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DDFAとUcDの特性比較、PMA-50レビュー(再アップ)

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どうも以前に作成したページが検索から引っかからないようになってしまっているようなので新しいページに同じ内容を再アップしてどうなるのか試してみます。大手さまからの圧力でしょうか?

以前のページはこちら

表題の通りです。中古のPMA-50が安くなってきたので好奇心のままに入手してみました。気になるのは話題のDDFAがどれくらい優秀なのかというところ。1bitのころからD級アンプをずっと追いかけてきた自分としてはここが非常に気になるところですので、自前による測定特性、同等機種の測定例、それに音質レビューも少し加えて国内ではなかなかみかけないアプローチでがっつり比較してみたいと思います。主に現在最高峰と思われるDDFA方式と、UcD方式の比較ページになります。

実は先日もDDFA搭載のPMA-50について国内の他サイトより転載した記事がありました。そこにもレビューは含まれていましたがあれは国産モデルとの比較が中心でした。その中ではDDFAがトップの音質という内容でしたが、果たしてUcD方式のアンプと比較した場合はどうでしょうか。非常に気になりますね。

参考までに以前転載した記事リンクはこちらです。

[転載]デジタルアンプ特性比較と試聴テスト

DDFA測定特性

CSR DDFA diagram

DDFAの測定での特徴はUcdと比べてスイッチング周波数が高いこと(800kHz以上)、20kHz以上のところに盛り上がる残留ノイズです。1kHzのTHDはかなり優秀ですが18kHz+20kHzのIMDはUcdと比較して一番悪い結果です。デジタルによるNFBとのことですがループゲインは低域では高いものの、音声帯域内の高域へ行くほどNFBが不十分であることを示す測定結果です。

フルデジタルによるNFB方式ではA/Dそして演算のレイテンシが問題になるはずなので高周波領域(20kHz)に行くほど十分なNFBをかける時間的余裕がなくなるのだと思われます。

そして20kHzから先に派手に盛り上がっている残留ノイズの原因は、おそらく盛り上がる周波数の位置から考えるとデルタシグマのノイズシェーピングの残留成分ではないでしょうか?普通D級アンプのスイッチング周波数はこんなに幅広く振動しませんのでD級アンプ側依存のノイズではないと思います。DDFAはフルデジタル方式なのでアンプがDACも兼ねているわけですが、それがデルタシグマ方式のDACであれば確かにこのようなノイズ成分は原理上必ず発生します。

もしこのノイズがDDFA方式上簡単に取ることが出来ないとしたら実はフルデジタルというのはいい部分ばかりではないのかもしれません。後述するUcd方式ではこのようなノイズはないからです。ただしDSDによる同様の残留ノイズ等も聴感で好まれる場合もありますので、実はこの残留ノイズも音質面では良い空気感を演出する可能性はありえます。測定で悪いから全てダメってわけじゃないのがオーディオの面白いところです。

pma50_thd1k

1kHz(100Hz-1Mhz)

pma50_imd18+20k

18k+20kHz(100Hz-1Mhz)

UcD180測定特性

Micro-1

アナログフィードバック、アナログスイッチングのUcD方式のアンプモジュールを使った測定です。国内ではデジアンとひとくくりになっていますが、実はUcdはデジタルの部分はなく全てアナログ回路です。DDFAと比較するととてもシンプルなブロック図です。これで同じような特性が出るならこちらのほうがずっと素直でムダのない構成のように見えますが、後発のDDFAはUCDのアナログフィードバック特許があるため、特許を回避しながら同等の特性を出すためにわざわざデジタル領域でフィルタの外側からのNFB処理をやらざるを得なかったのかもしれません。

測定の基準信号生成DACは自作品を使っています。UCD180では1kHzのTHDは一番悪い(とはいえ0.005%程度)ですが18k+20kHzのIMDはDDFAより良い結果です。そしてDACがセパレートなのでDAC由来の残留ノイズ成分は殆どなくスイッチング周波数までほぼ平坦なノイズ分布です。

このようにDACが別になっていることはオーディオ的に部品が増えて無駄が多いという側面もありますが、DAC側のLPFできっちりノイズを取ることが出来るため、DDFAに見られるような可聴帯域外の残留ノイズを綺麗になくすことが出来るのはむしろフルデジタルよりも有利な部分なのかもしれません。

ucd180_thd1k

1kHz(100Hz-1Mhz)

ucd180_imd18+20k

18k+20kHz(100Hz-1Mhz)

