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新しい環境と新しいスピーカ(Duntech)

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Duntech(Dunlavyの古い型)の導入記です。いつもの録音データもアップしています(録音データは一番下にあります)。

これは相当古いSPですが今でも通用する高性能な箱の設計になっています。いまどき珍しい等位相なのが最大の特徴です。ただしユニットは古いので音質的にちょっと不満な点もありました。そこで新しいユニットへの交換もやりました。

このページはDuntechの測定と試行錯誤の記録です。

2017年1月11日 下にフェルトとツイータ測定の追求を追加しました。

経緯

前に再生音の比較レコーディングで使ってた大きいSPあったじゃないかって思われそうですので経緯について書きます。

今回新しい環境になった理由ですが、まずは非常に個人的な事情で住むところを移動になりました。以前に使用していた大型SPは残念ながら重すぎて移動不可能ですのでまた新しいSPを探すことになりました。一応手持ちでPerformance 6があったのですが引退です。Performance 6は12畳位までの広さの部屋なら不満のあまりない素晴らしい音質のですが、今度の場所は部屋が広いためこのサイズのユニットと本体サイズのSPでは完全に力不足です。

Performance 6は一度だけ広い部屋で鳴らしたことがあるのですが、大きい音量を出すと破綻してしまいます。今度の部屋では到底まともな音を出すことは不可能だと判断しました。

performance6_floorstandingspeaker_englandaudio_mordauntshort

引越し費用など考えると金額はそんなに出せませんが、Performance 6自体が相当価格性能比が高いモデルだったので、同等以上のクオリティでさらに大音量を出せるようなモデルとなるとかなり価格が上昇してしまいます…。

大音量時の出音に余裕があって、なおかつ現代的な引き締まった音が出ること、しかも価格が安値(50万円以内)であることを条件にすると、当たり前ですけど、まず普通に探して見つかるものではありません。

以前の記事にも書いていますが、個人的なスピーカ選定の評価軸が相当厳しいので、普通に最近のモデルで探すと数百万のスピーカまで行かないと選択肢がありません。正直Wilson Audioも検討したかったのですがSashaレベルだと低音がビビって駄目だと思っていますので、欲しいのはAlexiaになってしまいます(高すぎる)。Systemシリーズ等の中古は比較的低価格で売っていますが大音量を出したら破綻しそうなのでこのクラスだとダメそうです。

Dunlavyの中古を検討

そこで検討材料にしたのはStereoPhileでかつて最高の測定特性を叩き出していたDunlavyの中古です。おそらくほとんど誰も知らないようなSPだと思うのですが、その測定特性については現代のハイエンドSPでもかなわないような内容でした。もちろん測定だけではわからない部分もあるのでこれが究極のSPであるとも思いませんが、よくわからない安売りされているものを購入するよりは測定特性の裏付けがあるだけでも大分ハズレを引く可能性を減らせると思いました。

実績としても海外のマスタリングスタジオ等で採用が有るくらいなので少なくとも粗悪なSPではないはずです。

DCF 1.0

高さが180cmくらいあってかなりサイズは大きいです。普通の部屋にはまず置こうとは思わないサイズですが、今度の移動先にはちょうどよいです。いままでの経験から判断すると、正直このような箱型のSPだと低音がビビって駄目なことが多いのですが、下記の測定特性を見るとそんなことはないどころか、現代的な平面を排除したSPより優れているくらいです。

例えばこのSPの測定特性を出すとこんな感じです。

この特性データからわかることは、応答性(立ち上がりと立ち下がり)が非常に優れていること、位相特性が優れていること、周波数特性が優れていることです。要するに測定でわかる大半の領域で完全に近いSPであるということです。特に位相特性が等位相になっているSPは世界的に見てもかなり少数派で現在では確実に入手できる現行モデルは殆どない(Thielの中古くらい)のではないかと思います。

このDunlavy、国内では中古でもまず見かけること自体ないのですが、海外で探すと3000ドル前後で見つかったりします。

https://www.hifishark.com/search?q=dunlavy

最初は海外から頑張って買ってしまおうかと思ったのですが、国外出荷に対応している出品者がほとんどないこと、よくわからない出品サイトかつ個人の出品者だと詐欺かもしれないので、出来れば個人取引ではなく海外ならば最低限店舗のあるショップか、国内で購入が出来たら良いなと思っていました。でもそんな出品はあってもすぐ売れてしまうのでまず見つからないものです。

近所にDunlavyの前身Duntechの中古を発見!

