AR_EAR502

ICE-Powerと貴重なデジタルアンプの測定データ

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自作アンプの紹介をはじめる前に、それまで使っていたパワーアンプの話をしたいと思います。Ucdという画期的なアンプに出会うまで、約5年間B&O製のICE-Powerモジュールを使ったパワーアンプを使ってきました。その頃は自作を始めるより前の話です。

購入したのは国内でも話題になったAcoustci Reality社の製品です。ですが私が買ったのは一時期よく話題に登った1000ASPを使ったear-1001ではなく、500ASPを小さい筐体にステレオ分収めたレアな期間限定モデルです。このモデルはすごい短期間に消えてしまったのですが当時ステレオ一台で1250ドルほどで購入できたお買得モデルだったと思います。500W*2というとアナログなら相当なハイエンドクラスのパワーなので当時はオーディオの世界で言えば1250ドルでもすごく安い!と感じました。でもその頃はバイトしてたのであまりお金はありませんでしたが長く付き合うつもりで思い切って購入したことを覚えています。

AR_EAR502

上の写真の真ん中がear 502です。後ろのブラウン管ディスプレイが時代を感じさせますが、この写真は2005年頃です。このアンプは当時のデジタルアンプとしては非常に優れた音質を発揮しました。あのころ国内でもデジタルアンプが大流行していたように思いますが、比較した限り他の製品たち(フライングモール、シャープ1bit、パナソニックのXR50)と比較して何もかもICE-Powerは圧倒的に優れていました。実際に技術的にも出力フィルターを含むフィードバックを特許技術で実現しており大半の国内勢よりもアンプの測定スペックでICE-Powerが圧倒していたように思います。

ear502

しかしICE-Powerも唯一の欠点があってそれは高域の綺麗さでした。たしかに低音のパワー、音の分離、開放感はアナログアンプや他社製品より優れていたのですが、どうしても良く出来たアナログアンプと比べると高域が荒い、ざらざらした質感があります。わかりやすい例ではクラシックの弦楽器などがどうも綺麗に出ないです。その点は他の国産デジタルアンプも同様で、元々荒い音にノイズを混ぜてキラキラした音(シンセで言うとReFXのNEXUSみたいな音質↓)にしてごまかしている製品はありますが、本当の意味できれいな高音が出ている製品はありませんでした。

ではデジタルアンプの高域が汚い理由はなんでしょうか?出力段のスイッチングによる漏洩ノイズ、汚された電源、低いNFBゲイン&帯域などいろいろな理由が考えられますが、とりあえずICE-Powerのスペックを見てみたいと思います。ear 502で使われている内部モジュールは500ASPですからデータシートはこちらになります。

http://www.icepower.bang-olufsen.com/files/solutions/icepower500aspdata.pdf

ここから重要なところを引っ張るとしたら↓の図です。グラフ右のS/Nはなかなか優秀ですが、グラフ左の赤線6.67kHzの歪率を見ると、緑の1kHzに比べて急激に上がっています。要するに高い音になるほど歪率が上がっていくわけです。おそらく10kHzの歪率はこれよりもっと悪い(0.1%位になる)と予想できます。まさに耳で聞こえる荒さ、嫌な音もちょうど5-6kHzくらいの帯域からのような雰囲気なので、このグラフと耳で聞いた印象はよく一致していました。これで自分の中でICE-Powerの問題の原因についてなんとなく納得がいったのを覚えています。

500asp

ただ補足しておくと当時出ていた国産デジタルアンプはほぼ全てがこのICE-Power以下の測定値か、そもそもデータは非公開という状態でした。一部公開されていた数字はそれはもうひどいものばかりで、実際当時のネットではダメな測定値を例にあげてデジタルアンプはアナログアンプより劣っている!という意見も多く見られました。いや、今でも勘違いされているかもしれませんが…。

それでも小型軽量でパワフルだったり同価格帯のアナログアンプと比べてスッキリした音質など、デジタルアンプならではのいい部分もありました。特に私のような音楽制作者としては多少の高域の綺麗さよりも分離の良さ、スッキリした見通しの良さを優先していたので、デジタルアンプは割に安くて良い選択肢だったのです。それで5年も使っていたのですが、ICE-Powerともお別れの日がきました。それはICE-Powerの課題だった高域の課題を解消できそうなデジタルアンプ(実際にはキットなのですが)を見つけたからです。それはUcdというのですが次の記事に書きます。

最新のICE-Powerはダメダメ

ところで最新型のICE-Powerはどうなのでしょうか? 実は125ASX2をUcDを組み立てたりしてた頃に一つだけ試してみたことがあります。シンプルなケースに入れて何のムダもない構成で試したのですが音は全然良くありませんでした。特性は500ASPよりも若干向上しているはずなのですが音が曇っていて分離が悪くなっています。詳細はよくわかりませんが回路をIC化してコストダウンしたのかもしれませんね。ディスクリートアンプが質の悪いICオペアンプに変わったような変化です。

大抵大手のやるこういうコストダウンとか効率化はピュアオーディオ的には良くない方向に行きますね。IC化で特性が向上してコストも落とせる、いいコトだらけと一見思うのですがオーディオの観点ではそうとも限らないのが落とし穴だと思います。実際にIC化したのかどうかは不明なのですがASX2は何かが原因で大幅に分離が悪くなっているのです。

