現代のスピーカ測定指標、スピノラマの妥当性をチェック

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発端はオーディオ勉強会です。この2日目に「スピーカーの物理特性と人の聴こえの関係 -良い音のスピーカーとはなにか-」という講義があったのですが、スピノラマという評価方法を詳しく解説していました。

「オーディオ勉強会2021オンライン」

本当は内容を紹介したいのですが、本講義のスライド類は2次公開不可と規定されていますので、同等の内容を簡単にこちらでまとめたいと思います。参照リンク先や画像類は上記サイトとは関係のない場所から行います。

現代的測定評価、スピノラマとは

https://seanolive.blogspot.com/2008/12/part-3-relationship-between-loudspeaker.html

こちらから引用します。

この記事のパート1では、訓練されたリスナーと訓練されていないリスナーが同じラウドスピーカーを好むことを示す、筆者が行った研究の実験的証拠を紹介しました(参考文献1)。第2部では、訓練を受けたリスナーは訓練を受けていないリスナーに比べて、識別性と信頼性のあるラウドスピーカーの評価を行う能力が3~20倍高いことを示した。パート3では、リスナーのラウドスピーカーの好みと、その研究で使用されたラウドスピーカーに対して行われた一連の無響音測定との関係を検証します。

4つのスピーカーそれぞれについて、全リスナーの平均的なスピーカー嗜好評価と95%信頼区間をプロットしました(右のグラフ参照)。嗜好尺度の定義によると、リスナーはスピーカPとIが好きで、スピーカBに対しては比較的ニュートラルで、スピーカMは嫌いであることがわかります。

次の右のグラフは、P、I、B、Mの4つのラウドスピーカーの無響室での測定結果を、主観的な好みの評価に基づいて降順に示したものです。各スピーカーは、軸上と軸外の音の質を完全に把握し、再生音に有害な影響を与える共振による音響干渉効果を除去するために、水平および垂直軌道の周りで70の異なる角度で測定されました。これらの共振は、周波数特性のピークとディップとして視覚的に表現されます。各グラフの周波数カーブは、上から順に、直接音の質、平均リスニングウィンドウ、第一反射、音響パワー、第一反射と音響パワーの指向性指数を表しています。これらの測定値がどのようにして導き出され、コントロールされたリスニングテストによって実験的に検証されたのか、その背景については参考文献2〜4を参照してください。

リスナーのラウドスピーカーの好みと、一連の周波数グラフの間には、明確な視覚的相関関係がある。トレーニングを受けたリスナーも受けていないリスナーも、スピーカーPとIの測定結果に示されているように、最もフラットでスムーズ、かつ最も伸びやかな周波数応答カーブを持つスピーカーを明らかに好んでいる。ラウドスピーカーMの測定結果は、低音が不足しており、すべての測定曲線において周波数特性が滑らかではないことを示しています。このスピーカーの直接音と反射音は、再生音の音色に大きな影響を与えます。

訓練を受けたリスナーも、そうでないリスナーも、正確なスピーカーを認識し、好むということ、そしてその正確さが一連の包括的な無響音測定によって特徴づけられるということは、満足感と安心感を与えてくれます。次の論理的ステップは、これらの技術的な測定値を、リスナーの好みの評価をモデル化し、予測するための基礎として使用することです。これは、このブログの将来の記事のテーマになります。

参考文献

[1] Sean E. Olive, “Differences in Performance and Preference of Trained Versus Untrained Listeners in Loudspeaker Tests: A Case Study,” J. AES, Vol. 51, issue 9, pp. 806-825, September 2003. (download for free courtesy of Harman International)
[2] Floyd E. Toole, “Loudspeaker Measurements and Their Relationship to Listener Preferences: Part 1” J. AES Vol. 23, issue 4, pp. 227-235, April 1986. (download for free courtesy of Harman International).
[3] Floyd E. Toole, “Loudspeaker Measurements and Their Relationship to Listener Preferences: Part 2,” J. AES, Vol. 34, Issue 5, pp. 323-248, May 1986. (download for free courtesy of Harman International)
[4] Allan Devantier, “Characterizing the Amplitude Response of Loudspeaker Systems,” presented at the 113th AES Convention, October 2002.

このような実験データをもとに作られた測定指標がスピノラマ、ということです。次にこちらを引用します。

https://speakerdata2034.blogspot.com/2019/02/spinorama-cea-2034-2015-ansi-data-format.html

なぜSpinoramaなのか?