しばらくDunlavyについて検索する日々が続いたのですが、調べていてわかったのはDunlavy SC-I~VIが登場する前にDuntechという会社がオーストラリアにあり(制作者は同じ)、その当時のモデルは日本にも代理店があって輸入されていたこと(1980年台後半)を知りました。もしかしたら国内在庫でDuntechがあるかもしれないと思い調べてみました。

調べてみると、なんと車ですぐ行ける近所のオーディオショップにDuntechの中古品がありました。まずほとんど出物自体がないので国内在庫があればいいな程度で考えていたのですが、まさかこんなに近所に実物の在庫があるってのは奇跡に近い幸運でした。しかも置いてあったモデルはPCL-1000でSC4と同等のサイズのもので、個人的にちょうど探していたサイズに適合します。(最上位のモデルが見つかっても逆に困ってしまうほど途方もないサイズなので)

早速試聴を申し込みして機材持ち込みで試聴させてもらうことにしました。

img_1700

こちらがお店で撮影したDuntechのPCL-1000(Crown prince)です。音は想像していたより遥かに引き締まっており、よくある木材でできたケースかつ平行面からなる四角型のSPから出ている音とは思えません。かなりの音量を出しているときに箱を触っても振動していません。かなり良い印象です。本体サイズが大きいので音もスケール感と余裕があります。広い店内でもしっかりと音のエネルギーを放出できている感じです。

ツイータはちょっとガサガサしていて質感は悪いですがユニットをまるごと交換して最新のものに替えれば不満はなくなりそうです。ユニットを交換前提としても、箱だけで相当ポテンシャルの高いSPですので価値があると思います。

とにかく大音量を出しても余裕があり、かつ全体的に引き締まった音で、箱がぜんぜん共振しないです。この低音の収束の速さは最近のインターナショナルオーディオショーで見かけるほとんどのSPより優れているかもしれません。友人宅にYG AcousticのHaileyがあるのでこのSPの音は聞き慣れていますが、正直YGと比較しても箱鳴りの少なさは遜色ないレベルです(もちろん低音のレンジは別次元ですが)。

これはツイータさえ良くなれば相当緻密な描写までこなせそうな雰囲気です。80年台にここまでの完成度のSPがあったこと自体かなり驚きました。むしろ当時はこのようなSPに見合うような性能のシステムや音源を揃えることも困難だったのではと思います。当時はおそらく正しく評価することも難しかったのではないかと感じました。

お店の方にダンテックの古いカタログを見せてもらったのでこちらで公開してみます。今となってはカタログ自体が殆ど残っていないと思うのでかなり貴重な資料かと思います。88年のステレオサウンドです。今はなくなってしまったRFエンタープライゼスというところが代理店をやっていたそうです。

duntech duntech2

上のレビューだと「豊かな響きで艶の良い」って書いてありますが、個人的にはお店で聞いた音では艶はあまりないかなって印象です。もしかしたら大分劣化しているか、当時の機材と現代の機材で比較した場合の印象の違いかもしれません。ちょうど駆動力の低いアンプで鳴らしたら上記のような印象になる可能性は高そうなので、機材の組み合わせ次第かなと思うところです。

とりあえずDuntechの音は大いに気に入ったのと、状態が悪かったせいもあり価格がかなり安かった(805D3片方以下)ためほぼ即決しました。知名度や不具合を除けば実力の割に相当格安だと思いますが、かなり大柄なSPなので設置場所の関係もあってなかなか売れなかったのでしょう。店においてから相当時間が経過している雰囲気でした。おそらくこのようなSPを置ける人ならもっと良い製品が買えてしまうでしょうし…。

ちなみに、不具合というのは本来ついているはずのフェルトがついていない、ネジが取れているところがある、低音のエッジが劣化していて異音が発生する等ですが、正直この辺は自分でなんとかできそうなレベルなので、お店側の修理サービスは利用しないことにして、その分の費用を本体価格から値引きしてもらって購入しました。

