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Nazo-otokoさんのオーディオ多次元空間

2018年9月上旬、念願のNazo-otoko邸に訪問いたしました。オーディオ界隈では間違いなく国内有数のシステムをもつ方です。御本人のBlogとダブルウーファーズのHPを紹介しておきます。Nazo-otokoさんはダブルウーファーズ会長とも呼ばれていますね。

https://blogs.yahoo.co.jp/nazo_otoko

http://www.double-woofers.com/

去年ふとしたことで実はかなりの近所にお住まいなことを知りました。なにしろ普段買い物に行くスーパーのちょっと裏にあるようなイメージです。普通に歩いていけるくらいの場所なのです。しかし相手が相手ですのでなかなか声はかけられずでした。以前にうちオフでIMAIさんがこちらに来られたときに「近所にすごい人がいるんです」って言ったら何とNazo-otokoさんとは何度か会ったことがあるとのこと!いつか行きたいですと伝えておいたのですが、その念願がかなったのが今回の訪問というわけです。

そしてIMAIさんの提案で若手をTwitter上で募ってメンバーを増やして同行となり、当日はIMAIさんTaxsisさんまささんの3人と向かうことになりました。いつもなら音質のことをすぐ書くのですが今回は色々なことがありましたので音質だけではなく前置きも含めて色々書きたいと思います。

自宅の入り口

流石にプライベートに近い写真はアップできませんが自宅の前の写真は御本人のBlogにも掲載がありますので、同等レベルなら問題ないと判断して入口写真のアップです。

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写真で見るとなにかの施設のように見えますがこれが家です。凄いですね。富豪お宅訪問が好きな自分でもここまでになると盛り上がるというより気持ちが引き締まります!

IMAIさんがピンポンして巨大な玄関ドアが開き恐る恐る中に入りますと、とても広い玄関が広がっていました。奥の大きなガラスごしに中庭が見えます。広さとしては靴が20人くらいは余裕で並べられそうな玄関です。大きい旅館じゃなくて落ち着いた平屋タイプの高級旅館入り口の雰囲気といったら伝わりますでしょうか。

最初にオーディオルームへ

入ってからすぐにオーディオルームへ案内されたのですが実はここからすぐに音出しではありませんでした。音が出たのはここから1時間後です。

まず全員で中央の椅子に座りました。そこで現在のシステムの詳細な資料とNazo-otokoさん宅のインタビューが乗っている雑誌のコピーを頂きました。コピーと言ってもかなり分厚い資料です。

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そして次に一人ずつ自己紹介です。ここで結構細かいところまで聞かれたりします。自分は別に隠すことはないのであれこれ今までの経緯とか色々お話しました。最初の印象はとてもお話し好きな方という印象でした。

今日のメンバーの中でもTaxsisさんは色々突っ込みが入っていて面白かったです。まぁ持っているスピーカの数もラインナップも普通じゃないですからね。現役学生でどうやって揃えたの?的な鋭いツッコミが入りつつ、和気あいあいとお話を挟んだことで最初はとても固かった空気がだいぶ和らぎました。これももしかしたらNazo-otokoさんの配慮だったのかもしれませんね。

お話の中でApogeeのスピーカの話が盛り上がったところで別室に移動になりました。

このお宅には実はメインのオーディオルーム以外にも複数の部屋にオーディオシステムが設置されています。メインの部屋だけでも凄まじいですが現実は更に上を行くオーディオコレクションでした。それを一通り端から案内していただきました。今日のメンバーはみんなスピーカに詳しいので反応がとても良くNazo-otokoさんも見せる甲斐があると判断したのかもしれません。これはとても幸運でした。もちろん初対面の方にはみんな見せているのかもしれませんけどね。ちなみに自分はあまり古い製品は正直わからないものが多かったです。今日のメンバーはみんな詳しすぎです。でもその分色々なお話が聞けてよかったです。

ほかには作業用のスペース、ユニットが大量に置かれている部屋も有ります。中にはサイン入りのユニットや往年の高性能ドライバもありました。こちらの部屋そのものは本家のBlogでも公開されているので問題なさそうな写真だけ紹介しておきます。(OKの確認済み)

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下のアポジーの部屋にはスピーカと貴重なクレルのビンテージ製品が良い状態で設置しており、製品個別についても詳しく説明していただきました。クレルはシリアルナンバーの若い初期のモデルだそうです。アポジースピーカの導入にも色々なストーリーがあったそうで、ここで長々とは書きませんが本当にそれぞれの機器にエピソードがあるものです。

そういう細かいエピソードについて、今でも細かく覚えておりしかも並行してシステムとして維持されているというところに、Nazo-otokoさんの人生におけるオーディオの比重の高さが伺えるような気がしました。

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試聴と音質

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実際の試聴順とは違いますが、写真順にシステムの音質的感想を書きます。また実際には各機器には背景となるエピソードがあり、試聴前にそのお話を聞いてから音を聞くという流れでした。それぞれに本当に分厚いバックグラウンドがあるのです!

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ダブルウーファーズのルーツと言われるJBL4350Aのシステムです。この時代のこの構成のスピーカをちゃんとしたシステムで聞くのは初めてです!曲はもちろんジャズですが、厚みと存在感が非常に強い音です。低音は38cmのダブルなのでグッと空気の圧力が面で迫ってくるような低音です。一言で言えば脂ぎった熱い音と言われる方向性になると思います。ただしそれは中低音についてはです。

しかしこの手の典型的な音質と異なる部分があります。非常に面白いのが高音で、高音はかなり明瞭かつなめらかで引き締まった音になっていると感じました。これがマルチの威力でしょうか?中低音とは明らかにキャラが違う高音なのです。しかしそれが音楽として見事にマッチングしています。この高性能寄りの高音が適度に現代的な風味を醸し出しており、描写力が高く緻密さや丁寧さを感じさせる要素となっています。現代ハイエンドしか聞かない人でも、ジャズを聞かない人でも、この音なら楽しめるのでは?と思うような雰囲気です。

こういう音が好きな人によくあるような典型的な一点型ではない、ただ単に厚み、存在感、熱気、こういう方向性だけを追求するのではなく、緻密で丁寧な高域がスパイス的に加えられてまとまっている。非常にセンスの良い仕上がりに感じました。

このシステムで印象的だった音色はバストラムの腹に来る音圧とウッドベースの存在感と実在感です。バスドラムは非常に生っぽいです。生といってもスタジオの端正な音じゃなくてジャズバーとかのやや飽和感のある音という趣です。ウッドベースは生よりも存在感ありそうです。

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次はオリジナルノーチラスです。オリジナルノーチラスはダイナ7Fで昔に聞いて以来です。当時は経験値も少なかったのでこのSPの真価は理解できませんでしたが、今は大分経験を積みましたので実力がよくわかりました。これはSPの設計としては大分古いのですが現代でも通用するクオリティがあります!本当に優れているものは古くならない、オリジナルノーチラスは紛れもない名機でしょう。

Vivid Audioと同じ設計者ですがある意味Vivid Audioの設計はこのオリジナルノーチラスを「現実的な使い勝手に落とし込んだモデル」と言われても納得してしまいそうです。マルチ専用でウーファーが物理的にセパレートになっている設計は正義です。ウーファーユニットが一つで中高域と物理的に分割されていますので箱の共振から分離されています(Giyaではウーファーの管の中に中高域ユニットが取り付けられているようなデザイン)。このおかげか混濁感がとても少ないクリアな音と感じました。ここの出音は相当にハイレベルです。

この日聞いたシステムの中では最もバランスが良くオールラウンダーだと思います。非常にまとまりがあって弱点の少ない音という印象です。低音はもちろんYG acousticsの最新SPと比べればわずかにエンクロージャーの音は感じますが、十分現代ハイエンドクオリティです。

このあと写真に写っている「Nazo-otokoさん自作のアンクもどき」をつけ外しして聴き比べです。つけているときのほうがふわっと広がる空気感があって優しい音ですね。取ると引き締まって優しさとか空気感からは遠くなります。中高音が乱反射するので像が散るのだと思います。かける音楽で相性が変わってくる部分だと思います。私はどちらもありですね。

このシステムで印象的だったのは、空間の広さと音像の緻密さ、この2つです。低音重視のソース以外なら何でもバランスよく鳴らしそうです。聞くところによるとExaktが予想よりも良くて結局導入することになってしまったそうです。

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本当はこの日の最後に鳴らしたシステムなのですが先に書いていしまいます。

フルエピローグは王道ハイエンドをそのままにスケールアップしたような音、と思いました。王道故に説明が難しいのですが、駆動力と余裕と聞きやすさの両立でしょうか。もしかしたら現代では王道とされる方向性はゴールドムンドが切り開いたのでは?と思わせます。

一言で言えば非常にスケールが大きく余裕のある揺るぎない音です。低音の躍動感や動的なうねりのようなものはダブルウーファーのシステムのほうがあるのですが、こちらはより静的な低音と感じました。ある意味ノーチラスの音を「大胆に」レンジアップスケールアップしたような感じです。

ですが緻密さや丁寧さならまだノーチラスのほうがまとまっていると思います。より具体的に言えば高音のピントの合い具合には結構な差があると感じました。サイズや描写される音楽が大きくなった分、高域の描写は大胆な性格に変化していると思います。だから受ける印象も余裕と大胆さとスケール感という感想になります。

このシステムで一番印象的だったのはパイプオルガンのスケール感と余裕です。

この日はゴールドムンドというメーカーの設計についてはNazo-otokoさんは結構辛辣なことを言っていましたが、現実には沢山のゴールドムンド製品を使われているので、その音質と相反する設計の部分に納得出来ない部分がありながらも、やはり惹かれるところがあるという複雑な部分なのかもしれません。性格の悪い美人で苦労させられるけど別れられない的な関係でしょうか。よくわかりませんが。

ちなみにNazo-otokoさん曰くこのシステムはまだまだ調整中とのことなのでこれからさらに説得力を増した凄い音が出てくるのでしょう。

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この日聞いたダブルウーファー製品では最もおとなしい音でした。このSPはダイナのマラソン試聴会できいたことがあります。その時はDD67000とDD65000の比較でした。DD67000のほうが現代的、DD65000は濃い音だと思っていたのですが、ここのシステムですと他のシステムの濃さが浮き彫りになってしまう、現代寄りの仕上がりの音だと感じました。

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これはワケありのスピーカらしいです。知人伝での入手とのことでその経緯などを聞いてからの試聴となりました。このSPはウーファーの設計が特殊のようで、内部に駆動ユニットが入っており外側の表裏4つのウーファーは見えない内部のユニットによって駆動されるとのことです。そのためウーファーの駆動にはかなりパワーのあるアンプが必要というお話です。実際に音が出ると鳴らしにくいという印象はあまり感じないくらいしっかり鳴ってました。