スピーカーの測定値を視覚化するためのフォーマットには、さまざまなものがあります。”Spinorama “フォーマットは、間違いなく最高のものであるからです。

  1. 間違いなく1つのスピノラマのグラフは見やすく、情報量が多く、スピーカーの音質を差別化するための結論が得られます
  2. このフォーマットを一般の人が解釈するための専門家レベルのアドバイスや例がたくさんある(詳細はこちらをご覧ください…)。
  3. このフォーマットは、80年代にFloyd E. Toole博士がカナダ国立研究評議会で発表した研究に端を発し、Toole博士自身が率いる研究チームによってハーマンインターナショナル内でさらに改良された、数十年に及ぶ査読付きの研究と出版物によって支えられています[ref.1 ; ref.2]。
  4. このフォーマットは、CEA 2034-A-2015 (ANSI)という規格で定義されており、CTA.techのサイトで誰でも無料で導入できるようになっています。
  5. スピノラマ形式の測定データは、ハーマンインターナショナルをはじめ、他のスピーカーメーカーや研究所でも測定・公開されているものがあります。(更新)2020年のスピーカーデータ革命以降、多くの人が自分のニーズに合ったスピーカーを見つけることができるよう、スピノラマ形式の測定データが豊富に用意されています。

ハーマンインターナショナルが市販の測定システムを用いて、非常に優れた無響室内で行った最新のスピノラマ測定の例。

これに対して、スピノラマ以外にも、指向性情報を含む様々な周波数特性グラフ、極座標図、カラーマップ、等高線図(アイソバー)、スペクトログラム、ウォーターフォール、指向性指数などがあります。周波数特性関連のデータに加えて、もっと多くのデータがあります。 理想的には、測定データは高解像度で生データ形式で提供され、好きなグラフを作成できる優れた可視化ツールと一緒に提供されるべきです。

そこで、Spinoramaフォーマットに代わるものを探しています。

  1. 他の多くの可視化ツールでは、基本的な性能を把握するために複数のグラフを一緒に見なければなりません
  2. 異なるグラフをどのように解釈すべきか、信頼できる詳細なアドバイスを見つけるのは困難です(何が完璧かを知るのは簡単ですが、測定された様々なスピーカーの不完全さが人間のリスナーにとってどれほど重要かを理解するのは困難です)。
  3. 普遍的な基準がほとんどないため、ほとんどの出版社は独自の色、フィルタリング、平均化、正規化のルールを持っています。

スピノラマでは、スピーカーの何がわかるのですか?

一般的に、スピノラマ(およびその他の高品質な指向性と周波数応答データ)は、フロイド・トゥール博士の言葉を借りれば、「音質」に直結しています。”現状では、正確なスピノラマやその他の包括的な無響室データが利用可能であれば、これらの曲線を解釈することが、十分にコントロールされていない状況下で聴くよりも、スピーカーを選択するためのより良いガイドとなるかもしれません。”

ここでは、スピノラマを知るために、既知の専門家の発言をいくつか紹介します。

  • “誰もが銀行に預けることができる一つのことは、貧弱なスピノラマ測定は、そのスピーカーが良い音を出さないことを保証するということです。” (ケビン・ヴォエックス)
  • “・・・「最高」のラウドスピーカーとは、聴感上の問題が最も少ないもの、つまり最もニュートラルなものである。” (フロイド・トゥーレ博士)
  • “良いニュースは、ニュートラルなラウドスピーカーは、スピノラマセットの測定値から実質的に認識できるということです。問題は、そのようなデータが乏しいことだ。” (フロイド・トゥーレ博士)
  • “スピノラマは直線的な性能を示します。曲線を総合すると、共振、帯域、スペクトルバランス、スムーズさ、指向性の証拠が見えてくる。

    さらに、パワーハンドリング、パワーコンプレッション、非線形歪などの変数もあります。これらはスピノラマには表示されませんが、有能な設計エンジニアは、選定や設計の過程でそれらを測定します。例えば、同じドームを持つトゥイーターであっても、目に見えないモーターの設計が異なるために、全く異なる挙動を示すことがあります。
    結論として、これらの他の変数のいずれかに重大な誤動作がない限り、スピノラマによって記述される直線的な動作は、潜在的な音質についての主要な手がかりとなります」。フロイド・トゥール博士

スピノラマを解釈する最も基本的なレベルでは、以下の点を確認します。

  • フラットなオンアクシスとリスニングウィンドウのレスポンス。リスニングウィンドウ」がフラットである限り、軸上のラインは最高のスピーカーであっても多少の凹凸があっても構いませんが、「リスニングウィンドウ」が最も重要であることに注意してください。
  • ムーズで徐々に変化する軸外方向のライン(サウンドパワー&アーリーリフレクション) – スムーズさがすべてであり、水平面の360°すべてがスムーズに見えることが望ましいです。
  • 軸外のラインが軸上のラインに近いほど、分散は広くなり、スイートスポットは広くなります(スピノラマでは小さな指向性指数DIの値としても見えます)。分散が大きければ良いというわけではないことに注意してください。詳しくは、こちらをご覧ください…
  • (1)ミッドレンジとトゥイーターの指向性の不一致、(2)音響的な干渉、そして最も重要なことは(3)共振により、様々な凹凸が生じることがあります。これらのトピックについて、Toole博士によるより実践的な説明をご紹介します:link1link2
  • しかし、すべてのバンプが問題になるわけではありません。”共振には検出閾値があります。つまり、すべての小さな凹凸が聴こえるわけではありません。聴こえなければ、それは現実的には存在しないのです。” – フロイド・トゥール博士 様々な欠陥の可聴性については、こちらをご覧ください(例: link1 – resonanceslink2)。