交換するユニットの選択

どのようなユニットに交換できるのか海外の情報を必死にしらべてみました。そこでわかったのはデフォルトのDuntech PCL-1000のユニットは次のとおりです。DynaudioもScanSpeakも評判は高いですが、さすがに80年台のユニットなので現代の水準では高性能ではありません。当時としては良かったのだと思いますが現代の高性能ユニットと比較すると大分クオリティは落ちる印象です。

  • Hi:Dynaudio D28AF
  • Mid:ScanSpeak 13M8640
  • Bass:Dynaudio 24W75

ぜひとも最新のユニットにリプレースしたいわけですが、調べてみるとどれも現在では主流ではない寸法のため、沢山ある製品の中から労力をかけずに交換できる選択肢は実はかなり少なかったです。そのうえ能率、インピーダンス、穴の数、これらの条件に出来るだけ該当するものとなりますと選択肢はかなりの少数です。

それでもなんとか次のような該当品がありました。

  • Hi:Morel ST1108, Seas T29CF002
  • Mid:SB acoustics MW13P
  • Bass:Hivi D8.8, ATOHM LD230CR08

他にも適合品がありましたがあまりにも安値のユニットは音質も優れない可能性が高いので、各社のハイエンドクラスユニットに限定すると上記のとおりです。このなかでウーハーとツイータについては選択肢があったので迷いましたが、Youtubeで同じユニットを使っているSPの録音データを聴き比べて概ねの傾向を掴んでみました。

s-l300

Morel ST1108=高忠実系。最新の設計のユニットではないが手堅い性能。非常に無難なアップデート候補。

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Seas T29CF002=高性能かつ美音系。潤いのあるサウンドで魅力が高い。ScanSpeakとの比較動画でも描写力は遜色ないレベル。

普段ならMorelを選びそうなところですが、今回はあえてSeasのツイータを選択してみました。理由は色々有るのですがYoutubeの試聴で惹かれたのがSeasの方だったからというのが一番の理由です。自分自身はかなり色付け要素を後回しにする方だという自覚はありますが、Seasの方向性は魅力的に感じました。何でもかんでも無色透明系かつ高忠実系というのも味気ないものですからね。

次にウーハーです。

20150324011222

Hivi D8.8=良いという意見と癖があるという意見に別れている。どうやらアンプによって本来の性能が出るかどうか決まる模様。スペック上の周波数特性の低音への伸びはかなり良い。

atohm-ld-230-cr-04

ATOHM LD230CR08=情報なし。試聴なし。音質は未知数。入手も困難…。仕様的にも価格的にもD8.8に近いものと思われる。

ATOHMは調べてみるとちょっと前に国内代理店があって完成品のSPを輸入していたようですがほとんど評判もレビューもありません。アフロオーディオに同社の実物があって視聴もできるみたいですが、ここはそこまで考えこまずにD8.8を選択しました。まず低周波まで性能を伸ばしたいというニーズから、スペック的に余裕がありそうなのがD8.8だったというのもあります。あとは見た目が24W75に近いというのも理由です。

いずれにせよデフォルトの24W75からは設計の時代が違いすぎるのでいくらなんでも悪くはならないだろうということで4つ購入しました。

最後に中音域の交換候補のMW13Pですが、今回は購入せずにまずは他のユニットの交換結果をみて良かったら検討したいと思っています。総額でいきなり20万円くらいになってしまいますから、全部のユニットを勢いで購入はせずに様子見です。

ユニットの交換とトラブル

購入したものの結構微妙なトラブル続きでした。とりあえずくどくど書いても仕方がないので、起きたことと対処を簡単に書きます。

まず注文から2週間以上かかって出荷となりまして、ユニットは注文から大分時間が経ってから届いたのですが、実際に装着してみるとツイータは穴の位置が合わず、ウーハーはユニット側の支柱が干渉し奥まで入りません。

とりあえずウーハーはDuntech側が木材なので木材用のヤスリを買ってきて干渉している部分をゴリゴリ削り落としたらしっかりと嵌るようになったのでユニットを無事交換できました。ウーハーのアップデートは音質的には大成功で特性上も低音がかなり下まで伸びるようになりました。デフォルトの24W75だと50Hzくらいからどんどんレベルが低下して30Hzあたりはもう音としてはまったく再生できていなかったのですが、交換後は25Hzくらいまでギリギリ音として聞こえるくらいになりました。

