Schiit Audio Gungnir Multibitレビュー

Schiit AudioとYggdrasilの海外評判

海外では大変有名のようですが、国内だと代理店がないのでSchiit Audioはご存知でない方も多いと思います。自分も最近まであまり詳しくは知りませんでした。調べてみるとここのYggdrasilというDACモデルが海外での評価が大変高く、内部設計もとても特徴的なので色々と確認してみたいことがあって勢いで購入してみました。既にDACマニアになりつつありますね。

Yggdrasilは100万円オーバーのDACを打ち倒すという評判ですが全く根拠がない誇張ではない設計上の裏付けがあります。某中華DACみたいに超ハイエンドと掲示板などで投下されていても中身の写真を見ると明らかに広告のための嘘だとわかるものもありますが、これは違います!

まず内部設計ですが以前書いたハイエンドDACの記事から一部抜粋します。

ハイエンドDACの設計と、大衆オーディオの未来

最大の特徴はオーディオ用DACチップを使わずにAD5791というマルチビットDACチップを使っていることです。チップスペック的には20bitDACですが、この製品ではAD5791を片チャンネル2つ組み合わせて21bitとしているようです。

オーディオ的に優位性があるのはマルチビットという漏洩ノイズの少ないアーキテクチャ、LPF回路が不要であること、電源電圧が高いこと、これらの理由により神経質かつ高度な音質対策設計をしなくてもよいことです。

普通のオーディオ用DACでは24bit以上のスペックはありますが、最近のチップではアナログ電源が5Vか3.3Vと低く電源ノイズに対する要求スペックが厳しい割に768kHz以上のレートを受け入れるため高周波ノイズの影響は更に厳しくなっています。さらに後段にIVやLPFなど複雑で部品点数の多いアナログ回路を要求する等、周辺回路設計への要求事項が厳しくなっています。

その点AD5791を使うとLPFもIVも不要、電源電圧も高い。なので聴感SNの悪化要因が普通のオーディオ用DACよりかなり少ないです。リファレンス回路通りに作ったら自動でオペアンプレギュレータになるのも音にいいですね!これらの要因はすべて実SNだけでなく聴感SN的にも有利な設計になります。特別な対策や配慮をしなくても高額なDACに音質面で勝てた要因は上記の部分の優位性によるものだと思われます。

今回はこの推測が本当かどうか実物で検証してみたいと思います。

しかしYggdrasilは手軽に実験用購入とするにはちょっと高額なので一つ下位のGungnir Multibitにしました。といってもこれは内部設計が限りなくYggdrasilに近い内容です。Gungnirで使われているチップはAD5791ではなくAD5781ですがピン構成が完全同一で20bitと18bitという違い以外は同一設計なので、所謂AD5791の選別落ち品がAD5781だと思われます。

Schiitマルチビットはこれ以下のモデルになるとチップの内部設計自体が別物になりますのでYggdrasilに限りなく近い音が出るのはGungnirだけだと予想しています(海外の評判でも実際にそうなっています)。ビット数が少ない分Yggdrasilに比べて荒さはあると思いますがむしろマルチビットの特徴は強く出て傾向はわかりやすいでしょう。

Gungnir Multibit、その音質的特徴

前置きが長くて音質レビューがいつまでも出てこないBlogがよくありますが、個人的にああいうのは好きじゃないのですが、うちも前置きが長くなってしまいました。反省しなければ、ということで音質です。

Gungnirの音質では静寂感が最も特筆すべき部分で、深い闇の中からズバッと音が立ち上がってくる印象があります。静寂感についてはとてもハイレベルです。実際に測定もしてみましたが、この部分の性能は超ハイエンド級で間違いない結果です。10万円台としては驚異的なノイズ性能で静寂感だけならこれ以上のDACなど価格問わずほとんど存在しないのではないかと思うくらいです。測定値から推測してこれを確実に超えているのはMSBのダイヤモンド以上という異常事態です。

しかし音の余韻は急に消失する感じがあります。このあたりはビット精度が18bitしかないことで下位ビットの情報自体が存在しないことが理由だと思います。デバイスの性能限界なので設計上の宿命でしょう。たとえば普通の質の悪いDACだとモヤの中に余韻が埋もれて消えていくイメージですが、Gungnirは余韻が明瞭のまま突然消えるような感じです。よく出来ている24bit以上のDACはこのあたり綺麗に減衰していきます。余韻の空気感はSchiitはあまり得意ではありません

もうひとつの弱点としては高音の質感に違和感があります。どこまでも滑らかではなく荒削りで毛羽立ちのある高音という印象です。これはSoekrisでもMSBモジュールでも感じたので普通に作られたマルチビットの限界だと思います。ビット精度が高いYggdrasilではこの違和感は軽減されていると思いますが20bitでは24bitのようななめらかな音は出ないと思います。24bit-DACから見たら常にビット欠けしているのと同じ状態ですからね。

良くマルチビットはデルタシグマのような癖が無くストレートな音と言われますが、現実はマルチビットも完璧ではなく静寂感から浮き立つざわざわした質感があります。デルタシグマも帯域外ノイズさえ押さえ込めばよく言われるデルタシグマらしいハイに特徴のある音ではなくなりますから、このへんは正直DACの対策レベル次第で変わると言えるでしょう。どちらも方式上の弱点なので対策が難しいわけですが。