このシステムの音はこの日聞いた中では真面目ではあるのですが、ただ真面目なだけじゃなくて枠を少しはみ出す奔放さも感じる仕上がりと思いました。お話を聞いていると元々は暗めの音でもっと真面目なSPなようですが、ここでの出音は端正なだけでなくあえて枠を飛び出すような部分を作ることで、楽しく聞けるようなチューニングになっているようです。(元々の音を知らないので深くは語れませんが)

比較すると、ノーチラスほどのまとまりと締りはなく、かといってJBLシステムほどの躍動感や存在感もない、ちょうど両者の中間的な位置づけの印象を受けました。入手金額は使われているシステムの中では格安(訳あり)だと思いますので、値段を考えると正直とんでもない実力の出音だと思います。

一度上記のDD65000と同じ曲で比較ができましたが、ダイナミックなDD65000、真面目なSB-M10000という印象です。

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ここのシステムの中ではノーチラスに次ぐ「普通の」ハイエンドスピーカです。超高額のダイヤモンドツイータが乗っているモデルだと思われます。セラミックのモデルは聞いたことがありますがダイヤモンドのモデルは初です。

音質的には非常に透明感と滑らかさのある中高域が特徴です。この日のシステムの中ではこの部分は突出しています。また箱の設計によると思われる嫌味のない自然な長めの余韻もこのスピーカのもう一つの特徴です。これはセラミック型のモデルでも共通していました。まさに上品で繊細、貴婦人のようなスピーカじゃないでしょうか。特に弦楽、クラシックに合うというのはよく言われていますが、そのとおりだと思います。

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個人的にこの日で最も印象的だったのがこのシステムです。150kgのステンレス削りだしホーンは見た目にもすごいインパクトでしたが音はそれ以上のものでした。

ここでかかった木琴と鉄琴のオーケストラ編成の曲は生音でなければ出ないようなアタックと余韻の力強さを感じることができました。例えばですが最近木材にハマっていて色々な木材を叩いていますが、木材を強く叩いたときに出てくる高音のエネルギーは自宅のスピーカーからは全く出ません。自宅のスピーカーから出る高音は非常に弱々しいものです。

しかしこのステンレスホーンから出てくる高音はすごい浸透力のある沁み入るような高音です。ただ単に透明感があるとか引き締まっているのとは次元が違う、生のあのエネルギーが飛んで出てくるような感覚があります。

それに合わされる低音はエクスクルーシブのダブルウーファーです。4350よりレスポンスが良くステンレスホーンのエネルギー感と比較してもなんとバランスが取れている低音です。並外れた高域に並外れた低域を組み合わせた現代の典型的ハイエンドとは全く違う方向性で突き抜けた凄みのある音でした。このシステムの音はもう一度聞いてみたいです!

試聴後の印象

多様なシステムがそれぞれ異なる表情と音楽を見せていました。まさに多次元空間のシステムです。当然のようにシステムによってかける音楽も変わってきます。この日にかけられた曲はシステムに合わせて選定されたものだったと思います。だからこそ方向性と音楽性が一致して濃い体験につながったと感じました。それを複数持っているということは懐の広さと深さも伺えるわけです。

しかしIMAIさんによると過去の音はここまで多様性のある方向性ではなかったとのことです。もしかしたら少しずつ、またはある時期を境に今のような多様性をもつようになったということになります。そこで一体何があったのかはわかりませんが、きっと大事があったのだろうなと思います。視野が広がるきっかけのような出来事のはずです。それはもしかしたら雑誌掲載記事にあるような病気や手術がきっかけだったかもしれませんし、そうではない自然な気づきと流れだったのかもしれません。そのあたりは自分が知る由もないことですが。しかしそんなことを考えてしまうような体験でした。

この部屋に共通している要素は、熱さ、奔放さ、ダイナミックさを軸とした方向性でしょうか。もちろんノーチラスやルーメンはこれらの条件の例外となりますが、それ以外のシステムではそういう音楽性が常に見えますので、おそらくこのような要素がNazo-otokoさんのルーツなのかなと推測しています。そして上にも書きましたがオーディオへのとても強い思い入れも共通でしょうね。だからこそ一つ一つのシステムにバックストーリーがあるのだと思います。

あとインテリアや細部のこだわりがとても強いです。フルエピローグのグリルは黒から紺に色を変更していますし、部屋の設計のこだわりも凄そうです。自分はこの部分についてはまだまだなので正直よくわかりませんでした。すべてを理解するには自分にはまだ深すぎるというところだと思います。

その後

あっという間の試聴時間の終了でした。16時から19時半の3時間半でしたがシステムがこれだけの数ありますので、じっくりというよりも駆け足での試聴になりました。最後に床下のケーブルを見せてくれました。総延長が400mあるそうです。これだけのシステムをマルチチャンネルで駆動しているのですから凄い量です。それでも床下を通すことでスッキリと仕上がっています。床材はナラ、天井はスプルースとのことで最近ハマっている木材の知識が生きるシーンでもありました。

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まだまだこの日は本当に色々なお話を聞くことができたのですが、自分自身のスピーカや機材に対する知識不足をとても感じました。あまり反応できない話題も多かったので今日の強力メンバーはいろいろな方面での話題の対応力がありとても良かったと感じます。Taxsisさんの様々なスピーカの知識、まささんのユニットの知識、IMAIさんの人脈やNazo-otokoさんの趣向への理解の深さ、です。

この後はNazo-otokoさんは別の用事があるようなので、残りのメンバーで近所のご飯やさんに移動して、楽しく今日のオーディオの感想と、何故かavcatさんとIMAIさんの昔話などで盛り上がりつつ解散となりました。

非常に充実したオフでした。そしてまた音を聞きたいなぁという思いが残りました。IMAIさん、貴重な出会いを提供いただきありがとうございました。Nazo-otokoさん、お忙しい中お時間をとっていただき、また詳細資料を準備の上、数々のシステムを見せて、聞かせていただきまして、ありがとうございました。

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lookkg486さんの余力溢れる超ハイエンドシステム

2018年8月下旬にお邪魔いたしました。今回のメンバーはいつものnemo3と、以前にうちにもオフで来られたことのあるLoui(るい)さんの二人、どちらもアニソン大好き勢です。

家は河口湖にある本物の別荘です。個人的に富豪お宅訪問みたいなのが好きなので高まります。そしてここは河口湖の中でも中心地から離れたやや郊外にあるのでオーディオをするための周辺環境としてはとても良い場所です。空気の静寂感があって電気と空気のSNが良さそうです。家そのものの写真はもちろんアップできませんが周辺はこんな感じです。雰囲気だけでも感じ取ってもらえたらと思います。

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システムの構成について

スピーカはYG acoustics Sonja 2.2、ツイーターを最新のものにアップグレード済み、そしてなんとウーファーはネットワークをバイパスしています!ネットワークはマイクで音を取ってから位相とEQを補正できるトリノフというハードウェアを使ってデジタル領域で実現しています。このようなハイエンドシステムでSP内部のネットワークをバイパスするなんてかなり豪胆ですね。プリは1台なので上下どういう接続になっているのか聞き忘れてしまったのですがパワーアンプは2セットあるので上下別のパワーで鳴らしているのは間違いないです。

ということでYG acoustics Sonja 2.2でありながら等位相かつフラットEQで聞ける環境が出来上がっています。ケーブル類はもう意味がわからないくらいの高額ケーブルの山なのでここは完全に未知のゾーンです。一つ一つは音に強力に貢献しているはずですが個別の音については全くわからないです。その未知のゾーンの写真はこれです。

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音質

このようなシステムなので一体どのようなすごい音がするのかと思って音を聴くと別の意味で驚きます。それは全く力みのないリラックスした音だからです。決してぬるい音という意味ではありません。音そのものはレンジが広くかなりの低音から高音まで高速で立ち上がりきれいに消えていきます。すべての音が明瞭に見えるような、音数が多かったり速度の異なる音が折り重なるような難しいソースを持ってきても余裕を持って鳴らします。レンジが広いのに力みがないということです。そして空間と音のSNも高い。凄みを全然感じさせない、実はこれは凄いことです。

もともとYG自体が現代SPの中でも高い安定感、揺るがない力強さを感じさせるSPではありますが、その方向性をさらに推し進めた出音というとイメージがしやすいかもしれません。

自分はいつも色々な要素が分かるまるでベンチマークのような曲を持っていくのですが、それでわかったのは定位感、SN、描写力、駆動力、これらのトータルバランスで弱点が最も少ないシステムと思いました。この音のレンジと質感の均質さでありながら先日の記事にあった富山県のIさんのような定位特化システムと比べて定位の再現も80-90%まで出ています。恐ろしいです。これは確実に等位相補正の効果だと思いますが普通のマルチウェイシステムでは出ません。自宅環境も等位相ですが70%くらいの再現度です。

弱点があるとしたら一つだけ、数kHzの帯域に折り重なったような付帯音があります。シンプルなシンセサイザー波形を使った曲を聞くと等位相ではない環境ではやや潰れたような音がするのですが、ここの環境では基本はきれいに鳴っているのですが一部の帯域でだけ潰れたような印象がありました。それについてlookkgさんに恐る恐る伝えますと2kと10kにちょっと癖があるそうです。恐らくそこの影響だろうと言うことです。しかし一部の特殊な音楽以外を聞いているときには気にならないので些細な問題です。

まとめますと、トータルバランスに優れ、力強さと音の余裕の両立、SN、定位に優れた音源を選ばないシステムです。そして一番の特徴は余裕だと思います。lookkgさん自体が人間的にもとても余裕があって行動力やパワーを感じる方だったので出音にはとても納得できる感ありました。

学ぶこと、感じたこと

ここの床は70cmのコンクリート、その上に板を敷いているだけらしいので超強固です。最近はっきりと気づきましたが床はとても大事です。実はオーディオは床の音を聞いているといっても良いです。

自分はハイエンドの必要条件として絶対的な駆動力が必要だというのは最近になって強く気づきました。駆動力そのものを軽視していたわけではありません。しかし描写力や透明感や解像度によりすぎていたと思います。描写力を担保するのは駆動力ですから、駆動力は絶対的に必要です。そしてコンポーネントの駆動力を担保するのは床です。だから絶対的な音の余裕も単にコンポーネントのグレードだけではなくて床の強固さによる影響がとても大きいと感じました。

自宅に戻って音を聞くと絶望するほどに安定感にかける、弱々しい音しか出ません。なぜなら木造二階で床が弱いからです。歩いていてすぐに分かる柔らかい床です。なので今回は自宅の足回りを強化したいと強く思いました。

実は今回の件のもう少し前にも同じような気づきのきっかけがありました。そちらは非公開案件なので記事にはまとめていませんが同じように駆動力の重要性を痛感する出会いと体験があったのです。そして今回の件もポイントは違うのですが要点は同じでした。それは世界のハイエンドは常に駆動力を再重視していること、今の自分にはまだまだその視点と追求が不足しているということです。この2つの出会いによって強くそれを感じました。

