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中国の偽Nordostの検証とケーブルの音質差比較


最近こちらで話題になっている、中国産の偽物ケーブルです。ヤフオクを見ると偽物が超高額で落札されていたりと非常に恐ろしいことになっています。ここでは実際に中国から直接偽物を購入して音質の検証、本物との違い、について考察してみたいと思います。またケーブルを変えて音も録音してみましたのでそれも後ほどアップ予定です。

オーディオ目玉親父さんのページ
http://messa.air-nifty.com/blog/cat6397686/index.html

偽物を購入!

実際にサイト内検索でオーディオケーブル関係を調べてみると、本物だか偽物だかわからないようなもの含めて怪しい品物が膨大にあって怪しげな魅力があります。写真の撮影や見た目も良く出来ており中国の偽物に掛ける情熱は凄いと思わされます。

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自分は今回このなかからOdin XLRとRed Dawn Speaker Cable、どちらもノードストの偽物ケーブルを購入しました。最大の目的は偽物の音質と実力チェックなのですが、なぜノードストを選定したかというと次のような理由からです。

  • 本物のケーブルをいくつか持っており、ミドルまでのラインナップ試聴の経験があるので本物の音質傾向を知っている。
  • ケーブルの構造が同社の最大の特徴なので、偽物であっても構造上の音質メリットは期待できる。見た目だけで音は残念ということが起きにくい。
  • オリジナルが透明シースを多用しているため偽物を作るために構造ごと真似る必要がある。中身が見えないケーブルはいくらでも見えないところで手抜きができてしまうため、見た目だけで音はゴミということがあり得る。
  • ノードストの音質、仕上げのデザインが好きなこと。最後はやっぱりこれ。

ということで実際に購入して本物と比較することで、手抜きの程度、構造による音質的影響がどの程度かを検証してみたいと思います。

とりあえず定価と比較して異常に安いものは100%偽物だと思っておけばOKです。よく見ると偽物と分かります。たまに本物にしか見えないものも確かにあるのですが偽物と比べて割高ですし、本物だったら今回の目的に合った検証とはなりませんので、今回は偽物の実力検証ということで、わざわざ見た目や構造がよく出来ていて明らかに偽物だとわかるものをあえて選びました。

ノードストの偽物の見分け方(一例)

購入したRed Dawn SpeakerとOdin XLRの見分け方です。

Red Dawn Speaker

Red Dawnのスピーカーは単一の太さを4つに区切っています。なのでそれ以外の構造のものは確実に偽物です。ただし、この構造まで本物そっくりなものも中国で売っていますがそれは本物かもしれないし偽物かもしれません。ちょっと割高なのがなおさら本物感あるのですが、これは本物だと思って偽物だったらショック!なのでそういう危ないのには手を出していません。

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↑本物 バイワイヤに対応するためか4つに区切られている。導体の太さは均一

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↑購入した偽物 4つに区切られておらず導体の太さが2種類入っている。実はこの構造は本物のRed Dawn RCAと同じなので、本物のRCAに似せて作ったSPケーブルなのでしょう

Odin XLR

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↑本物

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↑本物 かなりギラギラしてます

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↑今回購入した偽物 よく見れば明らかに違うのがわかります。ヤフオクでは気をつけましょう。買うなら偽物のつもりで。高額では絶対に落札しないようにしてください。本国では16000円位です。

ケーブルの構造と素材、音質の関係

こちらは過去の経験からまとめてみたいと思います。まずケーブルによる音質差は大きく構造と導体で決まるように思っています。一番貴重で重要な経験はこちらの電源ケーブルの比較でした。特に異質な金属導体による音の変化は銅や銀以外に対する音質変化への理解、ケーブルの音の変化への影響を知るうえで大きな体験でした。

http://community.phileweb.com/mypage/entry/1641/20120623/31456/

もちろんこのエピソード以外にも、非常に高価なものを除けば色々な種類や構造のケーブルを試したり比較したことがあります。なのでなんとなく音質の傾向が見えてくる部分があります。(とはいえ10万円以上のケーブルを並べて比較とかは予算の関係で無理ですので、決してそういう高いレベルでの比較ではありませんが)

これらからの経験で感じたことは導体の音質、構造の音質、これらが独立した別軸で存在することです。金属そのものを変えると導電特性と振動特性どちらも変わるため両方の影響を受け音は大きく変化します。もちろん同じ金属でも構造を変えればそれによって振動特性と表皮効果による導電特性が変化してこの影響でも音が変わります。

