機材、スピーカの足回りはインシュレータやボードがよく見かける対策ですが、実はこの部分の音への影響はすごく大きいです。床の強度も大いに関係があります。理想は全く揺るがない土台です。機材すべての土台が振動せず動かないことが基本ですが現実ではそれは不可能です。
鉄骨づくりの家や分厚いコンクリートの床ならだいぶ良いと思いますが、普通はそのような床の環境を手に入れることは難しいです。例えば自分が今借りている物件は一軒家ですが、オーディオを置いているのは木材二階で強度はかなり弱いです。こういう環境でどうやって音を良くしていくのか、この一ヶ月間この課題を中心に対策してきましたのでここでその方法、そして考え方などを紹介したいと思います。
基本は強度が大切
先日書いたこちらのレビューです。このシステムの床環境は上記の理想に近い、70cmコンクリートの床に薄い木材を貼り付けたものです。全く揺るがないその床の強度は、部屋に足を入れた瞬間にわかります。部屋も大事ですが床も大事なオーディオコンポーネントだと思います。
既に記載していますが音はやはり非常に安定感と余裕があり非常にレンジが広いにじまない音です。低音は床の強度によって担保されていますので、強度がないと伸びない膨らむ低音となり、これはちょうど駆動力の低いアンプと同じような音です。低音の駆動力が足りなければ中高音も速度が不足して不明瞭になりますので結果全帯域で濁る結果となります。
このように床は機材の限界性能を決めるボトルネックになってしまいます。床が弱ければ機材だけ良くてもその性能は発揮されないので駄目ということです。それを最近の自宅での対策で強く感じました。このアプローチを最初にやった人物は不明ですが、知る限りsiinaさんがかなり早期(何年も前)からこの重要性を指摘していたように思います。最近の発言を引用します。
レジェンドであるML10がこんなものであるはずがないという確信があったので、僕は一瞬でキレ 即座にコンクリートと木材を求めた、腰を破壊する代償に重量、およそ合計400キロほど土台を積んだのだ、その高さは実に57センチに達し、現代のピラミッドの建設は果たされ、僕はファラオとなり、神に至った
— siina (@daioujou) July 17, 2018
金で買えない音は自らの肉体で作る 叡智と筋肉…2つの力が音響を作るのだ コンクリートを積め…力はパワーとなって音に変わり、答える…求めよ…力を…重さを… 強固な土台は裏切らない…床が抜けるまでは…
— siina (@daioujou) July 17, 2018
非常に効果的ですが、最大の問題は床が抜ける、腰を壊す、限度をわきまえておかなければならないという先人の忠告ですね。これを踏まえて対策をしていきます。
ホームセンターでできる対策
最初にやったのは、近所のホームセンターで投げ売りされていたコーリアンボードと御影石の組み合わせです。御影石はオーディオではNGと言われますが、お店でひたすら叩いて音を聞いてきた限りでは目によって音が全然違います。その当時の発言からの引用を見てください。御影石は目が粗いもののほうがピークが低音よりになってきつい音がしないようです。目の細かいものは安いですがこれは金属に近い音でオーディオではハイ上がりになりそうです。
御影石
ハイが強すぎます。粒子が細かい石は金属に近いピーク感が強く、これを敷くと神経質になりそうなのでパスです。木材と合わせても高域の癖が残ります。鉄も叩いてきましたがこれよりさらにキツイ特性でした。金属臭は木材と合わせても消せませんでしたので鉄もパスです。 pic.twitter.com/PpudVkiSIU
— yohine(Innocent Key) (@_yohine) August 28, 2018
御影石スプラッシュローズ
高域が一番落ち着いてて石の中では一番木材に近い音です。強度と重量はかなりありますので、これは結構良いかなって思いました。本日ご購入の品。 pic.twitter.com/6UzMVOVJmX
— yohine(Innocent Key) (@_yohine) August 28, 2018
コーリアンボードの方はこんな感じです。発言でも書いてますが単体で鳴らすとややぼやけた音です。でも複合だと石でも金属でも木材でもない素材なので振動をうまくダンピングしてくれる印象があります。
人工大理石
木材、石、金属、どれとも違う音です。ボワンという中低域に広がる帯域を持つ響き(単体ではNG)そして本体の強度が高いです。
木材と組み合わせても石と組み合わせても全く違う引き締まった特性に変化するので補助素材として面白いと思いました。今日は石と組み合わせる前提で購入。 pic.twitter.com/OtTbed8g7F— yohine(Innocent Key) (@_yohine) August 28, 2018
異種素材を組み合わせると全く傾向の異なる次元の音になるというのは先日の木材の記事でもまとめたとおりです。このように木材だけでなくさらに異種素材まで手を広げればかなりの広帯域のダンピング+強度を確保することも可能という手応えを感じました。重ねる順番でも音の傾向が変わるので面白いですがなかなかいい組み合わせを見つけるのは大変そうです。
