AK4499を使ったDACプロジェクト

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2019年9月17日 AK4499キットの初期構成案を掲載

2019年9月10日 追記

2019年9月2日 追記

2019年8月23日 サイドバーを修正

それとチップの価格が出ていますね。

トップの画像は設計中のAK4499基板です。最近は少しずつこれも作っています。

最近はなかなか時間が取れない状態なのですが、他のプロジェクトと並行で進めています。たとえば今ほかにマルチビットADC基板も手がけています。こちらは未知のFPGAが絡むのでもう少し時間が掛かりそうです。ADC基板も報告できるようになったら記事としてまとめてみたいと思っています。

話を戻します。まだチップも入手できていないので話が早すぎるのですが、AK4499基板は出来上がって良い仕上がりなら久しぶりにキットとして売ってもいいかなと思っています。他にもDACプロジェクトがあるのですが当分公開できそうにないので気分転換でもあります。キットにする場合はですが、今まではすぐに基板が売り切れになっていましたが今回はしばらく継続で売れるようにしたいところです。

以前のDACキットは部品実装済みだったのは良かったのですが、各自でパネルの組み立てが必要だったため、実際に動作できるようにするまでに手間がかかりました。しかし今回はピンで設定をすれば電源入れてそのまま動く簡単なものにします。以前と同様に基本的な表面実装部品はフル実装済で、電源とI2Sさえ繋げば誰でもすぐ簡単に動かせるようなものにします。

そして音質対策も最新のものとします。測定値もデータシートどおりまで行けるかわかりませんが、きちんと測定値も公開したいと思います。このあたりは既存のキット用基板との差別化要因です。まともな測定値が出せる基板だということをきちんと示したいです。なお、詳細をアップすると無断でパクるキット製作者がいるので、基板画像はシルクなし、パターンは表面のみ、そしてぼかしありです。

基板の全体像は以下のような感じです。並べればマルチチャンネル、モノパラレル、これらに対応できるようにするかもしれません。(念の為これもパクリ防止でぼかしています)

AK4499について

現代的なDACチップについては積分形DACとの出会い以降、いろいろ問題について記載してきました。それは高速デジタル回路が内蔵だったり、パッケージサイズが小さかったり、その割に電流量が多く微小電圧変動の原因になっていることなどです。パッケージサイズは大きくなりましたがそれ以上に消費電力は増えており、結局AK4499もこれらの問題は共通でした。しかし試しもせずに文句を言うのは個人的には無しです。最新、最高スペックのチップが出たのですから実際に試してみて、上記の課題がやはり残っているのか、それとも改善しているのか、それを実際に確かめてみたいと思います。

データシートからわかったこと、AK4499について思うことについて、書いておきたいと思います。

  • 普通の電流出力とは違う設計、抵抗スイッチング方式

この部分は音質に大きな影響があるはずです。根本的な方式が違います。それがわかるのはデータシートの以下の図です。これはアイドル時の動作だそうですが、まず従来の電流出力型と明らかに違うのはIVアンプのフィードバックがDAC側に入っていること、DAC内部の抵抗をスイッチングしていることです。

この抵抗スイッチング方式の利点は何か考えると、おそらく電流エレメントのリニアリティをスイッチング制御であとから補正できることでしょう。従来であれば抵抗をレーザートリミングして精度を揃えるか、ランダムに入れ替えて平均化するなどの方法が取られていたものと思いますが、これはそこから更に上の補正を行うための技術ではないかと思いました。

要するに高精度の電流源を並べるだけではなく、その動作タイミングを調整することでさらなる実精度を実現したのではないか、ということです。この結果、独自の構成となり、音質面でも今までの既存の電流出力型、電圧出力型と何か根本的に違う異質な傾向になっている可能性があります。個人的にはとても楽しみです。

  • 大電流かつ4ch合成が可能なこと

これはES9038と似ています。データシートを見ると1chで72.8 mAピークtoピークとあります。これをIVで受けるには最近の高出力電流のオペアンプが必要です。データシートではOPA1612を推奨しています。廃番となったフラッグシップLME49990は出力電流が低いのでこれでは受けることができません。

