今回使う音源はラブライブのハイレゾです。ここで落としたか忘れましたが多分他の配信サイトでも同様の内容になっているはずです。全部落として比較したわけじゃないのでなんとも言えないですが、多分96kHz/24bit以上の音源を入手しているなら同等の内容の対策が可能かと思われます。
今回は研究用素材として一部引用します。著作権は引用ならば認められていますので、必要な引用ということでよろしくお願いします。そのためにPV尺よりさらに短縮しています。
Snow halation μ’s(ラブライブ!)
http://www.e-onkyo.com/music/album/lacm47742/
まずは元波形を見てみましょう。こっちがCD版、
こちらがハイレゾ版です。
若干良くなってますがそれなりに圧縮されています。このハイレゾは全然ダメでしょうか?まぁ理想ではないですけどCD版よりはマシですね。ですが若干レベルは上げすぎでしょう。折角ダイナミクスに余裕のあるハイレゾフォーマットでやるべき処理ではないです。天井にほとんど突くかつかないか位が理想です。たまに突くくらいなら別に良いと思いますけどね。
個人的な意見ではハイレゾ版はCD版より波形で見るより大分マシです。ハイレゾ版で良かった部分はミックスをやり直していると思われる点、実はそれが一番効果がある部分だと思います。でもまだまだ若干潰しすぎなところがあります。あとミックスのやり直しでCD版より悪くなってる部分が幾つかあります。このあたりは後で説明します。
CD版とハイレゾ版はミックスが違う
とりあえずCD版とハイレゾ版で重要なのはミックスが変わっている点でした。聞いた印象が全然違います。具体的に音源を出して聞くべきポイントを説明します。まずはCD版のほうですが、公式動画がありましたのでこちらを紹介します。
こちらが配信されているハイレゾ版のミックスです。mp3になってますがニュアンスは判別できます。
CD版では出だしのピアノがコンプが掛かってる音色です。動画では0:05のところのピアノ和音のアタックに注目するとわかりやすいと思います。この部分が硬い音になっています。和音でエネルギーが集まっていますから、音量がスレッショルドを超えコンプが音を圧縮しています。そのためアタックが妙に目立つ音になっています。この部分はリミッターにかかるレベルじゃないのでミックス段階で各パートを潰しまくっている証拠です。ラブライブの音質的問題はミックス段階から始まっています。
下のように波形で見ても違いがわかります。CDではアタックがきつくなっていますがハイレゾ版は立ち上がりが滑らかです。自然なアタックはハイレゾ版だと思います。
しっとりアコースティックなソロピアノのイントロなのにいきなりコンプ掛けてるセンスを疑います。エンジニアもアニソンポップスなんてこんなもんでいい的な適当な感じで処理してるんでしょうか。普通バラードっぽいアコースティックなピアノにはこんなパツパツのコンプは掛けないと思います。
もちろんピアノにコンプ掛けて効果的な例としては、ダンス系楽曲などで切れのある音色に加工されたピアノありますけど、これはそういう効果的な使い方とは全然違います。アタックの鋭さが必要なシーンでもないし、ただ雰囲気を壊しているだけです。その点でもハイレゾ版は自然な質感になっていて良好です。
ただハイレゾ版のほうはミックスの時間が無かったのか細かい処理はCD版のほうがニュアンスが良くてなかなか悩ましいです。本当はハイレゾ版の自然な音色でCD版のようなバランスが取れていれば良かったのですけど、残念ながらハイレゾ版は若干パサパサした質感になっていて、やや乾いたSnow halationになってしまっています。これはあとから直すのは結構大変ですが、後ほどこのあたりの補正もチャレンジしてみたいと思います。
本来のダイナミクスを若干でも復活させる方法
とりあえずハイレゾ版はコンプがあまりかかってないミックスなのはわかりました。では次にハイレゾ音源の素材を使ってここから多少ダイナミクスを復活させてみたいと思います。これで完全に戻るわけじゃないですが多少はマシになります。