また異種素材を合わせることで特定帯域の共振を防げるように思います。木材と木材なら異種木材を使う、金属は金属と接触させない、硬い材料ほどピークが強いので金属を使う場合にはある程度柔らかい木材やアクリルと接触させることが重要と思います。金属はピークが強いので金属同士で分散しても強いピークは残るからです。ということでうちでは金属インシュは金属以外の台の上に置き、カーボンで受けて金属ケースに接触させたりしています。叩いた感じがマットになるので効果はあると感じています。
例の人いわくなん層も重ねる場合硬いものから機材に接地して柔らかいものを地面に接地させてフィードバックさせないことが重要っていってました。
ただ素材の振動伝達速度が速くないと微細な鳴りが地面へ逃げないから素材選定が大変だったらしいです。
— むんむん太郎 (@mun2taro) August 28, 2018
人工大理石と音がマシな御影石を追加で購入してきました。人工大理石はデュポンのコーリアン
A:床>御影石>大理石
B:床>大理石>御影石Bのほうが駆動力の高そうな感触です。Aだと床に振動が伝わりますがBだと影響が少ないです。爪以外に拳や踵で叩くと低周波の応答が推測しやすかったです。 pic.twitter.com/OGIjUl44gu
— yohine(Innocent Key) (@_yohine) August 29, 2018
とはいえ、お店で叩いた感じでは巨大な金属板は注意が必要と感じました。強度は最高ですがサイズと重量のわりにとても強い共振エネルギーを持つので、物量勝負で金属のピークを抑え込む覚悟がないなら投入はリスクが高いと思いました。同等の重量の材料では金属の強いピークを抑えることは出来ません。数倍以上の物量を持ってピークを制することが条件になりそうです。物量が投入できるなら強力な武器になるかとは思います。
ウッドデッキ材の検討
強度が高く、強いピークを持たない、現実的な重量とサイズで、手頃な価格の素材。これを探しているときに見つけたのがウッドデッキ材です。リンク切れ発生対策で重要箇所の画像を引用しますが、元リンクはこちらです。
http://www.ai-products.co.jp/pdf/hikakuhyou.pdf
これを見ると最強クラスの素材はどれも入手困難ですが2P目の第二グループの素材は安く大量に入手可能です。
現在では強度が高い木材は伐採制限などがあって希少かつ高額なことが多いですが、ウッドデッキ材は強度がかなり高いのに安いです。無垢で大きいサイズの材料が手に入るのも良いですね。楽器用の実績がある木材と違ってウッドデッキ材ですからちょっと音が良さそうなイメージが無いですけど、イメージを度外視すれば強度自体はあるのですからウッドデッキ材は足回りの強化としては非常に適している素材かもしれません。問題はオーディオでの採用実績がFoQ製品くらいしか見当たらないことです。しかし強度は正義のはず。ここは自分が突撃して試すしかありません。
ということで近くで売っていたウリンを買ってきました。叩くとかなり固いです。響きは余韻が短くて詰まった音がします。ワイドレンジに響かせる材料ではないですがピークは強くなくデッド気味な音がします。これは強度と物量で振動を抑え込む用途にはいい感じだと思います。売っている残りが少なかったのでちゃんとフラットが出ている材料を選別したら2枚しか買えませんでした。前回買った安い中途半端な木製合板を撤去して代わりに買ったウリンを足回りに追加してみます。
合板よりは明らかに良いです。低音が更に良くなり中域の透明感が出てきました。ここまでの対策を空気録音でアップします。
今回から録音のセッティングを変更しているので、床材以外の音の差もありますので注意してください。強度アップに伴って低音側のアンプのゲインを今までより2dBアップした(以前は低音を上げると中高域が不明瞭になるのであえて下げていた)ことと、マイクセッティングを変更してSP軸上1.3mからリスニングポイント上約2.3mの場所へと移動しました。これによって前回までと傾向が変わっていますが、今後はこのセッティングがメインとなりますのでご了承ください。
サラ・オレイン – fantasy on ice
TAK – freedom
ウェルフロートのアップグレード
うちは床が弱かったのでウェルフロートで床の弱さから逃げていたのですがこちらにも手を入れました。Philewebのharubaruさんが行っているウェルフロートのアップグレードサービスです。個人的に知り合う機会があったのでそこでウェルフロートのアップグレードのお話を聞いて申し込みしました。アップ内容は次のとおりです。
- 内部メカの交換 メカは構造分の板厚アップ、補強金具の追加、動く支柱部分の太さが倍以上に
- ネジ受けを木材ではなく金属のワッシャーに
- 最終組み上げのネジ締めトルクを大幅に向上