そしてそれを4chモノラルで合成することができます。AK4499では出力できる信号電圧が上昇し1chのSN比も大幅に向上していますが、さらに4ch合成することで究極に近いSNを実現できるようになりました。合成の方法はリファレンスでは抵抗での合成ですが、このあたりは工夫の余地があるように思います。もちろん中途半端なアンプで受けたりするとノイズの原因になるので慎重な設計が必要でしょう。従来のDACと同じような発想で部品選定をすると全く性能が出ないということにもなりかねません。

このあたりはES9038でも同様で、DACチップ自身は良い性能であることが記載されていますが、現時点ではその限界値を実現した製品はほとんどありません。少なくとも大半のES9038搭載機の性能は真の実力を引き出すところまではできていません。

AK4499でも同様にこれを使ったから即高性能とはならないことは注意が必要です。個人的にはデータシートどおりまで行けるか不明ですが限界性能まで行けるかぜひチャレンジをしてみたいと思っています。

 

今回はこれで終わりですが、また追記をします。ひとまずICが発売されないとどうしようもありませんからね!

2019年9月2日

音出しまで行けましたので、とりあえず現状報告です。これから音質対策、良い音にするための試行錯誤が必要そうです。

2019年9月10日 音がだいぶ良くなりました

現時点でPCM-501ES積分形DACと同等より優位性がある音質になりました。最初の音出し状態のときはAK4499<AK4497<<積分形DACくらいの格差があったのですが今は積分形とほぼ同等かちょっと良いくらいになりました。とりあえずやった対策は以下のとおりです。

  • オペアンプの見直し
  • クロックの見直し
  • 前段デジタルフィルターの追加

どれも大きな効果があったのですが、大まかに一つずつ説明します。

まずオペアンプについて。最初はADA4898をつけていたのですがギリギリ定格オーバーだったようです。データシートスペックによると40mAは許容していますが実用はもう少し低い模様です。こちらの基板ではOPA1612は発振してしまうのでとりあえず間に合わせにOPA1602をつけました。これで特性は改善しています。とはいえオペアンプで良くなったわけではなくて特性面で良くなっただけです。音はADA4898は厚みがある(歪のせいかも)高域が綺麗。OPA1602はスッキリしていてややアタックのエッジが気になる感じです。正直好みの範疇で優劣はないと思います。他に3種類のオペアンプを取り寄せましたので最終的には別のものになる可能性があります。

次にクロック。これはとても大事ですね。今回は以前から使っている0.28ppmのTCXO以外に、最新のMEMS TCXOであるSIT5156を試しました。水晶の最大の弱点である振動に強いということでSIT5156には期待していたのですが音はやや硬めでキツキツな感じがします。水晶のTCXOのほうがリラックスしていて透明感があってきつくないということで今回はTCXOがいいですね。でも測定上はSIT5156のほうが良かったです。バラックの基板で実験しているので水晶のときは指で基板を抑えないと僅かなスプリアスが出ます。これがSIT5156では出ません。音は測定と傾向が違うので面白いです。あと大事なことですが水晶の聴き比べはオシレータからDACへ直駆動です。

最後にデジタルフィルター。正直これがないと積分形DACを超えるどころか近づくことすらできません。普通の内蔵デジタルフィルターでは高域が荒れた解像度の低いデジタルっぽい音です。現代のほとんどすべてのDACはこの状態です。聴き比べたらすぐにわかります。

デジタルフィルターとオシレータをちゃんとしたら積分形DACとやっと同等か優位になります。オシレータが悪いとデジタルフィルターだけ良くても積分形と比べてややがさつな音になってしまいます。最初はデジタルフィルターも内蔵、安いクロックをつけて実験していたのでかなり音が悪かったのでした。ここまでくると本当に些細な違いが意外と大きな差になります。何も手が抜けません。

現状の測定値です。50Hzのスプリアスが消滅したのと歪が素直になっています。ADA4898ではIV段で0.1%くらいまで歪み率が悪化していたのですが、今回は一桁改善しています。とはいえ私が今まで作ってきたDACの中では悪い歪み率なのでもう少し改善できるようにする予定です。