とはいえGungnirの高域は質の悪いデルタシグマみたいなハイがうるさい音でもきつい音でもないので問題ない範囲です。ただし余韻と質感の自然さが重要なオーケストラとかはあまり合わない印象です。これはエージングでも変わりませんでしたので素性による音質です。このあたりは音楽的にどういった部分を重要視するかの問題なので、空気感とか余韻よりも静寂感やそこから立ち上がる歯切れがよくハキハキした音を重視するならこのDACはとても合うと思います。

最後にとても重要な注意点ですが、XLR出力から音声を取らないとまともな音が出ません。RCA出力は測定上も聴感上もかなりノイジーなのでGungnirのRCA出力は絶対に使ってはいけません。暖色系って言ってるレビューはおそらくこのRCA出力を使ったレビューだと思います。RCAから取ると粗悪DACと大して変わらないモコった音になります。これならRCA出力など無い方が良かったのではと思います。

ローレベルのDAC音質差を録音してみました

これは普通はADCのノイズに埋もれて録音できないDACのローレベルの挙動をmp3でも比較できるように録音するための方法です。

  1. デジタルで-30dBほど絞って再生
  2. ローノイズプリアンプで+40dB増幅
  3. 高性能ADC(Lynx Hilo)の24ビットで録音
  4. DAWでリミッターを限界まで掛け16ビットで細部が見えるようにする

このようにすることで普通は録音できない部分を見ることが出来ます。ローノイズなアナログアンプで増幅するのがポイントです。また1のデジタルで絞る具体的な数字はDACの出力レベルによって変わります。DAVEのように最大出力が大きいDACはより多く絞ることになります。これによってローノイズプリアンプに入力される信号とADCに入力されるレベルは同一なので平等な条件での比較になります。

録音データを紹介しますのでみなさんも実際に音を聞いて比較してみてください。いままでDACの音質差はまともに録音できないと思っていましたが、これは大分現実に近い音です。今までの録音は音質差の1%以下しか取れていませんでしたがこれは3割位取れてると思います。ハイエンドスピーカだとこれ以上の違いが現場で良くわかります。

当たり前ですがこのテストではDACの出力駆動力、帯域外ノイズの影響は正しく評価されていないのでこれが音質差の全てではないことは注意が必要です。ですが目安としては今までの録音より違いが大分わかりやすくなっていると思います!

Gungnir XLR direct

ビット落ちを覚悟でデジタルで絞ってローノイズプリアンプに直結したものです。18bitDACなので量子化ノイズが明瞭に聞こえますが静寂感が素晴らしいですね。その部分はこの中で一番優秀だと思います。とはいえこの使い方は良い部分と悪い部分が極端すぎてバランス感覚に欠けています。

Gungnir RCA direct

量子化ノイズより残留ノイズが大きくて論外です。GungnirのRCA出力は駄目です。ちなみにノイズの定位が中央定位なので原因は左右で別となる抵抗や半導体起因じゃなくて、左右のチャンネルで共通の要素たとえば電源起因のノイズかもしれません。

Gungnir FullBit + CS3318PreAmp

デジタルではなくアナログで絞った録音です。量子化ノイズは目立たなくなりますがそれでも質感は弦の艶をまだ表現できていないと思います。直結と比較するとやや静寂感は減退しています。静寂感はもっと良いプリアンプを用意すれば改善できると思いますが、そこまで良いプリは希少です。ここではこちらの記事で書いた自作CS3318プリを使っています。普通に性能は良いプリですがGungnirの性能は100%引き出せてないです。90%くらいです。

Chord DAVE

意外とノイズが多いですね。でもノイズに埋もれながらも音の潜在的な描写力はとても高く細部ディテールは鮮明です。実SNではなく聴感SNが優れている為と思います。ノイズが無くなったらもっと良いと思うのですが、ホワイトノイズって設計上の課題だと思われるので改善は難しいと思います。簡単に対策できるならこの状態で製品はリリースしてないでしょう。DAVEはフルレベルで出して良いプリで絞ったほうが良いと言うことになりそうです。

自作AK4497

自分の作品なのでコメントしません。

Fidelix Caprice RCA + 内蔵Vol

参考比較用です。SNは良いですが立ち上がりが緩く、全体的にソフトタッチです。音量は完璧に合わせてありますが何故かちょっと音が小さく聞こえます。このあたりはDACの個性で実際に生で聞いてもまったく同じ印象です。設計者の中川さんの好みだと思います。ポリシーを明確に感じるのは良い機材です。

録音は以上です。本当はもっとローエンドなDACがないと違いがわからないのですが正直ここでアップした音はRCA以外どれもハイレベルです。普及価格帯の国産大手のDACが一台あると比較用として多分面白いですけど音が悪い機材は全部売ってしまったので手元にありません。

今回比較に使用した音源はこちらです。

Skrowaczewski: Concerto Nicolo

「Skrowaczewski: Concerto Nicolo RR-103」の画像検索結果

この曲は何故かとても落ち着きますね。普通の感性じゃない自覚はありますが、第二の故郷的なものを感じますw

Gungnir Multibitの使いこなし

この製品は1250ドルと10万円前後のDACでありながら上記の通り高いポテンシャルを持つ製品ですが、本当に低コストで良い音が出せるのかというと疑問です。この点ではSonica DACのような手軽さには欠けます。

その理由としてはRCA出力の音が悪いこと、内蔵ボリュームがないため事実上外部プリアンプ必須なこと、これらの理由によって組み合わせや使いこなしにコツが必要でぱっと買ってきてすぐにいい音が出るとは限らないのです。