これはピアノフルコンメカと言われるメカへの交換がメインです。これによって浮いている板の動きそのものが変わります。収束が早くなり初速の抵抗も増加します。基本的には強度のアップと同じ方向性です。強度のアップですので低音が伸びて中高域に余裕が出てくるという方向性で、今までの対策と全く共通です。このアップグレードにはドリルもいりますし加工には注意点があったり手数が思ったより多いのですが、ほとんどharubaruさんにやっていただきました。感謝です。
#空気録音
先週ウェルフロートをアップグレードしました。前回と同じ曲を比較用にアップします。強度と安定感が大幅に向上しています。SPを移動して内部パーツを交換なので大変でした(殆どやってもらいました)fantasy on icehttps://t.co/jIYUqdRIVu
freedomhttps://t.co/KXEYRurcb8 pic.twitter.com/VRqf3dQMZq— yohine(Innocent Key) (@_yohine) September 15, 2018
上記にもリンクがありますが、同じものをこちらにも貼ります。一番わかり易い違いとしては低音がより下まで伸びていることがわかるかと思います。
サラ・オレイン – fantasy on ice
TAK – freedom
ウッドデッキ材イタウバを追加投入
買ったのはイタウバです。なぜイタウバにしたかといえば、木材のパラメータを投入して検証した結果でバランスが良さそうだったからです。木材は基本固くなるほどハイ上がりの傾向が出てくるのですが、それを緩和する要素がヤング率=変形しやすさだと思いました。変形しやすい木材はピークが高周波に固まらずサイズに応じて低周波に降りてくるのではという想定です。これは数十種類の木材を単体で叩いてみた傾向からの推測です。
この仮説を元に数値化を試みたのがこちらの表です。強度/曲げは大きいほど音が伸びる、強度/ヤングは数字が大きいほど高域よりになる、という仮説になっています。聞いたことある材料はそこそこ体感と一致する結果が出てます。もちろん木材は個体差、品種さがとても大きいのであくまで参考程度です。原理に則った厳密なものじゃないので追試は必須ですが明らかに目的外の木材に手を出すリスクは避けやすくなるかと思います。
一見硬くて変形しやすいというのは相反する性質なのでありえないのではと思いますが、素材は限られますがそういうものは存在します。たとえばフェルナンブコなどはバイオリンの弓に使う木材で強度と柔軟性が必要です。下の表でも強度は最高クラスなのに変形はしやすいことがわかります。曲がるけど折れない潰れない木材ということです。今回はこういう木材で安く大量に手に入るものを探します。
ウッドデッキの中ではこの表でイタウバは硬いのに粘りがあり強度/ヤングが低めです。音質が良い木材と言われるローズウッド系はどれも強度/ヤングが200前後なのでこのあたりを基準にしていますが、イタウバは強度の高いウッドデッキ材の中で強度/ヤングが低い244です。ウッドデッキ材の他のもの、イペ、ウリン、クマル、アマゾンジャラは300を超えています。このことから強度が高いのにピークのない音が求められると予想してイタウバを選択しました。
nemo3さんに手伝ってもらってシステムの下にイタウバ敷きました
9本買ったんですが反りがひどい板が4枚あり、重量で反りを抑え込めるのが1枚だったので選別して6枚投入
駆動力というより低音の余裕が出ました。強い音が出ても揺さぶられない感じで、低音の質感はキレというより粘りのある方向性 pic.twitter.com/T440xrD28w
— yohine(Innocent Key) (@_yohine) September 15, 2018
結果は予想通り粘りがあり全くピーク感のないしっとりした音に変化しました。今までと比べると低域の共振はかなり減っています。
アクリル板をスピーカの下に引く
これで終わりではありません。ウェルフロートを強化してもまだ音には弱い部分がありましたのでSPの下を更に強化します。実はツイッターのDMでアドバイスを頂いておりました。(DMなのでお名前は明かしません)
それはアクリルです。ここまで木材やコーリアンや石を使ってきましたがアクリルは盲点でした。そこでアクリルの物性を調べてみましたが、意外なオーディオ的素性の良さが判明します。その資料はこちらです。
http://www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~kyodo/kokyuroku/contents/pdf/1209-11.pdf
これをみると、スプルース、メープルの特性をより平坦して余韻のピークを除去したのがアクリルなのがわかります。アルミは明らかなハイ上がりの周波数分布と長い余韻が支配的で金属素材を使う難しさがよくわかります。アクリルはフラットな周波数特性とフラットな減衰特性を持っているのです。これはかなりオーディオ向きではないでしょうか?
