2017インターナショナルオーディオショー

今回は丁度TIASとかぶる予定があって時間が取れず、初日にちょっと聞けただけでした。どうしても聞いておきたいSPが幾つかありましたので、それらを中心にぶらっと寄れる限られたスペースを巡ってきました。カメラの質の悪い音なのですが一応録音もしてきましたのでアップしてあります。

イベントに行って改めて思ったのが、製品の格=価格や絶対性能とかブランドより結局はバランスのほうが重要ってことです。高性能になるほど問題点も顕になるのでバランスを整える難易度がさらに上がります。ひたすら高価なシステムを揃えたらいい音が出そうですが実際にはまとまりに欠ける印象が多いです。これはトータルバランスの難しさだと思っています。むしろちょっと性能が低いくらいのほうが粗が見えなくなって、まとまって説得力があるように聞こえるのはオーディオの難しさを痛感させられるポイントかもしれません。

もちろん高性能なものは使いこなせば本当は素晴らしい音を出せる可能性があるのですが、それを現場で見せられないイベントの価値とは…などと考えてしまいますが、むしろ聞けないよりは良いわけですし、イベントの出音から機材のポテンシャルを探れますから、そのために聞きに行く!って考え方で良いと思っています。このあたりはショーの音が悪いと文句を言うばかりじゃなくて自分自身の趣向と機材の可能性をチェックするための場所だと前向きに考えたいですね。

とはいえ個人的な印象で現場の良いと感じた部分も良くないと感じた部分も書いていきたいと思います。

Magico M6

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Mシリーズは初めての試聴です。Qシリーズより中高域が引き締まった音になりました。ですが低音の収束は相変わらず遅めのままです。これによって帯域バランスは以前のQシリーズのほうが良かったように感じました。

以前のMagicoなのですがQシリーズの時点でも高性能ユニットによって全帯域で音の立ち上がりは非常に良かったですが、そのかわりに収束が早いとは言えない部分があって、出た帯域の音を微細粒子状にしてゆっくり減衰していくイメージがありました。ちょうどこれが全帯域でふわっとした独特の余韻がある暖色系のサウンドでした。

それがM6では中高域の音の収束が大幅に引き締まったことにより粒子感も温度感も減り、ちょうど他の現代的ハイエンドスピーカに近いあっさりとした後味の音になりました。そのため以前のような独特の個性や世界観は減っていると思います。相変わらず低音だけ以前と似たようなふわっとした収束感があるものの中高域は異質でありこれが中途半端な進化に感じる要因だと感じます。

もともとMagicoは個人的にはあまり好みの方向性ではなかったのでやや辛口かもしれませんが、それを含めてもQシリーズのほうが独自の個性が際立っており、他に似たような音のSPもなく好みが合えば積極的に選ばれやすいSPだったように思います。Mシリーズは売れているなら個人的な意見に過ぎないのですがもし売上が落ちているならこれが原因だと思うところです。

結論としては、M6は普通のハイエンド系の方向にぐっと近づいた普通の高性能SPです。同じ路線にあるYGのSonja XVと比較したときに価格帯が近いので色々と物足りないかもしれません。

Estelon YB Loudspeaker

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個人的に輸入開始以前からチェックしていたメーカーです。以前のモデルでは海外のオーディオショーでたくさんのブースで採用されていたので目立っていたのもありますが、デザインや形状が印象的で一度聞いてみたいと思っていました。

以前のモデルはAccutonのセラミックユニットでしたが今回展示されていたのはScanSpeakのユニットになっていました。ユニットが変更になった理由は不明ですがユニットが別物になっていますから音は以前のモデルとは大幅に違うと思います。

今回のイベントの音ですが細身でキレイ系の音でした。ある意味見た目通りスマートで雑味の少ない音です。この音は個人的に結構好きな方向なのですがどうも明確な弱点がありそうな印象も受けまして、多分ですが大音量耐性と低音部が弱そうに感じました。何処までもで音に余裕がある感じじゃなくて、箱がビビりそうとか音量を上げたときに濁りそうとかそういう予感を感じさせる音です。なんとなく大音量を出すと破綻しそうな繊細さを感じます。予想ではありますが広すぎない部屋で中音量までで運用する前提が無難そうです。