このDACは残留ノイズが非常に少ないですがビット数が18bitなのでデジタルボリュームを使うことは出来ません。基本フルビットで受け取ってそのまま出力し、あとからアナログで絞るようにしないとデジタル領域のビット欠けによって音のディテールが即削がれてしまいます。このあたりは現代の32bitDACとは全く違う部分です。安易にデジタルボリューム化が出来ないことは低ビット数のチップを使った設計上の欠点ですね。

そしてプリアンプではアナログボリューム=抵抗とアンプを使う性質上ノイズを減らすことがとても難しく、Gungnirの持つ残留ノイズの低さを100%引き出せるプリアンプなど、ほとんど存在しないのではないかと思われます。しかもXLRフルバランスを受けられるローノイズプリアンプとなるとあまり低コストでは済まないと思います。

GungnirのXLR出力ノイズ測定値を見たところ普通のよくあるオーディオ用FETオペアンプが持つ残留ノイズと同じくらいです。オペアンプ一個通過しただけで性能がでなくなるって考えてもらえればプリアンプ設計の難易度が分かると思います!

90dbsine1k_100k_20klpf

-90dB 1kHz sine XLRout

この-160dBVという値は10nV/rtHzに近いレベル(誤差があるので目安)ですから、抵抗アッテネータでも安易に挟めません。1kΩの抵抗が4nV/rtHzなので数kΩの抵抗でもGungnirの実力は抑えられてしまうということです。Schiitがオペアンプを使わずJFETのディスクリートを使った理由もこの部分にあるかもしれません。市販FETオペアンプをこの部分に挟むとローノイズな出力はなかなか得られません。当方のCS3318プリも-150dB位の実力でCS3318のチップスペック限界ですが、それでもやや性能が足りません。

一応Schiit本家にもプリアンプの取扱はありますが、残留ノイズの情報や詳しい設計上の工夫について記載がありませんので、そこまで高性能なプリアンプを作っているのかは大変疑問です。もし本当に性能上で優位性があるならノイズのスペックも出ていると思います。そもそもGungnirはRCAの出力ノイズがあまりにも酷いので、同社プリアンプも設計に問題がある可能性を考えておいたほうが良いです。同じメーカーだからといって一か八かで購入してハズレを引く可能性を考えるとあまり冒険はオススメできないです。

もし選ぶならローノイズに注力したきちんと設計上の工夫や強みを紹介している製品を購入するのが良いと思います。少ないですが測定値などを公開しているメーカーのものが望ましいです。

正直そこまでやっているメーカーはあまり思い当たりませんが、設計で万全そうなのはSAYA辺りでしょうか…。価格が100万円近いのが難点ですが。AITプリも発想は良いですがDACの残留ノイズを測定した限りは-145dB付近(普通は十分ハイレベルですが)ので設計レベルが怪しいです。

ということで現時点でYggdrasilやGungnirの真の実力を発揮できているユーザーはDACの価格帯を考えると殆どいないのかもしれません。もちろんプリが万全じゃなくてもDACの良さはわかりますが真の実力、潜在力は発揮できてないということです。

まとめますとGungnirの海外での圧倒的な評価の高さはきちんとデータで裏付けが出来る結果のように見えるということです。特にデータ上でDAVEより直結Gungnirのほうがノイズ性能が良いという結果はとても重要な部分です。実際に背景の静寂感はDAVEよりGungnirのほうが良いです。

Gungnirはビット解像度不足による音の粗さという設計上最大の弱点がありますが、万が一ADから24bitのチップが出てきたら総合力でもSchiitのマルチビットはDAVE以上の音質になってしまうと思います。しかしそのようなチップは存在しませんし、出来たとしてもとんでもない価格のICになる筈なので現実的には難しいと思いますが。

最後にGungnirのRCA出力の酷い測定値も置いておきます。上の画像と同じスケールですが別物のDACのようにノイズが多いです。RCA出力は音が出るだけで音質的には使いものにならないと思ったほうがいいです。

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USB gen 5について

あまりDDCには興味が無いのでテストしない予定だったのですが、このモデルについているDDCは最新世代で良いものみたいですね。興味がある方もいると思いますので今回はこれもテストしてみます。

実際にSchiitのUSB gen 5をWin10で試してみましたが、うちの光ブースターのほうが音が自然でした。この時に使ったDDCはSMSLの6000円くらいのXMOS-DDCですが、これの光出力に光ブースターを入れた場合のほうが高域のザラザラしたデジタルぽい感じがなくなって低音のパワーと中域の透明感が増します。Gen 5 DDC直結ではこのあたりがもうひとつ弱いです。

実はうちはDDCを使わず自作の光ブースターを使っているので上流の音質差が殆どありません。今まで試した結果ですが上流の音質差を9割位圧縮する効果があるみたいです。Schiitの最新世代DDCでも例外ではありませんでした。

いままで試したのは安いCDP、高級トランスポート、無対策PC、高額オーディオIF、高級DDC、低価格DDC、これらさまざまな上流を使って比較してきましたがどの出力も光ブースター単体を超えるものはなく更に光ブースターを挟むとどれも音質が同じように底上げされるので、どれを使っても大した違いが無くなります。もちろん違いが完全に無くなるわけじゃないのですが差が底上げされて圧縮されます。

ということで結局Schiitの最新世代DDCよりこちらの光ブースターのほうが良いみたいです。ですがDDC直結で光ブースターにそこそこ肉薄するクオリティではあったので単体DDCとしてはかなり優秀かもしれません。

