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AK4497のデータシートを見て思ったこと


2016/11/29追記

あとで書きますと書いておきながら遅くなりましたが、色々と書こうと思ってそのままになっていた内容を追加します。まずAK4497で追加されたもっとも重要な機能ってこれです。

HLOAD: Heavy Load Mode Enable
0: Heavy Load Mode Disable (default)
1: Heavy Load Mode Enable

既に検索したらこの項目について解説しているサイトもあったのですがこちらでも追記しておきます。このモードは出力の電流量を増やす機能です。この機能が個人的にかなり重要だと思っていた要素です。むしろEnableにしないとAK4497を使った意味がないと言っても良いです。

この機能の何が良いのかというと、後段の抵抗の抵抗値(フィルタ等)を減らすことが出来ることです。抵抗を減らすこと=残留ノイズを減らすことになりますのでDACの性能向上と合わせてSNの限界を向上させることが可能です。AK4495までの世代ではこの負荷駆動能力の関係で抵抗値は最低でも1.5kくらいまでだったのですが、AK4497では200以下にすることが出来るようになりました。

ak4495

ak4497

おそらくDAC側の性能向上したことで、この抵抗値の影響がSN性能向上の枷になることに気づいて仕様を変更になったのだと思われます。これは旧世代のDAC素子との最大の違いでしょう。

偶然にもESSもES9038ではパラレル数の増大に力を入れてきていますので、今世代のトレンドは電流量の大幅増加ということになりそうです。おそらく現代のハイエンドDACはもう電流量を増やすくらいしか基本スペックを向上させることが出来ないくらい物理的な限界に近くなってきているということだと思います。

実はこの部分の抵抗値の重要性はBBが最も早く気づいて対策していました。リファレンス回路を比較するとPCM1795のデータシートで、当時にしてすでに低い抵抗値が推奨されています。他のメーカーのハイエンドDACが軒並み数kの抵抗を使っている中で数百程度の抵抗を指定していることはBBには先見の明があったということだと思います。

実際に当方で作成しているDACもすべてこの抵抗値はリファレンスより低めの数字で設計しています。この部分に気づいて設計しているかどうかでも最終的な音質に影響があると思っています。なのでAK4497を使っているにも関わらずこの部分の抵抗値を以前と同じままの設計というのは、AK4497の仕様をまったく活かしていない非常にもったいない設計と言えるでしょう。

ではAK4497の音質は

結論から言うと、個人的にはAK4497のHeavy Load Modeの音は期待はずれでした。もちろん測定上は抵抗値を減らしてもTHDは劣化せず、SN測定値も以前より向上しています。なので確実にデータは向上しているのは間違いありません。残念だったのはデータではなく音です。

抵抗値を減らすことでもっと音が良くなるかと思っていたのですが予想よりも向上幅が低く、価格性能比は悪いと思います。もちろんAK4495では出せないような分離とかクオリティ面の向上による優位性がAK4497にはありますので相応の価値はあるのですが…。なんというのか雰囲気がAK4490以前のハイエンドDACのよくある音色に近い感じ、なんとなく神経質で余裕のない音になってしまったなと思いました。

理由については今のところICのサイズの割に電流量が多すぎることが原因なのでは?と考えています。電流が増えるということはそれだけ電圧変動が起きやすいということです。Chordのエンジニアもどこかで同様の発言をしていましたが、たとえDAVEよりもFPGAのスペックをアップしてもDAVEの音質を超えられないといっていましたが、その理由に消費電流の大幅アップによる電圧変動があるそうです。ここから考えるとDACの消費電流量には最適なバランスが存在するということになりそうです。

おそらくAK4497レベルの電流を問題なく処理するにはパターンをよほど最適化するか、電源用のラインを追加で用意するとか、何らかの対策をしないといけない気がします。それ以前にパッケージ内の電圧変動が原因だとしたら基板設計サイドではどうにも対策が出来ないので、AK4497はパッケージサイズと内部配線の限界が原因でこのような音になっているかもしれません。それだとこちらで出来るような解決方法は何もありません。

まだ試してはいませんが、おそらくESSの最新チップも大幅に電流量を増やしていますから、同様の問題を抱えているのではないかと思っています。むしろ材料やプロセスの面で対策しているAKMでさえこれなら、この部分に配慮をしていないESSがより優れた結果を出している可能性は低いのではないかと現時点では考えます。これは新世代のハイエンドDACが物理的限界に迫っているからこそ現れた、オーディオならではの非常に難しい問題だと思います。

(追記終わり、以下は2016/1月当時の内容です。)