最先端の科学的な面では、スピノラマの測定値がラウドスピーカーの主観的な評価を予測する力があることを説明した研究が発表され、特許も取得されています。ショーン・オリーブ博士は次のように述べています。「…この測定値は、リスニング・テストでスピーカーがどのように評価されるかを予測する、かなり信頼できるものです。そのため、私はこの測定値に基づいてモデルを開発しました(参考文献1および2参照)。このモデルは、70種類のラウドスピーカーをテストした結果、86%の精度でリスニングテストの結果を予測します。測定値はすべてを語るものではないかもしれませんが、ラウドスピーカーの音が優れているのか、良いのか、まあまあなのか、悪いのかを知るには十分な情報です。”

次の引用

Speaker directivity / off axis response: theory and measurement techniques

ハーマンは、軸上、初期反射、後期反射のスピーカーの寄与を説明するための複数のプロットを含む、このアプローチを考案しました。無響室でスピーカーを水平・垂直方向に360度、10度の分解能で測定し、次のようなグラフを作成しています。

このチャートのデータは、1/20オクターブで平滑化されており、周波数分解能は2Hzとなっています。このチャートでは、以下の測定値が示されています。

  • リスニングウィンドウ=軸上、垂直方向±10度、水平方向±10度、20度、30度のスピーカーの周波数特性の平均値。
  • 第一または初期反射=床、天井、前壁、側壁、後壁のスピーカーの周波数特性の平均値。例えば側壁の寄与度は、水平方向に±40度、50度、60度、70度、80度の平均値である。
  • サウンドパワー=スピーカーから全方向に放射される音の総和。サウンドパワーは、室内の遅めの反射音に対するスピーカーの貢献度です。
  • 指向性指数(DI)=軸上の曲線と音響パワーまたは第一反射曲線との差

引用は以上です。上記を簡単にまとめると以下のようにまとめられそうです。

「スピノラマとは、従来の測定に代わる、一つのグラフで見やすくわかりやすい、しかも統計的裏付けのある測定指標」

参考までに、規格文章はここにあります。CTA2034で検索するとあります。英語で長いので読むのは難しいかもしれません。

https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?attachments/ansi-cta-2034-a-pdf.45978/

いくつかのスピノラマ実例

スピノラマを判断するには、グラフを見て、1に軸上特性以外もスムーズかつフラットな程よい、2に低音が伸びるほどよい。ということのようです。とりあえずはこの理解で概ねOKじゃないでしょうか。細かい原理はスピーカを選ぶ側としては重要ではありません。

スコア=Preference Ratingが高いSPはこんな感じです。

Spinorama

スコア 8.1

Bass extension: 20Hz at -6dB

Flatness: ±1.9dB ~ 300-10000Hz

Smoothness (PIR): 0.94

スコアが低いスピーカのデータは次のようになっています。極端に山谷が深い場所があり、全体のカーブもフラットではありません。低音も伸びてないですね。こういうSPはスピノラマの総合得点が低くなっています。

Spinorama

スコア1.6

Bass extension: 64Hz at -6dB

Flatness: ±6.2dB ~ 300-10000Hz

Smoothness (PIR): 0.25

Spinorama

スコア 3.2

Bass extension: 45Hz at -6dB

Flatness: ±4.8dB ~ 300-10000Hz

Smoothness (PIR): 0.11

スコア=Preference Ratingが高いスピーカを実際に買ってみる

Preference Ratingをまとめたサイトがあります。それを参考にしてみます。

https://pierreaubert.github.io/spinorama/

パッシブの最高スコアはInfinity IL60というあまり聞いたことがないSPみたいですが、日本では取り扱いもないし試聴もできないみたいです。次点のKEF reference 5は総合スコアでは負けてますがSmoothnessは最高です。他にもR3やLS50 metaもSmoothnessが優秀です。どうやらKEFの設計は全体的に優秀ということがわかりました。

さすがに余裕で100万オーバーのreference 5を気軽に試すわけにも行きませんので、現実的なSPを試してみることにしましょう。価格が安くSmoothnessが高いSPだとKEFのLS50 metaが引っかかりました。

Spinorama

 

これを見ると完璧ではないですがEQで2k付近を広めに2dB程度上げればかなり良さそうです。うちはデジタルEQ経由で出力できるのでやってみたいと思います。

他にも測定値を調べてみると減衰特性や、箱鳴りを抑える設計も優秀そうです。というか中高域だけなら既存のハイエンドSP並です。これらの指標や歪み率はスピノラマでは評価されてないと思うのですが、個人的にこの箱なりと減衰特性は大事だと思っています。これがあとでスピノラマそのものの妥当性に小さな影を落とすことになります。

https://www.stereophile.com/content/kef-ls50-meta-loudspeaker-measurements

1220KEF50fig03

1220KEF50fig10-2

とても安くはないですが15万くらいなので現実的です。最新のメタマテリアル技術も面白そうなので試聴をしてみると、出音のポテンシャル高そうだったので買ってみました。残念ながら国内に在庫がなかったので注文してから届くまで数週間かかりました。

低音をVelodyne、高音をLS50 metaにして空気録音したデータはこちらです。曲はいつもの曲です。サブウーファーを追加すると想定スコアは8.14らしいので、この録音が8.14の音です。

他の曲も取りました。こちらはドライ気味かつレンジ広めのミックスなので減衰特性がよりわかりやすいと思います。今後これも評価に加えようと思います。(音源はSound Cloudでフリーで聞けます)

