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CS4398ネイティブDSDボリュームの音

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本来は「DSD対応&DACチップ差し替え可能なDACを作る」の記事の下に書く予定だったのですが、こちらの仕様を紹介するのが大変なので重要というかみんなが興味の有りそうなこちらの項目のみ、まとめたいと思います。

CS4398はDSDネイティブでボリューム対応!

やはり目玉はこれだと思います。DSDでデジタルボリュームってどうなってるんだろうと思いますが、データシートにははっきりとそう書いてあります。

CS4398は、専用ダイレクト・ストリーム・デジタル(DSD)プロセッサを内蔵しています。これにより、中間処理であるデシメーション・ステージなしでボリューム・コントロール及び50kHzのチップ・フィルタリングが可能となります。また、オプションの選択によりマルチエレメント・スイッチド・キャパシタ・アレイを直接に使用できるダイレクトDSD変換パスも提供しています。

これは他のどのDACとも違う実装です。よくあるハイエンドDACでDSDに対してデジタルボリュームを適用できるDACは旭化成、Wolfson、ESS等ありますが、どのようなDSD処理をやっているのかについては触れられていません。何も書いていないメーカーは内部でPCMに変換してデジタルボリュームが効くようにしている可能性が高そうです。こうなるとせっかく外部からDSDデータをDACに入れても、実はDAC側の内部処理が本当にネイティブDSDかどうかはわかりません。PCM1792等の系列はDSDにはボリューム処理が不可能ですからこれはネイティブ処理かもしれませんが。

その点でCS4398はそれを売りにしているので真のDSDネイティブの音が体験できる筈というわけです。CS4398って数字のスペックで見るとあまりパットしないのですが、ここにきてDSDが流行ったことで急に採用例が増えたんじゃないかと思います。地味にDSD128(5.6Mhz)にも対応しているところも先見の明があったと言えそうです。

ところでDSDでボリュームってどうやってるんだろうって話なのですが、どこかで見た話ではDSDクロックのままマルチビットに変換してそこで振幅を落としてから出力するとかありました。よくわかりません。

DSDプラットフォームで実験

DAC差し替え&DSD対応のメインボードを作りましたので写真をあげときます。SRC経由、CS2000によるリクロック、DSD、PCM、これら全てソフトでルーティングできます。詳しくは別途記事を書く予定です。写真だとWM8741で実験中ですが、他に差し替え用のボードとしてES9018とCS4398も作ってあります。今度AK4490とかも追加予定です。

追記:このDSDプラットフォームでの、各社DAC-ICの聴き比べ記事をこちらにアップしました。長いですが4番目の項目になります。

http://innocent-key.com/wordpress/?p=2563

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CS4398でデュアルモノにしてDSD結線をするときに重要なのがDSD-L、DSD-R信号のルーティングです。PCMでは内部レジスタでLRのチャンネルを設定できるのですがこれがDSDだと効きません。DSDのときはLはL、RはRに配線しないとデュアルモノのステレオ出力になりませんでした。データシートには何も書いてないので完全に落とし穴です。これからチャレンジしようって方はぜひ気をつけてください。

↓こんな修正はやりたくないですよね…。デュアルモノ構成じゃない場合は気にしなくても大丈夫です。

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DSDネイティブの音質は

結論から書きます。CS4398での印象です。

  • DSDネイティブボリュームはS/Nが悪い。絞った時に明らかにノイズが聞こえる。全然良くない!
  • PCMのボリュームではS/Nの問題はないのでDACやアナログ回路の問題ではない。
  • DSD64=2.8Mhzは残留ノイズのせいか高域にサラっとした音が乗る。DSD128=5.6Mhzはこの癖が少なくて音が綺麗。
  • PCMとDSDで音色は異なる。DSDは空気感があるといわれているが空気感の演出があるといったほうが良さそう。
  • 減衰の長さ、空間の奥行、深さ、描写の緻密さなど音質面ではDSDとPCMで大差はない。