基本的には似たような条件同士なら導電率が高いほど音の色付けは減る傾向のようです。金属では銀と銅が優れている特性です。プラチナは導電率は低いので音に色がつきやすい=個性的な音になりやすいようでした。ですが実際に聞いてみるとプラチナの音質、分離は非常によくオーディオ用としては導電率の数値ほど悪くありませんでした。むしろ良い意味で個性的な音色を持っていて分離自体はよいためむしろ好ましい独自の魅力を持っています。

プラチナの音質が良かった理由ですが、仮説として比重が重い金属なのでそれが振動特性で有利に働いたのではないかと思っています。逆の例として導電率はプラチナより良いアルミを使ったケーブルは、音の分離が非常に悪かった理由もその軽さから来ていると考えると一定の説得力はあると思います。このあたり重さと固さも音に関係すると思いますが振動特性が音質、特に音の分離に影響するのではないかという話です。

次に構造の影響ですが、まず構造が音に影響するのは振動特性で、もう一つは表面積と断面積による周波数特性への影響です。構造の簡単な比較は単線と撚り線で、似たような条件のケーブルだと概ね次のような傾向があると思っています。

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振動特性 周波数特性
撚り線 高域が荒れる、ブレる 高音寄り
単線 奥行きと見通しが悪化 中低音寄り

撚り線は表面積が大きいため高音が明瞭なのですが、かわりに導体同士が複雑かつ自由に振動する為か高音のピントが甘くにじんで癖のある音のものが多いです。これは金属同士が直接接触するケーブルでは相当硬く固定していない限りある印象です。そのなかでも線が細い多線の撚り線はほぼ例外なく美音系になる印象です。逆に単線はにじみがなくピントが合った音でストレートながら高音が伸びずおとなしくなりがちで、中低域にエネルギーが集まっている、悪く言えば詰まったような印象です。また単線の構造次第では振動に弱く、奥行きや分離は悪い、音が前に張り付いたような感じになりやすいと思います。

次に断面積ですが、大きい方が低音に余裕がでるように思います。ちょうどトランスを大きくしたような音に似ています。低音が伸びて安定感や余裕のある音とかそういうところです。しかし現実的には太ければ太いほどよいかというとそうではなく。太くするほど構造と表面積とのバランスが難しく、振動面での課題を達成しながら表面積と断面積を同時に稼ぐのは簡単ではないと思われます。ここが各社の工夫が見られるところでしょう。

簡単にまとめると、断面積=低音の強さと安定感、表面積=高音の伸び、という感じです。これにあとは振動の影響が入ってくるわけです。

国産のオーディオブランドのケーブルは伝統的に導体にこだわる傾向があるように思います。7N-8NとかPCOCCなどですね。それだけでも確かに良くなるとは思いますが、構造的な部分に手を入れていかないと一線は越えられないと思います。特により線は導体同士が直接接触している構造ではよほど強固に固めるとか何かの対策をしないと癖のある音から抜けられないと思います。

国産でもラダー型ケーブルなんかは構造による利点があって音も良いですね。これも評判の良いケーブルですが、そのためにはやはり構造は重要だと思うのです。

ノードストのケーブルの特徴

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ノードストは構造設計のバランスが良いと思っています。たとえばきしめんのようなフラット形状の利点は次のとおりです。

  • 導体同士が接触しないので個別振動しない=音のピントが明瞭、にじまない
  • 薄く伸ばすことで表面積を稼げる=高音を伸ばせる
  • 本数を増やすことで断面積を稼げる=低音を伸ばせる
  • 強固な一つの絶縁体で全体を包むことで全体が共通振動となり、個別導体の振動をなくしている

こう書くと利点ばかりのように見えますが欠点もあって、それは耐ノイズ性です。シールドがなくGNDと導体が離れているため、外来ノイズへのシールド性能が弱く空中の高周波を簡単に拾ってしまいます。実際に測定して観測したこともあります。音は良くてもノイズへの耐性はあまりよくありません。

本当の理由はわかりませんが、現行ラインナップからはフラット形状のインターコネクトケーブルはなくなりました。シールドケーブルとして上記のメリットよりノイズ耐性を優先したのでしょうか。

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しかしスピーカケーブルではやはり構造の利点が勝るのかいまでも最上位までフラット形状です。スピーカ出力は信号電圧自体が大きいので、外来ノイズの影響が相対的に小さいのでフラット構造のメリットが優るという判断なのでしょう。

