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大幅進化!PCM1792DualDAC


設計方針

実は先日作った自信作のシングル仕様の1792DACなのですが、あっさりとMSB-DACに負けました。しかもダイヤモンドとか上位モデルじゃないです。まぁ冷静に考えれば有名な老舗DAC企業と勝負して負けるなんて当然だろうと思うところもありますが、実際に聞いてみると分離とかパワーとかクオリティ面でも結構な差があって、DACは既に理想状態だしかなり各種の対策を施したつもりだったのですがまだまだというところでした。でもこういうきっかけが新しいチャレンジにつながるので良い経験でした。

そこで現状までの内容を踏まえて更に飛躍するために全体の設計を見なおして、更に先へ行くことにしました!今回の設計は次のようになります。

  • 左右完全Dual化。半導体の限界を踏まえて可聴限界のクロストーク対策と物量増加による音質変化をチェックする
  • DAC-IC(PCM1792)をアナログGND側に配置し、高性能レギュレータは直近に配置する
  • DACとアナログアンプの電源レギュレータは左右完全にセパレートにする
  • レギュレータの多系統化にあわせてJung2000式電源はやめて独自回路に変更。部品点数の最適化
  • デジタル基板は別個の基板して機能を密集させ、アナログ回路とは物理的に切り離す
  • 整流回路まわりは今までよりも物量を増やす。ケースも大きい物に切り替える
  • ディスクリートアンプのトラブル発生時の対策のため過大なDC出力を検出、遮断できるようにする
  • リモコン対応、液晶表示に対応させるなどインターフェースを一新(MUSES72320プリと共通)。今まで液晶はただのデバッグ用だった
  • 今まで入力が同軸デジタル一系統だったものをデジタル多系統入力に対応させる。できればUSBも対応

と、より本格的な制作に入ることにしました。

アナログ基板設計

アートワークはこちらのようになりました。多系統レギュレータ+IV差動+DAC基板です。いままでの基板とはパッと見ても大分印象が変わりましたね。デュアル化とレギュレータ周りの設計を大幅に変更したことが見た目にも大きいです。ディスクリートによるIV&差動アンプの構成なので、差動精度を維持したDCサーボ回路も載せました。特徴はレギュレータをICとアンプで同じ基板に直近配置かつ完全左右分離設計したことです。

今回の重要な目標はこれがどのくらい音質に影響するのか試したいわけです。

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では実際に電源をどのように最適化したのかですが、まず問題点から説明しますとJung2000方式ではLM317とレギュレータがオーバーオールのNFBを形成しています。そしてリファレンス電圧もレギュレータ出力から電源を取っていますので、入口から出口まですべての部品が機能的に密接であり機能毎の分離が難しい設計です。このままだと系統を増やすごとに全く同じ量の部品が必要になるということです。もともと大量の部品を必要とするJung2000方式の電源では左右セパレート+必要な系統ごとのレギュレータを用意するなど現実的ではありません。いくら単体では高性能のレギュレータを用意しても一系統では今回の設計では理想状態から遠いので、どうしても部品点数の増大を防ぎつつ系統を大幅に増やすことが求められました。

そしてこのために対策した方法はリファレンス電圧の共有です。これでレギュレータの系統を増やしても部品点数のむやみな増大を防ぐことができました。このために全体の構成と設計自体を大幅に変更になりJung2000レギュレータとは大分違う構成になりました。性能的にはJung2000に比べて若干の低下する部分もありますが、シミュレーションで検討した限り事前にもう一段レギュレータを挟むという二段構成を維持さえすればトータルの性能は十分そうです。部品点数を大幅に減らした割に性能の低下が少ないのでこの方法はメリットが上回っていると思います。

直近で多系統レギュレータを出来るだけコンパクトに配置することはメリットが有ります。電圧変動を見た場合にリファレンス電圧とレギュレータ自体を負荷の間近に配置しますので、様々な要因のノイズが発生してもGND、電源、直近のリファレンス電圧、レギュレータ出力電圧がすべてベタGNDと連動して変動するようにみえるはずです。これは今までの設計のような別基板からリードで供給するよりも遥かに安定(レギュレータなので強制的な安定)しておりノイズにより強い設計になっているはずなのです。さらにレギュレータの専有面積が小さいほど配線距離が減少しインピーダンスも低くなりますので特性面でも有利になります。実際高周波ノイズは外部のどこからでも乗ってきますし、DAC自体もデジタル回路は大きなノイズ源(まもとな設計じゃないとオシロでみてノイズが残ることが多い)ですからこのような対策は有効と思います。