というわけでどれも期待したほどの結果ではありませんでした。特にDSDネイティブでデジタルボリュームを絞るとなおさら明らかになるのですがDSDの音質的個性のひとつは残留ノイズの影響だと思います。でもこの音が好きな人が多いのはよくわかります。特に日本だと古くから国産オーディオでよく聞かれる音の方向性だし、音楽制作のエンジニアでもわざわざこういう音作りをする人も結構います。女性ボーカルなんかはこういう音にしたほうが受けますよね。多分。

ns

ソースのページが見つからなかったのですが海外で拾った画像データです。この図は個人的な聴感とすごく一致します。これはフォーマット毎の理想ノイズフロアだと思うので各フォーマットが持つ限界のSN値でしょう。DSDはこの図だとPCMに比べてSNが悪く不利です。

他のページでも貼っている画像ですが、自前の基板で実測したCS4398の特性はこんな感じなのでこれだとDSDのノイズは見えますね。DSDのシグナルジェネレーターがないので検証はできていませんが。周波数軸ではどうしてもDSDは不利に見えます。

DACTHD

http://www.craigmandigital.com/education/pcm_vs_dsd.aspx

各フォーマットの矩形波応答画像がこちらにあります。実測データではDSDはPCMの192kHzより少し立ち上がりが早いです。時間軸に敏感な方は他の問題があってもDSDが良いと感じるかもしれません。DSDは線がぼやけていますがこれは高周波ノイズです。

追記:もっとはっきりしたDSDの優位性を実際のデータで見つけました。下のリンク先にDSDとPCMの矩形波比較がありますが、こちらのDSD矩形波応答はNOSに近い非常に素早いレスポンスを見せています。これを見る限りDSDの最大の優位性は時間軸応答の早さにありそうです。PCMから変換したデータや途中処理、フィルタの掛け方次第ではこのようにはならず、ひとつ上のリンク先の画像のようなPCMと大差ない応答になると思われます。(というわけで全体的に記事の文言は修正しました)

http://www.computeraudiophile.com/f8-general-forum/world%92s-first-valid-comparison-pulse-code-modulation-versus-direct-stream-digital-18636-print/index11.html

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別のところからの引用ですがインパルスで見るとこのような違いです。DXDは24bit 352.8kHzです。ここまで来るとだいぶDSDに近いです。

DSDとPCMの音の違いの理由

厳密に比較していないので仮説の域はでませんが、フォーマットと再生による音の違いの理由について次のように考えています。

  • DSD方式そのものに含まれているノイズシェーピングによる高周波ノイズの影響
  • DSDとPCMでDAC内部で適用されるデジタルフィルターの特性による差
  • DSDネイティブデータの場合は時間軸の応答がNOS並に早い
  • DSDとPCMでDAC内部の演算の重さによる消費電流と電源ノイズの影響。DAC内部の演算負荷が軽いほど高音質=シンプルなDSDが高音質
  • ジッターによる劣化の影響。PCMでのJ-testによる信号劣化要因はDSDでは存在しない=ジッター対策していないDACではDSDが高音質

追記:DSDの最大の優位性は3番目だと思います。一切PCMを経由せず適切にフィルタ処理されたDSDデータの場合はDXDでも再現できなかった領域の時間軸応答が可能です。これをPCMに変換する場合は相当ハイサンプリングのデータ(理想は384k以上?)にしないと時間軸の優位性はなくなってしまいそうです。もちろん元々CD音源のデータをDSDにした場合は時間軸の情報は既に失われているためこのような優位性は発生しません。時間軸情報は失われたままDSDの高周波ノイズが加わるだけ(リンク先参照)です。

下の2つは対策が可能です。しっかり対策を施すとPCMとDSDの音質的な差は大差なくなるように思いました。もちろん音色差はあります。これはDSDとPCMは同じ音という意味ではなく、フォーマットによる音質面=クオリティに大差がなくなるということです。どちらも優位な部分があり、同様に異なる欠点もあるからです。どちらが絶対的に優位という話ではないということだと理解しています。