丁度以前所持していたMordaunt-Short Performance 6も似たような印象でした。もちろんYBのほうが更に情報量が多く緻密な印象ですが、似ているのは音が小さいときは丹精で緻密な音が出るのですが音が大きくなったときに破綻しやすいのです。

とはいえ今回だけでSPの詳細なところまではわかりません。とりあえず今回は音量も過大ではなくバランス良く鳴っていたように感じています。今回感じた製品の個性としては細身でさっぱりとした上品さを感じさせる方向性のように思いました。

個人的な好みもあって価格がペア200万なら結構良いのでは?という感触ですね。今回のイベントレビューを調査すると他にも低価格帯で魅力的なモデルもあったみたいなのでこれが一番ですとはとても言えませんが、最近は海外のインフレと国内のデフレの影響もあってSP価格が高騰しているように感じられますので、価格の割にハイクオリティなモデルというのは価値があります。

最後縦向きにしようとしたのは気まぐれです。

YG Acoustics Sonja XV

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既にこのSPの話題はたくさん出ていますがこちらでも書きたいと思います。実は今回のTIASの前に都内のSISでも聞いたのですが、部屋の強度か広さの関係か部屋が完全にSPに負けておりきちんと評価できるような設置状況ではなかったのでTIASで改めてチェックしたいと思っていました。

皆さんの意見を見ていると見る日によって印象が違っていたようですが、個人的には初日でも印象は全然悪くありませんでした。新作のXVはYGが以前から目標としていた延長にあるような典型的ハイエンドの王道の高性能路線です。それは低域、高域を限界まで伸ばしつつ全帯域の立ち上がりと立ち下がりを最速化、この達成を目指す方向性です。

XVではそれがかつて無い高い次元で達成されていると感じます。今までの最大の弱点だったツイータの自然な伸びと大きな部屋での低域の余裕、この2つの課題をやや強引な力技ではありますが同時に解消してきました。単純な性能では現在最も究極に近いSPだと思います。Magico M6のような帯域のアンバランスさもなく聞いた限りはとても弱点の少ない音です。

ですがここまで高性能になるとSPの性能に部屋が追いついていないことがとても気になります。TIASの部屋はかなり広く余裕がありますのでSISで聞いたときよりは大分良かったですが、それでももっと良い部屋を!とSPが要求していたように感じます。

おそらくですが専用設計で30畳以上の強固かつ音響特性に最大限配慮された部屋が必要になるかと思います。そうでないならSonja 1.3以下のモデルでツイータアップデートを施したほうが使いこなしやすく、音も十分ではないでしょうか。

このXVを鳴らし切るためには部屋も究極である必要があります。そのためには相当に予算の余裕が無い限り目指すことすら出来ない世界でしょう。

Sonus faber Guarneri Tradition

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自分も例に漏れずフランコセルブリンの旧ソナスのほうが完成度が高いと感じています。ですが最新モデルの音も一度聞いてみたいと思いチェックしました。

結論から言えば近距離で直接音を聞くとハイがきついですが部屋の反対側(SPから一番遠い場所)の方ではいい感じです。もし近くで聞くなら一枚壁を間に隔てて聞くとか、ツイータの正面を外して聞くほうが良い音だと思います。

新しいモデルは上位のAIDA含めてハイが強すぎるバランスに感じるのでこのあたりは旧ソナスと全然違う音です。ホールで言えばS席よりさらに前のめりでオケを聴いているような印象を受けます。新しい音作りをしている方が無遠慮で押しが強い方なのかもしれませんね。

このあたりは旧ソナスが好きな人ほど敬遠される音に仕上がっている気がしてなりません。前のめりのオケが好きなら悪い音だとは思いませんでしたが旧シリーズをイメージしてはいけないと思います。

Kii Audio Kii THREE

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これが目当てではなかったのですがたまたま音を聞いたので書きます。

肝心の音なのですがまとまりがあってバランスは良かったですね。ただしこれといった特徴がなく中庸な音でした。音の立ち上がりも良く収束もそこそこ早い、低域と高域のレンジもほどほど、これといって突出している部分があまり見当たらず悪く言えば全然印象に残らない音です。バランスはとても良かったと思うのですが、魅力的な音とも思いませんでした。

気になったのは高音の質感が結構荒れておりこれで180万円はちょっと厳しいかなと思います。全部一体型ですから気になった部分があっても根本解決が難しく最初の出音で完璧だと思えるくらいの完成度じゃないとあとから不満が出た時に大変です。そしてその可能性は結構高いと思いました。