Koan sound – Hustle Hammer

LS50 metaについて、ここでレビューまとめましたが、こちらでも追記を交えてまとめます。

この時点でわかったこと。スピノラマとStereoPhile測定値が示す基本性能の高さは実際の音でも説得力ありました。最大の優位性はセッティングが簡単に決まること、リスニングポイントを広く取れること、でしょうか。良い空間描写のためのセッティング難易度が低く、立体感が簡単に出ます。これはいままでのスピーカと比較するとはるかに簡単です。

例えばDuntech単体だと良い定位を出すためにはかなり試行錯誤が必要でした。設置位置や角度がシビアで少しずれるとバランスが崩れます。またセッティングを詰めたあとの定位感もLS50 meta比だと劣ります。現状の卵型SPもDuntech比だと簡単に定位が出ましたがそれでも最後の追求は時間がかかったものです。特に角度の調整が大変でした。

それがLS50 metaでは並行置きでそれなりに左右を揃えるだけでほぼ同等の定位表現が可能です!

ちなみにLS50 metaが並行置き推奨の理由はスピノラマでわかります。もう一度貼りますがLS50 metaの特性は上のようになっています。軸上特性(濃青)よりリスニングウィンドウ(黄色)のほうが特性がフラットですね。なのでマニュアルでも座る場所に向けない、正面または少しだけ傾ける程度で良いと書いてあります。リスニングウィンドウの特性で聞いてくれということです。なので自宅のセッティングもそのようにしています。確かに軸外に移動しながら聞く音は以前のシステムよりずっとフラットに聞こえます。

このあたりが従来のスピーカと設計思想が違うと思う点です。

また重要な点として、今まで長く等位相特性に設定してきましたが、それよりも軸外特性が定位表現に重要なのかもしれません。今までの経験では定位と等位相に完全な相関性がないです。全く相関性がないわけではないのですが完全ではありません。

例えばLS50 metaとDuntech単体比で定位の表現限界とセッティング容易さでかなり格差があります。Duntechは等位相でも限界低くLS50 metaは非等位相でも定位がよく出るわけです。これは等位相が定位に必須ではないことを示しています。等位相になるSPの定位が良い可能性があっても、等位相でないSPのほうが定位が良いことがあるわけです。これはとても重要です。

https://www.stereophile.com/content/kef-ls50-meta-loudspeaker-measurements

↑LS50 metaの位相応答 等位相応答ではない

↑自宅システムの位相応答

あとの要因としては左右壁の対策も効きますがこれは壁反射音の特性への影響とも言えます。そして現状の球形のSPも良く定位出ますが、球形は四角のSPより軸外特性が良い可能性が高いです(100%ではない)。少なくともDuntechより良いのは間違いないです。

そしてLS50 metaは最も軸外特性が良いことがわかっています。なのでこれらから判断すると軸外特性こそが定位表現に重要。位相は本質ではない。そういう結論になりそうです。となるともはや等位相にする理由があるとすれば音色でしょうか。特にシンセの単純波形だと音色の違いがわかりやすい気がします。音色は大事ですが従来理論比だとかなり等位相の重要度は落ちることになります。

続いて細かい音について書きます。

LS50 metaは中高域は音がパッと消えるし付帯音も少なく、正直現状のうちのメインシステムの間に合わせホーンツイータより素直で録音に忠実な音かもしれません。中高域はスムーズかつクリアで優秀です。厳しく言うと僅かに個性的な響きが乗っていますが、ユニットの個性かケーブルの経路かどこかの共振かもしれません。対策できそうなくらいは少しの癖です。とにかく現状のうちのホーンよりはずっと癖が少ないです!

低域は当然ながら不満が出ます。中高域が異様に高性能なので余計に気になります。具体的にはベース帯域以下は速度が大幅に低下してボワつく上に下は全然伸びません。なので高品位再生を狙う場合は低音は外部で補助して使うしかないです。こちらではVelodyneと組み合わせてみましたがそれでも中域の余裕はありません。上位機種のR3等以降ではウーファーがついていてクロスは400Hzに設定されていますので、400Hz以下は厳しいようです。

残念ながら自宅では低音を担当するDuntech側に150Hzの共振があるので400Hzクロスにできません。Velodyneも199Hzまでが限界です。なのでLS50meta単体では中低域の負担が大きすぎて、それが表現の余裕の無さにつながっている可能性が高いです。

この空気録音で旧LS50とR3の比較を聞くとR3はだいぶ中域の描写に余裕がありますので、100-400Hzの補強は必要そうです。というか、LS50 metaも中高域はなかなか良かったし、こうなると上位機種の音が気になってきます。

KEF新型Rシリーズの完成度がハイエンド級だった件

上にまとめましたが、色々追記してこちらでもまとめておきます。

高域

BladeとReferenceのUni-Q(同軸ミッドツイータ)が11世代でRとLS50metaが12世代。この違いが結構あります。11世代は少し金属的な響きで美音系の音がします。リファレンスとBladeでは微妙に違うのですが、12世代と比較すると共通の癖があります。12世代になるともはや普通のツイータと変わらない音です。粒子が細かく見通しを遮らない質感に。11世代はやや粒子が荒くどこまでも見通せる感じではありません。

