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DEXA NewClassD パワーアンプ


NewClassDアンプユニット

Ucdの次に制作したのがNcdxというクラスDアンプユニットを使ったパワーアンプです。これはデンマークのDEXAテクノロジーズという会社のNewClassDというブランドの製品で、海外では90年台頃からデジタルアンプユニットを作っているLars Clausenという開発者の作品だそうです。公式サイトは↓になります。

http://www.newclassd.com/

Ucdの音質を聞いて高特性=高音質のような印象を持っていたのでこちらのアンプもすごく興味がありました。何しろHPではこのような特性グラフを公開しているのです。

ncdxthd1w4ohm

↑ 1WRMS、4オーム時

この図だけみるとUcdよりもさらに優秀ではないですか(実は後でこの図はTHD+NではなくてTHDだということを知るのですが)。英語ですが本家の解説を見ても世界最高峰を目指して作ったなど何やら凄そうです。

このアンプの一番の特徴はフィードバックを取る場所をフィルタの外側(ポスト)と内側(プリ)のどちらからでも取れるようになっています。そしてNCDXではデフォルトはプリフィルタ設定になっているのですが、本家HPの解説を読むとプリのほうが開放的で良い音だということです。逆にポストは測定のレンジは伸びるものの音は閉塞的だと言っています。HypexのUCDはこの図でいうポストフィルタが標準ですからこの両者の主張は全く異なっているということになります。これは面白そうです。

特性はどちらも優秀みたいですから、これは実際に音を聞いてみなければ結論はわかりません。

NCDX購入…でも普通には買えず

当時ここの取扱品は国内ではサウンドデンが独占で扱っていました。現在も取り扱いはあるようですが正式代理店ではなくなったようで今は日本から本国サイトで直接購入できます。でも私が購入した頃は独占契約だったようで本国デンマークからの直販は許されておらず(日本へは直で売らないよって注意書きがあった)、仕方なくDexa製品の取扱のあるパーツコネクションに直で交渉して本国とあまり変わりない価格で買った覚えがあります。デンさんごめんなさい。

何しろ元々のユニットの価格自体が非常に高額なのに加え、国内での取扱品は異常に高く本国の二倍以上の値段だった為、海外購入は必須でした。ですがこの頃は大変有難いことにCDが結構売れてたのでオーディオに使える費用もあったので、思い切ってディスクリートモデルと標準モデルを両方買ったのでした。(それでも国内で買うより安い!)

NCDXはかなり期待していたのもあって、気合を入れて部品を購入したのを覚えています。トランスは800VAの巨大なもの、コンデンサも最も低インピーダンスのものを探してEPCOSの一個7000円くらいするコンデンサにしました。この辺のクラスの部品になると国内では全然欲しいものが買えないので全部海外で買ってます。ケースも自作派の味方タカチのケースは残念ながら高いので↓で買いました。

http://www.modushop.biz/ecommerce/index_l2.php

イタリアなんですがここはちゃんと配達してくれました。写真だと綺麗なんですが実物は結構仕上げが荒くて、結局買ったのは最初だけでしたけど…。でもユーロの相場次第なのですが、安くてもしっかりした箱がいいなら結構オススメではあります。海外のDIYerの中ではメジャーなケースみたいでよく見かけます。

組み立て

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レイアウトを考えています。

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通電テスト中…。この時点で音出し成功しました。

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フロントスイッチと突入電流対策用に、Ucd用ですが取り寄せておいたソフトスタート基板を付けます。

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フロントスイッチで電源のON/OFFが出来るようになりました。

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これで一応完成なのですが、ケースが大きすぎて縦置きになってしまいました。

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イタリアのスイッチング電源と組み合わせて、もう一台作りました。実はこの電源100Vでは激しい動作ノイズを出す動作異常があります。ケースの会社は同じイタリアでも良い業者なのですけど、この電源のメーカはサポートも全然ダメでした。メールでやりとりをしたのですが大口叩くだけで結局未だに交換してもらってませんし返金もしてくれませんでした。せめて音が良ければよかったのですが音も悪いのでどうしようもありません。この辺りのリスクは海外なので仕方ありません。

音質とか色々チェック

期待して作ったのですがUcdと比べて何もかも優れていると断言できるような音ではありませんでした。

トランスとコンデンサを大きく奢ったので低音についてはゆったりとしながらもすごく下支えのあるパワーの有る音が出ているのですが、全体の傾向はUcdより高域寄りのバランスで中低域が若干引っ込んでいるように感じます。そして独特なオーディオ的な空気感のある音です。荒い高域とは全然違うのですが国産オーディオでもよくある、空間の解像度を強調したようなシルキーな高域です。そしてうるおいを感じさせる部分もあります。分離が良くやや腰高でサラサラした高域の質感に柔らかい低域、このあたりがそう感じさせるのだと思います。これはこのメーカーの音でしょうね。好きな人はハマる音だと思います。これと比較するとUcdはすごく真面目で全体的に癖が少ない悪く言えば面白く無いと感じさせる音です。完全に良し悪しの領域です。

NCDXは動作中にノイズを撒き散らします。オシロスコープで見るとアンプ本体だけではなくて付近の金属に測定できるレベルのノイズが乗ってきます。多分このアンプを付けてしまうとラジオ等もノイズまみれになっていることでしょう。音質に独特のカラーを感じるのはこのノイズの影響もありそうです。S/Nは良いわけではなくて、SPに耳を近づけるとサーという音が結構ハッキリ乗ってきます。UcdではGNDを正しく取り回しすればSP付近でノイズは全然聞こえないくらいの状態までいけるので、これはもうアンプとしての特性です。