これを見つけたのは1/5なのですが、フライングでいろいろな情報がわかりましたのでこちらに気になった部分をまとめたいとおもいます。速報なのであとで色々追記すると思います。

http://www.akm.com/akm/jp/file/datasheet/AK4497EQ.pdf

  1. DSD512への対応とDSDのフィルタを選べるようになりました。
    2.8MHz, 5.6MHz, 11.2MHz, 22.4MHz DSD入力対応
    – Filter1 (fc=39kHz, 2.8MHz mode), Filter2 (fc=76kHz, 2.8MHz mode)
  2. 新しいデジタルフィルタが追加されました。
    低分散ショートディレイフィルタ
  3. 電源が一系統増えて、1.8Vが必要になりました。またアナログではAK4495までの7.2V対応がなくなってまた5V上限に戻っています。しかしレジスタ設定で7.2V時と同等の出力振幅を出すことができるようになったみたいです。
    電源電圧:TVDD=AVDD=3.3 ~ 3.6V(内蔵LDO使用時),
    TVDD=AVDD=1.7 ~ 3.6V, DVDD=1.7 ~ 1.98V(外部供給時) ,
    VDDL/R=4.75 ~ 5.25V
  4. パッケージが変更になって64pinになりました。
  5. スペックが大分向上しています。
    THD+N: -116dB DR, S/N: 128dB ( Mono mode時, 131dB)

パッケージと電源系統の追加も含めるとかなり大規模な構成となっています。ここまで大幅な設計変更は旭化成の本気を感じます。AK4490までのノウハウを更に高めて欠点をなくした、まさに集大成というところでしょうか。

本家に色々と情報が追加になったみたいです。

http://www.akm.com/akm/jp/product/datasheet1/?partno=AK4497EQ

http://www.akm.com/akm/jp/product/datasheet1/?partno=AK4497EQ&link_id=link853

もっと重要な変更点

個人的には上記のスペック面での変更より、もっと重要な素晴らしい変更があったと感じています。オーディオ的にはむしろこちらの変更のほうが大事だと思いました。データシートでは目立つ場所にそれが書かれていないのが不思議なくらいです。

その変更点とは何なのか詳しくは後で書きますが、これにより電圧出力タイプのDACでAK4497が抜きん出る存在になるのは間違いないと思います。むしろ電流出力タイプのDACであっても、いままでこの部分に配慮したDACはデータシートを見る限りPCM179Xシリーズだけでした。それ以外のDACでは全く考慮されていないか、適当な扱いとなっています。

ですので今までの大半のDACのリファレンスではベストからは程遠い状況だったのが、AK4497はついにその根本の部分に手を入れ、この問題について大幅な改良を加えてきました。それはデータシートからも明らかでした。これによりオーディオ的にはAK4497は確実に進化することが期待されます。

自分の作品ではWM8741の頃からこの部分は配慮していましたが、AK4495まではチップスペックの関係でかなり制約が厳しかったのです。ということではやくAK4497は試してみたいです!

詳しくは後で書きます。

1/7追記 とおもったらESSが同時にとんでもないDACを発表してきましたね。AKMからしたらやっとES9018をスペックでも…と思っていたら一気にまた突き放された感じでしょうか。こちらはデータシートが入手不能なので詳細はわかりませんが、従来のハイエンド路線をさらに推し進めた感じでしょうね。こちらのクオリティも非常に気になります。2016年はDAC飛躍の年で忙しくなりそうです…。

http://www.esstech.com/index.php/en/products/sabre-digital-analog-converters/sabre-pro-dacs/

スペックだけならAK4497よりES9038PROはずっと凄いですが、あとは音質ですね。AV watchのプレスだと数字が間違っていますが、こちらによるとES9038PROはTHD+Nが-122dBでダイナミックレンジが140dBとのことです。ESSは以前のスペックも本当なのかちょっと怪しいところがあったのですが、今回も数字だけだとどうやって測定しているのかもわからないくらいとんでもないです!

ほかにもあった事前リーク

DIYオーディオの掲示板にもAK4497の事前情報がありましたね。

http://www.diyaudio.com/forums/equipment-tools/277808-diy-audio-analyzer-ak5397-ak5394a-ak4490-35.html

I met with AKM today. They say the about to be released AK4497 should get to -120 dB THD+N, however the AP2722 even with tweaks from AP can’t measure that low. They are awaiting an APX555 that may be able to measure its performance. All the harmonics are way down on both chips and its really limited by noise. Unfortunately the footprint is different (needed more pins for ground and references) so new PCB’s. The plus (a really silly one) is support for 8X DSD.

データシートを見るとこのリーク通りだったということになります。そして-120dBのTHD+Nを測るにはAP2722では無理で最新のAPX555が必要みたいです。これはChordのDaveでも使われていた測定だったように思います。

http://www.head-fi.org/t/766517/chord-electronics-dave/135

But around October 2014 AP launched the APX555, and this had a clever system to enable more accurate measurements of distortion and noise floor. What this instrument does is the employ two ADC’s per channel, and an automatic notch filter, so one ADC uses notched out fundamental, and another ADC for the fundamental. The instrument then stitches the two plots together in the digital domain.

APX555は2つのADCを積んで片方がノッチフィルタで1kなどのテストトーンをキャンセルしノイズフロアを測定、もう一方がテストトーンと高調波を捉えて、それをデジタル合成いるという雰囲気です。なんとなくで読んでいるので詳しくは上の掲示板を見てください。