AK4497とAK4499の音の違い

皆さん気になっていると思うので、これについても書いておきたいと思います。比較対象はオペアンプは違いますがPCB設計方針もレギュレータ回路もクロックも同等なのでかなり比較条件は近いと思います。なのでこの比較はそこそこ信頼できるデータかと思います。

AK4499はAK4497に比べると音に芯があり、パワーと透明感と前後感があります。特に低音にしっかり骨格があります。そのかわり高域はしっかり各種対策(電源、クロック、フィルター、要するにほとんど全て)をしないとキツめになりやすいです。最初は高域がきつくて透明感はマスクされているしパワーだけはあるけどあまり好きな音じゃありませんでした。現在は上記に書いた3つの対策によってAK4497より全体的に良い音になりました。

AK4497はAK4499と比較すると柔らかくクリーミーです。低音もやや芯が分散した音ですね。もちろん音自体はスピードも十分早いしきれいで透明なのですが、比較してしまうと全帯域にわずかに膜のようなものを感じます。同じメーカーで同じような周辺回路なので雰囲気は似ていると思うのですが描写の仕方が違います。

音の余裕、軽々音が出ている感じ

積分形DAC > AK4495S ≒ AK4499 > AK4497

レンジ、パワー、力感、音の速度

AK4499 > 積分形DAC > AK4497 ≒ AK4495S

情報量、透明感、奥行き

AK4499 > AK4497 > 積分形DAC > AK4495S

この様になりました。

見ればわかりますがAK4499ではだいぶストレートに音が出てくる印象になりました。多分いままでAKM嫌いだった人はこの部分が嫌いだったのかもしれません。AKMは良い印象がないけどAK4499は悪くないという人は出てくる可能性ありそうです。私は個人的にはESSの神経質さやキツさのほうが嫌いでしたが、同じようにAKMはいいと思ったことがないって人もAK4499は一度聞いてみてもいいかもです。

力強さは改善したのですが、最大の問題のIC DAC特有の神経質さについては劇的には改善していないと思います。余裕というのは力まずすっと音が出てくる感覚です。立ち上がり速度とは別の要素というのは今回の僅差の比較で気づきました。AK4497のときはどちらも積分形のほうが良かったので気づきませんでした。AK4499は力強いですが積分形DACほどの余裕はありません。余裕だけならAK4495Sのほうが良いかもしれません。でもAK4495S比だとクオリティがAK4499のほうが圧倒的に良いので厳密な比較はできていないかもしれません。あくまで参考です。

ちなみに力感と余裕って相反するようですが、この力感と余裕を両立している製品はありましてそれはdCSのVivaldiとかです。ディスクリートDACですね。そのかわりVivaldiは高域が粗い(美音)です。

とはいえ、AK4499はパワーと瞬発力がディスクリート並にあるので積分形DACからAK4499に戻っても不満はありませんした。現代のIC-DACで積分形DACと力強さで勝っているだけでも素晴らしいことです。以前にレビューを書いたES9038採用DACそしてAK4497は積分形DACに完敗でしたので、これはAKMはかなり頑張ったのではないでしょうか!

仮ですが、AK4499オーディオキットの構想も一度まとめます

最初はシンプルなDAC基板にしようと思っていたのですが、上記の通り積分形DACと勝負するにはデジタルフィルターがないと駄目なのでDSPを乗せます。ついでにデジタルチャンデバの簡易機能を載せてしまおうかと思っています。詳細はこれから詰めますが、チップを2個つかった4chのDACが基本構成、これをモノラル1chまたはステレオ2chまたはモノラル4chとして使えるようにしようかなと考えています。全部一体基板で部品実装済み。チャンデバ機能は最低限になると思いますが、ライトユーザーにはむしろ扱いやすいものになると思います。