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その他の基板写真

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マラソン試聴会とヘッドフォン祭2016

ちょっと前の話題ですが、まとめておきたいと思います。今年のマラソン試聴会の目当てはこれです。

「ネットワーク/USB DAC 6選 注目のDAC6種を比較!」

  • Chord DAVE
  • MSB Analog DAC
  • MERIDIAN 818
  • ESOTERIC D-02X
  • LINN KLIMAX DS
  • Sforzato DSP-02+PMC03

やっぱりDACの開発をやっているのでハイエンドDACに興味がある今日このごろです。ということでほとんどこの聴き比べを目当てに会場に行きました。

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2016インターナショナルオーディオショー感想+おまけ

1日しか時間が取れなかったのですが、9/30の金曜日だけ行ってきました。個人的には一昨年までほとんど毎年行っていましたので、完全に新しい内容は少なかったのですが、それでもいくつか印象的なこともあったのでまとめておきたいと思います。

それとあわせて、今までこちらのBlogではまとめていなかった、各社のスピーカ(SP)に対する印象も書けることは記載しておきたいと思います。SPは外で見かける意見と結構違う部分もあります。人によって感じ方はそれぞれという部分です。

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Linnのスペースです。AK4497を搭載した新しいKLIMAXが出るということで見に行きました。たまたま運がよいことにちょうどWM8741を使った旧型のKLIMAXとAK4497の新型を差し替えて同じ曲を聴き比べさせてくれました。印象としては次のとおりです。

  • 旧型:音が柔らかく、ベールに包まれたような優しさと、ハイに若干響きが乗った音
  • 新型:全帯域で音が引き締まって現代的な描写に。空間の靄が晴れ基本性能は明らかに向上しているが、個性はかなり薄まった

他の機種との比較ではないのでLinnの個性が健在なのかどうかはこれだけではわかりませんでしたが、単純比較ではこのように感じました。クオリティは確実に上がっているように思います。

次にLinnのSPについてですが、今まで何度も聞いていてEXAKTもそうでないものも聞いたことがあるのですが、共通しているのは基本ゆるめで箱鳴りもはっきりしていて、ゆったりと落ち着いてリラックスして聞く音というイメージがあります。スピードの早い音は苦手そうだしそういう音を聞くスピーカとも思いません。中高音の描写も透明系ではなくて若干不透明系の方向性だと感じています。(音が悪いという意味ではありません)

ただ、あたらしいKLIMAXもEXAKTも方向性はより現代的な方向(引き締まってピントが合う)に感じたので、もともとのLinnの個性だった方向性とは単純に相性が良いとは思えないところがあります。これらのLinnの新世代サウンドに合わせるならSP自体の基本設計も、現代的な方向性を取り入れながら独自の魅力も維持できるような調整はしたほうが良さそうに感じています。目がさめるような音と、リラックスして眠くなる音が、若干ですがぶつかり始めているような印象です。

多分ですが此処から先、これ以上機器側が高性能化すると高音がキツく感じるようになってしまい、ゆとりもなくなってLinnの良さはなくなってしまうのではないかと思います。まさかLinnがこのことに気づいていないとも思えないので、これから新世代のSPが出てくるのでしょうかね?期待です。

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こちらの画像はAK4497を使ったKLIMAXの周辺回路です。今回は技術的な内容は少なめにしたいので、とりあえず画像のみ置いておきます。設計自体はトランスを使っている以外は見た感じ特別なことはそれほどやっていないと思います。

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次はMYTEKです。ManhattanとBrooklynの評価が高かったので実力をチェックしてみたかったのですが、これがSPとの組み合わせの試聴だとDACの実力はなかなかわからないのですが、今回はたまたまヘッドフォンの試聴もあったので良かったです。ヘッドフォン自体も何度も聞いたこと有るHD800なので実力のチェックには最適な環境でした。

音は非常に良かったです。

これなら評判が良いのもわかります。以前DSDとあわせて流行した192-DACは全く良いと思わなかったのですが、このManhattan以降はなにか技術革新があったのでしょう。完全に別物と言っても良いほどクオリティが向上しています。

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隣においてあったBrooklynも良かったです。むしろ驚いたのはBrooklynの方かもしれません。サイズも価格も半分くらいですが音の実力は半分以上どころかManhattanと比べても残念感はありません。基本的な音の方向性はほとんど同じだしクオリティの違いも価格差程もないと思いました。内部写真を見るとBrooklynはスイッチング電源でManhattanがトランス電源でDAC素子も違うのですが、仕上がりはそのあたりの格差を全く感じさせないので、非常に良く出来ていますね。コストパフォーマンスは圧倒的にBrooklynでしょう。

Mytekの音の個性を文章で説明するのは非常に難しいのですが、まず音には明確な粒子感があります。わずかにベールがかかっているような感じもあるのですが、それでも各音が非常に明快でしっかりと前後感もあります。雑味は有るのですが情報量は多いです。なのでトータルでの説得力もクオリティも高く感じます。どの帯域も破綻しているところがないしバランス良く聞こえました。これだけ聞いていたらもうこれで十分という音質かもしれません。なのでこのシリーズは非常に良いDACと思います。

多分絶対的な透明感とか解像度、雑味のなさ等、音質的な絶対位置の高さはDAVEのほうがはるかに良いと思いますが、それよりも重要なのは基本的な音の描写自体がぜんぜん違う印象であることです。DAVEは全く粒子感がないので濃淡のレンジが非常に広い水墨画のようなイメージですが、Manhattan+Brooklynは精密な点描のようでした。人工的かつ有機的なManhattanと自然かつ無機的なDAVEという感じです。好みに合えばあえてMytekでも良いと思います。個人的にはDAVEの音のほうが圧倒的に惹かれます。