12世代なのはLS50 metaとRシリーズですから、ラインナップでも安いグループのほうが新世代ユニットなので高域が良いのは面白いです。KEFというメーカーは価格が絶対的ヒエラルキーではないようです。価格は関係なく最新世代では改良されているということです。これは個人的にとても好感を持ちました。

中域

LS50metaとR一桁の格差が大きいです。LS50はやっぱりこの帯域に無理があってRになると中域に関しては一気に良くなります。これは上記の事前予想通りです。LS50のmeta技術は中域のクリアさにも有効なはずですが、metaなしのR比でも余裕やクリアさが全然違います(当然Rが良い)。高域が同等ですからトータル性能ではもはやRの圧勝です。

ちなみにReferenceの中域はRより少し良い位で大差ない印象でした。Referenceの本領は低域にあります。

低域

ここではRとReferenceの違いが大きいです。R5とR11は上位比だと少しの違いにとどまります。低域はReferenceが圧勝ですね。ただしそれでも現代ハイエンドみたいな沈み込みとクリアさを両立するような凄みのある低域ではなくて、少し優しい感じです。絶対的なレンジやスケール感は現代ハイエンド慣れしてるともう少し欲しいと思うはずですが、部屋への要求も半端なくなっていきます。少なくともこの領域の性能を求める人が満足するには、最低Reference以上のSPを買える財力が必要でしょう。

Blade

Bladeは別枠です。Referenceより柔らかい音で聞きやすいです。11世代ツイータの音は完全に同一ではなくBladeのほうがやや優しい音。Referenceのほうがくっきりしています。全体的に見ると中域よりのバランスで、低域は実体感が薄かったです。

ということで全体的にBlade比だとReferenceはキレと芯がある。高域の個性と合わせてややエッジが効いた音。逆にBladeはネーミングや見た目の印象と違い音は全体的に丸めという印象でした。

ただし低域はセッティングの問題の可能性高いので参考程度に。Bladeは左右にウーファーがついている関係で写真のようなセッティングだと左右の空気が動かせず低域がちゃんと出ていないはずです。もっと広い空間で評価しなければ低音は結論は出せません。

ここまでのまとめ

トータル性能はReferenceでしょう。しかし価格差ほどの絶対優位性はないです。コスパはRが突出して優秀だと思います。Bladeは高価ですが音のハイエンドじゃなくて別枠です。インテリアデザインとか、そういう要素も入りそうです。

KEFは研究を主体にしたメーカーなのか、価格とラインの厳密なヒエラルキーを構成していません。新しい製品は確実に良くなっており新型のコスパは大幅に向上しています。

現行Qシリーズもチェック

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あまりにも新型Rシリーズが優秀だったので、現行のKEFの低価格ラインは一体どんなすごいことになっているのか?と興味が出てきたので、その実力を確かめに帰りにヨドで安いモデルも聞いてきました。

残念ながらというか価格相応にQ三桁モデルは価格とともに高域の質感が一気に落ち、低域も曖昧に。個人的にこのラインはちょっと厳しい印象です。以前のKEF世代の印象に近いです。要するに同軸ユニットの設計に伴う副作用なのかやや個性的な高域の質感が全面に出ています。外観から判断するUni-Qの世代はReferenceと同等のはずですが、内部構造の違いなのかReference比でも更に粒が大きく細かいディテールは癖でマスクされているように聞こえます。楽器の高音が生音とぜんぜん違う感じです。そして低域は箱が鳴っている感じ。

Spinorama

Q三桁のスピノラマは結構いい点数ですがここまで質感が落ちると個人的には厳しいです。スコア5.7でsmoothnessも0.87でLS50 metaと僅差ですが、店で比較した限りLS50 metaの質感と比較するとQ350は全然駄目です。出音の差は正直スコア0.3の差だと問題な位の格差があると思います。歪み率や減衰特性をみたらこのあたり何か傾向がわかりそうですがスピノラマではこういう部分はわからないです。

このように軸外特性、周波数特性だけでは質感は評価できないのがスピノラマの問題になりそうです。

KEFまとめ

価格破壊は現行のR一桁シリーズまででした。先代Rより価格は大きく上昇しましたが、正直コスパはむしろ向上してる可能性もあります。それくらいRの印象は良かったです。

現行のR世代は価格度外視で評価しても「良い」と思いました。定位感、音の自然さ、固すぎない音を求める方は特に合いそうです。もちろん同軸設計に伴う高域の独特の響きは0になっていませんが、この価格帯のSPだと癖のある高域を出すSPはよくあるので、普通のツイータ並といえます。こうなると基礎特性につながる同軸の優位性が際立ちます。

低域は決して現代ハイエンド性能とは言えないし、高域もウルトラスムーズな質感じゃないです。でもこれらを求めるとシステム予算も非現実的になる世界なので、このSPを選ぶ人には合いません。ですが100%高額になるしかない究極的要素以外の部分、総合的バランス、総合得点はハイエンド的領域かもです。