ここで使うのはカラオケ音源です。カラオケ音源とボーカル入りは普通同じレベルで収録されています。そしてボーカル入りにレベルが合わせてあるのでカラオケ音源の方はボーカル入りよりダイナミクスに余裕があります。オケの本来のダイナミクスはカラオケ音源に収録されているということです!これを利用します。
こちらではCubaseでやってます。未だに古い5ですけど新しいバージョンでも同様の処理は出来ると思います。下の画面のようにカラオケ音源を二つ、ボーカル入りを一つ並べます。
その後の手順は次の通り
- カラオケ音源とボーカル入りを貼り付けて片方を逆相にする
- これでボーカルだけ抜き出した音声を作ることが出来る
- ボーカルだけのトラックを作る。一度書き出した方がわかりやすいです(ここではグループチャンネルにセンド)
- ボーカルだけのトラックとカラオケ音源を混ぜる
そして、このボーカル音源とカラオケ音源をミックスして出力したのが↓です。音量がオリジナルより低いですがその分ダイナミクスは確保できています。カラオケ音源のほうがリミッターの被害が小さく、収録されているダイナミクスが大きいので、この方法によってそれを最大限に活かせるというわけです。
ただしここに貼り付けている16bit mp3だと音量が小さいためちょっとイマイチなところもあるのでダウンロードする余裕がある方はこちらの24bit wavのほうで確認してみてください。
これを波形で見るとこんな感じです。
波形だけ見ると大分余裕があるように見えます。音の方もオリジナルのハイレゾ版と比較してボーカルが入ってきてもまだ余裕がある感じになっています。オリジナルのハイレゾ音源はボーカルが入ってくると急にレンジが足りなくて苦しそうな音になるのですがこの方法によってこの点は大分改善します。
ここから更に自分好みに調整出来る
ここまででオリジナルに忠実なダイナミクスの確保作業は終わりました。あとは好みに合わせた個別調整です。上記のボーカルを抜き出したものと、カラオケのトラックにそれぞれEQを掛ければボーカルとオケで個別の調整ができます。これでミックスの弱点を補う余地があります。自分の好みに合わせて一度作業してみたのでここで紹介します。
これが完璧な処理ですとは言いませんが、自分がこだわっている部分については多少良くなっているのではないかと思っています。もちろん各人音の好みはあると思いますので、気になる方はここに紹介した方法で各自で好みの調整を是非やってみてください。
こちらのEQ処理で意識したのは次のとおりです。
- 左右のギター、ピアノなどの中低域にあるべき生楽器の質感をできるだけ復活させる
- ドラムのスネアとハイハットのアタック等、荒々しいバランスを抑えて優しい音にする
- 上記を満たしながらモコモコした音にならないように、できるだけ被り成分を除去する
基本的にはSnow halationという楽曲のイメージを補強するような調整です。ハイレゾ版もCD版も楽曲の方向性からみて音が激しすぎに感じています。多分オリジナルのミックスをやった人はこういうジャンルは得意じゃなくて、もっと元気でビシバシした曲が得意な人なんだと思います。とにかくドラムが元気良すぎで悪目立ちするところが気になります。なので基本はその部分を抑えて、しっとりとしてアコースティックな感じに多少でも近づけたいと思います。
まずオケだけをEQ処理したものです。処理前と処理後を貼ります。
処理前↑
処理後↑
どうでしょうか?そしてこれにボーカルを載せると↓のような感じです。もちろんボーカルの方もオケに合わせて被りの防止のため、低音を切ったり処理をしています。低音部の処理でなかなか難しいところがあるのですが、これのために延々と微調整を繰り返してもなかなか時間ばかりかかってしまうのでこの辺にしておきます。24bit wavはこちら。
ここで伝えたいのは、これがあるべき姿ですよってことじゃなくて、カラオケ音源とボーカル入りを打ち消すだけでこういう処理が出来る可能性が広がりますということが一番伝えたいことです。このようにすれば処理次第ですが沢山の可能性が見えてきますから、あなたのお気に入りの音源で、音質がどうしても気に入らないって場合はこうやって少しでも好みに近づける方法はあるということです!