もしオーディオではなくモニタースピーカ用途としてならこれ一台でパワード+DAC内蔵、ルーム補正もできますのであれこれと悩まされず一台完結でとても良いと思いますが、業務用としても値段が高すぎるかもしれません。

オーディオユーザーはあれこれ試したい人が多いと思うのでこういう一台完結はよほどの完成度じゃないと導入は難しいでしょう。これ一台でアンプもDACも一体ですから、もし音が気に入らなかったときに改善する方法がありません。色々楽しむにはちょっとリスクがありますね。

TAD reference one

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今年のTADはとてもジェントルでした。いつもはもうちょっと高域に大雑把なところがあって、なんとなく精密動作できないパワータイプのイメージが合ったのですが、ことしは大分冷静で落ち着いた音がしていました。元々の強みである低域の安定感は健在だったので普通に良かったです。

SPとは関係ないのですがオーディオショップのサウンドラインモノリスさんがけものフレンズのようこそジャパリパークをリクエストしてくれたみたいで、TIASではとても珍しい曲がかかったようです。残念ながら現場には居合わせてなかったのですが空気録音があるので紹介しておきたいと思います。

https://twitter.com/SoundLineM/status/914174477541486592

Wilson Audio ALEXX

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スピーカですがこれは去年も聞いてますね。Wilson Audioの音はツイータがシルクドームになってからとても好みで毎年聞いてますが今年もなかなか良いと思いました。ですが低域はやっぱり欲張り過ぎなのか締まりが若干弱い印象です。低音が過多で特定の帯域で膨らんで量感がある低域に感じてしまいます(通常よりかなり帯域は低い位置ですが)。これならもう少し控えめな低音のほうがつまらなくはなりますがバランスが良いかもと思います。普段聞き慣れないだけかもしれませんが。

こういう巨大スピーカの若干緩い低音って凄さは感じますが、長く使っていろいろな曲を聞いてると曲によって合う合わないが出てきて個人的には不満になる音です。このあたりはパワーアンプの能力もあるのかもしれませんが、去年より大きなダゴスティーノのパワーで聞いたときも低音は完璧じゃなかったのでなかなか難しいところです。

中高域については緻密で透明感のあるとても良い音に感じます。Wilson Audioは低域さえもっと良くなったら理想のSPに最も近いです。中高音の出し方は最も好みでした。

あとは本当はMSBのリファレンスDACについても書きたいのですがDAC単体での比較が出来ないので出音からでは判断が出来ません。まだまだ凄いDACだと思うので一度音を知っているDACとの直接比較がしてみたいです。価格もSelect DACほど異常じゃないので色々なものを犠牲にして本気で頑張ったら買えないこともないって値段になりましたね。

あとはこちらに素晴らしい空気録音のリンクがあるので是非聞いてください。

https://ameblo.jp/507576/

他のスペース

こちらにイベント開場の空気録音がまとまっています。他にも沢山あるのですが一部を紹介します。どれも素晴らしい録音です!

https://twitter.com/Alex_Audio7/status/914805652404494337

Schiit Audio Gungnir Multibitレビュー

Schiit AudioとYggdrasilの海外評判

海外では大変有名のようですが、国内だと代理店がないのでSchiit Audioはご存知でない方も多いと思います。自分も最近まであまり詳しくは知りませんでした。調べてみるとここのYggdrasilというDACモデルが海外での評価が大変高く、内部設計もとても特徴的なので色々と確認してみたいことがあって勢いで購入してみました。既にDACマニアになりつつありますね。

Yggdrasilは100万円オーバーのDACを打ち倒すという評判ですが全く根拠がない誇張ではない設計上の裏付けがあります。某中華DACみたいに超ハイエンドと掲示板などで投下されていても中身の写真を見ると明らかに広告のための嘘だとわかるものもありますが、これは違います!