一応Jung2000の設計では本来はレギュレータ出力のセンスGNDは一次側ではなく負荷側に接続して取りますので負荷側のGNDと電源の変動に対してノイズを除去するような動作となりますが、試したところリードを伸ばした状態ではアンプによって発振してなかなか安定させることが出来ません。この点ではやはり直近のGNDを最初から共有してしまい、最短距離のNFBとして高性能のオペアンプを使い、負荷側の電源とGNDから見てノイズが無くなるように動作するべきだと考えました。

また、今回の設計よりデカップリングのコンデンサもGNDへの落とし方も配慮しインダクタンスが減るようにビアを配置してベタに落とすようにしています。レギュレータの性能は高周波領域ではオペアンプとNFBの限界によってだだ下がりですから、Mhz帯域の高周波領域のノイズ対策はIC直近のデカップリングコンデンサ頼りになります。これらの対策が音質的な効果を生むと期待しています。

組み立てと配線

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こちらの写真が実際に部品を実装してテストしているところです。左側が整流電源基板で三端子レギュレータが乗っています。もちろんこの3端子レギュレータの電源はこのままデバイスには接続しません。単なる一段目のレギュレータです。右上の基板はデジタル基板でこの写真の世代ではCS8422を使っています。あとでこのデジタル基板は交換になります。左側の整流基板からは+9V二系統で供給していますがその内の片方がこのデジタル基板に入ります。一番大きい基板がDAC基板でこれが主役です。こちらはDAC用の+9Vとアナログ回路用に+-12Vを入れています。

ここの配線で問題になるのが GNDループの問題です。+-12V、+9V、+9Vとあります。+-12Vと9V系はトランスの巻線が別ですし整流基板でもGNDは分離されていますのでループの心配はありませんが、問題になるのは+9Vです。二系統といっても巻線が共通ですからGNDも共通です。普通に9VとGNDを接続したらGNDの輪っかが出来上がります。それは避けなければなりません。ここで私が取った方法はデジタル基板側だけGND接続を外すことです。やはり二段レギュレータの性能を最大限にする為にはGNDの接続はアナログ基板側を優先したいところです。なのでアナログ基板側にはちゃんと9VとGNDの配線をします。逆にデジタル基板側は少し遠回りですがGND自体はアナログ基板に存在するので電位はやや不安定ですがGNDはアナログ基板頼りにして9Vラインのみ供給します。

これは私見なのですがこれが問題にならない理由はデジタル基板上にレギュレータがありそこで安定した+3.3Vを生成していること、デジタル基板の電源は変動しても音質に大きく影響しないことでしょう。アナログ基板経由とGNDは遠回りなのでデジタル基板の9Vの視点からみたらデジタル基板側のGNDは若干変動しているように見えるはずですが、+3.3Vはレギュレータがデジタル基板のGNDを基準点に動作するので+3.3VとGNDの関係であれば変動しては見えません。なので逆にレギュレータから見れば同じ基板上にあるベタGNDは安定ですから、+9Vが変動しているように見えますが+3.3Vは安定出力しているように見える=フィードバックがかかる筈です。このデジタル基板の電源の品質は音質にクリティカルではないのでこのような方法が有効と判断した理由になります。

実際にこのあたりは両方一応試したのですが音で聞いても違いはよく分からないレベルで、特性で見ても残留ノイズは全く見えないので厳密にどちらが正しいのかはわかりません。レギュレータの性能が一線を越えていれば残留ノイズは打ち消されてしまうのでわかりません。なので特性のみで結果を判断するとしたらGNDはどちらか一方を切り離すのがベターな方法と判断して良いのではないかと思います。ただしこの方法は送り先にレギュレータがオンボードであることが前提条件です。