音的には低音の応答と収束が良くなったようで、中高域のクリアさも上昇しました。初期状態だと低音が頑張って一生懸命鳴っている感じだったのが、交換後は自然で力んでいない音になりました。一瞬低音が減ってしまったかのように感じるのですが、実はより伸びやかかつスムーズな低音になった結果なのでこれは確実に良い方向です。最初の低音はいかにもSPがなっているという低音だったからです。

次にツイータの交換です。問題だったのが1kHzくらいからサイン波を入れると歪んでしまうことです。実際に悪い状態で歪特性を測定したのですが、下記を見ると明らかにツイータの帯域で歪んでいます。これくらいの歪になると澄んだ音色の曲を聞くと明らかに違和感を感じるレベルです。

tweeter_dist

原因はどうもツイータの軸ずれのようでした。本体を何度もばらして修正が必要でしたが、位置をずらして試行錯誤+最後にエッジに紙をはさんで最後に微調整して修正しました。

ツイータの軸ズレについてはこちらのサイトに情報があります。

http://ameblo.jp/purplesounds/entry-12114676828.html

修正後の写真は下ですが、ネジもちゃんと止まっていないしガムテープを貼ってあって、とてもひどい状態ですけど、この状態で特性はかなり良くなっています。ツイータのエッジは押さえないと1kHz以下で共振してしまい駄目みたいです。あとはプレートの取り付け穴の位置が微妙にずれてて合わなかったので、これは年明けに加工予定です。

seas

届いた状態で何もいじっていないのに特性がおかしいってのも困ったものなのですが、なんとか自前で修正が出来たので良しとします。おそらく輸送時に衝撃でずれてしまったのではないかと思っています。修正前はMorelのツイータにすればよかったとすごく後悔していたのですがなんとかまともな特性と音になったので良かったです。

最終的な音はYoutubeで聞いたとおりの雰囲気がありますが、歪みが無くなってからの印象はそこまで色付けが強いって感じじゃないです。僅かに色が乗っているという程度なので、普段色付けを意識するほどではないです。多分比較対象があると個性を感じるレベルです。この方向性はボーカルなんかが結構魅力的な方向性の音質だと思います。それだけではなくて分離や透明感もD28AFと比べると大分良い感じなので、当初の狙い通り基礎クオリティも向上しています。

同じサイズでベリリウムの超高性能ツイータとかが出てくるまではこれで乗り切ろうと思います。

測定特性

まだフェルトの追加が残っていますが現時点での測定特性です。とりあえずツイータとウーハー交換後の周波数特性&歪レベルのデータはこちらになります。上では400Hzくらいから上昇していた歪がなくなっています。

r_dist_s

周波数特性に結構上下がありますが中音以下は部屋の定在波による影響が大きく50Hzは定在波によるピークです。それ以下の帯域は減衰していますが性能限界です。中高音のブレは段差のあるバッフルのため周波数に凸凹ができています。これは段差部分にフェルトを貼ることで改善するようです(本来はフェルトが貼ってある)。材料を集めてフェルトがうまく貼れたらまた報告したいと思います。

http://www.speakerdesign.net/audioXpress/diffraction/diffraction.html

t29cf002

インパルス応答は若干逆相に振れてしまっていますが、わかっていることはこの原因にツイータが関係ないということです。ほかに可能性がありそうなのはバッフル段差による反射の影響か、未交換のスコーカの性能です。

もしフェルトを張っても治らなかったらスコーカも交換すべきかもしれません。このインパルス応答はStereophileのDunlavyよりも悪い測定結果ですがユニットの世代的にこれが限界だった可能性があります。その証拠にデフォルト状態のインパルス応答はもっと悪いものです。

d28af

こちらが初期状態のインパルス応答です。ツイータはD28AFです。10kHz前後の長い余韻がありますがこれがツイータユニット固有の癖のようで、Seasのツイータに交換するとなくなります。上にも書きましたが逆相に振れてしまう2kHzの振動はツイータとは関係ないのでツイータが変わっても変化はありません。

step_res

こちらはステップ応答ですが、この結果はユニットごとの立ち上がりタイミングにずれがなく等位相であることを示しています。改造によって位相応答速度にずれが生じる可能性を懸念していましたが、測定結果を見ると特に大きな問題はないようです。改造後でも等位相SPであると主張できることになりそうです。