そしてそこに至る根拠もあります。こちらの文献では技術的な問題解決についてデータを交えた具体的な方法が書かれており、科学的に問題に立ち向かったSPなことがわかります。

https://us.kef.com/pub/media/documents/rseries/rseries2018-white-paper.pdf

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優れた感性~なんて書いてなくて、技術と測定の話ばかりです。真面目に一つずつ改善を積み重ね、今がある。そう思います。Rシリーズ全般のスピノラマスコアの高さも確かに高評価の一つの要素ですが、それだけではありません。この資料にあるようにスピノラマでは大きい違いの出ない小さい要素もしっかり改善してきている点がこの評価につながっていると思います。

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古くはQ一桁シリーズの頃からKEFの音は聞いていますが、当時はここまで突出した印象はありませんでした。

当時はB&Wがコスパが高く、箱鳴りを抑える設計、球形の中高域が織りなす定位感、これらが新しく眩しかったものです。当時はまだまだ箱型でユニットが揃っていないスピーカがたくさんおいてあった時代です。確かにKEFの同軸設計思想は当時先進的だったしそれ自体は理想だし正しかったですが、理想のための犠牲が大きすぎて、現実の出音は理想に全く追いついていない、不完全さが気になりすぎる出音でした。

それが20年近く経過してB&Wが技術的に停滞している間にKEFが追い抜いたと言えそうです。現代的設計思想に適した設計思想、欠点を塞ぐための細かい改善を常に積み重ねていく姿勢、これが20年でここまで差を広げたということです。

実際に現行B&Wのフラグシップラインナップの特性はスピノラマで見ると悲惨なことになっています。

Spinorama

D3が発表されたときも思ったのですが、どうして彼らはハイエンドラインの根本設計を変更しないのでしょうか。本来なら900シリーズとして最新設計にアップデートしても良い頃合いだったと思います。別に音がそこまで悪いとは思いません。でも近い将来スピノラマが測定のスタンダードになっていったとき、B&Wはそのための準備ができていないのではと思います。そうなったときKEFのような長年の積み重ねではない、たった数年で間に合わせ的に数値上良いものを作ったとして、果たして音的に古いユーザーと新しいユーザーを納得させるものが作れるのか、大変疑問です。

B&Wの話になってしまいましたが、かつてのユーザーとして、当時の突出具合を知っているだけに残念であり、その裏で当時は光と影の影的存在だったKEFの長い努力がここにきて実りつつある、というお話でした。(もっと大変なのは国産メーカーかもしれませんが)

KEFの現行リファレンスモデルのWhite Paperも内容が充実していたのでこちらにリンクを貼っておきます。スピーカを作る方は参考になるかもしれません。上の勉強会をやっているところで出しているマスターブックに書いてないような内容も一部あります。

https://www.shop.us.kef.com/pub/media/wysiwyg/documents/thereference/REF_White_Paper_preview_path_200514.pdf

その他、国内入手可能なスピノラマ的注目モデル

アクティブではなくパッシブが中心で、空気録音を聞いて良いと思ったものを紹介します。

最初にお伝えします。空気録音で何がわかるのか?と言われるかもしれませんが、なれると結構わかります。重要なのは一つの環境、一つの録音で判断しないことです。有名なモデルは最近だとたくさん録音がアップされているので、色々な環境での傾向をチェックしてください。そうすると概ね評価は実際の印象と一致します。あとは必ずイヤホン、ヘッドフォンで聞くこと。スピーカ+部屋で聞いたらわかりません

KEFも店頭試聴の前に空気録音で聞けるものは全部聞きました。そうしたら実際に店に行ってもほとんど印象や評価は変わりませんでした。もちろん細部はわからないこともあります。でも大まかなところの評価は一致しました。なのでこの評価方法はそれなりに妥当と考えています。

Spinorama

https://jp.polkaudio.com/category/polkaudio-reserve

希望小売価格:¥103,400 税込

割引で8万円台ペアですので性能比では安いです。ちなみに録音がここで聞けます。この価格帯の製品は録音で比較してみるとスピノラマが良くてもイマイチな製品が多いのですが、これはなかなか良さそうです。

Spinorama

http://revel.harman-japan.co.jp/product.php?id=f208

メーカー価格 330,000円(税込)こちらは1本なのでペアだと高め。割引有りでも50万円台になりますね。録音はこれを紹介しますが非常に良い印象です。

KEF Rシリーズだと価格的にR11がライバルになりそうですね。R11は良い録音が少ないのですが、F208と似たレベルと思われる録音はこれでしょうか。

両者の傾向からの判断ですが低音の伸び、高音の素直さはF208が優位、全体的なクリアさはR11のほうが良さそうですが高域に少し色がある(KEFはスチールギターの音が苦手かも)。ということで、どういう方向性を好むかで選んでも良さそうです。

スピノラマだけだと評価が難しい事例

https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vRVN63daR6Ph8lxhCDUEHxWq_gwV0wEjL2Q1KRDA0J4i_eE1JS-JQYSZy7kCQZMKtRnjTOn578fYZPJ/pubhtml#

ここから低価格かつハイスコアのモデルの録音をチェックしていました。しかしどうも音が良くないです。低価格でもスピノラマが良ければいい音がする、そうではない事例はそれなりにありそうです。いくつか紹介します。

基本的にいかにもスピーカから、箱から鳴っています、という音は評価が低くなるし、高域の質感が落ちるのも同様です。しかしこういう要素はスピノラマではあまり評価出来ていない印象です。