このような貴重な気づき、体験、に感謝したいと思います。対策関係は別途記事にまとめていきます。

おまけ

当日は木材の聴き比べや食事など、楽しく過ごしました。色々お世話になりまして、ありがとうございました。満足なお礼は出来ませんでしたがまたよろしくお願いいたします。あとはツイッターの発言や写真を貼っておきます。

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音楽制作的観点によるヘッドフォン比較

先日こちらの作品でミックス2曲とマスタリングで参加したのですが、いままでのAudeze LCD-2にFocal UtopiaとFinal D8000を加えた作業は始めてでした。

「Twin Crew Star」の画像検索結果

http://lovelicot.com/twin_crew_star/

特にマスタリング時はより絶対的な基準が重要視されますので、公正なバランスの視聴環境は必須だと思っています。なぜなら絶対基準がもしずれていたら、最終的にリスナーにお届けするデータは「あるべきバランス」からズレたものになってしまうからです。相対的なバランスが良ければ(マスタリングで補正できるので)問題にならないミックスとはここが違います。マスタリングは最終工程なので、音源として良いバランスになっていなければならないです。

今回はマスタリングを通して各ヘッドフォンの良いところと悪いところがオーディオとは別の視点でわかりましたのでここにまとめておきたいと思います。

Final D8000

「Final D8000」の画像検索結果

http://snext-final.com/products/detail/D8000

低周波領域にピークまたは共振帯域が複数分布しています。なのでマスタリング作業でピーク除去のEQ作業=細かく被っている帯域除去をする作業にはあまり適さないヘッドフォンです。この特性はアンプを良くしても改善しませんでした。

具体的には200-400Hz帯域に2つくらい共振?があって、その上にそれらの高調波と思われるいくつかの癖のある帯域があります。

このヘッドフォンで作業していると上記帯域をどうしても削りたくなりますが、気になるところをすべて削った音源をモニターSP、スペクトルアナライザーでチェックすると中低域が痩せ過ぎた結果となります。なのでこのヘッドフォンでこの帯域は触れません。作業をしていて別の曲を触っても同じような帯域ばかり気になるときはシステムに問題がある可能性が高いです。今回もそういう感じでした。

逆にD8000が良いのは超低域の量感バランスのチェック、ダイナミクスのチェックです。このヘッドフォンは低域がちゃんと出ています。普通のヘッドフォンのような響くだけの低音じゃなく低周波をユニットが駆動しているからです。なのでヘッドフォンにありがちな低音バランスを取りにくいという問題は緩和されています。小型モニターではなかなか見にくいところまで手が届く感じです。低音が強い割に高音のうるささもちゃんとうるさく聞き取れるヘッドフォンなので全体のバランス調整ならEQ作業もOKだと思います。

またアンプ次第なのですがアンプさえ良ければコンプレッサーによる音の速度変化は見えやすいのでEQよりコンプの調整に向くヘッドフォンだと思いました。余韻や中高域のディテールの描写力はFocalのUtopiaには負けます。

Focal Utopia

Utopia high-fidelity headphones

https://www.focal.com/jp/headphones/utopia/utopia

UtopiaもD8000と別の帯域ですがやはり共振帯域がありますのでEQでの被り帯域の除去には向かないヘッドフォンです。

Utopiaの場合は1k-6kくらいの広い帯域に細かく癖のある帯域が分散しているような印象です。具体的にどの帯域とは言いにくいのですが聴き比べると中高域に明らかなピーク感があってそこの帯域はあまり触れない印象です。これもアンプを良くしても改善しません。そのためこのヘッドフォンでもEQで細かく被っている帯域除去をする作業は向かないと感じました。

ダイナミクス系の処理はやりやすいです。D8000に対して特に優位性があるのが減衰の描写力が非常に高いことです。なのでダイナミクス系のなかでも微細領域の変化、スレッショルドの深いところでの変化がD8000よりチェックしやすいです。この特性は例えばミックスでリバーブのかかり具合、減衰の重なり具合等を調整するときに向く性能です。

高域のディテール描写力もD8000より高いので、例えばプラグインの種類ごとによる質、触ったときの質感の変化、音色の微調整、これらの作業にも向くヘッドフォンと思います。低音はD8000のほうが輪郭がはっきり明瞭な音です。

Audeze LCD-2

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https://www.audeze.com/products/lcd-collection/lcd2

古いモデルでこの中では最も価格は低いですが、意外と健闘していたのがこれです。実はEQでの細かい作業はこれが一番です。特に共振帯域がこの中では最も目立たないので帯域除去作業はこのヘッドフォンが一番良いです。どの帯域も癖が少なく音源の課題が見えやすいですし、除去したときの変化も見えやすいです。

EQ処理でひとつだけ問題があるのが2k以上の中高音が「うるさく聞こえないこと」です。これの何が問題になるかというと、モニターSPや他のヘッドホンで聞いたときに高域の上げすぎ、うるさいと感じられるバランスにまで突入しがちなことです。なので高域のバランスが出すぎていないか他のヘッドフォン、モニターSPでのチェック必須です。

もう一つ問題はダイナミクス性能に限界があることです。低域のスピードがとても遅いので中域くらいまでの微細な描写がユニットの駆動にマスクされやすいです。アンプでかなりの改善が可能ですが、基本性能の問題ですので上記二機種のようなハイエンドヘッドフォンに比べるとそのような微細領域の減衰ディテール、一定以上の速度のダイナミクス変化を見るのは苦手です。

うちのモニターSPもこの変化に若干弱いところがあるので、LCD-2と合わせて長いことダイナミクス調整を苦手としていましたが、このようなリスニング環境の制約が弱点を作っていた側面は否めません。

結論

ということで各種特徴があって複数使い分けることが効果的というとてもお金のかかる結論です。ハイエンドクラスのヘッドフォンを一つ持っていてもそれで完全になるわけではなく、弱点を補い合うような組み合わせにしなければならないということです。ハイエンドクラスでも思っていたよりも性能に限界があるというのが事実でした。

また注意したのはヘッドフォンだと木を見て森を見ない調整になりやすいということです。これはマスタリングよりミックスでより深刻だと思っています。特定の音を聴くくせがついてしまうと作業中でも客観的なバランスで音楽を見にくくなります。個人的にはこれは作業時間が長くなるほど顕著だと思っています。そうなると変なバランスになっていても気づかないです。こうなるとある部分が良くてもある部分がアンバランスということになりやすく、最終的に俯瞰的なバランスをモニターSPでチェックすることはとても大事だと思っています。

しかし上記のような3機種を使いわけるとモニターSPの出番はかなり減らすことが出来ると感じました。今まではヘッドフォン作業はLCD2だったので、ヘッドフォンで聞いてモニターで聞いて、またヘッドホンで聞いて、というやり直しがとても多かったのですが、今回は3機種で音を詰めてからモニターSPで聞いても違和感が殆どなかったからです。

一般的にはヘッドフォンでのミックス、マスタリングは駄目だとよく言われますが、このような高性能な機種を複数使い分けて最適化することで高性能モニターを用意しなくてもある程度のバランスに持っていけそうな手応えは感じました。とはいえ上記機種を揃えると相当高額なモニターSPが買えますので音出しできる環境があるなら実はあまり参考になる内容ではないと思います…。

まぁモニターSPはモニターSPで完璧な音を出すのは簡単ではないので、モニターSPメインの人でもある程度以上のヘッドフォン環境を補助用に持っていても良いのかなと思ったりもしています。

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富山県Iさんの超絶定位システム

6月になりますが、自作関係の話題でだいぶ以前から交流のあった方でお誘いがありましたので、別の用事の道中ちょっと遠回りして富山まで行ってきました。一応御本人によるシステム解説です。ここのUCDパワーアンプは私が作成したもので古いものをお譲りしたものです。

  • ラズベリーパイ+アイベリーDAC(タカジン製 改造)
  • コンパクトUCDアンプ(このアンプは小さいが大変音が優しく音離れや音場感が良い)
  • SPはスコーカーSasha Series-2 ユニット+ツィターFOSTEX TA-500A
  • ウファーはサーロジックのサブウファーSPD-SW2000Dと同じ型のユニットを前後に繋いだ水平対向としタイムドメインと同じように箱からユニット浮かせて取り付けてあります。(デジチャンによる60hz -48dB oct)をデジタルハイパワーアンプ駆動
  • 部屋の後ろの黒い柱のようなものは、以前使用していました、長岡鉄男考案の自作DRW(サブウファー)ですが、音が丸いので現在使用してません

とのことです。特徴的なのはEclipseのタイムドメインスピーカーに似た設計の自作スピーカです。Iさんによると実家にタイムドメインのGS-1を所持しているものの、音像の大きさに納得ができず、納得ができるものを設計して作ったのが現在のシステムとのことです。しかしGS-1も製作者自身によって魔境と言われるような世界が構築できるらしく、定位と空間描写のポテンシャルはかなり高いはずです。

参考までにここにGS-1のレビューがかなり詳細にありました。
http://www.audio-masterfiles.com/masterfiles/file021/file21-3.html

製作者による魔境の話はここです。
http://tackbon.ldblog.jp/archives/51382740.html?.link_prev=1

ですがIさんによるとGS-1はボーカルの口がとても大きく、フルオーケストラなどの再生でのスケール感は良いものの本来小さくあるべきものまで大きく描写してしまうのが欠点と言われていました。GS-1は聞いたことがないのですが自宅環境のDuntechも定位自体はなかなか良く出ていますがバッフル面の大きさに相応した定位の曖昧さは感じています。

そういえばNautilusシリーズなどは独特の形状がもたらす非常にシャープな音像感がありますね。なので箱の形状による限界があるのだと感じました。バッフル面のサイズ=音像サイズというのは経験的に色々なSPの音を思い出してみるとかなり正しいかもしれません。

とにかくIさんはこの定位感を長らく追求されておりその道で数十年とのことでした。最後は理想を満たすものが世の中にないため自作で今に至るわけです。

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音質の特徴:驚愕の定位

音を聞かせてもらいましたが、かつて聞いたことがない定位感としか言いようがありません。音場の再現能力は360度あって部屋のはるか向こうから背後まで広がる空間があります。そして音の一つ一つが非常に正確に定位しています。ここまで緻密かつ広大な定位を両立したシステムは一度も聞いたことがありません。凄いです。

先日ヘッドフォンのレビューで最新型のSPを超える部分を作り出しつつあるという話を書きましたが、こういう定位はまだまだヘッドフォンでは不可能ですね。ヘッドフォンは前後感や立体感は全然表現できません。真の3D的な描写はこういう定位の優れたスピーカでなければ楽しむことが出来ないということを強く感じたシステムでした。