アクリルの特性はこちらにありますが、比重は重い木材と同じ位、強度は音が良いと言われる希少木材と同じくらいです。ウッドデッキほど硬くなく、普通の木材よりは硬い、ローズウッド系の平均的な硬さに近いです。
https://www.kda1969.com/materials/pla_mate_pmma2.htm
アクリルの最大の優位性は完全一体型で精度が完全な材料が手に入ることです。床にピッタリ張り付くような精度を出そうと思ったら、木材では個体差、反り、サイズ制約、諸々の問題があり安定性がありません。特にSPの下に敷くサイズとなるとかなり大きいですので木材だと無垢はまず不可能で端材を組み合わせた集成材しかありません。しかし強度の高い木材の集成材はかなり高額です。がアクリルは安く精度が高く強度が高いしかも癖のない共振特性です。
ということで購入して敷きました。
この対策はかなり良かったです。全帯域の音の余裕がかなり出てきました。低音は大げさな音ではなくなって中高域は透明度がかなり上がっています。この音を録音をしましたのでアップします。実際に違いを聞いてみてください。
サラ・オレイン – fantasy on ice
TAK – freedom
超弩級電源ケーブルKraken投入
nemo3さんに持ってきてもらった電源ケーブルをこの状態で更に追加します。
ただの電源ケーブル1本ですがこれもすごい差です。録音をアップします。
サラ・オレイン – fantasy on ice
TAK – freedom
クラーケンを入れることによって今までの限界を超えた立ち上がりスピードとなり全帯域のタイミングが揃う印象です。ここにはこれ以上足回りを強化しても到達しそうにない感覚があります。クラーケンの音質は今までにも何度も外で体験してきていますが、自宅でもやはり電源ケーブル1本だけでここまで変わるという恐ろしさを体験しました。普通のクリーン電源より音が支配的に変わってしまうほど影響力があります。このケーブルについてはこちらにまとまった記事があります。
http://cablefan.net/archives/a-s-p-reference-kraken
ということで足回りの対策はここまででひとまずは十分。次は良い電源ケーブルを投入しないといけないかなと思いました。目玉親父さんに教えてもらったFMRでしょうか…。
その他
布系は全てだめだ、要するに繊維層が厚くそこで浮いてしまう、固めの薄いゴムシートか、最強は和紙を細かく重ねてガタを消していく、地道な作業だ、しかしこれをしないとコンクリが動き、役に立たない 大抵のコンクリ導入者はこれをしないため真価を発揮していない、高いが制振シートでもよい
— siina (@daioujou) September 4, 2018
コンクリ層作っても、揺すって動くようじゃ何の意味もない、床を作るつもりで挑むべきだ、フローリングの下にスポンジが入っていたら、歩く人間はどうなるのか、そういうことなのだ
— siina (@daioujou) September 4, 2018
徳を積むことだけを考えるならばコンクリートも必要になる…しかし素敵性能のためには木材が必要だ、それも美しいやつが 土台に走ってると市販のオーディオボード類がしょぼ過ぎて徳が感じられないので厳しい戦いになる
— siina (@daioujou) September 1, 2018
アクリル板は私も試してみたいのですが何ミリ厚がいいのでしょうか?
予想なので参考程度として聞いてほしいのですが、おそらく厚みは環境で最適値変わります。要するに重さと強度のバランスです。
基本は強度至上路線となりますがアクリルは強度だけで言えばそこまで高くはありません。金属や石のほうが強度自体が高いです。ですがこれらの素材はピークがあるのが問題です。アクリルはそのピークがないのが利点なので、理想を追い求めるなら「より強固な素材で強度を稼ぎつつ、アクリルをつかって強固な素材のピークを抑え込む」これが一番良いのではないかと思います。アクリルを増やしすぎるとアクリル強度以上の音は出ないので、床がコンクリート等で強度が高い環境ならアクリル無しのほうが良いかもしれません。
なるほど環境で厚みが変わってくるのですね。私の環境は弱い床材にウールのカーペットをひいてますので極悪といった所でしょうか。
ウールカーペットは一枚物で部屋に敷き詰めているので撤去は難しいと思います。石、アクリル板、木材を用いて床から強度が弱い順に積んでいきたいと思います。必然的に全て厚みがある材料になると思いますので大変ですね。