleki-jack.com/audio2/2009/04/pga2311pactrl23113.html

http://designideas.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/pga2310-pop-noi.html

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しかし実際にレギュレータ側のデジ・アナGNDの接続を切断して、PGA2320の直下で両者のGNDを接続してみたのですが音質的にはあまり良くないようです。耳で聞こえるノイズが増えますし、音質も砂っぽくなってしまいます。この基板の場合では直下でGNDを接続してしまうとデジタル側のノイズがアナログ側に回りこんでしまうようです。セオリーとはどうやら違う結果になってしまったみたいです。

理由はなぜでしょうか?

多分ですがユニバーサル基板なのでデジタル側のGNDの取り回しにベタが使えないこと、GND取り回しの制約が大きいことが関係ありそうです。特にユニバーサル基板ではデジタルの戻り電流がどのような経路をたどるかを考えるとなかなか怖いものがあります(この頃はそのようなことを考えて設計していませんでしたし)。もしかしたらIC直下で結線した場合にデジタル信号がアナログ回路を経由して戻るための調度良い経路が出来上がってしまった可能性もあります。今回の設計ではデジタル信号は空中を通ってお帰り頂いたほうがマシだったのかもしれません。

なので基板設計や配線の取り回しが変わった場合にはこれと同じ結果になるとは断言できませんし、どのような場合でもIC直下で分離したほうが音質が良いというわけではないので注意してください。

入力アンプの追加

ヘッドフォンアンプの実験では抵抗そのものの質よりも大きめの抵抗値がより音質を大きく劣化させることが分かりました。データシートによればPGA2320も内部は12kΩ程度の抵抗と思われます。そうなると12kΩ分のノイズが発生してしまうことになります。このノイズの影響を減らすにはどうすればよいのか?一つ思いついた方法が入力アンプの追加です。

ボリュームに入力される前に音量を上げてしまえば見かけ上の抵抗から発生するノイズの影響を減らすことが出来ます。入り口で音声信号を2倍にすれば、音声信号に対しての抵抗ノイズは半分になるというわけです。幸いPGA2320ならばデータシートを見る限り入力電圧は+-9V台まで歪が悪化せずに行けますから、入力アンプはゲイン2倍ならば入力信号が2Vrms時に約6V弱の振幅となり十分許容範囲内に収まります。

実際に実装してみます。

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この入力アンプは音質にはかなりの効果があります。といってもアンプを余計に通過するので音質が悪化する要素もあるのでは?という懸念もありましたが心配は無用で、電子ボリュームによる音質劣化のほうがアンプによる劣化などよりはるかに大きいということです。電子ボリュームによる音質劣化は見事に入力アンプによって軽減されました。

ちなみに入力アンプをゲインを持たない入力バッファに変更した場合でも音質は向上します。非反転アンプが入りますので外部から見た入力負荷が軽減された効果でしょうか?それとも電子ボリュームから見た信号源抵抗が低くなった効用でしょうか?どちらもありえます。なので単純な入力バッファであっても音質向上には効果的のようです。しかしバッファでは信号に対するノイズの量は軽減されませんので、せっかくなら入力アンプとしてゲインをもたせたほうがボリュームによる音質劣化を抑える効果はずっと大きいです。

ところで大手のプリアンプのブロック図をみるとボリュームの手前にバッファがあることが多いですが、こういうところ大手は抜かりないですね。

まとめ 

ここまででこの基板で出来る思いつく音質対策は全て行いました。結果はというと、ここまで対策をやってもコンダクティブプラスチックのボリュームにはかないませんでした。ということは電子ボリュームでいくら頑張っても本格アッテネータには全く及ばないレベルということですね。コストも手間も何倍もかかっているのですが・・・残念です。とにかく電子ボリュームによる音質劣化は相当のものなので、ただ普通に電子ボリュームを使うだけでは音質的には満足できるレベルにはならないということがよくわかりました。ここに書いた対策のもっと上を行く設計上の工夫がなければ電子ボリュームで本当にいい音は出そうにありません。

苦労して作ったのですけど音質的には納得できるレベルではなかったので、結局この電子ボリュームアンプはすぐに解体となりました。結局特性は測定していません。今思えば簡単な測定くらいしておけばよかったです。実は測定値が優秀だったりしたら測定はいいけど音はダメな良い事例になったと思います。

ここでの重要ポイントをまとめます。

  • PGA2320のデジタル電源を良くすると音に影響する。デジタル電源といってもその品質に手を抜いてはならない。
  • ボリュームの前に入力バッファを入れると音質は向上する。
  • 入力にゲインを持たせてからボリュームを通過させるのはバッファよりも効果がある。ただし定格には注意が必要。
  • PGA2320は単体ではどこまで対策しても上質のアナログボリュームに負ける。安い可変抵抗よりは良い程度。
  • レギュレータの出力と負荷の配線距離は音質に影響する。主に低域の質が変わる。

音質評価について補足ですが、これはいかに元の情報が失われないかが中心です。分離と細部のディテールは音声のエンジニアリングに最も重要な要素です。ですので特定の音楽に適合するような音色の好みなどは二の次での評価となっています。同等の分離性能がある場合には音色の好みで選ぶことはあります。

 

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