音質のファーストインプレッション

さて、試聴結果ですが、これはシングルのPCM1792と比較して圧倒的に良いです!聞いた時にかなり衝撃的な変化だったので今でも印象に残っています。とにかく定位が明瞭で今まで完全に広がっていなかった音が左右に大きく広がり、その広がった空間の中に音が一つ一つ浮いてみえました。音を聞いてこのように感じたことは今までありません。MSBDACはすごく良かったのですが自宅環境じゃなかったので比較ができないのが残念ですが、とりあえず自宅で聞いた音に限って言えばこれは今までで最高の音です。空間の広さ、定位の明瞭さ、レンジの広さ、ノイズ感のなさ、このあたりはシングルと比べるとかなりの違いがあります。これを聞いたらもう戻れません。

これほど音が変わった理由は単なるデュアルIC仕様にしたからだけではなく、左右完全セパレートのレギュレータの配置やレイアウトの最適化等、基板設計も音質に影響していると思われます。そうでなければあり得ないくらい音が違います。この結果から左右の分離は大きな効果があるわけで、今までの仮説である半導体の不完全性=単一ICで左右信号を扱う限界もより明確になりました。

と言ってもこれで終わりではありません。このDACは2014年の現在まで様々な改修を続けて今でも通用する音質を維持しています。この時点でもかなりのポテンシャルはあったのですが今から考えればまだ改良の余地はありました。続けて書きます。

CS8421+PCM9211を使ったデジタル基板

ひとまず満足していたのですが、次に試したのはこれです。これまではずっとMinimum PhaseのSRC(サンプルレートコンバータ)を載せているデジタルレシーバCS8422を使ってきました。しかし特性面ではもっと上のCS8421があります。こちらはLinear Phaseでプリエコーの問題がありますが基本特性の違いがかなりあります。実際に特性表を比較してみます。データシートには表がすごくたくさんあるので詳しくは実物をみてもらうとして、代表的な例を上げるとこのような感じです。

データシートはここにリンクを置いておきます。

http://www.cirrus.com/jp/pubs/proDatasheet/CS8422_F2.pdf

http://www.cirrus.com/jp/pubs/proDatasheet/CS8421_F6.pdf

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アナログで実現可能なTHD+N性能の限界を考えればどちらも優秀だと思うのですが、CS8422のほうは全体的にヒゲが目立ちます。これだと最近の高性能DACはFFT測定上のノイズフロアで-150dB以下を狙えますからこのヒゲはノイズフロアを超えてくる可能性があります。一方CS8421は24bitの理論値ノイズフロアに近いレベルで一切ヒゲが出ていません。このあたりは演算性能の違いなどが影響していると思われますが、測定例を見ると明らかにCS8421のほうが特性は完璧に近い性能を持っています。

ともあれ一度試してみないと実際の音質の違いはわかりません。デジタルフィルタによるプリエコーによる音質差と、演算精度の高さ、どちらが音質面で影響が大きいのかということです。

というわけで設計してみた基板はこんな感じです。以前にDIX9211を使っていたのでデジタルレシーバはPCM9211にしました。このICはデジタルレシーバなのにADコンバータがついていてアナログ入力をつけることが出来ます。面白いですね。なのでついでにアナログ入力の回路も付けてしまいました。このADコンバータは特性はあまり良くないのでおまけ程度ですがちょっと遊べる機能が増えて嬉しいです。

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CS8422+CS8421を組み合わせて切り替えできるのも面白いですが、この時の設計はこのような組み合わせになりました。

入力はUSB、同軸、光、AES/EBUに対応できるようにしました。CS8421はこの基板では強制的に経由する形ですがジャンパー切り替えで機能オフのバイパスは出来るようにしてあります。といっても設計ミスがあって、ここでバイパスするとマスタクロックが非同期のまま送られるためバイパス状態ではDACはまともに音がでないことがあとで判明します・・・。とりあえず他にはミスがなかったのでそのまま実装しました。

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実際の基板はこんなかんじです。音の方は予想と結構違っていてCS8422とは違いました。CS8421のほうが滑らかで透明感も上のような気がします。僅差ですが演算特性が高いほうが総合的な音質では若干上に押し上げる結果かもしれません。以前にWM8741でMiminum PhaseとLinear Phaseを試した時はプリエコーのないMinimum PhaseがLinear Phaseよりも分離面ではわずかに上回っていましたが、それ以上に演算性能自体に差がある場合はMinimum Phaseが優るわけではないということのようです。ここでのCS8422とCS8421の比較ではWM8741内蔵フィルタの比較とは違う結果でLinear Phaseのほうが良さそうです。