ステップ応答のサンプルとして、例えば等位相ではない応答はこちらのようになってしまいます。これは3wayの各帯域がバラバラのタイミングで鳴っているということです。これはB&W 802Dの応答です。800シリーズは全てこのような応答になっていますが、帯域ごとの音がバラバラのためむしろそれが分離よく聞こえる理由でもあるかと思われます。

Dunlavyは低音と高音が同時のタイミングで到達するので、高域のにじみや定位のブレがなく、非常に明瞭で筋の通った音像定位が特徴になるかと思います。じっさいに電子音を使ったシンプルな波形の音楽を聞くと今まで聞いていた音とだいぶ質感が違うことにも気づきます。もっと位相に敏感な方になると、B&Wのような普通の位相ズレがあるSPを聞いたときに違和感を感じてしまうそうですが、自分はそこまで敏感ではありません。

下記リンク先に、デジタル処理のようですがネットワークの位相ずれ音声の比較がありました。12dBの音はSPで良く見かけるせいかなんとなく聞き慣れた音がします。12dBでもそこまで違和感はないですが音は確かに違います。

位相差の聴き比べ資料

Dunlavyが等位相を実現するテクニックはバッフルの段差による音波到達時間のチューニングだけではなく、ネットワークにも特徴があります。こちらにも資料がありますが6dB/octのネットワークでないと等位相は実現が出来ないのです。これはDunlavy本人のインタビューでもそのことを語っていました。

ネットワークによる位相差、群遅延

6dBのネットワークだと最大の問題点はユニットの帯域分割が弱いので、ツイータやウーファで本来ならすべきではない帯域外の音も出てしまうことでしょう。一応ドライバユニットは帯域外も鳴らせるようになっていますが歪率が悪化したり周波数特性が悪化したり、理想から遠い動作になってしまいます。なので等位相SPでは複数ユニットから音が出ている帯域が広いという問題がありそうです。

こうなるとユニットの位置が正しくなくなると、音波の到達タイミングがずれてしまうと途端に滲んだ音色になってしまったり、帯域外の歪が乗っかってきて歪率を低くしにくい等の問題があると思います。とはいえこのあたりはトレードオフなので出来るだけ広帯域で使えるユニットを選択するべきなのでしょう。

録音音源のアップ

音質については語るよりも聞いてもらったほうが良いと思うので、録音データをアップします。まだ前面にフェルトも貼ってないしルームチューニングもやってないので中途半端な状態ですが、試しに取ってみたら意外と良い結果だったので、色々な音源を用意してみました。

以前の大型スピーカは位相については全く無配慮だったのでどうしても高音が滲む感じがありましたが、Duntechではそのようなことはありませんでした。そして高域へのエネルギーの拡散がなく、その分中域が分厚く聞こえる印象です。

img_1927

  • オーディオIF(AD+DDC) : Lynx Hilo
  • マイクプリ : 自作THAT1580+THAT5171
  • マイク : DBX RTA-M * 2
  • DAC&プリ : AK4495S dual DAC(非OCXO、ローノイズクロックバッファ版)
  • パワーアンプ : 自作 Ncore NC400*2
  • スピーカ : Duntech PCL-1000(ツイータ&ウーファ交換済)

上はレコーディングの状態です。マイクセッティングはツイータ正面1mの場所です。この場所がちょうど周波数特性と位相特性が良かったので、測定で使用した位置のままレコーディングしています。実際のリスニングポイントはもう少し後ろになります。

ご覧の通り吹き抜けなのですがルームチューニングはまだ何もやっていませんので反響がかなり大きいです。これはこれで楽曲によっては良い効果がありますが、音数の多い曲ではやや混濁するようなところがあります。賃貸なので気軽にいじりまくるという訳にはいかないですが、出来る範囲でもう少し手を入れてみたいと思っています。とはいえ直近の課題はまずはフェルトをつけることですね。