あとどうでもいいところですが、フロントパネルのスイッチにもヘビ柄?の彫刻が入っていて、ケース側とちゃんと位置が合うようになっているのは加工頑張っているなと思いました。

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次はNAGRAのフルセット+Avalon Acousticsです。

一聴して思ったのはボーカルが近い!前後感じゃあなくてとにかく音が前に前に前に前に出て来る印象です。これは解像度よりも音の近さを最大限に重視したのではないかと思ったほどです。ボーカルや演奏者に近づきたいならNAGRAなのでしょうか?以前Avalon+dCS+Jeffで聞いたときは全然このような押し付けがまし音じゃなかったので多分これがNAGRAの音なのでしょうか。温度感も高いです。

この辺は好みの世界だと思うのですが、演奏者に一番近づくことが出来るのはNAGRAだ!っていう独自の強みについては面白いと思いました。ただ個人的にはもうちょっと遠くから眺めたい派かもしれず、ちょっと押しが強すぎるような印象を持ちました。オーケストラでも一番前かぶりつきよりはちょっと冷静に全体を見たい派ですね。

Avalonは過去何年も聞いてきていますが、共通している印象は大音量時の箱鳴りを活かした元気さと平常時の基礎クオリティの両面の顔をもつところです。音が小さいときはかなり緻密な音ですが、箱鳴りを消し切る方向性ではありません。とくにある一定音量以上を入れると急に大雑把な描写になって破綻しそうになる印象がありますが、実はAvalonの実力が最高に出るのはこの、音が破綻しそうな瞬間をいかに魅力的に見せるかではないかと思ったことがあります。常に忠実で冷静なSPは他にも沢山ありますからね。

それは無意味に破綻させるのではなくSPがいっぱいいっぱいの状態と音楽の展開とをリンクさせることです。音楽自体がそういう流れのときSP側もいっぱいいっぱいになると、その瞬間に音楽の表現力も最大になると思うからです。

なのでAvalonは決して忠実でおとなしい現代的SPではなく、普段澄ましてきれいに取り繕っていながら、一旦限界を超えると急に暴れだしてしまう、そういう直情的なところがむしろ魅力なのではないかと思っています。普段おとなしいけど感情的になりやすいお嬢様な感じでしょうか。

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KRELL+YG Acousticです。KRELLのコンポーネントについてはオリジナルの開発者も不在ですし今向かっている方向性がちょっとみえてこないので、ここではSPのみについてかきます。

Sonja以降のYGは箱の響きがほぼ完全に消えた印象があります。インターナショナルオーディオショウでは大抵のハイエンドSPでも低音がビビっていることがおおいのですが、YGはそのような欠点を見せてしまうということが過去数年のうち最も少ないSPのように感じています。破綻どころか、ちょっとビビる程度の側面もめったに見せません。

現在のYGの印象はある意味完璧にもっとも近いSPです。独自の個性は安定感とトータルバランスとしか言えないです。音に宿る余裕度と安定感が非常に優れています。普通のSPでは押したら若干揺らぐ印象があるのですが(WilsonのAlexandriaでも)、YGにはそういう感じがまったくなくどこまでも揺らがない印象です。均整の取れた万能スポーツマンかつ男性的、YGは多分なんでも頼れるとっても強い兄貴的なSPですね。

とにかく全帯域でバランスがとれていて、何かが突出しているところもなく、特筆するべきところもなく、バランスが良くハイクオリティです。聞く音楽が雑食系で色々な曲を聞くならこれが一番良いでしょうね。でも何か凄い魅力的っていう部分は弱いので、特定のジャンルや音色を追求するような人からみたらYGって何が良いのかわからないSPとなりそうです。

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写真がボケててすみませんがMagicoです。この時はS1でしょうか。正直この瞬間は音量が大きすぎて常に破綻状態で、かなり良くない感じだったのでMagicoの良い時の音の印象としてレビューを書きたいと思います。今までまともな状態で聞いたのはQ3、S5、S1です。Q7は音自体は聞いたのですが残念ながら良い状態のものを聞いたことがありません。

個人的にはMagicoは決して無色透明なSPではないと思っています。世間では響きの無い高性能SPというイメージが有るように見えるのですが、一般的なSPと比べたらそうかもしれませんが、現代的なハイエンドSPのグループでみるとMagicoはやはり独自の個性を持つSPだと位置づけています。同じ方向性ならYGのほうがより響きを感じないSPのように思います。

Magicoの音の最大の特徴は、非常に応答性が良く描写力が高い高性能SPでありながらも温度感が高いことです。全帯域に常にまとわりつくような響きが残っており、それがほんのりと暖色系に感じさせる要因となっています。この温度感はSシリーズがQシリーズより高く感じますが、Qシリーズでも3までのモデルには十分温かみのある音がします。

非常に感覚的な書き方をすると、箱鳴りの音が細かく粉砕してゆっくり消えていくイメージです。木製の平行面箱型SPでよくある大きな反響音そのままブルブル共振する感じではなく、反響音自体を原型を留めないような細かい粒子へ分解して、ゆっくりと減衰しているように聞こえます。この独特の反響音が透明かつ暖色系の独自の音色を作り出しているように思います。