ちなみにNCDXの漏洩ノイズの原因になっている「戻り電流のバイパス経路」を徹底的に作ってしっかりとノイズ対策をしてしまうと音質は全くの別物になってしまいます。Ucdに結構近い音になるのですがNCDXの音質的個性も失われてしまいました。

あと気になるポストフィルターについては一度だけ試しましたが、保護回路が作動してシャットダウンしまったので音質チェックが出来ませんでした。ポストフィルター設定は不安定で危険な側面があるようです。この辺りの設定も本当は変えて聞いてみたかったのですが残念な結果になりました。

もう一台のスイッチング電源のほうは荒すぎる音質でまるで論外だったので評価対象外です。例えて言うなら典型的な昔の国産デジアンの音です。XR50とか。

分かる範囲で技術的なところ

当時は技術的な詳細は全く不明でした。しかし今振り返ってみて過去の資料と基板を見ると少しは仕組みが見えてくるようになりました。せっかくなので分かる範囲で図を引用して書けることを書いてみます。ただしD級アンプはなかなか難しいところも多いので、あちこち間違っているところがあるかもしれません。ここに書いたことは鵜呑みにせず参考程度にお願いします。

http://www.lcaudio.com/pdfs/zp21mateng.pdf

zappulse21

こちらはZapPulseという同社の古いアンプのマニュアルにある図です。これを見ると自励発振式のデジタルアンプのように見えます。この方式は今では一般的に使われている技術のようなのでUcdのような特殊な方式ではありません。ゲートドライバは図ではブラックボックスですが現在ならばIR社のICを使えば比較的手軽に実現できます。

http://www.newclassd.com/NCDCOOKBOOK200.pdf

ncdx

こちらは最新型のNCDXのマニュアルにある図です。まず最初に目につくのはNFBの戻りがプラスになっている点です。この+-は普通に考えると逆のような気がしますが、内部がわからないのであまりよくわかっていません。インバーターか反転回路が途中にあるかもしれませんが、この図自体が実際の動作回路図ではないので正確な判断は難しいところです。

一つ確実な情報としては、実物の基板を見るとNCDXには入力バッファアンプのすぐ後ろにLM6172が乗っておりその周辺で三角波が観測できています。なのでLM6172が丁度上の図のIntegrater=積分器に相当する箇所になっていて三角波生成>比較で動作しているんじゃないかと思います。これ以降はディスクリートで構成されているため詳しい動作はわかりませんが、クラスDアンプの構造からオーソドックスに考えればコンパレータ、ゲートドライバ、スイッチング段を構成していると思います。

ZapPulseからNCDXで新しくなっている特徴的な部分は上にも書きましたがフィードバックを取る位置を切り替えできる点です。フィルタの手前からフィードバックを取る場合はパルス波形のままでは入力には戻せないですから一端フィルタで高周波を除去する必要があります。R=4k99とC=100pが高周波に対するフィルタで、残ったアナログ波形はその後226kのNFB抵抗を通過してアンプに戻されます。

そして巧妙なのがその後に直列で入っているC=6p8でこれはプリ側に接続されているときはスルーされますが、ポスト接続時には高域だけ通過させるフィルタで、図にもかいてありますが110kHz以上を分割させるためのフィルタでしょう。この辺りの工夫はもしかしたらUcd等の特許を避けるためにこのような周りくどい方法を取っているのかもしれません。

音質の要点

NCDXの実験での重要な音質面のポイントをまとめたいとおもいます。

  • NCDXは個性的な音がする。独自の空気感、うるおいを持つ音作りの世界。パサパサしているICE-Powerより聞いていて心地よい。音作りは評価できる。
  • Ucdと比較すると音は一長一短。個性がなく万能なのはUcdだが、NCDXはボーカルものやヒーリング系の音楽と相性が良さそう。
  • S/N、電気的な漏洩ノイズもUcdが優れている。NCDXは周囲に大きな漏洩ノイズを撒き散らす。耳で聞こえるサーノイズがある。
  • だがノイズは個性を彩る重要な要素でもある。NCDXにノイズ対策を施すとSNは向上するが良さが失われる。Ucdに近い音になる。
  • 性能面はUcdのほうが優れている。価格はUcdのほうがずっと安く1/4以下。
  • 電源トランスとコンデンサに物量を投入すると低音の力感がアップする。迫力のある低音が出る。
  • イタリア製の電源はゴミ

最後に

DiyAudioにて貴重なログがあるのでこちらで紹介しておきたいと思います。NCDXの設計者とUcdの設計者が2005年に掲示板で交わした対決です。英語がとても苦手にも関わらず頑張って理解しようと読んだことを思い出します。今でも英語の壁で完全には理解できていませんが、良いログだと思ったのでこちらで紹介します。

http://www.diyaudio.com/forums/class-d/57846-ucd400-zappulse-13.html

このログはNCDXを作ったよりも大分後で見つけたのですが、NCDXはこの時代から根本の設計の方向性は変化していないのだと思いました。個人的には残念ながらノイズの問題などからNCDXが特性を謳い文句にしているのは合っていない方向性ではないかと感じました。特に耳で聞こえる程度でS/Nが悪いのですから小出力のTHD+Nで良い測定結果になることはなさそうです。NCDXのスペックグラフはおそらくTHDでノイズは加算されていないはずです。NCDXは高額なモジュールですので特性の公平さがないことは疑問に思いました。

 

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