ちなみに個人的にはDSD2.8Mhzはノイズも多く癖が強いのでこれならPCMのほうが好みです。もしDSDに行くなら5.6MhzからはDSDの良さが出てくる気がします。自宅じゃないのですが11.2MhzのDSDの音もPCMや5.6MHzと聴き比べたことがありますが、むしろDSDのノイズによる個性は減退してある種PCMに近い音質に聞こえました。アタックの強い音源じゃなかったので時間軸の優位性を感じなかったのもありますが、私自身は時間軸にすごく厳しい方ではないからかもしれません。このあたりに厳しい方はマルチウェイスピーカの音はユニットがバラバラに聞こえるらしいですが、このあたり違和感なく聞くことが出来ますので。というわけでタイムドメイン派じゃないならばPCMかDSDかはそんなに拘るべきところじゃないのではないかと思いました。どちらがどうというより素直に音源の持つポテンシャルを楽しむのが良さそうです。例えば持ってる音源をDSDに全部変換!とかはオススメできません。元々PCMなら時間軸の情報が増えるわけではないので。

あとDACの種類によってはせっかくDSDで入力しても内部でPCMに変換されているかもしれないのでそういう場合はいくら外でDSDにこだわっても全然意味がありません。意外とこの辺突っ込んでる人あまりいないのが気になります。上の矩形波応答比較もサイトによってDSDの応答が違っていたりするのでちゃんとDSDの真価が発揮できているかどうかは要注意だと思います。

例えばES9018もDSDネイティブじゃないって話(Prometheus did not include DSD inputs because “ES9018 is not a native DSD decoder”.)もあります。ES9018はDSDでもボリュームが効くのですが実は内部でPCMに変換してる可能性は高いです。なぜならES9018のDSDデジタルボリュームはCS4398のようなDSD特有の残留ノイズはありませんでした。なので実はES9018でDSDネイティブってのはカタログでよく見かけるんですがICの入力までDSDネイティブって意味が正しいのかもしれません。まぁES9018はPCMでも1.5Mまで入力できるので、内部で1.5MHz以上で処理しているならDSDの時間軸に影響ない精度だとは思いますが。>情報を見つけたので下に追記しました

というわけで結論としてはDSDがPCMより優れているというのは時間軸だということになりそうです。SNはPCMより不利なのでDSDにも問題はあるということですね。音質面にこだわる場合はデジタルのフォーマットよりまずはアナログ部分の対策のほうがよっぽど大事なのは今までの経験上では間違いありません。

ES9018のDSD信号処理の追加情報(追記2015/01/25)

こちらに詳細な情報がありました。コアの部分だけ引用します。英語ですが詳細な流れ等は本家をチェックしてみてください。

http://www.computeraudiophile.com/f6-dac-digital-analog-conversion/ess-sabre-and-direct-stream-digital-volume-control-19955/index3.html

“Inside the Sabre DAC chip the DSD stream is processed at the DSD rate, but it is extending to have a 32 bit representation so that it can be scaled. This is NOT the same as converting to PCM as that implies decimation filtering. Inside the Sabre, all DSD data is processed in a PCM domain, however its PCM at 64*44.1kHz = 2.8224MHz. This data is then applied to the modulator.”

Sabre uses internal 32-bit data pipeline and DSD is also expanded to this same internal format, without sampling rate conversion. For PCM inputs it’s the rate after the oversampling filter, and for DSD it is the native DSD rate. But it is always 32-bit. It then goes to their HyperStream modulator to output 6 bits (not parallel, but in time).

要するにDSDレートのPCMに変換してボリューム処理などをやっているようです。デシメーションでレートを落としているわけではなくオリジナルの情報量は維持されているので、これならばデータ上の劣化は全くないでしょう。このようなレートのデータは一般の音源では取り扱われないので汎用のPCMでもDSDでもない独自フォーマットに変換しているという言い方も出来そうです。そしてこの処理にはASRCは絡んでいないのでES9018K2M等でも同等の処理だと思われます。上のCS4398と比較して似たような処理に見えますがCS4398よりES9018のほうがDSDボリュームのSN劣化が少ないのは後段の内部処理がより高度になっているためかもしれません。

その他のDSD関連情報

ここのSerierilさんの記事が充実していたので貼っておきます。

http://community.phileweb.com/mypage/entry/2819/20150202/46084/

 

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