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ArcadiaDA(Dual ES9018)の測定と音質


今回記事にするのは表題のDACです。友人からこちら借りまして中身をいじってもいいというお話だったので色々と中身の方を調べてみました。ちなみに公式サイトはこちらです。

http://www.arcadiada.com/

まずこのDACですがES9018デュアル搭載機としては比較的購入しやすい価格ということでユーザーの方も多いんじゃないかと思います。実は標準で問題のある部分を発見しましたので、簡単な対策方法と原因についてまとめておきたいと思います。

まずは見た目から

大きいです! 自作機と比べるとかなりのサイズ差があります。シングル版はもう少し小さいみたいですがこちらはしっかりと物量が詰まっている感じがします。

ですが実際にモノを見て、もともと製作者の方のBlogの写真で見ていた印象よりもずっと大きい感じがしました。といってもオーディオではこれくらいが標準サイズかもしれませんが。

フロントもボディも厚みのあるアルミ素材を使っていて重さもしっかりしています。

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とりあえず試聴してみる

USBとSPDIFで音出しをしてみます。音質的にパッと感じたのは凄くアナログ的な温かみのある質感ということです。これはいい意味でも悪い意味ても当てはまるのですが、良い部分を言えば、前に音が出てくる、一音一音の音像が大きい、量感があって太い感じ。こういう印象です。そして嫌な音はしないです。全体的に物量からの安定感というのも感じますね。

このあたりは自作機のES9018の音質とは全然違います。自作のES9018はずっとクールでもっと明晰でしかもふわっとした感じです。ArcadiaDAは自作機でいえばWM8741に近い音だと思います。しかし自作のWM8741よりも全体的に物量があるため骨格はもっとしっかりした音質という印象です。

反面弱いなと感じたのは空間の描写、消え際の詳細さ、このような繊細な部分はちょっと曖昧で表現できていない感じがします。なのでゆったりと聞くには凄く良いと思うのですが、解析的にすべてが出てくる方向性ではありません。決して解像度、分解能に優れるタイプではないです。

このへんは音楽に何を求めるか次第でしょうか。ArcadiaDAにトータルで感じた強い音質傾向はなく、制作側の意図した出したい音がこれで出ているかどうかはハッキリとはわかりません。突き抜けた強い主張や個性まではいかずに制作サイドの主張はさりげない範囲にとどめています。ちょっと覗かせる表情はあえていうならアナログ的な綺麗さと安定感を現代の最新の音質と融合させようとしたような方向性でしょうか。

測定してみます

USB入力とSPDIF入力で試してみましたがほとんど測定特性が同じなので代表的な測定データを掲載します。

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1kHz THD+N

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J-test ジッターのテスト

ジッターのテストであるJ-testのほうは電源の50Hzスプリアスが盛大に出ています。これはDAC側とアナログ側の電源のどちらかに残留リップルがあることが原因です。-110dBまで抑圧できていますがそれ以下の領域に成分が残っているのでしょう。これは電源設計の問題です。ノイズフロアも高めなのでクロックか電源のホワイトノイズが多いのだと思います。

それ以上に問題なのはTHDで、こちらの測定値はあまり良くないみたいです。アナログ的でWM8741に近いっていうのはこのあたりの特性の問題があったからかもしれません。ノイズフロアが高くて歪率は現代DACとしてはかなり悪いです。本来特性ぶっちぎりのES9018にしてはちょっと悪すぎますね。

こちらで特性を測定してみた限り、ES9018は+NなしのTHDだけなら0.00005%(-125dB)くらい出ます。まるでオペアンプ並の歪率です。このあたりは測定装置の誤差もあると思われますので正確な値かは不明ですが、一応こちらの環境に限定するならばES9018は特性においてとんでもない実力があるのは間違いありません。なのでこの状態のままではちょっともったいない感じがします。

予想ではこれは何か設計に原因があるように思います。ということで改造の許可ももらっていますし中身を開けて調べてみたいと思います。

ケースを開けます

最初オシロで各所のノイズをしらべていたのですが100Mhzの残留ノイズが多いもののそんなに特性に影響するようなレベルではなかったので、簡単な対策だけ済ませて他をチェックしました。正直今回はたまたまですが、原因は比較的すぐに分かりました。

問題の箇所はここですね。画像の4つのオペアンプのところです。パターンの雰囲気と動作を観測した限り、上側が差動合成で下側がIV変換です。ここにLME49990が使われていますが、これはES9018デュアルをIVコンバートするにはちょっと負荷として重すぎる可能性が高いです。

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このあたりは完全に経験則なのですが、PCM1792等も出力される電流量が多いのでデュアルになると一部のオペアンプでは負荷をドライブできずに歪率の悪化をまねきます。シングルではあまり問題になることはありませんが。

このあたりの情報は↓にもありますね。ES9018は電流量が大きいためデュアルなどで使うときはオペアンプの電流定格に注意という話です。デフォルトでついていたLME49990の定格電流は27mAなのでデュアル構成では足りない可能性が高いです。

http://easyaudiokit.hobby-web.net/bekkan/ES9018/ES9018-3.html

というわけで実際にこちらの写真の下側2つのオペアンプを手持ちのMUSES8920に交換してみると、予想通り歪率は大幅に改善しました。MUSES8920は100mAまで行けるらしいのでオペアンプとしてはかなりの余裕があります。

オペアンプを交換して再測定

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1kHz THD+N

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J-test ジッターのテスト

THD、歪率の方は劇的な改善です。THD+Nはノイズフロアの影響で0.002%にとどまっていますが最初は0.13%ですから素晴らしく改善しています。でもノイズフロア自体は定格電流とは全く要因が別なので特に改善していませんね。これ以上の改善はオリジナルから別物になる覚悟での大幅な改造が必要です。

それと意図していなかったのですがJ-testの50Hzスプリアスもちょっと量が減りました。歪率がここにも影響していたのかもしれません。ですがこれ以上の改良は電源とクロックに手を入れないとダメでしょう。

音質はどのように変化したのか

露骨にアナログっぽい雰囲気は減って音像が細くなり、細部の音が良く見えるようになったと思いました。より現代的な音質にシフトです。でも好みがあると思うので元々の良さがなくなったと感じる方もいるかもしれません。経験的に特性による音質変化はあまり大きくないのですが流石にここまでの特性差があると結構違います。しかし基本的なバランスや特徴はそれほど変わっていません。がっしりして音が前に出てくる感じは同じです。

もっと音を変えるためには後は電源回路の変更、部品の交換、パターン設計の問題になってくると思います。ちなみに個人的にはこの基板のパターン設計はすごく綺麗で好きです。このつぶつぶのパターンはこちらも影響を受けて最近は一部で使っています。LinnのAkurate DS、Intelの一部のマザーボード等でもこのような設計を見かけますが意味合いはよく分かっていません。多分高周波の挙動に影響があるんじゃないかと思っています。

というわけで、オペアンプの交換によって特性は向上、より詳細な音となり現代的な雰囲気も出てくるので、もしLME49990搭載モデルを選択してちょっと大雑把な描写だなとかもっと情報量がほしいとか感じている方はオペアンプの交換が良い対策かもしれません。MUSES8920はLME49990と比べて大幅に音質が劣るオペアンプではないし、秋月等で手軽に入手が可能なのも良い点です。

ただし知識が全くない方がやって壊れても当方は責任も取れないしもちろん保証しかねますので100%自己責任にてお願いします。一応参考写真をアップしておきますので、もしチャレンジする方は慎重にお願い致します。特に向きに注意してください。逆差しすると壊れます。

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