ちなみに当日掛けていただいたなかでとても良かった録音は下記画像のアルバムです。色々な音が異なる空間定位で入っていますし音楽的にも深みがあります。これ以外にもチェスキーレコードの作品をいくつか聞かせていただきました。同社のオーディオテストCDの定位のテストも掛けていただきましたが、左、右、中央、そしてその間の定位もピンポイントで完璧でした。うちではこんな定位は絶対に出ないですね!自宅はここと比較すると60%くらいの再現度だと思います。それらしいところには定位しますけどピンポイントとは言えない曖昧な感じです。

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ネットでコメントを見るとこのレーベルは面白いこだわりを持っているようです。それは次のようなものです。だから非常に豊かな定位感があるのですね。

Chesky Recordsは、追う音質を売りにするオーディオファイル・レーベルとして有名だ。音の良いスタジオでの生演奏を、ワンポイント・マイクを使ってダイレクト・トゥ・2トラック方式で録音し、オーバーダブ、コンプレッション、イコライゼーションは一切使用しないというポリシーを貫いている。

同じようなポリシーでやっているのはリファレンスレコーディングスのキースジョンソン氏でしょう。氏のことはQLSO=愛用しているオーケストラ音源で知りましたが、リリース元であるSoundsOnlineの掲示板で当時本人による面白いやり取りを見たことがあります。

マルチマイクやDAWで作られた定位と実際のホールでの録音による定位は全く違うというお話です。ホールでの録音は壁の反射による音の到達タイミング差の情報が記録されており、あとからそれを再現することは出来ないというお話です。だからQLSOのレコーディングは音楽制作用の音源なので単音ごとに収録されますが固定マイクセッティングであり、さらにオーケストラを実際の配置において各パートごとに録音しています。だからDAWで定位を一切編集する必要がなく、むしろホール録音の音響をそのまま使ったほうが豊かな定位が得られるというお話です。

実際のこのQLSOを使った自分の制作楽曲も掛けさせてもらいました。この環境で聞くとQLSOの定位感はしっかりした立体感があることがよくわかります。DAWで編集しただけの音はやはり平面的です。当時は上のような録音技術の話を読んでもよくわかりませんでしたが、今思い出すとキースジョンソン氏はとても大事なことを言っていたのだと思わされます。あのときあのタイミングで掲示板を読んでいて良かったです。今では過去ログとしても残っていないと思います。このQLSOをわざわざクローズマイクを使ってリバーブ掛けてる人を見たことがありますけど完全に使い方を間違っているということですね。

参考までにQLSOのデモをおいておきます。今となっては古い音源なので楽器表現は固く不自然なところもありますが空間感はとても良いと思います。自分の音源は大したレベルじゃないので貼りません。

公式:http://www.soundsonline.com/symphonic-orchestra

非公式:https://storyinvention.com/qlso-music-matome/

オーディオの話しに戻りますが、この環境は定位の表現力は極めて高いのですが、そのかわり音源への依存性がとても強いです。普通の定位の曲では平面的な空間しか出来ません。高度なマイキングや空間処理を施した音源かそうでない音源の違いは浮き彫りになります。特にここで聞かせていただいたバイノーラル録音による森の音響は本当に立体音響で完全なサラウンド状態で感動的なレベルでしたが、ほとんどの曲は(たとえ優秀録音盤であっても)ただ平面の上に音が並んでいるだけということがありました。

定位の代償として失ったもの

このシステムは素晴らしい定位ですが、そのための制約として見られるのはやはり低音です。現代に残されたタイムドメインはフルレンジ設計が基本になっていますがフルレンジでは高音が厳しいです。定位感には高音の情報は重要と思います。

その点ここのシステムはFostexのツイーターがかなり高性能で高音には不満が全然ありませんが、この中高音の完成度に低音を合わせることはかなり難しいと思いました。もちろんすべてを満たすことが出来れば言うことはありませんがなかなかそうはいきません。

現状ではサブウーファーの仕上がりがまだ不満足というのはIさんも感じているようで未完成であるとは言われていました。中高域の完成度は極めて高いのできっと低音もそれに釣り合うところまで仕上げてくると思います。

最後に

この度は新しい経験をさせていただきまして、ありがとうございました。

おまけ

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途中で立ち寄った旅館のエントランスにこんなオーディオがおいてありました。下に見えるとても貧弱なコンポで鳴らされていたのでちょっと残念さのある音でしたが、普通の天井埋め込みSPよりは当然ながらだいぶ良かったです。アンプを良くしたらだいぶ違うだろうなと思いながら音を聞いていました。選曲はボッサでした。

ご飯を食べるところの天井にもありました。こちらの選曲はなぜかアメリカ音楽。自信に満ちてスケールが大きくお金の匂いがちょっとするあの感じです。

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オーディオ目玉親父(messa)さんのところへお邪魔しました

先日nemo3さんとお伺いしました。なんとお二人ともYG acoustics スピーカのユーザです。nemo3さんはHailey所持してる古い友人です。Haileyはいつも聞かせていただいています。

それがこの日はイベントで数回しか聞いたことがないSonja1.2を聞かせていただきました!まず気になるシステムについてですが、正直ここで書くよりこちらに情報がまとまっているのでこちらを参照してください。はやてさんのレビューもあります。

http://messa.air-nifty.com/blog/2017/10/post-8d0f.html

http://comiccune.jugem.jp/?eid=39

書くことは沢山ありますので、さっそく音質について書きます。

システム音質について

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音質は超ストイックでかなり基礎クオリティ重視だと思いました。超高級ケーブルによる美音とか作られた音っていう印象は全然感じませんでした。これは意外でしたがそれこそがmessaさんがオーディオに求められている音質なのだと思います。すべてを捧げて頂点に向かう姿勢を表しているようです。淀みないストレートさで正直どの曲を聞いても非常に高いクオリティかつニュートラルな方向性です。色々なジャンルの曲を掛けさせていただきましたが女性ボーカル特化という印象などは全然感じなかったです。

そもそもYG自体がそういう基礎クオリティ重視でバランスの良い方向性ですけど、そのYGの方向性をそのままに突き詰めていったような音です。システムトータルの色付けは相当排除されていると思いました。

もちろん自宅環境とは比べるべくもないのですが、私自身もそういうストイックかつ基礎クオリティ重視なシステムを志していますのであえて自宅と比較するならば、messaさんのお宅では低域がさらに下までしっかり伸びていながらスピードも早いままで高域もより伸びがあります。それでいて定位も同じくらい優秀ですから、本当にほぼ全てにおいてクオリティが高いと思います。たとえば自宅だと意図的に排除している帯域もでてます。特に上の方が顕著に出ているので音源によっては出さないほうが良いと思うような音も出ていましたが、元々の音源に入っているものはすべて出すスタンスなら特に言うことはないと思います。こういう点はスタジオのモニターとして音源のアラ探しをする用途としても優秀です。

同じような表現ばかりになってしまいますがバランスがいい音のレビューは「これという強み」について説明することが出来ないので難しいです。たぶん同じような優秀なシステムと比較しない限り出音の弱点は見えにくいです。セッティングが決まったYGはこんな音なのかという印象がありました。もう少し定位が曖昧なイメージがあったのですがそんなことはありませんでした。

それというのもセッティングはかなりよく決まっていると思っていて、中央ではない隣の席に座っていても定位が明瞭でした。GRFさんのBlogにもありますが真にセッティングが決まっているとリスニングポイント以外でも立体感があるそうです。さすがにどの場所でも完全に立体的な音とまではいかなかったのですが、リスニングポイント以外にも立体的に聞こえる場所がいくつもありました。もちろん横に座った場合などは左右均等の空間ではないのですが立体感はしっかりあります。

あくまで個人的にはですが、いままで聞いたシステムのなかでは最も基礎クオリティ重視な出音と思います。とはいえオフの経験などはあまりないので「ごく限られた範囲の中」のお話です。特に基礎クオリティのみに注力して高められている方自体が稀という理由もあると思います。

基礎クオリティのみを高める道はオーディオでは少数派ではないでしょうか。あらゆる制約はそれこそ「何処にでも」あります。そもそも個人の趣向や選別というものがバランスの良い保証はないのです。だから個人の好みが強く出ることは普通だと思いますし、そもそもSPや機器自体がそういうある種の方向性を強く持つことのほうが多いからです。個人的な好みが主導する特化型システム、そういう誘惑を逆に排除しつつ価格度外視でトータルバランスと基礎クオリティの向上に突き進むことは精神的、経済的、場所的な制約が全て絡むので誰もが簡単に出来ることではありません。

その選定一つを妥協しただけでも現在の音にはならないのではないかと思います。そのような精神的綻びは色々な部分で音として現れてしまうでしょう。例えばこれくらいで良い、これでもう良い、そういうところで一切とどまらなかったからこそ存在しているのが現在の完成されたシステムのはずです。そしてこれからもその道を進むことでしょう。

ちなみにですが御本人がシステムやオーディオの音楽性についてちょっと心配されていたのですが、正直どの音源もかなり高いレベルでなっていたと思います。私が持ち込みした寄せ集めCD-Rもかなりシステムいじめな感じの曲なんですが、つい音楽を楽しんでつい聴き込んでしまったのでただの試聴なら掛けないくらい長く聞いてしまったくらいです。なので私の個人的な印象でしかありませんが、音楽性がどうこうというお話は心配される必要はまったくないと思いました!

これは基礎クオリティが高くなれば自然と説得力や訴求力が上がるからで、極めて高いレベルの技術を持つ方の作品が異なる価値観の方を取り込むのと同じです。オーディオでの最近の事例でいえばSonja XVの評判もそうですね。XVは全く異なる趣向を持つと思われる方にも支持されているように見えます。それこそ基礎クオリティの高さゆえの訴求力の高さにみえました。これはオーディオ以外でも同じです。

オーディオと音楽性の関係

自分自身の考える音楽性についてはこちらの記事でまとめましたが、問題点を見えなくするために性能を落としたり、ある種の方向性の先鋭化だったり、意図的な取捨選別だったり、これらは全て現実的な選択肢ですが純粋な高性能化とは相反する部分があります。

これらは色々な不完全さを補うためにこそ必要になる処置だと思っています。しかしmessaさんのアプローチはこれらとは逆で基本性能を隙無く高めることによって最終的に音楽性を確保していくスタンスだと強く感じました。

たとえばですが音源の問題点も顕にする部分については自分はそのような音源の不完全性も含めてチェックしたい派なので全く問題ないです。この能力は音楽制作でのエンジニアリングでは必要になる要素です。

そしてこの考え方は私の考え方とかなり近いです。でも自分自身の到達点はまだまだだなぁと強く感じました…。自分は限りない予算はないですがそのかわりに自分自身の知恵と能力を使って上がっていきたいと思います。

HaileyとSonjaの差?