1.ネットラジオからの録音

funk > ambient > latin という感じの順番です。1曲めの鳴りが良いと思いました。

2.ゆるポカ+ハナヤマタOP

あったかまった、sweet*straight、花ハ踊レヤいろはにほ、の順番です。

最初の二曲は冬の新作のゆるポカからのレコーディングです。最後のハナヤマタOP曲は以前に比較音源として使用していたので最後に入れました。以前のSPとの比較では個人的にはですが、高域のエネルギー拡散が押さえられているので中域へエネルギーが集まっている感じがします。

ゆるポカは作家さんのMixが良かったのもあるのですが、自分がマスタリングを担当して今までで一番良い仕上がりだと思っています。いままでは本格オーディオで聞くとイマイチなことが多かったのですが今回はいまのところ不満ありません。といっても腕が上がったのではなくて単に機材が良くなったのが一番の理由だと思います。

3.クラシック

火の鳥です。一番盛り上がるところの手前からですが、試聴用なのでそれ以外はカットしています。残響がもともと多いソースなので室内の反響があまり気になりません。

4.ジャズ

Coltrane、fourplay、Take6です。これも視聴用のためフルではなくてカットしています。このあたりも残響が追加されても問題がないソースです。

5.ダブステップ、ダンス

かめりあさんの曲から、dreamless wanderer、INSANE INFLAMEです。前半の曲はまだ良いですが、後半の曲はかなり難しい再生例だと思います。

特に後半の曲はベースの倍音が多い上に速度も早く、ベースの刻みが中心になる曲なので、部屋の響きが乗ると収束速度が不足してかなり不明瞭な描写になってしまいます。部屋とSPを含めた広帯域再生の立ち上がりと収束速度がどちらも早くないと綺麗な再生は難しい曲と思います。

前半の曲は後半の曲と違って畳み掛けるような高速ベースではないので、再生の難易度はかなり下がります。

6.鈴木このみ(J-Pop,Rock?)

Beat your Heart、Redoです。ハイエンドオーディオシステムで録音をアップしている方が何人かいたのでこちらでも比較参考用に取ってみました。

これは大型のオーディオで明瞭に鳴らすのはかなり難易度の高い音源です。鳴らすためには相当下までの帯域の立ち上がり+収束速度が早いこと、下へのレンジが十分伸びていること、これらの条件が必要です。特に超低音まで再生できるSPで高速な低音を両立するのはかなり困難なので、そこが最大の課題となるでしょう。

うちの録音だと全体の速度はまずまず良いですが低音の伸びが不足しています。バスドラとベースの帯域がかなり低い曲なので、これが再生難易度をあげている要因です。こちらの録音でもバスドラとベースの低い帯域が弱くなってしまっているので若干スカスカに聞こえてしまっています。残響も多すぎるので不明瞭なところがあります。再生音源がYoutube音源なのですがそれとは全く別の問題です。

この曲の再生で重要なのは、ベースの音程が安定している(音程によって音量が上下しない)こと、ギターとドラムのリズムが明瞭に分離して聞こえることが重要です。ベースの音程ごとの音量差は再生帯域がフラットであること、これは箱の影響+定在波の影響を少なくすることが重要です。リズムの明瞭さはSP+部屋含めた各帯域の立ち上がりと収束スピード次第です。スピードが遅いと音量が大きく収束の早い楽器がまず描写できなくなります。さらにその影響で他の帯域まで不明瞭な描写になってしまいます。そうなるとリズムがチグハグになって躍動感が出なくなります。

これらが上手く再生できていれば、ボーカルも自然と前に出てくると思います。

7.Soundtrack

びんちょうタンっていう作品のBGMです。作品はユル系ですが楽曲はかなりハイレベルです。今回はユニットの歪チェックに利用しました。たとえば歪が出ているときはメインメロの楽器がかなりビリビリ言います。これは修正後なので概ね大丈夫ですが、SPの歪チェックにはオススメの音源です。録音はもともと響きの多い曲なので概ねきれいになっている気がします。