といっても正直デジタルフィルタの違いはかなり繊細です。ここでいう違いはDACの電源を変えた時のような大差はなくてどちらかと言えばこちらが良いかなという程度の差ではあります。デジタル領域の音質差は他が極まってこないと決定的な差には成り得ないと思います。ハイエンドなら意味がある差かもしれませんが、その前に他がしっかり対策出来ているかどうか検討した方がいいと思いました。これはデジタルフィルタだけじゃなく、ハイエンドDAC-ICの種類の差、PCMとDSDの差でも同じようなことが言えます。これらの音の違いは確かに存在しますが他にもっと大事なところがある、というのが今までの経験でわかっているところです。

でも一つだけ例外がありました。ChordのHugoです。インターナショナルオーディオショーで聞いたのですが、あれは2048倍オーバーサンプリングとかとてつもない演算量のデジタルフィルタだそうで、最新のFPGAデバイスを使用して究極を目指したもののようです。内部設計は変わったことはやっていないというか逆に極限にシンプルなアナログ回路が特徴のようです。とにかくその音は今までに聞いたことがない特殊な音質で違和感を感じました。何と言ったらいいのでしょう。ピントが合いすぎて本当は見てはいけない物を見てしまったようなノイズ?デジタルのあら?のような異様な音が聞こえてきました。とにかく何かが違うと感じる音なのは確かで、デジタルフィルタでもあそこまで特化していくとパッと聞いて明らかに違う音質になるということがわかった貴重な体験でした。ただしちゃんとした環境での比較じゃないのであの音が本当のクオリティの高さといえるのかどうかは自信を持って判断できません。購入するにはキツイ価格なのでどこかでちゃんと聞きたいものです。

というわけで普通のDACやICデバイスではそのような超高精度デジタルフィルタを実現しているものは存在しませんから、個人ではなかなか真似はできませんが、デジタル領域でもあのように突き抜ければ突き抜けただけの音が出るという面白い一例と思います。FPGAでも使えれば実験も出来るのですが、私は数式苦手でFPGAは全然わかりませんでした。意気込みでDE0買ったんですけど。

ジッタークリーナCS2000を追加

過去に詳細な記事を書いたので詳しくはこちらをご覧ください。

こちらには見やすくした図とか、実測特性の追加画像を貼っておきたいと思います。まずはデジタルの簡易配線図です。CS2000のジッタークリーン機能+CS8421のSRC機能をソフト制御で両立させるためにやや複雑なルーティングとなっています。PCM9211の内部ルーティング接続とCS2000の内部制御をうまく切り替えることによってUSB入力、SPDIF入力いずれの場合であってもSRC、ジッタークリーンON、ジッタークリーナOFFを切り替え出来るようになります。

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さらっと図を載せてますが考えるのはそれなりに苦労しました。実際の回路は配線が多く絡み合っており、もっと複雑なのであとで見てもなかなか良くわかりません。写真を出しますが、実際の配線の状態はこんなふうになっています。激しい空中配線です。むしろ空中配線よりPCM9211からピン単位で信号を取り出すのが一番大変でしたが。でも致命的なミスもなく想定通り動作したので良かったです。

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それでは実測の特性です。THDとジッターの両方を載せておきます。測定結果の注意点として100Hzの倍数となる微小ノイズが乗っていますが、これはRCAアンバランス接続の時にのみ入るノイズです。ケーブルの取り回し、計測の日取りや時間によってノイズの分布やレベルが変わります。たまに全く出ない日もあるのですがこの測定した時はあまり美しくない状態でした。バランス接続では全く出ないのでGND関係に原因がありそうなのですが現状では不明です。以前にRMEのHDSP9632で計測していた頃は全くでなかったのでAD側の機材によっても変わるようです。

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↑PCM9211のみ、ジッタークリーナなし。ジッターの影響のせいか?残留ノイズが他よりも多い。

pcm179x_THD_CS2000

↑CS2000によるジッタークリーナ処理。10kHz以上にノイズフロアの盛り上がりがある。

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↑CS8421によるリサンプル。10kHz以降の盛り上がりがないがTHDは0.0001%ほど悪化する。アナログ部は共通なので10kHz以降の盛り上がりはデジタル領域に何らかの原因がある。