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基本的にはどちらもバランスが良くオールラウンダーな音です。どちらも箱鳴りを徹底的に排除した切れの良い音です。いわゆるYGの音というものになるのでしょうか。贅肉を全て削ぎ落とし極限まで研ぎ澄まされたアスリート的筋肉質なイメージを強く受けます。無駄な力みがなくて余裕で音がでてくる感じです。

普段nemo3邸で聞いているHaileyとの差は低域の余裕がかなりありました。こちらでは低音のエネルギーが前に出てきて存在感がしっかりあります。厚みがあるとか遅い低音ではありません。早くて伸びていて存在感がハッキリしている低音です。この低音の余裕がだいぶ格差があると感じました。

ただmessaさん曰く電源の工事を行った後に低音が強くなったとのことなので、電源の対策レベルの違いのほうが大きいのかもしれません。またSPと電源以外にもケーブルも含めるとかなりの格差がありますので、そういった細かい部分での追求レベルの差が低音の違いになっている可能性はあります。なのでSPの格差だけではない可能性は高いと思いました。

ちなみに1.2ならばHaileyと中高音の違いは低音ほど顕著ではないです。音の差はありますがケーブルや機材の差がありますのでここではSPの違いとまで語れる差は無いと判断します。どちらも現在でも十分ハイレベルな音ですがこれが2.2になったらおそらくHaileyとはかなりの違いが生じるのではないかと思います。

Black Cat CableとNordost Odin2との比較

先日購入したケーブルですが、なんと最新最強のOdin2と比較させてくれました。早速音質傾向です。

Nordost Odin2

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これはちょっと反則レベルですね。

非常なワイドレンジかつ静寂感と透明感の高さが特徴です。それでいて描写は精密なのですから弱点が全くわかりません。特に静寂感は独自の特徴であって他のケーブルでは実現されていません(こちらの手持ちでは唯一TempFlexが近い)。それでいて低音の密度や深さ、高音の突き抜けたスピード、そして耳に痛くない自然さを両立しています。当然のように滲みやきらめきのような成分は抑えられており、基本的実力の高さゆえの「音楽の浸透力」を強く感じます。音の濃さです。

以上のように極めて基礎クオリティの高いケーブルと思いました。今まで聞いた中では完全無比で究極のケーブルとしか言えないのですが、同じ価格帯のケーブルはきっと比較が成立するような領域にいるのでしょう。初めて聞いたスーパーハイエンドのケーブルは相応の実力を感じさせるものでした。システムトータルが数千万円ならケーブルに数百万円くらい投資してもいいと思わせる凄さはあります。

他のケーブルに変更した後に思ったことは正直ケーブルの実力のみでここまで良い方向に変わるのは驚きです。機器が揃ってシステムが極まってきたらやはりケーブルにも投資しないとここまでの音は出ないのだ、そう感じさせる違いがありました。これがシステム内のXLRケーブル一本の差なので…。全体のケーブルによるトータルの影響力を考えると恐ろしくなります。機器一台を変えるより影響は大きい可能性も感じました。

Black Cat Cable Matrix II XLR

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絶対的な音質をOdin2と比較してしまうと当然ながら全体的にクオリティは下がります。自宅ではこれでも相当良い音でなっていたのですがOdin2と比較してしまうとレンジはかなり狭く、高音の滲みも若干感じるところがあります。少し全体的に曇っている感じでしょうか。Odin2のレンジの広さと透明感の両立は極めて優秀ということでしょう。

とはいえトータルバランスは良好でとても大人しい落ち着いた音でありながら聴きやすく嫌な音は出しません。全体に描写が小ぢんまりする印象はありますが細部の描写は非常に緻密で丁寧な印象があります。全体の雰囲気として落ち着いた大人の上質、どことなく気品を感じる音質です。わかりやすい派手さは全然ありません。まるで表舞台を引退して静かな余生を過ごす開発者クリス・ソモビーゴ氏のスローライフを象徴するような落ち着き具合です。といっても決して眠いとか遠い音ではありません。

さすがにOdin2と比較すると残念な部分はあるのですがこの価格差は10倍以上です!BlackCatは一般的な5-10万円のケーブルよりもずっと基礎力と音のバランスは優れていると思います。同じような価格帯のケーブルはいくつか所持していますが同価格帯では音はかなり良い方ではないでしょうか。と言っても音の変化は地味すぎて本当の音の良さを追求するような方でないと分かりにくいでしょう。とにかく派手だったりわかりやすい音の差ではありません。わかりやすい音作りなどは全く感じないからです。

残念ながら国内で調べてもあまりレビュー自体が存在しないので、ここでは非常にコストパフォーマンスが優れたケーブルとして紹介しておきたいところです。10万円前後で基礎クオリティ重視、癖が少なく質の良いケーブルを探すならとても良い選択肢だと思います。ここから上を目指すなら数十万円の出費は覚悟が必要と思います。

REDLEVEL: MATRIX XLR

StereoVox Bal-600 XLR

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Black Catケーブルと同じクリス・ソモビーゴ氏の作品です。こちらはmessaさんの所持品です。

こちらはクオリティがBlack Catより高いです。レンジが広がって大分Odin2に近づいた感覚があります。緻密で丁寧な音という印象は共通していますが、こちらのほうがワイドレンジで力強い感じがします。こちらのほうがパワーというか勢いがあります。若さですかね。BlackCatと比べると明瞭さが若干アップしてコントラストが上がる感じです。

そのかわり高音の質感が気になってきます。レンジが広がった分、質感についてはややきつさがあるというのか、レンジを広げたほころびを若干感じます。ピーク感はないので全然きついまでは行かないのですけどOdin2と比べると質感は気になる部分です。高域の聞きやすさはBlackCatのほうが落ち着いていて好みです。

messaさん曰くこのケーブルはValhallaと同じくらいの音だそうです。そしてValhallaとOdin2はすごい差があるとも言われていました。もしこのケーブルがValhallaレベルと考えるとそのとおりかもしれません。Odin2と比較してしまうと大きな差があり、とにかく透明感と奥行きの深さがOdin2は何か越えられない壁の向こう側にある印象を受けます。レンジや明瞭さについては大分近づいているのですが、高域の滲みのなさと透明感の両立についてはBlack Catと比較しても依然問題点が共通しています。

このケーブルのもともとの価格は数十万円だそうですが、BlackCat以上、Odin2以下。価格相応という結果です。

ケーブルへの愛を感じました

写真を取り忘れてしまったのですが、所持されているケーブル類で未使用品はコネクタにラップ等も巻いてありますし、高級そうなビロード調の布袋に個別収納されていました。ケーブルを出すときや机の上に置く時もとても優しく取り扱われておりケーブルへの愛を強く感じました。優しく包み込むような扱いです。扱いは全て手袋必須というものです。それがとても印象的でした。

最後に

ということで有料サービスでも良いような貴重な体験をさせていただくことができました。ありがとうございました。特に手持ちケーブルとOdin2の比較などショップでは絶対にさせてくれないですからね。そしてシステムの仕上がり音質はかなり衝撃的でした。ほぼ同じ価値観の大分クラスが上の音を聞くことが出来てよかったです。今後につながる良い体験になりました!

とりあえずこちらのTempFlexケーブルについてはまだまだ課題が山積みなのでちゃんとしたOdin2との比較はBlackCatレベルを達成してからになりそうです。良い素材を組み合わせてただ作っただけでは良い音にはならないというのはちょっと考えれば当たり前の話だったのですけど参考になりました。やはり最後の耳での調整が必要です。

実はこれと同じようなことはDACやパワーアンプの開発で分かっているはずですが(良いDACチップを使ってもハイエンドの音になるわけではない)、残念ながらケーブルはそこまでの意識はなかったということです。まだまだ見識も技術も足りないですね。

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2018春ヘッドフォン祭り

MEZE Audio EMPYREAN

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上品で自然な音です。中高域は非常に素直な描写でなめらかな音。特定帯域に癖のようなものはありません。全帯域で綺麗な出音です(革パッド時)。これが布パッドになると中高音が奥に引っ込んでより大人なしい音に、そして高音は若干荒くなります。布が音を吸収してそのような音になっている印象です。

弱点としては中低域の課題があり、常にベールの掛かったような見通しの悪さがありました。しかもベールは比較的ワイドレンジで奥行きが見えない感じです。奥行きを気にしない人は気にならないかもしれません。これはE3の電圧モードでは特に顕著です。電流モードでは軽減しますが完全に払拭はされません。

ということでEMPYREANは一見とてもキレイで粗が見えない素晴らしい音を出す製品かもしれませんが、Utopiaのようにどこまでもハイエンドの世界を見せてくれるような懐の深い製品ではないかもしれません。懐の深さが制限される理由は外部機材ではなくヘッドフォン自体の性能によって奥行きの描写力そのものが制限されてしまうことです。

E1+E3というセットは十分ハイエンドクラスと言えますので、それをもってしてもこの音だとすると機材をアップグレードしても伸びしろに悩むヘッドフォンかもしれません

デザインと仕上げと装着感はとても素晴らしいし、宣伝広告写真もとても美しくて見てて楽しいです。要するにとても物欲をそそるのですけど、予想価格の4000ドルを考えるとFinal D8000やFocal Utopiaに比べてどこまでも音が良くなりそうなワクワクは今ひとつです。

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マス工房

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噂通りお話し好きの方が開発&対応しています。話すととても長いです。CDPがアンプに比べて実力不足とお客さんに言われているとか、試聴のためHugoに接続するためにRCAケーブルを現場で加工した話とか、HIFIMAN SUSVARAの個体が大きく以前比較した時に展示している品が一番良かった話など、多分スペースに行った方はどれか聞いてるかもしれません。

あと内部設計の話も少しだけ聞きました。ヘッドフォンアンプのmodel406が16パラレルプッシュプル(2chステレオで64個!)の出力部になっているというお話を聞きました。しかも大量に購入して選別作業を5%精度でやっているとのことです。これはとんでもなく大変な作業です!値段が高くなる理由も納得です。

肝心の音です。ここでは友人のUtopiaをお借りして普段聞いている音源でチェックしました。

自然できつさを感じないながらも中高域の立ち上がりスピードは極めて早く、一番下の帯域までしっかり伸び切ります。正直言うと高音は荒いと思いましたがCDPの問題でしょうね。とりあえずCDPが問題と思われる要素は除外すると、第一印象として全体的な音調はOji Specialとどことなく似ていますが、最大の違いは最低帯域まで伸び切る点でしょうか。Oji Specialも高性能、高品質の系統の音でしたが低音の伸びの部分ではmodel 406のほうが優位と思います。

ただし低音は意図的にリリースを遅くしているのか、若干柔らかさのある低音です。立ち上がりのゆるさより収束のゆるさのようなものを感じます。おそらくですが、この音は意図してそのように設計しているではと思います。なぜなら普通に高性能を目指して作るとこのような緩い低音にはならないからです。とはいえ当方の知らないような設計手法で高性能を目指した結果このようになっている可能性もありますけれども。