NC400測定特性

ucd_4

最新のNCoreアンプモジュールNC400の測定結果です。NCoreの原理ブロック図は公開されていないのでここでは参考用にUcdにアクティブポールを追加した図を引用しました。Ncoreではアクティブポールの追加を技術資料で示されていますが、この上の図はNCoreの全ての技術を表すブロック図ではないことを断っておきます。

NC400の測定データは非常に優秀でDDFAと同等のTHD(恐らく手持ち測定器の限界付近)、そしてIMDはこの三者のなかで最も優秀という結果です。UCDと比べNFBゲインを全体的に高めているので可聴帯域の限界の20k付近でも十分なNFBを稼げていると思われます。一点気になるのがUcDと比較して20kHz以上のノイズ成分が若干多い点ですがこれはアンプの実装やケーブルの取り回しの影響の差かもしれません。いずれにせよDDFAと比べれば高域の残留ノイズは少なく僅かな残留ノイズ成分だといえそうです。

nc400_thd1k

1kHz(100Hz-1Mhz)

nc400_imd18+20k

18k+20kHz(100Hz-1Mhz)

測定結果のまとめ

自前測定によるTHD、IMDの比較から言えることはNcoreが最も優秀でDDFAとUcDは一長一短という結果なのですが、これだけで終わりではありません。海外のもっと高額な測定機によるDDFA搭載アンプの測定結果も見てみたいと思います。

NAD M2 Direct Digital integrated amplifier (DDFA)

http://www.stereophile.com/content/nad-m2-direct-digital-integrated-amplifier-measurements

PMA-50とは別機種なのですが、ここに乗っている測定データも合わせたDDFAの測定上の要点をまとめてみます。

  • DDFAはスピーカのインピーダンスカーブの影響を受けて周波数特性が変わる(UCDは変わらない)
  • THDが高周波で悪化する傾向があり、20kHz付近のIMDが悪いのはPMA-50と共通している
  • 10kHz以下のS/Nが優秀で-140dBを下回っている(自宅ではスイッチングキャリア周波数の影響で測定不可)
  • DDFAは10kHz以内のNFB量に優れているが高域に行くに従って急激にNFB量が不足する

試聴結果

アンプ部はモダンショートのPerformance 6を、ヘッドフォン部はAudeze LCD-2を使って試聴を行いました。

まずスピーカでの試聴ですが、いくつかネットのほか記事でも見られるようにPMA-50の最大の欠点は低音部だと思いました。PMA-50は 価格帯からも明らかなように真の物量を投入したアンプではありません。これはどういうことかというと元々のスイッチング電源ユニットの電流供給量が低いのではないかとい う予想です。

しかしそこはなんとかそれらしい物量感を感じさせるために音作りをしているように感じました。その方法はおそらくコンデンサを増やして瞬間的な電力供給を稼いでいるのではないかと中身を見て思っています。1800uF、35Vのコンデンサが出力FETの近くにありますので。ただし元々瞬間供給電流が不足している傾向はコンデンサをいくら増量しても変わりません。その結果として無理のある低音になります。このような対策では逆に個性的な音質になりやすいと経験的に感じています。おそらくギリギリのコストダウンのなかでできることをやったのでしょう。

これによる実際の音の傾向としては低音に量感があって柔らかい感じになりますが、悪く言えばブヨブヨしていて低音が膨らみ他の帯域をマスクしているように聞こえます。結果としてUcdなどより分解能が悪くクリアで抜けきっている音質には聞こえませんでした。しかしDDFAがダメというよりPMA-50が本来のDDFAの素性を全然出し切っていないのではないかと思いました。本当はもっと分離のいい音なんじゃないかと思わせるだけの素性の良さは感じるのです。

スペックだけはPMA-50のダンピングファクターは2000とのことですが、実際の音質はそのようなスペックから想像するハイスピードで切れのある感じとはだいぶ異なります。いくらアンプ自身の出力インピーダンスが低くても肝心の電流供給が不足していては実際の制動力は不足する可能性があります。この辺りの解説はオーディオデザイン社のblogにあったとおもいます。ただし低音の比較はNcore等と比較した場合の話なので国産の古いデジタルアンプ(ダンピングファクター25等の無帰還タイプ)との比較ではPMA-50のほうがまだハイスピードに聞こえる可能性もありますが。