まず内部設計ですが以前書いたハイエンドDACの記事から一部抜粋します。

ハイエンドDACの設計と、大衆オーディオの未来

最大の特徴はオーディオ用DACチップを使わずにAD5791というマルチビットDACチップを使っていることです。チップスペック的には20bitDACですが、この製品ではAD5791を片チャンネル2つ組み合わせて21bitとしているようです。

オーディオ的に優位性があるのはマルチビットという漏洩ノイズの少ないアーキテクチャ、LPF回路が不要であること、電源電圧が高いこと、これらの理由により神経質かつ高度な音質対策設計をしなくてもよいことです。

普通のオーディオ用DACでは24bit以上のスペックはありますが、最近のチップではアナログ電源が5Vか3.3Vと低く電源ノイズに対する要求スペックが厳しい割に768kHz以上のレートを受け入れるため高周波ノイズの影響は更に厳しくなっています。さらに後段にIVやLPFなど複雑で部品点数の多いアナログ回路を要求する等、周辺回路設計への要求事項が厳しくなっています。

その点AD5791を使うとLPFもIVも不要、電源電圧も高い。なので聴感SNの悪化要因が普通のオーディオ用DACよりかなり少ないです。リファレンス回路通りに作ったら自動でオペアンプレギュレータになるのも音にいいですね!これらの要因はすべて実SNだけでなく聴感SN的にも有利な設計になります。特別な対策や配慮をしなくても高額なDACに音質面で勝てた要因は上記の部分の優位性によるものだと思われます。

今回はこの推測が本当かどうか実物で検証してみたいと思います。

しかしYggdrasilは手軽に実験用購入とするにはちょっと高額なので一つ下位のGungnir Multibitにしました。といってもこれは内部設計が限りなくYggdrasilに近い内容です。Gungnirで使われているチップはAD5791ではなくAD5781ですがピン構成が完全同一で20bitと18bitという違い以外は同一設計なので、所謂AD5791の選別落ち品がAD5781だと思われます。

Schiitマルチビットはこれ以下のモデルになるとチップの内部設計自体が別物になりますのでYggdrasilに限りなく近い音が出るのはGungnirだけだと予想しています(海外の評判でも実際にそうなっています)。ビット数が少ない分Yggdrasilに比べて荒さはあると思いますがむしろマルチビットの特徴は強く出て傾向はわかりやすいでしょう。

Gungnir Multibit、その音質的特徴

前置きが長くて音質レビューがいつまでも出てこないBlogがよくありますが、個人的にああいうのは好きじゃないのですが、うちも前置きが長くなってしまいました。反省しなければ、ということで音質です。

Gungnirの音質では静寂感が最も特筆すべき部分で、深い闇の中からズバッと音が立ち上がってくる印象があります。静寂感についてはとてもハイレベルです。実際に測定もしてみましたが、この部分の性能は超ハイエンド級で間違いない結果です。10万円台としては驚異的なノイズ性能で静寂感だけならこれ以上のDACなど価格問わずほとんど存在しないのではないかと思うくらいです。測定値から推測してこれを確実に超えているのはMSBのダイヤモンド以上という異常事態です。

しかし音の余韻は急に消失する感じがあります。このあたりはビット精度が18bitしかないことで下位ビットの情報自体が存在しないことが理由だと思います。デバイスの性能限界なので設計上の宿命でしょう。たとえば普通の質の悪いDACだとモヤの中に余韻が埋もれて消えていくイメージですが、Gungnirは余韻が明瞭のまま突然消えるような感じです。よく出来ている24bit以上のDACはこのあたり綺麗に減衰していきます。余韻の空気感はSchiitはあまり得意ではありません

もうひとつの弱点としては高音の質感に違和感があります。どこまでも滑らかではなく荒削りで毛羽立ちのある高音という印象です。これはSoekrisでもMSBモジュールでも感じたので普通に作られたマルチビットの限界だと思います。ビット精度が高いYggdrasilではこの違和感は軽減されていると思いますが20bitでは24bitのようななめらかな音は出ないと思います。24bit-DACから見たら常にビット欠けしているのと同じ状態ですからね。

良くマルチビットはデルタシグマのような癖が無くストレートな音と言われますが、現実はマルチビットも完璧ではなく静寂感から浮き立つざわざわした質感があります。デルタシグマも帯域外ノイズさえ押さえ込めばよく言われるデルタシグマらしいハイに特徴のある音ではなくなりますから、このへんは正直DACの対策レベル次第で変わると言えるでしょう。どちらも方式上の弱点なので対策が難しいわけですが。