まるでやわらかい素材で包み込まれるようなふわっとした感触があります。全体的な音はハイスピード系ですが音にキツさがないのでどことなく優しさも感じます。他に似たような音がするSPはしらないので独自の個性は際立っているように感じられます。

Magicoと似ていて全く違う音のSPはKrellのLAT1です。かなり前に聞いたことが有るのですがこちらは反響音の消え方がちょっと違います。どちらも響きを細かい粒子に変換して減衰していく事自体は似ているのですが、Krellはもっと硬めの粒子感があり、なおかつシャープな減衰で、まるで僅かにデジタルリバーブをかけたかのような減衰音で、これにより透明感も強調され若干キラキラするような美音系にも感じられます。Magicoとはぜんぜん違う感触です。

ですがどちらも完全に金属のエンクロージャで響きを細かく砕きながらゆっくり減衰させていくという印象は共通しています。個人的にはこの2つを比べるならKrellの方向性のほうが好みです。

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マランツ+B&Wです。新型の800の発表だったのか金曜日なのに人がたくさんいました。ここで出ていた音は繋いでいる機材の性能のせいかガサガサした音であまり良いと思えなかったのですが、良い状態の800シリーズの音の印象と、D3シリーズについて思っていることをかきます。

いままでで一番良い音を聞いたのはとある個人宅で、機種は800Diamondだったと思いますが非常に定位が明確で音の配置とサイズまでがはっきりと見えるような描写力でした。さらに全帯域の速度に全くムラがなく最低音域まで完全にハイスピードな音でした。あのような音は他では聞いたことがありません。このような最高峰の音質がどこでも出ているなら、おそらくいまでもこれは最高のSPなのでしょうが、普通はそこまで鳴らすのはまず無理です。

普通にみかけるB&W800シリーズではあのような超高速の低音は出ておらず、よく見かけるのは遅い低音と早い高音、各ユニットの音質にまとまりがない、帯域ごとに完全にバラバラの音です。このような音が本来の800シリーズの音質でしょう。帯域ごとにユニットの素材も違うしエンクロージャの設計も異なっているのでどうしてもユニット帯域ごとのキャラクターに統一感がなくなります。

このバラバラさがむしろ初心者には異様に分離がよく感じられる要因なのですが、いざ所持して長いこと聞いているとこの帯域のばらつきが気になってきます(以前Nautilus 803を持っていました)。

D3は当然ながら以前のモデルと比較するとこれらの部分は良くなっています。最新のD3だともう低音の重さはほとんど感じなくなっていますし、従来よりもユニットごとのつながりも改善しており、一つ前のモデルより材質の違いによる質感のばらつきもあからさまではなくなったように思います。しかしD3になってから、クオリティと引き換えにいままでの独自の個性も同様になくなったように思います。

いままでの音は上記のようなバラバラでまとまりに欠ける部分はあったのですが、そのかわり他社にはない個性を持っていたとも言えます。特に初代のNautilus 800シリーズが登場したときは価格も現実的で音質も当時の平均的なSPと比べて先進的なSPでした。ですがシリーズがD3へ進化する間に販売価格はどんどん上昇し、先進的な設計という面でも他社のSPに遅れを取るようになってきていると思います。

今ではより価格の安いSPでも箱鳴りを抑えてユニットごとの質感も統一されているようなSPも出てくるようになりましたし、シリーズの価格も上がっているので他の選択肢もたくさん出てきています。そのような中でいまさら現代的な設計により近づけてきたD3シリーズをだしても、過去から連なる800シリーズの中で比較したら最高の仕上がりかもしれませんが、独自の個性を失っただけでそこまで突き抜けていない印象も正直あります。

もし800シリーズを名乗ることが制約になって基本設計を変えることが許されないならば、B&WはD3などではなく全く別に900シリーズなどを新設して、比較的抑えめの価格帯でありながら現代ハイエンドSPの最新設計を実現した全く新しいシリーズと設計のものを発表したほうが良かったのではないかと思います。

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Chordです。DAVE買ったばかりですが一応見に行きました。ここにもB&W D3シリーズがありましたがマランツで聞くよりずっと良い音でしたね。パワーアンプは以前からあるChord社のアナログアンプだと思います。なっていた音は透明感が高く染み渡るような音でした。やはりSPだけではなく上流の音質は重要です。ですがここに置いてあったSPシステムでも高音の綺麗さについてはDAVEの真の実力がでるところまではいっていないように思いました。

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部屋の入口の方にHugoTTが置いてありました。思っていたよりもはるかにでかいです。実はTTはここで初めて聞きました。ヘッドフォンなのでじっくり聞けるのは良いのですが音源が変更できず一曲しか聞けなかったので正確ではないかもしれませんが、隣においてあるDAVEと比べると高音に癖があって描写も荒いように感じられてしまいました。HugoTTも決して安くはないので、ここまで性能差があると頑張ってDAVEまで行ったほうが幸せではないかと思います。

一つ特徴的だったのは低音です。Hugoは薄口で物足りない低音だったのですがTTでは量感があってゆったりとして弾力のある低音でした。しかしそこはHugoなので濁った音ではなく分離はよく見通しの良い低域のままスピードだけ落とした印象です。DAVEは早くスマートな低音なので、それと比較するとTTは低音に独自の世界観があります。これはこれで好きな人がいそうな質感なのでクオリティ重視じゃなくて質感重視であえてこれを選ぶのもありかもしれません。