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というわけで以上の理由により、構造さえしっかり確保すれば構造による音質的優位性は、中国産パチモノケーブルでも有効だと予想しました。

では偽物の音質は? XLR編

まずはOdinのXLRなのですが、まずはこちらにあるケーブルと比較しました。昔はRCAが主力だったためXLRは大したケーブルは持っていません。まずはこれらの音質傾向について詳しく書いていきたいと思います。

  • Nordost Blue Heaven
  • Zaolla XLR
  • Belden 87760
  • Belden 8412
  • 偽物 Nordost Odin

Nordost Blue Heaven

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持っているのはこちらの写真と同じものです。古いフラットラインタイプです。このケーブルは国内のショップで試聴してすぐに購入したので間違いなく本物です。そのとき試聴したのはこれとRed Dawn、Heimdall、どれもXLRでこの時既にHeimdallはフラット形状ではなく丸い形状になっていました。

このとき試聴した印象ではBlue Heavenが一番キレがあってブレのない音でした。Red Dawnもほとんど同じ傾向ですが僅かに音が太くなり、低域と高域のレンジが広がったような印象で、ちょうどスピーカのサイズを少し大きくしたような違いに感じました。普通に考えればRed Dawnのほうが上位の音質だと思います。

しかしHeimdallだけ音質傾向が明らかに違っていて、少しキレは減退してややスピードが遅くなったような音でした。高域に若干カラーが有って、低音も膨らみを感じる音でした。良く言えば量感があって色気もある、これは好きな人は好きかなと思ったのですが、より普通のケーブルに近い音で、わざわざNordostを選ぶ必要がないというか求める音じゃありませんでした。

結局RCAでRed Dawnはすでに持っていたのでXLRはBlue Heavenにしようと思ったのでした。Blue Heavenは導体が細いため低音も細めなのが唯一の欠点ですがそれ以外のクオリティは高く、友人が持っていたオーディオクエストの電池付きXLRと比較しても癖がなくストレートな音だったので、今でもこれがリファレンスです。

Zaolla XLR

サウンドハウスで売っている銀線のケーブルです。Blue Heavenより低音は厚く、全体の仕上がりは悪くはないのですが、やはり音ににじみがあります。そのへんの安いケーブルより良いと思いますが、一般的なオーディオケーブルの領域から逸脱はしていないように感じています。

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こちらを見るとシールドに気を配っていること、信号線を二種類の金属を使っていることが特徴のようです。音のにじみは構造も材質も異なる2つの導体を信号が通過しているために、音のブレも生じている可能性がありそうです。これはあえてそういう音作りをしている可能性も否めませんが、真のハイクオリティを目指す場合には途中で障害になりそうでもあります。

Belden 88760

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比較的有名なケーブルです。個人的には低価格のケーブルで最もコストパフォーマンスの良いケーブルだと思っています。撚り線ですが相当硬い被覆なので振動の影響が少ないのだと思われます。かなり音が引き締まっていてレンジもそこそこ、なかなか良いケーブルです。

撚り線のなかではしっかりピントの合った明瞭な音で癖が少なく使いやすいです。ノードストのケーブルと比較しなければまだピントが甘いことには気づかないかもしれません。意外と数万円クラスの価格帯まで手を伸ばしてもなかなかこういう音は出ません。

Belden 8412

このケーブルはちょうど88760とZaollaの中間のような音がします。それ以外は特筆するところはありません。バランスは良いですが突き抜けたケーブルでもありません。とはいえ悪い音ではないので変な個性的な音がする高級ケーブルだとクオリティ的にこれ以下のものも結構あるのではないかと思います。

たとえばやたら太い中途半端なケーブルだと構造上の課題が多いので、その分音質的な欠点も出やすく注意が必要な気がします。そういうケーブルから8412に帰ってくると意外とこれで良かったということもありえるかもしれません。そんなケーブルです。

偽物Odin

さて、偽物の音質です。

標準状態での偽物Odinの音はこのなかではなんとBlue Heavenに最も近い傾向です。最大の特徴はなかなかピントが合っていてキレがある音質。そしてレンジが広い音です。特にピントの合い方は88760より上でBlue Heavenには及ばない程度といったところです。レンジはBlue Heavenよりさらに高域が伸びておりぱっと聞いた時に低音が弱く感じる位です。しかし決して低音は弱くはなくて、少なくとも8412とかZaolla以上にはしっかり出ています。ただそれ以上にハイが一部だけ強くピークを感じる帯域がかなり上のほうにあります。それが僅かに音をにじませており、全体ではかなり強いカラーを放っています。