とはいえGungnirの高域は質の悪いデルタシグマみたいなハイがうるさい音でもきつい音でもないので問題ない範囲です。ただし余韻と質感の自然さが重要なオーケストラとかはあまり合わない印象です。これはエージングでも変わりませんでしたので素性による音質です。このあたりは音楽的にどういった部分を重要視するかの問題なので、空気感とか余韻よりも静寂感やそこから立ち上がる歯切れがよくハキハキした音を重視するならこのDACはとても合うと思います。

最後にとても重要な注意点ですが、XLR出力から音声を取らないとまともな音が出ません。RCA出力は測定上も聴感上もかなりノイジーなのでGungnirのRCA出力は絶対に使ってはいけません。暖色系って言ってるレビューはおそらくこのRCA出力を使ったレビューだと思います。RCAから取ると粗悪DACと大して変わらないモコった音になります。これならRCA出力など無い方が良かったのではと思います。

ローレベルのDAC音質差を録音してみました

これは普通はADCのノイズに埋もれて録音できないDACのローレベルの挙動をmp3でも比較できるように録音するための方法です。

  1. デジタルで-30dBほど絞って再生
  2. ローノイズプリアンプで+40dB増幅
  3. 高性能ADC(Lynx Hilo)の24ビットで録音
  4. DAWでリミッターを限界まで掛け16ビットで細部が見えるようにする

このようにすることで普通は録音できない部分を見ることが出来ます。ローノイズなアナログアンプで増幅するのがポイントです。また1のデジタルで絞る具体的な数字はDACの出力レベルによって変わります。DAVEのように最大出力が大きいDACはより多く絞ることになります。これによってローノイズプリアンプに入力される信号とADCに入力されるレベルは同一なので平等な条件での比較になります。

録音データを紹介しますのでみなさんも実際に音を聞いて比較してみてください。いままでDACの音質差はまともに録音できないと思っていましたが、これは大分現実に近い音です。今までの録音は音質差の1%以下しか取れていませんでしたがこれは3割位取れてると思います。ハイエンドスピーカだとこれ以上の違いが現場で良くわかります。

当たり前ですがこのテストではDACの出力駆動力、帯域外ノイズの影響は正しく評価されていないのでこれが音質差の全てではないことは注意が必要です。ですが目安としては今までの録音より違いが大分わかりやすくなっていると思います!

Gungnir XLR direct

ビット落ちを覚悟でデジタルで絞ってローノイズプリアンプに直結したものです。18bitDACなので量子化ノイズが明瞭に聞こえますが静寂感が素晴らしいですね。その部分はこの中で一番優秀だと思います。とはいえこの使い方は良い部分と悪い部分が極端すぎてバランス感覚に欠けています。

Gungnir RCA direct

量子化ノイズより残留ノイズが大きくて論外です。GungnirのRCA出力は駄目です。ちなみにノイズの定位が中央定位なので原因は左右で別となる抵抗や半導体起因じゃなくて、左右のチャンネルで共通の要素たとえば電源起因のノイズかもしれません。

Gungnir FullBit + CS3318PreAmp

デジタルではなくアナログで絞った録音です。量子化ノイズは目立たなくなりますがそれでも質感は弦の艶をまだ表現できていないと思います。直結と比較するとやや静寂感は減退しています。静寂感はもっと良いプリアンプを用意すれば改善できると思いますが、そこまで良いプリは希少です。ここではこちらの記事で書いた自作CS3318プリを使っています。普通に性能は良いプリですがGungnirの性能は100%引き出せてないです。90%くらいです。

Chord DAVE

意外とノイズが多いですね。でもノイズに埋もれながらも音の潜在的な描写力はとても高く細部ディテールは鮮明です。実SNではなく聴感SNが優れている為と思います。ノイズが無くなったらもっと良いと思うのですが、ホワイトノイズって設計上の課題だと思われるので改善は難しいと思います。簡単に対策できるならこの状態で製品はリリースしてないでしょう。DAVEはフルレベルで出して良いプリで絞ったほうが良いと言うことになりそうです。

自作AK4497

自分の作品なのでコメントしません。

Fidelix Caprice RCA + 内蔵Vol

参考比較用です。SNは良いですが立ち上がりが緩く、全体的にソフトタッチです。音量は完璧に合わせてありますが何故かちょっと音が小さく聞こえます。このあたりはDACの個性で実際に生で聞いてもまったく同じ印象です。設計者の中川さんの好みだと思います。ポリシーを明確に感じるのは良い機材です。