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この日最後はWilson+MSB+ダゴスティーノという組み合わせです。良い音が出ていたと思います。

Wilson Audio自体が中高音の描写に関して個人的にかなり理想のSPメーカーだったりします。見た目は嫌いなのですが音は好みです。まるでとろけるような粒子感のない透明な高音が非常に良いです。このあたりはDAVEと組み合わせても高音の質感に矛盾がなく相性は良いと思っています。

ただ最大の欠点はほとんどのモデルで低音がビビってしまうことです。いままでずっと聞いてきた中ではAlexiaが唯一低音がビビっていないSPで、それ以外のモデルはAlexandriaですら低音がビビっているように感じられました。Wilson Audioはもともと箱の響きを音に載せないことが強みだと思うので、低音で箱が振動したときにはその均整が完全に崩れてしまいます。なのでAvalonとは違い絶対に箱が鳴らない音量の範囲でしか鳴らせないSPである、ということになりそうです。

この日のAlexxもなかなか良かったですが、価格もサイズも現実的ではないのでこれを導入する日は永遠に来ないと思います。Alexxは多分ですけどAlexiaの次に低音が安定していた印象です。一般家屋だとSashaサイズでもっと低音に余裕があれば良いのですが、残念ながらそういうモデルは無いので買うならやはりAlexiaです。Alexiaはサイズも現実的で低音も高音も欠点を全く感じなかったので本当に欲しいSPではありますが、予算的にも出回っている数量的にもまず不可能でしょうね。

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Select DACです。思っていたよりかなり大きいです。サイズ感がわかるように手前にA4のカタログをおいてあります。普通のフルサイズよりちょっと幅も大きそうです。エイリアンの構造物とか古代生物みたいなデザインと合わさって実物は異様な迫力がありました。

肝心のSelect DACの音質はどうだったのかというと、システムの一部でしかありませんので単体の音質は正直よくわかりませんでした。ただ最後にDACからアナログへ差し替えて曲を掛けてくれたので、実力のほんの一部は見ることが出来ました。このDACの出音はなんとアナログとくらべて全く失うものがない印象でした。直前にDACで出力されていたのは古いデジタル録音のはずなのですが、ある意味アナログよりアナログらしい音がSelect DACからは出ていたように思います。普通ならデジタルっぽさが見えやすい音源だったと思うのですが、アナログへ差し替えても質感の違和感がなさすぎて怖いです。

ということでSelect DACはアナログと比較しても全く違和感がなく、むしろアナログより高品質なアナログ?のような音がしていたので、全く真の実力が見えない底知れないDACだということだけはわかりました。ブラックホールみたいな未知への畏怖を感じるDACです。宇宙人が作ったDACって言われても見た目とか音的にそんな感じがしてしまいそうですかね。これは一度ほかのDACと比較してみたいものです。

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EARです。ここは完全に独自の世界です。個人的に真空管はそれほど好きじゃないのですがEARは聞かせます。好みではないが確かな説得力が有るというのは相当の実力がある証拠です。非常にレベルが上ってくると好みを超越した絶対的な説得力が出てきますがEARはそれを持っています。EARは何を聞いても悪いと思ったことがありません。それだけ圧倒的な世界観を構築しています。

音は明らかに個性的で、原音忠実とか無色透明とは程遠い方向性です。かなり濃厚でどろっとしている雰囲気があります。古いジャズとか艶めかしいボーカルの曲とかが合いそうです。ただし重要な事があります。この説明だけだと典型的な見通しの悪い、濁った質の悪いアナログとか真空管のイメージとかぶってしまうのですが、EARは優れた透明感がありアナログの質感と両立しています。そこは重要な違いです。

現代ハイエンドの典型的な描写がアクリルとかガラスのような硬質なものを透明に磨き上げて風景を見ているイメージなのですが、EARはそうじゃなくて粘性がありながらもかなり透明度の高い液体がゆらゆらゆれている水面ごしに風景を見ている感じでしょうか?表現が難しいです。決して忠実ではないとわかっていてもその音は心地よいのです。

悪い真空管やアナログは水面が不純物だらけで濁っているのですが、EARは真空管でありながらもレベルの低い価格だけのハイエンド機よりおそらく透明度が高いです。なのでEARはオーケストラとかも良い雰囲気でなると思いますが、音数が少ない曲のほうが一つ一つの音色にじっくり集中できていいでしょうね。とにかく理屈じゃない魅力があります。

さて、今年はこれで終わりなのですが、せっかくSPについての感想がまとまっていますので、今年は見れなかったけれども、過去に何度も聞いて印象に残っているSPについてもかきます。

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Vivid AudioのGiyaシリーズです。この写真はG1です。このときはConstellation Audioのフルセットで鳴らしていたようです。

真のハイエンドの構成、そして部屋の広さも申し分ないのですが、G1は非常に鳴らすのが難しい印象です。この部屋の広さとアンプを持ってきてもギリギリG1の低音の暴走を抑えている感じがしました。結局この日はかなり素晴らしい鳴りっぷりだったのですがG1はもっとパワーと部屋を要求しているように感じられてしまいました。

唯一このSPが本気で鳴っていたと感じたのはダイナミックオーディオのマラソン試聴会でSoulutionフルセットで鳴らした時だけです。あのときはさすがに無理やり押さえている感じはなかったです。記憶では確かブラスバンドの曲をステージ上でSPで再現すると言って、お寺の広いホールの上から相当の大音量を鳴らしていたのですが、広さはむしろあれくらいでちょうどよかったのかもしれません。ですがSPはユニットが動かせる空気の量は物理的限界もあるので、結局は生ブラスのパワーを本当に再現するほどの余裕はなかったと思いますけれども、相当に良かったです。