ELAC DBR62

スコア5.69 $599.98

低域に癖があります。これも複数録音からの判断です。この傾向は他の録音でも共通しているのでこのSPの弱点と思われます。ボーカルも詰まったような音だし、特にバスドラム、タム等、ドラムのアタックに違和感があります。高域も少し粗いようですがこの価格帯なら問題ないです。DBR62 soundで動画検索すると他の録音は見つかります。

KEF Q350

スコア5.65 $699.98


これは高域の質感がやっぱり気になります。低域は余韻ありますけど、ここで紹介する他の多くのスピーカよりは素直だと思います。点数はElacと同じようなものですが音の傾向はぜんぜん違う点も重要です。

Neumann KH80

スコア6.17 $999.90

スピノラマ的コスパは高いSPですし、外形はよく捉えている音だとおもうのですが、個人的にはあまり良いと思わない傾向です。これも録音は複数チェックして傾向掴みました。どれも抑圧感みたいな要素が強いです。ただ上記の事例みたいにどこというわかりやすい弱点ではないと思います。

個人的にアクティブスピーカがあまり好きではない理由かもですが、全体のバランスは良いのですが細部の部分が弱いのです。総じて詰まったような音、というしかないです。ここまではパッシブスピーカの録音だったと思うのですが、急に傾向が違うはずです。

この比較だと全体のバランスや外形はKH80のほうが正確と思いますけど、細部の曇りの程度はKEFのほうが良いです。もちろんKEFもこの動画の音はいいと思いません。しかしKEFのほうが曇りという点では良いです。ただコメント欄をみるとそういう意見は殆ど見ないので、自分が少数派な可能性が高いです。

とはいえこれだけではサンプルが少ないので他の録音も紹介します。

こちらのほうが録音は良いです。部屋も広そうでセッティングに余裕があるし声はとても明瞭に取れてます。しかしKH80の詰まったような音は健在です。伸びやかでなく抑圧感があって高域がよれている音。でもNS10よりはいいです。NS10は古い設計だから仕方ないのではないでしょうか。

ちなみにNS10はテンモニって言われてて、昔は日本のプロは全員テンモニで音を確認してると言われていたようです。事実かは不明ですがこれが日本のスタジオベンチマークだった可能性があるわけです。もちろん私自身は音楽制作時代も、このような音を基準にしたいと思ったことは一度もありません。

Neumann KH310

スコア6.20 $4,400.00

高額モデルの録音です。KH310になると質感はだいぶ良いです(スコアは大差ないですが)。ここで気になるのはバッキングギターの下の方が尾を引くように長い余韻を残すように聞こえる点でしょうか。共振か何かだと思います。ADAMのほうが低音のキレは良いですね。Event 2030は厚いベールをまとったような音でよくわかりません。

こちらは別の録音。こちらだとKH310単体でも(多少詰まった感じはするものの)悪くないです。KH80よりKH310のほうがはるかに違和感は少ないです。特にKH750DSPの補正後はとてもいいですね。

この差なんですが、コストから見た筐体、ユニット、内蔵アンプの品位差が大きいのかもしれません。価格が安くなってくるとパッシブ比で各部分のコストがほとんど掛けられません。アクティブはアンプが必要ですのでその分コストがかかります。アンプ自体のコストもそうですし、ユニットや筐体にかけられるコストも少なくなるわけです。同価格だとアクティブのほうが不利な部分です。

個人的に安いアクティブで音がいいと思ったことは一度も無いのですがこの要因が大きいと思います。

Genelec 8341A

スコア6.75 $6,590.00

こちらも高額モデルで、更に価格が上がります。

ちょうどLS50 metaとの比較動画がありました。これは8341のほうが良いです。LS50 metaは高域も低域も少し違和感があるのですが8341はそういう問題がありません。若干バスドラムの余韻が長いように聞こえますが部屋の影響の可能性も高いです。8341は録音によってかなり格差があるのでなんとも言えませんが、これはよく取れてると思います。

これくらいの価格ならアクティブもいい音がするみたいです。このようにアクティブの場合はスピーカの出来だけでなくアンプやDSPの出来も評価に含まれてくるのでそこの性能も見逃せないところです。パッシブと違ってあとからアンプだけアップグレードができません。でもこういうところの性能差はスピノラマではわからないのではないでしょうか。

モデルが違いますが、Genelec VS KEFで似たような比較がありますのでこれも紹介しておきます。

これはどっちもいいと思いますが、8351Bの低音、R3の高域は違和感なくもないです。

こちらも8351に低音があとを引く傾向がありますので、8341の同様の傾向もGenelec共通の個性の可能性が高くなります。同様にKEFも、どの録音でもスチールギターの音色に違和感を感じることが多いです。これは特有の弱点の可能性が高い。この気づきが異なる環境の空気録音を聞いて評価する重要性になるかと思います。

逆に低スコアで良い音のスピーカを探す

スピノラマ低スコアで良いものがあるのか?気になったので探してみました。価格帯も幅広くチェックしてみましたが、こちらはあまり良いものがありません。スピノラマ高スコアのものは安定してそれなり以上の音を出していることがよくわかります。高スコアの場合は惜しい音というのか、細部が気になることが多いのですが、スピノラマ低スコアの傾向は聞いた瞬間駄目かなって思う録音が多いです。