結局あまりに音が悪いので、これはすぐに手放してしまいました。パワーも125Wしかないので力強さもありません。なので以前所持していたICE-Powerの良さはかなり失われてしまっています。正直UcDとくらべてしまうと125ASX2は全てにおいて負けていると思います。ICE-Powerに行くならASPモジュールを使わないとダメなのかもしれません。

海外掲示板によるICE-Powerの評価

http://www.diyaudio.com/forums/class-d/159012-reinventing-icepower-topology.html

以下引用とYahoo翻訳を少し修正したものです。

Icepowerは質素なクラスADです、私はちょうど今放熱板から1000ASP PCBを除去して、たしかにチェックしました。内側のループはフェイズシフトされた自励振動をもたらします、しかし、2つのオペアンプが疑似「三角形波」の途中にあります。そして、それが2つのMC33078がきちんと取り扱うことができない周波数を含むので、それはまったくよいことでありません。外側のループは、更なる線形化(特性向上)のために穏やかな負帰還で内側のループを駆動します。

私は、彼らがUcDで行われる「三角形波」として直接出力の上で残留キャリヤーを使うことを恐れたので、彼らが2本のフィードバックループ(1つのプリ・フィルタと他のポスト・フィルタ)を使用すると思います。これは高品質な残留キャリヤーを必要とします、取るに足りない寄生性と高品質な出力フィルタを意味します、そして、ICEpower出力フィルタは(大きい)コンデンサで高い寄生的なインダクタンスを示します、言うまでもなくそのような小さいサイズにするためにグラウンドプレーンと妥協したレイアウトの完全な欠如。

それから、ブルーノは「三角形波」として直接出力の上で残留キャリヤーを使うことができることを証明しました、そして、彼は途中でどんなオペアンプなしででもコンパレーターに直接残留キャリヤーを送って、差動アプローチを使ってそれをしました。ブルーノのレイアウトはグラウンドプレーンを使います、そして、モジュレータは電源プレーンに対して垂直な空間平面にあるので、彼らは非常によりよいです。

ICEpowerコンパレーター(LM319)はUcDでのような差動モードで結線されません、彼らはMC33078が両方の残留キャリヤー(疑似「三角形波」)を合計することをあてにします、そして、信号はLM319の両方のセクションに行きます。そして、片方が反転と非反転としての他として配線されます。そして、コンプリメンタリな論理出力を生み出して、2つのIR2010を運転します。 これは、あまり賢くありません。

私はこれらの二つ(また、それは2本のフィードバックループを使用します)から私自身の自励振動モジュレータ計画を得ました、しかし、両方ともポスト・フィルタです …私の出力フィルタは、コンデンサで高いC、低いLと取るに足りない直列インダクタンスを備えています。 私の残留キャリヤーは、完全に差動を検知して、途中でパッシブだけでTL3016高品質コンパレーターへ行きます。 可聴周波数内だけは私のモジュレータでオペアンプを通過します、そして、すべての彼らの入力(「外界」から)は地面にコンデンサを持っているので、RF拒否は非常に高いです。 私は、2つのポール(パッシブな1つとアクティブな1つ)を使います。 ICEpowerも、2つのポールを使うようです。結果として生じるアンプは、ちょうどこの週末、NAMMで示されました … それは、リリースされようとしています。

一般に、UcDを理解するならば、あなたはICEpower(そして、すべての彼らのマーケティング宣伝)を問題なく、そして、完全に忘れることができます、なぜならUcDがICEpowerよりもっとたくさんで、より単純に(ICEpowerの弱点を知っていることが彼らを繰り返すことを避けるために役に立つが)なったので。

編集: ICEpowerとのUcDへのもう一つの大きな違いは、UcD(そして、私のアプローチ)が負荷から独立した周波数レスポンスに終わる間、ICEpowerモジュレータがきちんと出力フィルタを投げおろさないで、いくらかのダンピング(限界を支えられたtrebble出力に押しつける)のために放熱板に取り付けられる5オームのレジスターに頼るということです。

デジタルアンプの測定データ

最後に他のデジタルアンプの測定データを貼り付けてこの記事は終わりにしたいと思います。もちろん音質の全て=測定値だなんて言うつもりはありません。これをみてどう思うかは見ている方の判断にお任せします。

http://www.stereophile.com/content/onkyo-9555-integrated-amplifier-measurements

http://www.stereophile.com/content/sharp-sm-sx100-digital-integrated-amplifier-measurements

 http://www.soundstagemagazine.com/measurements/flying_mole_dad_m100pro_ht/

http://www.stereophile.com/content/yamaha-mx-d1-digital-power-amplifier-measurements

国産勢ではヤマハのMX-D1は唯一測定が優秀です。しかしすぐに撤退してしまいました。ある意味ヤマハらしいです。

http://web.archive.org/web/20070817050945/http://www.hypex.nl/docs/classeD_393_lores.pdf

http://web.archive.org/web/20070720212803/http://www.hypex.nl/docs/classeD_394_lores.pdf

こちらはWebアーカイブからですが、トライパス、フライングモール、ONKYO、UcD、ICE-Power、Nuforceの対決が見られます。これはかなり貴重なデータだと思います。そして、この中では周波数応答、IMD、S/N等でUcdとICE-Powerが優秀なことがわかります。

 

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