箇条書きしてみます。まだ変更の可能性ありますが、特徴は以下のとおりです。今まではキット頓挫してましたが、今回は確実にリリースしたいと考えています。

  • マニアックさより手軽さと最高の音質の両立を目指す設計です。なんでも細かく詰めたい方は他のキットが良いと思います
  • 最終的な完成基板の代表的な測定値は公開します
  • 殆どの部品は実装済み 細かい面実装のはんだ付けはしなくてOK
  • ソフトウェアはPCとUSBから更新可能 後からのアップデート可、初回のみ書き込み必須
  • 電源を入れたらすぐに使えるをコンセプトに、操作部も付属。以前のようなパネル組み立ては不要
  • AK4499 * 2で4ch出力が基本構成 モノラル、ステレオ、マルチに設定変更のみで対応
  • マルチチャンネルはグラフィック液晶で設定、操作。2wayと3wayへの対応、ディレイとゲインの変更に対応予定。クロスオーバー詳細設定は未定。
  • マルチチャンネルとデジタルフィルター処理のためにDSPを搭載します。入力はI2S、SPDIF。
  • 外部クロック入力はなし。そのかわりTCXO * 2を標準搭載しDACへ直供給。どんなジッタークリーナより高性能な構成です
  • DSPはDSDには非対応なのでDSDではマルチはできません。設定や配線が煩雑になるためDSDは非対応にするかもしれません
  • DSPの信号の外部出しには対応しません。同様にDAC直の信号入力もつけないと思います
  • DAC用の電源はLT3042よりローノイズ、ハイパワーな電源を最短距離でオンボード搭載
  • 正負電源もよくあるオーディオ用高電圧レギュレータICよりもローノイズなトラッキング電源を搭載

以上です。何かありましたらコメント欄に記載してください。これから仕様は決めます。とはいえ何でも要望に答えられるわけじゃありません。こちらで決めた基本仕様で対応できそうなものは対応する予定です。他でもキットが出てくると思うので他と似たようなものにするつもりはないです。

2019年9月17日 キットの具体的な構成案を掲載します

仮なので手書きですみませんが、文章で書くよりは遥かにわかりやすいと思います。現在のご要望をバランス良く満たせるような構成案を作成しました。ほとんどの方はステレオ2chだと思いますので基本はデュアルモノの構成とします。デュアルモノといってもアナログの実際の出力は4chのフルバランスです。この4chを1枚の基板に乗せます。

AK4499は1チップで4chのところを2chにする理由は色々あるのですが、理想電源レイアウトの問題、クロック分配の問題、アナログ回路の理想追求、これらの要因で音質ベストを狙うためです。アナログ回路は通常の構成の倍の規模になります。帯域外ノイズ低減、負荷駆動能力はリファレンス回路より遥かに高くなります。通常の8ch出力に対応するとこれができません。そしてデジタルのジッター処理が完全ではなくなります。要するに2チップ8ch構成では音質は最高の構成を取ることができそうにないからです。大幅な音質劣化が見込まれる8ch構成を取るなら当方の強みを集約した4ch構成を取りたいということです。

デジタル入力はSPDIF入力、アイソレータとMCLKクロックありのI2S入力(USB用)、そしてMCLKクロックなしのI2S入力が2系統あり、こちらはDACブロックへの直接入力用で、DSPをバイパスするルーティングになります。

上図には含まれていませんがルーティングや制御や設定はすべて基板上のCPUで行います。詳細な操作やマルチウェイの設定が必要な場合はLCD基板をセットで購入してください。LCD基板はUSB基板と同様の必須ではなくオプションです。LCD基板がない場合にはピンまたはDipスイッチで最低限の状態を設定します。LCDがなくても良いように状態はLEDで表示します。4ch モノラル、2ch ステレオ、入力固定、その他機能が不要であればLCD基板なしで使えるようにします。モノラル1chで使う場合などは出力の合成が必要ですが、それは手配線で行う必要があります。

2枚の基板を連携するために14pin I2S in/out端子を設けます。これは14pinのフラットケーブルを使います。基板を相互接続して片方をマスター、片方をスレーブのようにしてDSPは片側のみを有効にする動作。または両方ともスレーブ動作として外部DSPから4つのI2Sを入力するという使い方もできます。外部でFIRフィルターを使用してチャンネル分割しI2Sで入力する場合などを想定しています。それにより柔軟に4wayマルチに対応できるアナログ8ch出力を実現できます。