これは価格は高いですが現時点では最高性能に近いヘッドフォンアンプではないかと思います。比較対象になりそうなのはゴールドムンドのヘッドフォンアンプですね。あちらもかなりパワフルでした。絶対的なパワーはゴールドムンドが上かもしれないですが、キレや描写力の高さではmodel 406のほうが良いかもしれません。E1もありますけどE1は全く音が違うので選ぶ際に迷うことはないと思います。

それにしてもゴールドムンドはスピーカを鳴らす回路と同じものをヘッドフォンアンプに持ってきていますし、マス工房の設計は多パラ設計です。このあたりのお話を聞いて思ったのは電源の性能が必要十分となった以降の最終性能を決めるのは、フィードバックによる見せかけの測定抵抗ではなく真の電流供給能力を決めるトランジスタの抵抗、そしてエミッタ抵抗、このあたりをいかに詰めていくかが出音の限界を決めるのでしょうか。

HIFIMAN SUSVARA

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マス工房さんで最後にSUSVARAを聞かせていただきました。

このヘッドフォンはUtopiaと比較すると脚色された上品さを感じます。基本性能は高いですがそれだけではなく、中高音に何かが響いているような音がします。最初ヘッドフォンの箱鳴りかと思ったのですが、手でヘッドフォンを抑えても印象が変わりません。

それはどういう音かというと、耳が敏感な数kHzあたりにかけて収束が遅く余韻が長い帯域があります。それが音を若干丸めており、ちょうど嫌味がない程度に聞きやすくデフォルメしている印象がありました。響きは音をマスクする代わりに程よい響きは音楽的に良い効果をもたらすことがあります。

そのお話を伝えた所、マス工房さんの見解ではこれはユニットの分割振動だそうです。このSUSVARAの個性についてはしっかり認識されているようです。

またHifimanは個体差があり、いくつかの個体では低音が出なかったり高音が出なかったりということもあるそうです。決して安くはない高額品で個体差が大きいとなると購入するのは躊躇する理由になりそうです。

Final D8000

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本日最後となるFinalです。実はこの日は体調が悪く前日まで頭痛が酷かったので会場に到着したのが既に夕方だったのでここで終わりです。

D8000については以前から大変高い評価のレビューをたくさん見かけていたので興味がありました。ショールームもオープンしているらしいのですが月2回でしかも予定は公開されていない関係もあり今まで一度も試聴をしたことがありません。今回が初となります。

接続機器はQueStyleのヘッドフォンアンプでした。こちらもいつもの音源で音をチェックしますが、とてもクリアで高速応答なのが印象的です。ちょっと高音が荒れているように聞こえましたがこれはアンプまたはDACの性能限界によるものだと思います。もっと良い機材ならもっと綺麗な高音が出そうなポテンシャルは感じます。そして最大の特徴は低音ですね。

この低音は今まで一度も聞いたことがない領域の応答速度です。Utopiaを聞いたときはSPオーディオの延長にある自然で伸びのある低音だったのですが、D8000の低音は現代のどのハイエンドSPでも実現できないような超高速の低音じゃないでしょうか!それこそYG Acousitcs Sonja XVの内蔵ネットワークをバイパスしてゴールドムンドのハイエンドアンプでウーファーを駆動したらようやくこのような音になるのか?と想像してしまうような音でした。ショーやショップで聞いたXVではこんな音は出ていません。大げさかもしれませんがこれは間違いなく未体験の音です。

「YG Acoustics Sonja XV」の画像検索結果

少し実例を上げて書きますと「バスドラの音の違い」でわかります。普通のシステムだとボゥーンって感じです。これはフロアスピーカを使ったオーディオだとよくありますね。ハイエンドじゃないシステムだと小型SPじゃない限り大抵こんな感じです。立ち上がりが遅くて収束もゆっくりな感じです。箱も響いてたりしますので余計収束が遅いです。これがとても駆動力が高いアンプと現代的ハイエンドスピーカシステムだとボン!とかボッ!って感じになります。先ほどのUtopia+model406もボン!くらいですね。ボッ!ってほど早くはないです。これがD8000ではバツ!って感じに聞こえました。D8000の場合は低音のはずが高音混じりに聞こえます。それこそ常軌を逸した早い音です。

これを聞いて「どのようなシステムでもそんな音は出ないので誰も気づいていないだけで波形本来はこういう音なのか??」と思ってしまいました。丁度DAVEを初めて聞いた時を思い出します。これは未知の音を聞いて違和感を感じている瞬間です。D8000を購入することによって今まで見えなかった世界が見えるかもしれない…とても興味を惹かれました。

そう言えば、みなさんのレビューでD8000はヘッドフォンらしい近い音、Utopiaはスピーカらしい距離感のある音とありましたが、それはこの部分の違いがその理由かもしれません。D8000はヘッドフォンでしか出せないようなスピーカを逸脱した世界に突入しています。反面Utopiaはスピーカから出る音を逸脱しない範囲で最高の音(もちろん超高性能)だと思います。

もちろん今回の試聴だけだとどちらが優れているのかはわかりません。D8000は今回の印象で素晴らしいポテンシャルを感じたので購入に向けて検討したいですね。可能であればショールームにUtopia、DAC、アンプを持っていってD8000の真価を確かめたいです。もちろん購入前提です。それでこの日体験した通りの実力があるなら購入確定です。祭り当日の荒れた音では高音の評価が出来ないのでそれも本試聴に預けたいと思います。

体調が悪い中、無理してでも来てとてもよかったです。ようやくヘッドフォンがスピーカとは別の道を行くための入り口が見えたのでしょうか?D8000が指し示す道はもうスピーカと比較するような世界ではない、ヘッドフォンだけの高みではないか。そんなことを考えました。

おまけ Final E5000

「Final E5000」の画像検索結果

写真をとり忘れたので公式画像です。

D8000を他の方が視聴中だったのでその間にこれをぜひ聞いてくださいって渡されて聞きました。正直イヤホンは全く期待してなかったのです。ちょっと前までのイヤホンって値段だけ異常に高い割に音は価格と比例していませんでした。変な音作りのイヤホンばかりでまともなメーカーはほとんどありません。大手ですら高級機は派手すぎる音作りだったりして未成熟な業界だなって正直思っていました。

だって昔のヘッドフォンと全く同じだからです。ヘッドフォンもそういう時代がありました。価格と音質が比例せず癖のある高級機も多かったです。自分も昔はゼンハイザーと出会うまではそんな高級機の一部を使ってました。でも今のヘッドフォンはとても洗練されました。高いモデルは相応に高性能になっています。

その点でイヤホンはまだまだ高いからと言って高性能とは言えない昔のヘッドフォンやヘッドフォンアンプが流行した頃と同じような世界が広がっていました。これはeイヤホンで百種類に迫りそうな大量に並んでいるイヤホンを片っ端から聴き比べた結果の印象です。10年後にはいまショップに並んでいる半分以上のブランドが無くなっていると思います。多分いままでは多種多様な可能性が生まれてほとんどが消えていくカンブリア時代のような時代だったのです。

E5000、これは良いです!今まで聞いてきたイヤホンの派手さとクオリティの低さの両立ではなく、これはちゃんとまともな音がします!低音はボンボンしますが中高音はよく出来たスピーカオーディオを思い起こさせるような自然さと空気感があります。イヤホンでこんな音が聞けるとは思いませんでした。

ただ低音は遅いし量感過多ですね。不自然なくらい持ち上がっていてスピードもかなりゆっくり、先程あげたバスドラの例で言えばぼよよ~んって位遅いです。スピーカでもここまでゆったりな感じのシステムはなかなかないです。もしかしたらこの音は耳の中の水分の影響なのかなって思いました。密閉だと低音が逃げないので耳の中でエネルギーが減衰せずに共振してるとしたらイヤホンもある程度低音だけ逃がす構造が必要になっていくかもしれないと思いました。(現場の方にも仮説程度にお話しました)

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ラブライブのハイレゾを後処理で改善する方法

今回使う音源はラブライブのハイレゾです。ここで落としたか忘れましたが多分他の配信サイトでも同様の内容になっているはずです。全部落として比較したわけじゃないのでなんとも言えないですが、多分96kHz/24bit以上の音源を入手しているなら同等の内容の対策が可能かと思われます。

今回は研究用素材として一部引用します。著作権は引用ならば認められていますので、必要な引用ということでよろしくお願いします。そのためにPV尺よりさらに短縮しています

Snow halation μ’s(ラブライブ!)

http://www.e-onkyo.com/music/album/lacm47742/

まずは元波形を見てみましょう。こっちがCD版、

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こちらがハイレゾ版です。

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若干良くなってますがそれなりに圧縮されています。このハイレゾは全然ダメでしょうか?まぁ理想ではないですけどCD版よりはマシですね。ですが若干レベルは上げすぎでしょう。折角ダイナミクスに余裕のあるハイレゾフォーマットでやるべき処理ではないです。天井にほとんど突くかつかないか位が理想です。たまに突くくらいなら別に良いと思いますけどね。

個人的な意見ではハイレゾ版はCD版より波形で見るより大分マシです。ハイレゾ版で良かった部分はミックスをやり直していると思われる点、実はそれが一番効果がある部分だと思います。でもまだまだ若干潰しすぎなところがあります。あとミックスのやり直しでCD版より悪くなってる部分が幾つかあります。このあたりは後で説明します。

CD版とハイレゾ版はミックスが違う

とりあえずCD版とハイレゾ版で重要なのはミックスが変わっている点でした。聞いた印象が全然違います。具体的に音源を出して聞くべきポイントを説明します。まずはCD版のほうですが、公式動画がありましたのでこちらを紹介します。

こちらが配信されているハイレゾ版のミックスです。mp3になってますがニュアンスは判別できます。

CD版では出だしのピアノがコンプが掛かってる音色です。動画では0:05のところのピアノ和音のアタックに注目するとわかりやすいと思います。この部分が硬い音になっています。和音でエネルギーが集まっていますから、音量がスレッショルドを超えコンプが音を圧縮しています。そのためアタックが妙に目立つ音になっています。この部分はリミッターにかかるレベルじゃないのでミックス段階で各パートを潰しまくっている証拠です。ラブライブの音質的問題はミックス段階から始まっています。

下のように波形で見ても違いがわかります。CDではアタックがきつくなっていますがハイレゾ版は立ち上がりが滑らかです。自然なアタックはハイレゾ版だと思います。

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しっとりアコースティックなソロピアノのイントロなのにいきなりコンプ掛けてるセンスを疑います。エンジニアもアニソンポップスなんてこんなもんでいい的な適当な感じで処理してるんでしょうか。普通バラードっぽいアコースティックなピアノにはこんなパツパツのコンプは掛けないと思います。

もちろんピアノにコンプ掛けて効果的な例としては、ダンス系楽曲などで切れのある音色に加工されたピアノありますけど、これはそういう効果的な使い方とは全然違います。アタックの鋭さが必要なシーンでもないし、ただ雰囲気を壊しているだけです。その点でもハイレゾ版は自然な質感になっていて良好です。