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↑PCM9211のみ、ジッタークリーナなし。ジッターによる側帯波の上昇が見られる。

pcm179x_jitter_CS2000

↑CS2000によるジッタークリーナ処理。PCM9211任せより明らかに良い。

pcm179x_jitter_SRC

↑CS8421によるリサンプル。ノイズフロアは最も低い=ロージッター。測定条件は異なると思うがこのデータはStereoPhileに乗っている海外ハイエンドとも勝負できそうな見た目。SRCの副作用はTHD特性でもジッター特性でも測定上は全く観測できない。

SRCとCS2000の音質差まとめ

この切替をした実際の音質はPCM1792の場合はCS2000のほうが上でした。測定上は総合的にSRCが上回っているのですが音質はそうではありません。ただしこの傾向はDACの種類が変わると傾向が変わります。例えばCS4398等ではSRCとCS2000+内蔵フィルタの音質は殆ど変わりませんでした。CS4398は別の自作DACで試したことなのですがCS2000経由の場合はDAC内蔵のデジタルフィルタを使うのはPCM1792と同条件です。このようになった理由は何故でしょうか。

ChordのHugoでは超高度なデジタルフィルタを搭載しています。Hugoは一般のDACとは全く違うと言っても良いほど個性的な音質でした。となるとこの辺りの音質の違いはCS8421とCS8422の音質差と同じのようなデジタルフィルタの性能(ストップバンドの大きさ?)による音質差を聞いている可能性も出てきます。CS8421とCS8422ではCS8421のほうが高精度の音質でしたので優劣で言えばCS8421が優です。これもデジタルフィルタの性能差があります。PCM1792とCS8421も同じことではないかと思いました。より優れたデジタルフィルタであるPCM1792が僅差で優っている。CS4398とCS8421は殆ど変わらない。音質もこの通りになっていますので十分に考えられます。

デジタルフィルタの性能はPCM1792に内蔵されているものはかなり優れていますので、それがSRCよりもPCM1792直繋ぎでの音質優位性の可能性があるわけです。ただこれらDACでの違い程度ではかなりの僅差です。FPGAを使ってかなり高精度のデジタルフィルタと比較してみないと最終的な判断はできないかもしれませんが、Hugoの音質を聞いた限りではこの可能性は高まりました。また、これまでの経験でいえばミニマムフェーズ、リニアフェーズの違いは一長一短に過ぎませんので、現時点では絶対的な音質差にはならないと判断します。

IVアンプと差動合成アンプの簡易電源分離

基板設計時点ではこのアナログアンプ周辺の電源は完璧には分離していませんでしたが、DAC側の電源分離、左右分離が有効だったのでこれも試してみることにしました。

きっかけはMSBのディスクリートDACを作った時です。これもほぼ同じ設計コンセプトの自作基板で試していたのですが、MSBとPCM1792Dualではどうも音質差があるのです。若干MSBのほうが分離が良いです。普通に考えればMSBのディスクリートDACが優秀だと結論つけてもいいのですが、MSBDACの構成上、設計の差異がいくつかあります。例えばMSBのDACモジュールは電圧出力なのでIVも不要ですし、フィルタ回路も必要ありません。アンプは出力駆動用のバッファ一つで済むので電源に対してアンプが一対一のシンプルな構成になっています。

このことから考えると今までの電源最適化の延長で、IVと差動を同じ電源出力にぶら下げて共有することが果たして問題にならないのか?ということです。これは実際に試してみなければわかりません。でも今までの経験から考えればこれがMSBとの音質差の原因である可能性もあります。

そこで試したのがこちらです。基板上で電源が共有になっているので基板上での切断は容易では無いのですが、幸いディスクリートアンプを使っていますからアンプの電源端子を切ってしまい、アンプ基板に直接別系統の電源を供給することにしました。レギュレータは追加が難しいのでLCフィルタでの分離ですが前後のノイズ、相互干渉はある程度分割されます。いきなりLCフィルタ?と思うかもしれませんが、実はこの手法は以前にDAC電源の最適化手法の途中で見つけた方法です。最初は10Ωくらいの抵抗を挟んでみたのですが、妙に分離が際立つ感じになったのでいろいろ試していたら抵抗じゃなくてインダクタをつけても同じような効果があることがわかりました。抵抗だとあまり電流が流せないですしね。といってもインダクタであってもレギュレータの出力抵抗より大きいですから、本来ならレギュレータの性能をスポイルしてしまう実装なのですが、こんな対策も意外と良かったりしました。理論では予想もしにくいし全くわからない世界です。測定ではレギュレータの変動は無理やり押さえられていて見えませんが微小領域では相互干渉があるということでしょう。