あと共通しているのがスコアが低いと録音の格差が大きいです。本当にひどい音で鳴っている録音が増えます。でもたまに良い録音もあります(大抵広い部屋だったりSPが壁から遠い)。この格差がスコアが下がるほど顕著です。低スコアでは同じスピーカでも録音次第で全く違う音になってしまうのです。このあたりはスピノラマの軸外特性を含めた評価方法と、私のLS50 metaでのテスト結果、空気録音の傾向、すべて一致しています。

高スコアほど安定して良い音を出せる、低スコアは壁の影響を受けやすいわけです。やはり低スコアはセッティングや使いこなしの難易度が上がるのだと思います。軸上だけが良いスピーカは、どうしても適材適所で部屋の吸音や壁から離したセッティングが必須になってくるわけです。

参考までに低スコアの中で安定した音を出していたのはJBLです。これは4319でスコアは3.7と低いですが、複数の録音でも説得力ある音が出ています。箱もなるし決して高忠実系じゃないのですけど、曲によっては性能以外のバランス感覚を感じます。スピノラマを採用しているのはハーマンですがJBLがハーマンなのは偶然ではないと思います。スコアが低くても大事な要素を理解して設計しているかもしれません。

どうでしょうか。

おまけ

Grimm LS1be, Dutch&Dutch 8C, ATC SCM100Aの比較

ATCいいですね。ただ圧倒的に広い部屋なので狭い部屋だったらどうなったでしょうか。もしかしたら違う結果になったかもしれません。

最後にまとめ

  • スピノラマはどんな環境でも安定したバランスの良い音を出せる、この指標としてはよく機能する
  • ただしスピノラマは決してスピーカのすべてを表す指標ではない
  • スピノラマでわかるのは、全体のバランスのよさ、セッティングの容易さ、リスニングポイントの広さ、部屋や場所を選ばない性能
  • スピノラマでわからないのは、質感、箱鳴りの程度、歪率のような要素

これは下で紹介する過去記事と似たような結論です。大局的な目安としては十分機能するが、わからない要素もある、ということです。ですがDAC等よりはよほど測定の相関性が高いとは思います。ですが一線をすぎる機能しなくなっていくということではないでしょうか。その一線がSPはかなり高い。SPの現状の到達点はDAC比ではまだまだということです。

実際にyoutubeのコメント欄を見ると細部は気づいていない、見ていない人も多いので、確かに統計的にみたらスピノラマは正しいように見えます。細部を気にする人が少数なのはコメントを見る限りは事実です。私のように細部が気になる人にとってはスピノラマだけでは十分ではなかったということです。

ここから予想すると、高スコア同士の比較に限ってはスピノラマは十分な指標とは言えないかもしれません。少数派の評価軸として大局よりも細かい部分を強くこだわる人にとってはこれらのスコアが信頼できる評価と感じない可能性もあります。

これは、こだわる人しかいないハイエンド市場で、スピノラマが思ったような効果を発揮しない可能性を示しそうです。スピーカにおいても今後も引き続き測定至上主義とハイエンド文法の対立は見られることになりそうな気がしています。

あくまでスピノラマの根拠は統計なので少数派の視点は評価されない傾向があるからでしょう。科学的といっても統計になると多数派以外はノイズとして無視されてしまいます。少数派=例外はあくまで例外です。私の質感評価もスピノラマからの例外要素です。

少数派は今後大衆向けの指標となる単純な高スコア製品では満足できない可能性が高くなるかもしれません。もし市場でスピノラマの悪いスピーカが売れなくなるなら、限られたコストをハイスコアのために投入します。メーカーはそれ以外の要素の重要度を評価しなくなるかもしれません。そうすると少数派はますます例外的な製品を選ぶしかなくなります。

そこでハイエンドのような少数派のためのマーケットの存在と結びつきます。ここではメーカーも客も含めて例外の塊のような存在が発生しうるのです。JBLも意図的かはわかりませんが、あえて測定から少し外れたポイントに魅力を置いているようにも見えます。こういうスピーカは測定では簡単に評価出来ません。

ですが逆に、スピノラマは今後ハイエンド以外のマーケット、大衆向けの製品では重要な指標になっていく可能性が高いと思いました。

高特性は正義か?ASR推奨製品の実力を検証

いただいた補足

  • Spinorama = 測定方法
  • Preference Rating = 各要素を重み付けし、一次元的数値に落とし込んだもの(リスト化するための便宜的な圧縮データ)

私も最近知った知識なので自信がないですが、多分これで大丈夫かと思います。この記事のスコアは基本Preference Ratingのことなのでここで補足したいと思います。一部重要と思われる本文箇所は修正しました。

もう一つの指摘は、スピノラマは軸外の平均値をグラフ化するので、ちょうど+-が打ち消し合う形の凸凹があった場合、平均化されてフラットに見えてしまいます。実際には軸上に問題があるのに、スピノラマ上では可視化されない、ということが起きる可能性があるということです。実際には軸外の詳細特性を直接見て、慎重に判断する必要があるということになりそうです。

 

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