ただハイレゾ版のほうはミックスの時間が無かったのか細かい処理はCD版のほうがニュアンスが良くてなかなか悩ましいです。本当はハイレゾ版の自然な音色でCD版のようなバランスが取れていれば良かったのですけど、残念ながらハイレゾ版は若干パサパサした質感になっていて、やや乾いたSnow halationになってしまっています。これはあとから直すのは結構大変ですが、後ほどこのあたりの補正もチャレンジしてみたいと思います。

本来のダイナミクスを若干でも復活させる方法

とりあえずハイレゾ版はコンプがあまりかかってないミックスなのはわかりました。では次にハイレゾ音源の素材を使ってここから多少ダイナミクスを復活させてみたいと思います。これで完全に戻るわけじゃないですが多少はマシになります。

ここで使うのはカラオケ音源です。カラオケ音源とボーカル入りは普通同じレベルで収録されています。そしてボーカル入りにレベルが合わせてあるのでカラオケ音源の方はボーカル入りよりダイナミクスに余裕があります。オケの本来のダイナミクスはカラオケ音源に収録されているということです!これを利用します。

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こちらではCubaseでやってます。未だに古い5ですけど新しいバージョンでも同様の処理は出来ると思います。下の画面のようにカラオケ音源を二つ、ボーカル入りを一つ並べます。

その後の手順は次の通り

  1. カラオケ音源とボーカル入りを貼り付けて片方を逆相にする
  2. これでボーカルだけ抜き出した音声を作ることが出来る
  3. ボーカルだけのトラックを作る。一度書き出した方がわかりやすいです(ここではグループチャンネルにセンド)
  4. ボーカルだけのトラックとカラオケ音源を混ぜる

そして、このボーカル音源とカラオケ音源をミックスして出力したのが↓です。音量がオリジナルより低いですがその分ダイナミクスは確保できています。カラオケ音源のほうがリミッターの被害が小さく、収録されているダイナミクスが大きいので、この方法によってそれを最大限に活かせるというわけです。

ただしここに貼り付けている16bit mp3だと音量が小さいためちょっとイマイチなところもあるのでダウンロードする余裕がある方はこちらの24bit wavのほうで確認してみてください。

これを波形で見るとこんな感じです。

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波形だけ見ると大分余裕があるように見えます。音の方もオリジナルのハイレゾ版と比較してボーカルが入ってきてもまだ余裕がある感じになっています。オリジナルのハイレゾ音源はボーカルが入ってくると急にレンジが足りなくて苦しそうな音になるのですがこの方法によってこの点は大分改善します。

ここから更に自分好みに調整出来る

ここまででオリジナルに忠実なダイナミクスの確保作業は終わりました。あとは好みに合わせた個別調整です。上記のボーカルを抜き出したものと、カラオケのトラックにそれぞれEQを掛ければボーカルとオケで個別の調整ができます。これでミックスの弱点を補う余地があります。自分の好みに合わせて一度作業してみたのでここで紹介します。

これが完璧な処理ですとは言いませんが、自分がこだわっている部分については多少良くなっているのではないかと思っています。もちろん各人音の好みはあると思いますので、気になる方はここに紹介した方法で各自で好みの調整を是非やってみてください。

こちらのEQ処理で意識したのは次のとおりです。

  1. 左右のギター、ピアノなどの中低域にあるべき生楽器の質感をできるだけ復活させる
  2. ドラムのスネアとハイハットのアタック等、荒々しいバランスを抑えて優しい音にする
  3. 上記を満たしながらモコモコした音にならないように、できるだけ被り成分を除去する

基本的にはSnow halationという楽曲のイメージを補強するような調整です。ハイレゾ版もCD版も楽曲の方向性からみて音が激しすぎに感じています。多分オリジナルのミックスをやった人はこういうジャンルは得意じゃなくて、もっと元気でビシバシした曲が得意な人なんだと思います。とにかくドラムが元気良すぎで悪目立ちするところが気になります。なので基本はその部分を抑えて、しっとりとしてアコースティックな感じに多少でも近づけたいと思います。

まずオケだけをEQ処理したものです。処理前と処理後を貼ります。

処理前↑

処理後↑

どうでしょうか?そしてこれにボーカルを載せると↓のような感じです。もちろんボーカルの方もオケに合わせて被りの防止のため、低音を切ったり処理をしています。低音部の処理でなかなか難しいところがあるのですが、これのために延々と微調整を繰り返してもなかなか時間ばかりかかってしまうのでこの辺にしておきます。24bit wavはこちら

ここで伝えたいのは、これがあるべき姿ですよってことじゃなくて、カラオケ音源とボーカル入りを打ち消すだけでこういう処理が出来る可能性が広がりますということが一番伝えたいことです。このようにすれば処理次第ですが沢山の可能性が見えてきますから、あなたのお気に入りの音源で、音質がどうしても気に入らないって場合はこうやって少しでも好みに近づける方法はあるということです!

2017マラソン試聴会とヘッドフォン祭

新生ソナス Amati Tradition

数kHz帯域に幅広いピークか共振帯域があるように聞こえます。以前のフランコモデルではなかった特徴です。これが独特の緊張感をもたらしており、リラックスして聞くというより楽器にかぶりついて聞く印象になっています。またそれより上の帯域も若干きつめの音になりがちなので正直SPとリスナーの間にカーテンを引くくらいでちょうどいいと思いました。

川又さんが鳴らしているときはそうでもありませんが、最初部屋に入った時に別の人が鳴らしていました。このときの弦の音がきつくてかなりよろしくない音でした。生の自然な音とはかけ離れたハイが悪目立ちする音です。オーケストラの生音はこんな音してません。酷いです。

そのあと川又さんが鳴らすと大分バランスが良くなりますね、不思議ですけど。そうなると今度は残された中高域のピーク感が目立ってしまいます。この時の音はとても悪い音だとは思わなかったですが、オケを聞かせるスピーカならこのピーク感は無くしたほうがずっと良いと思います。勿体無いです。

中低域の響きは楽器の胴鳴りを思わせる質感で良い意味の余韻があります。この辺のソナスのスピーカらしくない響き方は以前のモデルを継承しており良い印象がありました。

個人的にはですがもう少し中高音の押しを和らげたらもっと聴きやすい曲が増えると思います。新生ソナスは現代ハイエンドに突き進むよりも中低域の響きの良さに見合うように中高域のバランスを整えた上で現代的に進化できる方向性を模索するべきです。

B&W 800D3

低音はこの中で一番タイトです。バスドラの録音では膨らみもなく一番発音も収束も早いです。どこまでも伸びる低音ではないですが低音の速度の描写力は非常に優れています。若干細身な低音ですけど無駄に膨らんでいるよりは個人的には好印象です。

マラソン試聴会のデモでは3wayの音が完全にばらばらで一体感がないことが何度かありましたが、この日は中高音の繋がりもあまり気にならなかったです。着実にシリーズの進化を感じました。

一番気になったのは高音のピークです。多分ですけど可聴帯域かもっと上の方、かなり上の方で強いピークがあって、曲によっては発音時にとてもきつい音が出てました。ですがおそらく帯域外かそれに近い領域のように感じたので、このあたりはケーブルや周辺機器のバランスで調整できる範囲とは思いました。

この部分をうまく調整できればこの中では現代的ハイエンドとしては最もハイクオリティで好バランスだと思います。

Focal Scala Utopia Evo

高音の自然さはこの中では一番良かったです。ベリリウムツイータですね。弱点は低音が膨らみがちなことです。明らかに箱が鳴ってます。鳴り方もいかにもスピーカという感じの鳴り方なので、ソナスのように音楽的でもないです。量感はありますからゆったりした低音を好む方には合うと思うのですが、この日の比較では他が現代的なスピーカだったので直接比較すると気になってくるところです。

最後に川又さんがどれが良かったか聞いてましたが、このスピーカが一番支持が少なかったです。良さがわかりにくかったか、ちょっと箱鳴りが強い古い音に感じた、最後にかけていた曲がこのスピーカに合ってなかった。そういう要因じゃないかと思いました。当日の評価よりは良いSPだと思います。自分的には現行ソナスよりは良いと思います。この日の音は低音がゆったりしていても違和感がない曲が合ってそうです。

スピーカ比較まとめ

個人的評価は、高音はFocal>B&W>Sonusで低音はB&W>Sonus>Focalというところです。総合評価だとB&Wでしょうか。

dCS Vivaldi DAC vs MSB Reference DAC

Vivaldiは華やかな高域です。以前にもVivaldiの音はレビュー書いてますがMSBとの比較だと圧倒的な力強さみたいなのは感じなかったです。MSBと比較するとVivaldiは明らかに色付けを感じる高音なのですが、むしろそれが受けてる要因かなと思います。途中でどちらが良かったか聞かれましたが会場は8割くらいVivaldiでしたね。

MSBはおとなしくて上品で奥行きが深い音でした。今までの路線の延長線上です。地味な音なのですがクオリティは相当高いです。個人的な評価軸だとVivaldiは減衰を最後まで描けておらずMSBのほうが潜在力は高いんじゃないかと思うのですよね。この日はプリアンプ経由なのですが、プリアンプをなくして直結で比較したらMSBのほうが圧倒的に良かったのではないでしょうか。

でも殆どの方はVivaldiを選びました。ここからわかるのはこの領域になると基本的なクオリティはどれも一線を越えており、音楽的な描写の仕方やぱっと聞いた音色の印象のほうが重要ってことです。基礎クオリティはミドル価格帯(100万円以内くらい?)までのDACでは支配的ですが、100万円を超えてハイエンド以上になると音楽的趣向のほうが支配的になるということのようです。

HIRO Acousticの印象

中高音は最高です。キレも透明感も無駄な贅肉がなくてスピードが見えない自然さ。でも低域は高音に追いついてないと思うのです。今回もその印象は変わりませんでした。高音が完璧すぎて低音の不完全さが気になってしまいます。

誤魔化す余地のあるようなスピーカではないのでこのモデルはここから先難しいです。低音を完璧にするのはほぼ不可能だとすると中高音を低音に合わせなければなりません。そうすると現状よりトータルのクオリティが低下してしまいます。

となるとHIRO Acousticが現在も継続して低音の改善に力を入れている通り、これ以降も低音を改善し続ける必要がありそうです。いつか完璧な低音が出るようになった完成形を聞いてみたいです。それはもしかしたらSonja XVを超える可能性があります(その日は来ないかもですが)。

ヘッドフォン祭り 2017秋

前回に行けなかった注目2ブースについてだけ書きます。カメラを持って行き忘れてしまったので写真は無しです。ネットにあるのでそれをお借りしました。今回はどちらもメーカー公式画像です。