録音は以上です。本当はもっとローエンドなDACがないと違いがわからないのですが正直ここでアップした音はRCA以外どれもハイレベルです。普及価格帯の国産大手のDACが一台あると比較用として多分面白いですけど音が悪い機材は全部売ってしまったので手元にありません。

今回比較に使用した音源はこちらです。

Skrowaczewski: Concerto Nicolo

「Skrowaczewski: Concerto Nicolo RR-103」の画像検索結果

この曲は何故かとても落ち着きますね。普通の感性じゃない自覚はありますが、第二の故郷的なものを感じますw

Gungnir Multibitの使いこなし

この製品は1250ドルと10万円前後のDACでありながら上記の通り高いポテンシャルを持つ製品ですが、本当に低コストで良い音が出せるのかというと疑問です。この点ではSonica DACのような手軽さには欠けます。

その理由としてはRCA出力の音が悪いこと、内蔵ボリュームがないため事実上外部プリアンプ必須なこと、これらの理由によって組み合わせや使いこなしにコツが必要でぱっと買ってきてすぐにいい音が出るとは限らないのです。

このDACは残留ノイズが非常に少ないですがビット数が18bitなのでデジタルボリュームを使うことは出来ません。基本フルビットで受け取ってそのまま出力し、あとからアナログで絞るようにしないとデジタル領域のビット欠けによって音のディテールが即削がれてしまいます。このあたりは現代の32bitDACとは全く違う部分です。安易にデジタルボリューム化が出来ないことは低ビット数のチップを使った設計上の欠点ですね。

そしてプリアンプではアナログボリューム=抵抗とアンプを使う性質上ノイズを減らすことがとても難しく、Gungnirの持つ残留ノイズの低さを100%引き出せるプリアンプなど、ほとんど存在しないのではないかと思われます。しかもXLRフルバランスを受けられるローノイズプリアンプとなるとあまり低コストでは済まないと思います。

GungnirのXLR出力ノイズ測定値を見たところ普通のよくあるオーディオ用FETオペアンプが持つ残留ノイズと同じくらいです。オペアンプ一個通過しただけで性能がでなくなるって考えてもらえればプリアンプ設計の難易度が分かると思います!

90dbsine1k_100k_20klpf

-90dB 1kHz sine XLRout

この-160dBVという値は10nV/rtHzに近いレベル(誤差があるので目安)ですから、抵抗アッテネータでも安易に挟めません。1kΩの抵抗が4nV/rtHzなので数kΩの抵抗でもGungnirの実力は抑えられてしまうということです。Schiitがオペアンプを使わずJFETのディスクリートを使った理由もこの部分にあるかもしれません。市販FETオペアンプをこの部分に挟むとローノイズな出力はなかなか得られません。当方のCS3318プリも-150dB位の実力でCS3318のチップスペック限界ですが、それでもやや性能が足りません。

一応Schiit本家にもプリアンプの取扱はありますが、残留ノイズの情報や詳しい設計上の工夫について記載がありませんので、そこまで高性能なプリアンプを作っているのかは大変疑問です。もし本当に性能上で優位性があるならノイズのスペックも出ていると思います。そもそもGungnirはRCAの出力ノイズがあまりにも酷いので、同社プリアンプも設計に問題がある可能性を考えておいたほうが良いです。同じメーカーだからといって一か八かで購入してハズレを引く可能性を考えるとあまり冒険はオススメできないです。

もし選ぶならローノイズに注力したきちんと設計上の工夫や強みを紹介している製品を購入するのが良いと思います。少ないですが測定値などを公開しているメーカーのものが望ましいです。

正直そこまでやっているメーカーはあまり思い当たりませんが、設計で万全そうなのはSAYA辺りでしょうか…。価格が100万円近いのが難点ですが。AITプリも発想は良いですがDACの残留ノイズを測定した限りは-145dB付近(普通は十分ハイレベルですが)ので設計レベルが怪しいです。

ということで現時点でYggdrasilやGungnirの真の実力を発揮できているユーザーはDACの価格帯を考えると殆どいないのかもしれません。もちろんプリが万全じゃなくてもDACの良さはわかりますが真の実力、潜在力は発揮できてないということです。