フェルトとツイータ測定の追求

フェルト追加しました。オリジナルは周波数特性のフラット化のためにフェルトがついていますので、フェルトを自前で調達して付けてみました。フェルトを貼ると中高音が大人しくなり、いままでは反射による色付けが大きかったことがわかります。

tweeter3

しかしこれで周波数特性がフラットになるかというと、そんなことありませんでした。

thd_full_felt

7kあたりの陥没、10k以上の盛り上がりが気になります。これをフェルト追加前の状態と比べてみます。

thd_nothing_felt_cork

外すと上下がより激しくなりました。5kの盛り上がりのせいで極端な周波数特性ではないようにも見えますが、フェルトを追加した状態と比較すると10kの盛り上がり以外はかなり特性が上下していることがわかります。なのでフェルトを追加すること自体は悪くはないようです。しかし5kの陥没+10kの盛り上がりはフェルトだけではフラットにはならず、他の対策が必要なことがわかりました。

試行錯誤はかなり色々やったのですが、無駄に長くなるので結論から書きます。

この原因はSeasのツイータ特性によるものが原因の半分です。このツイータは平面ではないややホーンのような形状をしていますが、ここの形状+円形のアルミ円盤の部分を利用して周波数特性がフラットになるようにチューニングされているようです。だからフェルトの段差があると周波数特性が乱れるということのようです。

実際、円形のバッフルの特性情報を見ると、周波数特性がフラットではないことがわかります。しかしちょうどこの特性を打ち消すようにツイータ自体の特性も調整されているように思います。

http://www.linkwitzlab.com/diffraction.htm

実際に、フェルトではなく、バッフル面がフラットになるようにガムテープを貼ると、5kの陥没は消滅します。10kの盛り上がりは消えませんが、残念ながらこれがこのSPに取り付けたときの特性となるようです。

tweeter2

thd_flat_tape

フェルトではなくフラットテープ化です。見た目は最悪ですが音は良いです。

5kの陥没が消えると音の定位が劇的に改善します。いままでは左右のセッティングをmm単位で詰めても中央定位が曖昧だったのですが、このチューニングによって中央定位が素晴らしく改善しました。周波数特性はまだ完璧ではありませんが、この状態になると耳で聞いて明らかな定位の改善がありました。

フェルトをすべて貼った状態ではフェルトの段差によるわずかな反射が周波数特性を歪め、定位まで鈍らせていたようです。現状のフラットテープの状態でインパルス応答を見るとこのような形です。

ir_flattape

初期のインパルスと比べると2kの余韻以外は改善していることがわかります。この2kの余韻はフェルトをいくら山盛りで張っても改善しません。ツイータやスコーカを近接測定するとこのような余韻は存在しないので、スコーカが原因というわけでもなさそうで、色々試行錯誤してみると、これはどうやらツイータ側にも原因の一端があるようです。といってもハッキリとした原因まではつかめていません。

次に10kの盛り上がりの検証と改善です。これはガムテープをツイータのホーン部を隠すように貼ることで解決が出来ました。結局T29CF002の銀のリングの部分が盛り上がりを作っているようです。上記の2kの余韻もこの対策によってほんの僅かですが良くなります。修正後の測定値を下に貼ります。見た目は更に悪化しています。

tweeter1

thd_surround_tape

ir_surround_tape

インパルス応答は2kの初期収束が改善していますが、余韻がやや長くなってしまっています。この改造結果を耳で聞くとSeasツイータの個性があまり目立たなくなります。なので2kの余韻こそがSeasの美音の正体で独自の個性と色付けの原因といっても良さそうです。

これまでの試行錯誤を録音してみました。ステレオで改造するのが大変なのでモノ録音です。曲はOscar Castro-Neves 「Tropical Heart」のIf The Dance Is Overです。再生の順番は次のとおりです。

  1. フラットテープ化
  2. さらにテープで銀リングを隠蔽(最も周波数特性が良い状態)
  3. テープではなく、ツイータ周囲にフェルトを貼った状態

となります。

この曲ではですが、1番目の色付けアリの状態が個人的には一番好きな鳴り方です。おそらくSeasの意図する音がちゃんと出ているのはこの1番目です。2番めは初期設計のリングを隠してしまっているので響きが抑えめになっています。これが特性的には最も良い筈ですが地味な音でもあります。もちろん楽曲によって相性がありますがこの曲では魅力という意味ではやや劣るように思います。3番目はさらに高域のピントが拡散しているように聞こえるので純粋なクオリティ面で課題があるように思います。

とりあえず今回は以上です。