Kurada

噂のフルオープン特注機の初試聴です。音はとても透明度の高い中高音と膨らみがちで歪む低音という珍しいコントラストです。どこまでがヘッドフォンでどこまでがシステムの音なのかちょっとわからないですが、トータルでは普通にハイエンドクオリティ!超個性的ですが突き抜けてて良かったですね。

全体的に音は厚めです。中高音も繊細なのに厚みがあるっていう面白い音です。多分低音以外の歪率も高いせいだと思いますが、むしろいい音です。おそらくですが中高音の歪率が高くてもノイズが少なく澄んでいて、前後感も質感も見えやすいかなり緻密な音質です。駆動も自然なのに力強く無理しているようなところを全く感じさせないのは前回のE1Rの印象と同じです。定位も広くて余韻も深いです。

ただ音数が少ない曲だといいのですがベースとバスドラ、それ以外に中低音が複雑に重なってくる楽曲だと低音の描写にとても違和感があります。普通じゃない低音の出方です。ベースの重心が高すぎて一番下がスカスカです。500Hz以下くらいにとても大きな膨らみがあって、本当の下の方は全然出てません。歪率もとても高い帯域になってくるので明らかにベースの音色も異質。ディストーションな感じです。

このシステムはそういう曲よりも音数の少ないしっとりしたバラードみたいなのが合うと思いました。やや濡れたような質感があって厚みと透明感を両立しているのでハマったら抜け出せない強い個性と魅力があります。

最後にアンドリューさんに直接色々話を聞いたのですが、どうやらE1Rとフルオープンの組み合わせがこの独特の低音を出しているそうです。普通はそこまで低音が出ないそうなのですがこの組み合わせだとかなり低音が出てしまうそうで、再生されている周波数特性自体がフラットではない可能性もありそうです。

ブリスオーディオ

ここは現代的なハイエンドの追求って印象でした。個性がとても強い音ではなくて基本は王道の無色系ですが独自の個性は感じました。

肝心のヘッドフォンケーブルですが最初はミドルクラスのケーブルだったのですがせっかくなら一番いい音を聞かなければなりません。すぐに最上位ケーブルに変えてもらいました。Murakumoで試聴したこのシステムは素晴らしい中域の描写力がありました。音の減衰の描写力はこの日聞いた中ではトップクラスでしょう。最初のミドルクラスケーブルのときは僅かにざわざわした音がしており、やはりここのケーブルによる仕上げの影響力は大きいです。

その他の特徴としては恐らくヘッドフォンアンプの特徴だと思うのですが、とんでもなくハイスピード系なのに低音が一番下の方まで出てないことです。駆動力がこれ程高かったら低音も伸びそうなのですがそうでもないです。そしてその代わりに低域よりちょっと上の中域が普通よりも強いというか、発音した瞬間だけ強い密度感がありました。

高域が刺さるって表現はよくありますけど、ここの音は中域で殴られる感じって言えば良いのでしょうか。超低音に来るはずのエネルギーが中域のエネルギーになっていてそれが瞬間的に来る感じです。高音が刺さるのが針で刺されている感じだとしたら、ここの音は丸太が飛んでくるイメージです。中域でエネルギーが爆発してるので中域の透明度が最も高く感じるのかもしれません。これは他のハイエンド系のシステムでもあまり聞いたことが無い感じです。

低音が伸びなくなるような、アンプ駆動力が足りないときって普通は少し上の帯域に厚みが出て発音と収束がその帯域で遅くなることが多いですが、ここのシステムはそういうスピードの遅さは全くありませんでした。エネルギーバランスは最低音域より大分上に来てるのに瞬間的に音が全部放出されて素早く収束する印象です。これはちょっと不思議な音の出方です。上流で低音が出て無くてアンプの駆動力が絶大だったらこうなるのでしょうか?といってもDSP-Velaがそんなに駆動力がないとは思えないのでたぶん違うと思います。

あとここの音は現代的ハイエンドサウンドが基本ですが意外に高音はわずかな華やかさがありました。ちょうどVivaldiを10、MSBを0としたら1くらいの華やかさです。とても控えめな演出ですがあると無いとではだいぶ印象は変わるかもしれません。たとえば減衰の描写がとても明瞭に聞こえる理由に、ケーブル品位+この華やかさがアナログディザー的に貢献している部分もあるように思いました。

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Focal utopia レビューと比較

結論から言えばUtopiaは現在最高のヘッドフォンのように感じました。といっても現状ですべてのハイエンドヘッドフォンを聞いたわけではありませんので暫定です。しかしLCD4等の既存の有力高額機との比較では圧倒的な差を感じています。あくまで個人的な感想です。(LCD4は以前のイベントでの比較です)

このヘッドフォンからの出音は自然で弱点や欠点が見えないです。全帯域で立ち上がりと収束が早く、とても見通しが良く、バランスも良い音に感じます。これは基本的な性能の高さを感じさせます。

一般的に、より優れた製品との比較でなければその製品の欠点は見えにくいものですが、現時点ではUtopia自体にはそういう大きな欠点は見えないです。ヘッドフォンはスピーカよりも個体の個性や癖を感じやすいと個人的には思っていますが、初めての視聴時でも全く違和感を感じなかったのは凄いです。そして駆動力の要求もそこまで高くありません。駆動力を入れないとダメじゃなく、駆動力を入れなくてもそこそこいい音です。

ですが既に出ているレビューでもある通りUtopiaはその高性能故に容赦なくシステムの欠点をさらけ出します。これはUtopia自体の問題ではなくてシステムの問題です。Utopiaはシステムに問題があればその問題を突きつけるヘッドフォンでもあります。欠点が見えるとそれが気になってしまうような人にとってはその性能の高さゆえに聞きたくない音を聞く結果となる可能性もあります。

Utopiaを使って一番感激したのはマスタリングでEQいじった結果がスピーカで聞いたときの印象と非常に近いことです。従来のヘッドフォンでは緻密な作業をした結果がスピーカと同じ印象にならないことが多かったです。どういうことかというと、ヘッドフォンではいい感じでもスピーカで聞いたら音がキツかったりアンバランスな面が見えたりということです。

ですがUtopiaは使ってさほど時間が経っていない=使い慣れていない状態でもスピーカとヘッドフォンの印象の差がとても少なかったのです。いままでこういうヘッドフォンはなかったので驚きました。ヘッドフォンで緻密な作業をしたあとでスピーカで聞いても印象が変わらないというのはそれだけ自然な音が出ているということだと思います。もちろんSPとヘッドフォンで同じ欠点を共有しているということではなく、見える部分は違います。

同社のElearも基本的な方向性は同じですが、こちらはUtopia比で明らかに中域の広い分布で音が曇って感じました。そのため上記のようなシステムのあら捜しが気になる状況になりにくくElearのほうが大らかで扱いやすいと思います。基本的な音の方向性は同じでバランスが良く速度も揃っているので使いやすいヘッドフォンだと思います。よりシステムの嫌なところを見ないで済むのはElearです。そのかわり絶対的な伸びしろはありません。

ですが真実の音に近いのはUtopiaだと思います。絶対的な頂点を目指すならUtopiaが良いでしょう。ElearとUtopiaの実力は価格に見合うものか、もしかしたら価格以上の格差があるようです。

今回はUtopia単体のレビューだけでは特徴が見えづらいと思いましたので、比較としてLCD-2とHD800を使います。

Audeze LCD-2との比較

LCD-2は低音寄りの周波数バランス、透明感のある中高域、ややゆったりとして伸びやかな低音が特徴です。LCD-2は低域の遅さを除けば繊細な余韻の描写もこなせますし、帯域の塊や癖が非常に少ないので基礎クオリティはそこそこ高いヘッドフォンです。

LCD-2とUtopiaで最も違うのは低音部です。LCD-2は駆動力のあるアンプを持ってこないと低音が出ません。LCD-2の伸びのある低音も駆動力のあるアンプとのセットでしか表現されません。またどんなに駆動力のあるアンプでも基本的な傾向としてスピードが遅く柔らかい低音の雰囲気は残ります。

これがUtopiaになるとハイスピードかつ伸びのある低音になります。LCD-2ではどのようなアンプを持ってきてもここまでの低音の速さは出ません。アンプへの駆動力の要求もLCD-2ほどではなく、Utopiaなら駆動力の低いアンプでも伸びがあります。

また高域ですがLCD-2は綺麗で滑らかではありますが高域の伸びは控えめでおとなしいです。Utopiaは比較すると綺麗なまま伸びもあって滑らかで余韻まで見える高音です。速度も早く繊細な描写もこなせます。低域ほど大差はないですがここもUtopiaのほうが良いですね。LCD-2はちょっと不明瞭で見えにくい帯域が中高域にありますがUtopiaはそれがないです。

LCD-2は細部の描写力がとても高いヘッドフォンだと思ってたのですが総合的にはUtopiaのほうが良かったです。ダイナミクス面も周波数方面の解像度もUtopiaのほうが高いです。

とはいえLCD-2は価格差があるので音質面の格差も当然ではあるのですが、繊細な描写力と低音の伸びは価格帯の中でも優秀だと思っています。

Sennheiser HD800

こちらのヘッドフォンはUtopiaと一緒に借りました。これも悪くないヘッドフォンなのですが、上記2つと比べると個人的な価値観ではやや落ちる印象を受けました。

特徴としては低音がやや軽く中高域のエネルギーが強い、高音はやや色を感じる方向性、というところです。細部の描写力は上記2つと比べても同じくらいの実力があるのですが、上の方の帯域は明らかに異質です。サラッとした音で常に風が吹いているというのか、Utopiaと比較すると本来の音に混じって風の音が聞こえるように感じました。低音もUtopiaほど伸びておらず、本当に低いところまでは伸びないで途中で消えていくような印象です。

この印象はアンプを良くしてもあまり変わらないようです。良く言えば駆動力に左右されにくいのですが、駆動力を上げて大幅に音が向上する伸びしろも上記2つと比べるとあまりないということのようです。

ということで純粋なクオリティ面ではトップは取れずその伸びしろがあまりないのですが、良いところは音質面以外にあります。たとえば装着感はこのなかでは一番快適だと思います。どんな環境でもそれなりの音が出るのは使いやすさなのでHD800は環境を選ばず快適に一定以上のクオリティを出せるところが最大の強みかと思いました。

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ウェルフロートボードのレビューと空気録音

先日逸品館よりWFB1515-4をスピーカ用に購入しました。SP用ボードは色々なものがありますが今回ウェルフロートボードに決定したのは次のような理由からです。

  1. 部屋が木造の2Fで床強度が弱い
  2. ツイータ位置が低すぎるので高くしたい
  3. 振動を活かしたSPではないので共振を殺しても問題ない

特に2番の条件に合うボードは少ないです。分厚にボードが必要ってことですからね。これらの条件を見るとウェルフロートボードはうちのニーズにピッタリ合っていると思います。

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