これはぱっと聞いたらわかりやすい(偽物の)高解像度系ですが、すぐにわかるような耳に刺さる嘘くさい音と感じさせる部分があって、上品で緻密な仕上がりとは決して言えません。Blue Heavenと比較するとにじみもあるので、なんともハイエンドらしくない安直な音づくりに感じてしまいます。

ということで思ったより悪くはないというか16000円のXLRとして考えたら悪く無い性能といっても良いかも知れませんが、数万円のケーブルだったらともかく、超ハイエンドとして考えたら癖が強すぎるし、もしこれに100万オーバー突っ込んで納得できるような突き抜けたクオリティでは決してないと思いました。

ということでこの辺が偽物の限界のようです。特に高域は針のように鋭く尖っている部分があって長く使っていると確実に気になってくる音です。もちろん本物は聞いたことがないし、超ハイエンドのケーブルも直接比較という形ではぜんぜん聞いたことはないのですが、少なくとも偽物は「このような音じゃ高価格で通用しないだろう」と思える音作りに思いました。何よりずっと下位にあるBlue Heavenを突き放せていない時点でダメです。

これだけで終わったらただの偽物試聴と感想だけの記事なのですが、うちはここから掘り下げて偽物の問題点の洗い出しと対策までやります。というかもう結果も出ているのですが、長い記事になりそうなのでまた後ほどまとめたいと思います。結論だけ先に書いておくと偽物の構造的問題点を解決したらBlue Heavenより圧倒的に高音質になりました。やっぱり構造の勝利です。

Red Dawn Speaker Cableの偽物検証

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まず見た目なのですが、これがまた非常に良く出来ています。上が今回買った偽物、下が本物のRCAです。上に本物のスピーカケーブルの画像を貼りましたが本来のRed Dawnは導体が均一で導体のグループが4つに分かれています。なのでスピーカケーブルとしては明らかに偽物だとわかるのですが、本物RCAとの比較では導体の太さ、間隔、光沢、手触り、材質、硬さまでほぼ完全なコピーです。

特に、ニセOdinの被覆はブヨブヨで明らかにテフロンではない安っぽい手触りだったのですが、こちらは本物と全く同じ手触りなのでオリジナルと同じFEPを使っていると思われます。結構コストも手間もかかっていそうです。もちろん導体の純度などは手抜きをしている可能性が高いわけですが…。

さて音質です。比較は本物のSuper FlatLineです。偽物と並べてみました。

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先に、Super Flatlineの音質についてまとめておきたいと思います。今まで比較したケーブルは大したケーブルはないのですが、一部で話題のラダー型ケーブルとの比較はやったことがあります。

ラダー型と比べたときの音の違いは、Super FlatLineのほうがレンジが広く、より引き締まった音です。周波数特性がビシっと平坦に決まっている感じがあって応答スピードも速いです。しかし反面、描写は平面的で退屈なところもあり、細部が太く描かれていて細かい部分が見えにくい部分もあります。このような細かいところの描写の緻密さ繊細さではラダー型が優位でした。ですがラダー型はFlatLineと比較すると周波数応答にやや癖があるような気がしました。癖の少なさはFlatLineが優位です。ということで両者一長一短という感じでどちらも失うものがあって絶対的な優劣ではないという印象に感じています。

ではSuper FlatLineと比較した時の偽物Red Dawnの音です。基本的なスピード感やレンジはほぼ同等でありながら緻密さ繊細さが加わったようです。トータルではSuper FlatLineより優位です。しかしほのかに雑味を感じる部分と低音が少しだけ弱いと感じる部分があって、これは導体の品質がオリジナルより劣っているせいかもしれません。純度が低い導体かそもそも銅より安い金属を使っている可能性もあります。もう一つの可能性は導体の太さが二種類なのでこれがスピーカケーブルではうまく適合しない結果かもしれません。本物はスピーカケーブルのみ均一な太さですから、それにはちゃんとした理由があってもおかしくありません。

残念ながらこのあたりは検証することができませんが、Super FlatLineの本物が25000円程度だったことを考えると、これも15000円の末端処理済みケーブルとしてはなかなか性能が高いと言えそうです。導体の質がダメダメだったとしても構造による音質差は(この価格帯なら)優位ということになりそうです。

長くなりましたので続きはこちらです。