ほかに特性面で気になった残留ノイズと高域のTHD悪化ですが、これは聴感上は意外と気になりませんでした。ICE-Powerモジュールのようなパサパサした感じでもないし、古い国産デジタルアンプのようなやたらとキラキラしたノイズっぽい音色でもなく、意外と素直な高音です。価格から考えると悪く無いというかむしろトータル5万円にしては素晴らしい仕上がりで、もし物量を十分に投入したら現状の欠点も無くなりそうで非常に勿体無い素材です。

最後にヘッドフォンアンプ部ですがこちらは全然ダメだと思います。何故かヘッドフォンアンプ狙いで購入している人もいるようですが、全体的に濁っていて空間の消え際で音が消えていますし、パワーもそんなにあるように感じませんでした。PMA-50はスピーカを鳴らすアンプとしてはコストパフォーマンスが非常に高いモデルだと思いますがヘッドフォンアンプとしては全くオススメは出来そうにありません。これなら適当にアンプ部を実装した自作品のほうがずっとマシです。

購入したPMA-50の今後は

どうしようもない音質だったらすぐに売り払ってしまおうと思ったのですが、悪くなかったので色々と弄ってみたいです。まだ手を付けていないのであくまで予定なのですが、改造してもっと大容量の電源をつないだらどうなるのか実験してみたいです。予想では低音の欠点はなくなり、全体の見通しも良くなってかなりクオリティが向上しそうなのですが、もしこれをやるなら全部分解が必要です。時間的な余裕ができたらぜひやってみたいのですが、とりあえず構想だけ書いておきます。

手持ちの大電流電源は電圧が+-40V以上なのでまずはアンプ基板側の耐圧をアップしないといけません。そのためにはMOSFETやコンデンサの交換が必要なのですが、実際にやるとなるとなかなか敷居が高い感じです。なにしろ周辺回路図もなければDDFAのIC自体の耐圧とかピン配置とかデータシートもないのでカンで調べるしかありません。これが多分一番大変です。主要部品だけ交換していきなり電源をいれるのもスリルがあっていいのですが、それですぐ壊れたら取り返しがつかないし、ちょっと後悔しそうな感じもします。

とりあえず一応中身をひと通り見た限りではデフォルトの電源電圧は+-26V、出力FETがZXMP7A17とZXMN7A11、クラスDアンプとしては珍しくP-MOSを使っています。これは出力回路の簡略化とコストダウンのためでしょうかね?普通はそれ用の回路を用意してN-MOSを2つ並べることが多いのですが、若干部品点数が増えるのでそれを嫌ったのかもしれません。普通はN-MOSのほうが優れた特性のものが多く入手性も良いのでわざわざP-MOSは使わないところです。

このZXMP7A17のスペックを見ると耐圧70V(+-35V)で、コンデンサの耐圧も35V、だから電源電圧も最大35Vまでというわけです。単純に考えればこれらを耐圧の高いものに交換すれば手っ取り早く電源電圧も上げられるはずですが上記の通り他の部品の耐圧が心配です。

このFETはオン抵抗が130mとやや大きく、使用時の発熱が酷いと言われている理由はこのオン抵抗の大きさが原因でしょう。これをもっとオン抵抗が低いFETに交換すれば発熱の問題は大きく改善すると思われますが、今度はP-MOSで特性の良いものが少ないのでなかなか難しいです。クラスDアンプで重要なのはQgの小ささとスイッチング速度ですが、このZXMP7A17はかなりスイッチングが早いほうです。ひたすら探してみたのですがこれ以上に耐圧が高く他のスペックもすべて優れている代替品はほとんどなさそうな感じです。ひとつだけ良さそうなP-MOSはこれしかありませんでした。

というわけで構想はしたもののなかなか大変な作業になるので実際に手を入れるかどうかは未定です。もし手を入れたらまた結果を報告します。

DDFAにまつわるその他の資料

日本でも特許が出願されていました。もともとはZetex DDFAだったのでこれで間違いないかと思います。

http://astamuse.com/ja/published/JP/No/2006174421

http://astamuse.com/ja/granted/JP/No/4708159

特許権者 ゼテックス セミコンダクターズ ピーエルシー

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海外ブランドNAD D7050の中身です。これもDDFA搭載の製品です。なかなか中身の画像が見つからなかったのでこちらにバックアップとして保存しておきたいと思います。PMA-50とはだいぶ構成が異なります。もっと大きい写真がないと設計の良し悪しは全く判別できません。NADのこのシリーズも縦置きで使えるのですが液晶の文字も一緒に縦になります。サイズ感といいデザインのコンセプトがPMA-50とそっくりです。むしろこのNADの製品を参考にして作ったのがPMA-50ではないかと思ってしまいましたがどうなんでしょうね。