これらからわかるようにG1はとてもじゃないですが普通の一般家屋に入れて鳴らすSPではないと思います。おそらく低音が暴走してまともに音楽がまとまるイメージがありません。それくらい難しいスピーカだと思いました。G2もなかなか難しそうですからG3くらいでようやくハイエンドアンプと普通の部屋の組み合わせでも手懐けることが出来るレベルじゃないでしょうか。

以上より、Vivid AudioのG1は本気を出したら凄いと思うのですが、そのような姿はめったに見られるものではありません。とにかく普段は気まぐれな暴れん坊というイメージが定着しています。真の実力を出すためには部屋を含めた莫大な投資が必要でしょう。SPは背伸びせず部屋にあったものを使うのが大事ということを強く感じさせる体験でした。同じシリーズのSPがこの性格をそのまま譲り受けているとしたらG3でも狭い室内で手懐けるのは大変だと思います。

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TADです。国産では珍しく非常に突き抜けた音楽性を持つのがTADだと思っています。

ここでは単体のコンポーネントではなく、オールTADシステムの音の印象についてかきたいと思います。TADは低音の安定感が最大の強さだと思っています。このイベントだけではなく、別の場所でのイベントでもすべて同じ印象だったので間違いがないと思っていますが、彼らは低音については相当妥協なく突き詰めているような印象です。設計でも相当の物量作戦を行っていてそれが徹底しています。

反面高音についてはやや荒々しい部分もあって、緻密な描写からは遠く、高域の質感に対してはある種の割り切りすら感じるので野性的な荒さが見え隠れしています。といっても普段の音調は常に冷静で、そのような野性味は前には出てくるわけではありません。高音の粗さも冷静さの影に隠れる個性なのですが、そういう側面をハッキリと持ち合わせている印象です。イメージで言えばスーツを着込んだ精密動作の出来ない太マッチョで、しかも普段は冷静なのですがキレたら見境がなさそうなタイプです。

TADの低音の安定感、揺るがなさはは一見YGとも通じるところがありますが、YGはもっと精密動作の出来るマッチョな感じです。でもTADとYGの相性はそんなに悪くないような気がします。

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最後にソナスです。やっぱりフランコセルブリン氏が設計していた頃のSPが良いです。この写真とは別の年でSoulution+ストラディバリ限定モデルという組み合わせを聞いたことがありますが、この組み合わせは高性能で明瞭な音でありながらも、どことなくゆとりも感じられました。「音楽を聞かせるという意味で高性能なSP」だと思います。

オーケストラのホールで言うとこのストラディバリの頃はホールの真ん中くらいに座っている印象で、最もバランスが取れているように思います。最近のソナスはかなり現代的な方向性にシフトしていて直接音がより豊富になった印象で、ホールで前のほうに座るようになった感じです。逆に独立後のフランコセルブリンのktemaなんかはホールの真ん中どころかもっと後ろの方で聞いているような感じでした。実際にそういう音というわけではないのですが、なんとなく凄く単純化した比較だとそういう感じです。

完成度はだいぶ違いますが、ストラディバリの音はある意味Linnと似ています。基本的には落ち着きのある音です。しかしLinnよりもさらに刺激的な響きや緊張感は抑えられており、低音も高音もいやな音がするセッティングはほとんど聞いたことがありません。なので場所や接続機材を選ばずに安定した実力を発揮しやすいということでしょう。購入するならこういうところも重要だと思います。自宅でセッティングしたときの難易度は低いほうが良いです。方向性が似ていても安定した音を聞かせることが少ないLinnとは対照的です。

また大型のSPでよくある低音のビビリが不思議と気にならないのも特徴です。たしかに響きはあるのですが、その響きに説得力が有って必然的に音楽に活かしているということだと思っています。このSPと対面するときは大抵響きを気にするのではなく音楽を聞いています。このあたりのチューニングは職人芸ですね。これより分離や性能が良いSPなら他に沢山あると思うのですが、これはそういう部分よりも気づくと音楽を聞いている、そんなSPです。

もちろん何でも得意なSPではないので合わない曲をかけたときは欠点が気になると思うのですが、これはそういうSPではないと思います。

以上です。

Chord DAVEと他のDAC試聴してきました

2016年9月 購入後のレビューあっぷしました

久しぶりにオーディオ試聴をしてきました。御茶ノ水オーディオユニオンでChord DAVEの展示があったので、厳密比較のため自分のヘッドフォン+音源を持参できいてきました。ショップさまには高額機器を快く試聴をさせていただき感謝いたします。

結論から言えばDAVEは予想よりすごかったです。価格はとても高いのですがさすがにHugoとは次元が違いました。Hugoでは前回の厳密試聴の結果、自作AK4495S-DACのほうが概ね良かったわけですが、多分ですけどDAVEと比較したら情報量とか解像度については自作DACのほうが不利そうでした。いままでこの部分について集中的に取り組んできたのですが今回はやられている感じがします。

そして単なる解像度以上に、いくつか印象的だったことがあったので、それについて詳しく書きたいとおもいます。DAVEについてはまだまだネットの情報では突っ込んだ試聴レビューが少ないですので、少しでも参考になればと思うところです。とはいえ一個人の感想でしかないですから、いつもどおり内容の信憑性については話半分にてお願いします。

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