まとめますとGungnirの海外での圧倒的な評価の高さはきちんとデータで裏付けが出来る結果のように見えるということです。特にデータ上でDAVEより直結Gungnirのほうがノイズ性能が良いという結果はとても重要な部分です。実際に背景の静寂感はDAVEよりGungnirのほうが良いです。

Gungnirはビット解像度不足による音の粗さという設計上最大の弱点がありますが、万が一ADから24bitのチップが出てきたら総合力でもSchiitのマルチビットはDAVE以上の音質になってしまうと思います。しかしそのようなチップは存在しませんし、出来たとしてもとんでもない価格のICになる筈なので現実的には難しいと思いますが。

最後にGungnirのRCA出力の酷い測定値も置いておきます。上の画像と同じスケールですが別物のDACのようにノイズが多いです。RCA出力は音が出るだけで音質的には使いものにならないと思ったほうがいいです。

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USB gen 5について

あまりDDCには興味が無いのでテストしない予定だったのですが、このモデルについているDDCは最新世代で良いものみたいですね。興味がある方もいると思いますので今回はこれもテストしてみます。

実際にSchiitのUSB gen 5をWin10で試してみましたが、うちの光ブースターのほうが音が自然でした。この時に使ったDDCはSMSLの6000円くらいのXMOS-DDCですが、これの光出力に光ブースターを入れた場合のほうが高域のザラザラしたデジタルぽい感じがなくなって低音のパワーと中域の透明感が増します。Gen 5 DDC直結ではこのあたりがもうひとつ弱いです。

実はうちはDDCを使わず自作の光ブースターを使っているので上流の音質差が殆どありません。今まで試した結果ですが上流の音質差を9割位圧縮する効果があるみたいです。Schiitの最新世代DDCでも例外ではありませんでした。

いままで試したのは安いCDP、高級トランスポート、無対策PC、高額オーディオIF、高級DDC、低価格DDC、これらさまざまな上流を使って比較してきましたがどの出力も光ブースター単体を超えるものはなく更に光ブースターを挟むとどれも音質が同じように底上げされるので、どれを使っても大した違いが無くなります。もちろん違いが完全に無くなるわけじゃないのですが差が底上げされて圧縮されます。

ということで結局Schiitの最新世代DDCよりこちらの光ブースターのほうが良いみたいです。ですがDDC直結で光ブースターにそこそこ肉薄するクオリティではあったので単体DDCとしてはかなり優秀かもしれません。

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その他の基板写真

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Chord DAVEと他のDAC試聴してきました

2016年9月 購入後のレビューあっぷしました

久しぶりにオーディオ試聴をしてきました。御茶ノ水オーディオユニオンでChord DAVEの展示があったので、厳密比較のため自分のヘッドフォン+音源を持参できいてきました。ショップさまには高額機器を快く試聴をさせていただき感謝いたします。

結論から言えばDAVEは予想よりすごかったです。価格はとても高いのですがさすがにHugoとは次元が違いました。Hugoでは前回の厳密試聴の結果、自作AK4495S-DACのほうが概ね良かったわけですが、多分ですけどDAVEと比較したら情報量とか解像度については自作DACのほうが不利そうでした。いままでこの部分について集中的に取り組んできたのですが今回はやられている感じがします。

そして単なる解像度以上に、いくつか印象的だったことがあったので、それについて詳しく書きたいとおもいます。DAVEについてはまだまだネットの情報では突っ込んだ試聴レビューが少ないですので、少しでも参考になればと思うところです。とはいえ一個人の感想でしかないですから、いつもどおり内容の信憑性については話半分にてお願いします。

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[M3]AK4495S DAC展示、ミックスキット、オーディオキット

予定していたSRC、電子ボリュームキットは諸事情で延期になりました。すみません。

今回は実質yohine Best Worksとなるミックスキット集、オーディオキット配布です。電源がある場所なので自作AK4495S-DACの実機試聴も行います。いつものCD類はほんのちょっとだけ持って行きますけど、今回はCDメインのイベントとは考えていませんので、あまり期待しないで下さい。CD関係は次の例大祭になります。

Innocent Keyオーディオ部 第二展示場2F コ-31a

配置はここみたいです。Twitterで告知しているみたいなので知っている人は知っているかと思います。以下、DACの試聴案内、ミックスキットのクロスフェードと詳細、オーディオキットの予定について詳細です。

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