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写真で見るとかなり混雑してきています。配線はすごく汚いですね。ここまで接続が複雑になるともう一から設計し直さないと綺麗にするのは無理でしょう。でも見た目に反してこの改造はなかなか効果的です。見た目は汚いけど音は綺麗です。ちょうど音質の変化はDAC側を理想状態にした時と似ています。程度は違いますがアナログでも有効ということのようです。予想通り音の分離が良くなりましたがちょっと低音はゆるくなって高域に色もついたかもしれません。やはりLCフィルタではレギュレータのような負荷をきっちり抑えるような動作になっていないことが理由でしょう。でもこんな適当な対策方法でも分離だけに限って言えば良くなりました。

話は少し飛躍するのですが、もしかしたら負帰還が嫌われた理由はこのへんに原因があるのかもしれません。負帰還は負荷の相互干渉によって音質が劣化したりするのでしょうか。確かに帰還ってのはスピードの限界と時間差が存在します。相互の影響があったら凄い微小レベルで混濁があってもおかしくないですね。無帰還の優位性はそういう時系列の問題がない点でしょうか。一度トランス直で供給する電源の音質も試したのですが負荷をまたいでもこのような劣化はしません。そのかわりすごく緩くて荒い音なのですが分離だけはたしかに良かった気がします。うーん。この説、あるかもしれません。負帰還は確かに測定上すごく良いのですがさじ加減と使い方が重要ということかもしれませんね。味の素入れ過ぎの料理みたいな。このへんはまだまだ追求の余地がある気がします。

ともあれこの改造によってなんとMSBDACとの差は一気に縮まりました。もちろんDACの構造が違いますから全く同じ音質になったわけじゃないのですが、むしろ1792Dualのほうがいいのでは・・・と思う音質です。MSBDACはディスクリートの精度の限界と測定特性の限界がありますから音質がちょっと荒いです。でもこの改造をする前はMSBDACのほうが明らかに分離が良かったのでこの怪しい改造が確かに効果があったと言えます。このへんは理論からはなかなか見えてこない改造ですけど音は確かに違うというところです。というわけでMSBDACはかなり高額ということを考えると周辺回路の最適化によって一般のICで差を詰められるならば普通のDAC-ICを工夫して使うのが良さそうです。逆に対策をそれほど頑張らなくてもいい音が出てしまうのがMSBDAC(ディスクリートDAC)の優位性?ということになりそうです。

あと写真に乗っている秋月のTPS7A4700はローノイズで話題だったので9Vレギュレータの後ろにもう一段入れてみたのですがほとんど効果はありませんでした。3段レギュレータは耳で聞いてもほとんど差はないようです。全く同じわけではないのですけど2段の自前のレギュレータで十分かもしれません。

使用感、使い勝手について

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フロントパネルはこのような感じです。電源はリレーでアナログ基板の+-12Vと9Vの電源を落とします。デジタル電源側は電源オフ状態でも生きています。工夫しているのはLCDの電源制御です。実際にはデジタル基板は生きているのでLCDの電源も生きているのですが、アナログの+9Vからバックライトの電源を取ると電源を切った時にバックライトが消えます。LCDの文字も消去してしまえば見た目は電源が切れているようにみえるというわけです。このときデジタル基板のICはリセットを有効にしてローパワーモードに入るので消費電力はそれなりに抑えられていると思います。

そして真ん中の黒いボタンは入力の切り替えスイッチ兼ジッタークリーンの種類の切り替えです。普通に押すと切り替えなのですが、長押しするとジッタークリーナの設定切り替えになっています。あとはリモコン対応ですね。さすがに北鎌倉さんのようにiPhoneとかPCから操作はやりませんでしたけど、普通にパワーアンプにつないで聞くときはリモコンくらいはあると便利ですね。というわけでひとまず使用感としても満足できるレベルになりました。

ちなみにUSB基板は最初つけてたんですが、DSDDACのほうに移植してしまったのでこちらにはもう乗っていません。でもこのDACはすごい苦労して作ったので多分今後も処分はしないと思います。シングルDAC以前のものは全部処分してもいいんですが。

 

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